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番外編(本編中のネタバレもあります。)
名を、命じる日 (*お正月の小話です。)
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*遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
ご覧頂きありがとうございます。
お正月の小話です。名付けや色についての設定の話です。
───────────
「名付け…ですか?」
「えぇ、母親に魂を視る力のないものや、
産褥などで亡くなったものの代わり、
その能力があったとしても、望むものに与えることです。
正月にする私たち后や妃のする大切な仕事です。」
あいつに嫁いで初めて迎える正月。
僕の旦那はあんなんだから、その妃の僕も特に何かを要求されることは少ないが、
ともかく、これだけは違うらしい。
本当ならそれなりにしないといけないという事を、
茨木から教えてもらっている。
彼女は姉と共に幼少期からあいつの妃になる教育も受けている。
なんだか未だにこういうところで、彼女に対しての嫉妬心がまだある。
だが、彼女にはその眼がないので妾妃などにしかなれないそうだ。
姉はどうやらを眼を持っているみたいだが、なんだか鬼とは質が違う気がする。
あのひとは【秘印】や【戦乙女】とか不思議な力を持ち過ぎだしなぁ…
上位の鬼なら、αやΩの力を持っているが、
下位のものは他種族と混じりすぎて第二の性別を持たないものや、
角なども持たない、【角なし】なども出てきている。
もちろん上位でもそれはあり、少ないがαの男とαの女の夫婦などもあるがとても稀だ。
因みに、あいつが盛んに勧めてくるあの行為…
Ωの男同士でのそういう関係や縁組というのはかなり倒錯的で好まれない。
一部の政略結婚のようなものでは存在するが…子も出来にくいからわざわざしない。
鬼族は力至上主義なところがあり、Ωは愛でられ可愛がられるものという認識が根深くある。
僕は姉の教育の為か、そういう偏った価値観はないが…
『お前が挿れてみろ』は本当にやめろよな!
お前の力をビンビン感じて、怖くて、無理なんだよ!!
妊娠後期に入り、体調については悪阻は相変わらず酷いが、食べ続けていれば大丈夫だ。
でも、僕の食事はΩや赤ちゃんにはかなり刺激が強い気もするけど、大丈夫かな?
「そういう訳で、私たちは名付けとともに民たちにその姿を見せますので、
それなりに見れる様にしませんとね。
百合はとても美しい、可愛い子なので楽しみです!」
そう仰いながらご自分と僕の衣装を決めていく。
お義母様は僕と似た色合いをお持ちだから、
『私の若い頃の物もきっと似合います!』とか仰られて色々持ってきてくださる。
が、どう見ても女物な仕立ての着物がある…
そういった趣味でもお持ちなんだろうか?
少し…困惑してしまう。
「それからこれらの資料を見て、名付けの参考にしなさい。」
大変分厚い色の名前や植物や花の名前、歌を綴ったものなどの、
沢山の書物も渡された。
鬼は下位のものでもニ、三百年は生きる。
それだけ長い間使うものだから慎重にならなくてはいけない…
もの凄い精神的な圧力です!
妊夫には厳しいものがありますよ!お義母様!!
あいつは亜神の努めで【狩り】に出ている。
【域】に慣れる為にあいつのいない時でも、数刻から長くて半日くらいはそこに居る。
日にちや時間の感覚が狂ってしまうような静寂の中でそれらを読み込む。
「百合、帰った。」
「うん、おかえりなさい。」
こういったものを覚えたり、理解していくのは楽しい。
そうしていると近づき、懐かしそうに資料を見る、僕の番。
「懐かしいな。
俺も昔、幼い頃に母上にやらされた。
『このアホ!お前は呆れるくらいそういった才能に欠けます!』と怒られてやめたが。」
少し、塩っぱいものを食べたかの様な顔をしている。
「時々、百歳より少し若いものに、呆れるような名前があるのはお前が原因か!
あれは可哀想だろうが!
『肉』とか『人』とか『塵』は酷いぞ!!
付ける時に可哀想だとか思えよ!!!
他にもあったが、我慢できないものはΩの名前を名乗っていたぞ…」
ほんとうに時々ありえない名前で困惑させられる時がある。
成人済みのαなのにΩの名前は凄く可哀想だからな!
「この世界は俺の様に【赤】のものが圧倒的に多い。
お前の生家のものやお前の友人の様なあちらから来た【青】もなかなかいる。
俺やお前やお前の姉などの、より濃く強い魂を持つものはごく稀だが。
純度の高い魂のものはとても珍しいからな。」
言われると耳に痛いからって、サラッと流すなよ。
あまり参考にならないけれど経験者に聞いてみようか?
「僕の実家のものに多い【青】。
それから【赤】、【黄】、【緑】。
特別な役目を持つとされる、【黒】と【白】。
その枠にはまらない僕の様に混ざったもの。
うーん、なかなかに大変だよね。」
因みに四童子の子孫でもある、【青】、【赤】、【黄】、【緑】の家をまとめて
【四家】と呼ぶ。
それぞれに役割があるんだけれど、僕はこいつに嫁いで継がなかったからよく知らない。
人族などでは貴族とかにあたるような家でもある。
コレ、豆知識ね。
お、お腹の子が蹴っているな。
胎動も最近は感じるようになった。
そういえばこの子はどんな【色】をしているのかな?
「なぁ、朱天。この子はどんな色だろうな?
お義母様やお義父様はお前と同じように【赤】なんだろう?
この子もそうなのかな?
僕に似たら【青】や【紫】になるのかな?
楽しみだよ。」
「きっと強い魂を持つ子が生まれる。」
「そうだな。」
神子などと同じ【白】や壊すもの【黒】とかは可哀想だけれど、きっと強い子だ。
本当に楽しみだよ。
◇◇◇
《オンギャー!!ホギャー!!!》
「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」
物凄く元気すぎる子が生まれたな…
あの子の時もそうだった。
片割れはそれ程でもなかったんだが、あの子は元気すぎたなぁ。
綱にもよく懐いていたよなぁ。
あの子達を思い出すと胸が締め付けられるが…
「お母さん、名前は決めていますか?」
産まれてきた子を視る。
…………………この子は、まさか?!
「…、…ぃ、…ラン。」
「ラン、ですか?」
「ラン…ディ、にします。」
まさか、こんなところで会うことになるなんて…
涙がどんどん溢れて止まらない。
「あらあらお母さんは感動して泣いちゃいましたね。
ランディくんは預かりますね。
あとの処置などもありますから。」
◇◇◇
「しかし、ファイゲンバウム、
貴方のところもうちの子と同じ日、同じ時間に生まれるなんて珍しいな。
名はもう決まったかい?
うちの子はランディだ。
とても元気すぎる子で大変だよ。」
「あぁ、母が一目見て決めたよ。
『久しぶりですね、…、こ…ん。』とか不思議なことを言っていたけれどな。」
「しかし…どうにもどこか不思議な雰囲気を持っていて、妻が不気味がっていてなぁ…」
「そんなことを言っては可哀想だろう。」
「それはそうなんだが、私も少しな…」
「何を言っているんだ。上の子と同じようにしないと本当に可哀想だからな。」
「母はよく可愛がっているんだがなぁ…」
私とランディが彼と出会う運命の日まで数年の歳月を要する。
───────────
お義母様の名前は赫夜です。
肉色も人色も存在します。
ご覧頂きありがとうございます。
お正月の小話です。名付けや色についての設定の話です。
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「名付け…ですか?」
「えぇ、母親に魂を視る力のないものや、
産褥などで亡くなったものの代わり、
その能力があったとしても、望むものに与えることです。
正月にする私たち后や妃のする大切な仕事です。」
あいつに嫁いで初めて迎える正月。
僕の旦那はあんなんだから、その妃の僕も特に何かを要求されることは少ないが、
ともかく、これだけは違うらしい。
本当ならそれなりにしないといけないという事を、
茨木から教えてもらっている。
彼女は姉と共に幼少期からあいつの妃になる教育も受けている。
なんだか未だにこういうところで、彼女に対しての嫉妬心がまだある。
だが、彼女にはその眼がないので妾妃などにしかなれないそうだ。
姉はどうやらを眼を持っているみたいだが、なんだか鬼とは質が違う気がする。
あのひとは【秘印】や【戦乙女】とか不思議な力を持ち過ぎだしなぁ…
上位の鬼なら、αやΩの力を持っているが、
下位のものは他種族と混じりすぎて第二の性別を持たないものや、
角なども持たない、【角なし】なども出てきている。
もちろん上位でもそれはあり、少ないがαの男とαの女の夫婦などもあるがとても稀だ。
因みに、あいつが盛んに勧めてくるあの行為…
Ωの男同士でのそういう関係や縁組というのはかなり倒錯的で好まれない。
一部の政略結婚のようなものでは存在するが…子も出来にくいからわざわざしない。
鬼族は力至上主義なところがあり、Ωは愛でられ可愛がられるものという認識が根深くある。
僕は姉の教育の為か、そういう偏った価値観はないが…
『お前が挿れてみろ』は本当にやめろよな!
お前の力をビンビン感じて、怖くて、無理なんだよ!!
妊娠後期に入り、体調については悪阻は相変わらず酷いが、食べ続けていれば大丈夫だ。
でも、僕の食事はΩや赤ちゃんにはかなり刺激が強い気もするけど、大丈夫かな?
「そういう訳で、私たちは名付けとともに民たちにその姿を見せますので、
それなりに見れる様にしませんとね。
百合はとても美しい、可愛い子なので楽しみです!」
そう仰いながらご自分と僕の衣装を決めていく。
お義母様は僕と似た色合いをお持ちだから、
『私の若い頃の物もきっと似合います!』とか仰られて色々持ってきてくださる。
が、どう見ても女物な仕立ての着物がある…
そういった趣味でもお持ちなんだろうか?
少し…困惑してしまう。
「それからこれらの資料を見て、名付けの参考にしなさい。」
大変分厚い色の名前や植物や花の名前、歌を綴ったものなどの、
沢山の書物も渡された。
鬼は下位のものでもニ、三百年は生きる。
それだけ長い間使うものだから慎重にならなくてはいけない…
もの凄い精神的な圧力です!
妊夫には厳しいものがありますよ!お義母様!!
あいつは亜神の努めで【狩り】に出ている。
【域】に慣れる為にあいつのいない時でも、数刻から長くて半日くらいはそこに居る。
日にちや時間の感覚が狂ってしまうような静寂の中でそれらを読み込む。
「百合、帰った。」
「うん、おかえりなさい。」
こういったものを覚えたり、理解していくのは楽しい。
そうしていると近づき、懐かしそうに資料を見る、僕の番。
「懐かしいな。
俺も昔、幼い頃に母上にやらされた。
『このアホ!お前は呆れるくらいそういった才能に欠けます!』と怒られてやめたが。」
少し、塩っぱいものを食べたかの様な顔をしている。
「時々、百歳より少し若いものに、呆れるような名前があるのはお前が原因か!
あれは可哀想だろうが!
『肉』とか『人』とか『塵』は酷いぞ!!
付ける時に可哀想だとか思えよ!!!
他にもあったが、我慢できないものはΩの名前を名乗っていたぞ…」
ほんとうに時々ありえない名前で困惑させられる時がある。
成人済みのαなのにΩの名前は凄く可哀想だからな!
「この世界は俺の様に【赤】のものが圧倒的に多い。
お前の生家のものやお前の友人の様なあちらから来た【青】もなかなかいる。
俺やお前やお前の姉などの、より濃く強い魂を持つものはごく稀だが。
純度の高い魂のものはとても珍しいからな。」
言われると耳に痛いからって、サラッと流すなよ。
あまり参考にならないけれど経験者に聞いてみようか?
「僕の実家のものに多い【青】。
それから【赤】、【黄】、【緑】。
特別な役目を持つとされる、【黒】と【白】。
その枠にはまらない僕の様に混ざったもの。
うーん、なかなかに大変だよね。」
因みに四童子の子孫でもある、【青】、【赤】、【黄】、【緑】の家をまとめて
【四家】と呼ぶ。
それぞれに役割があるんだけれど、僕はこいつに嫁いで継がなかったからよく知らない。
人族などでは貴族とかにあたるような家でもある。
コレ、豆知識ね。
お、お腹の子が蹴っているな。
胎動も最近は感じるようになった。
そういえばこの子はどんな【色】をしているのかな?
「なぁ、朱天。この子はどんな色だろうな?
お義母様やお義父様はお前と同じように【赤】なんだろう?
この子もそうなのかな?
僕に似たら【青】や【紫】になるのかな?
楽しみだよ。」
「きっと強い魂を持つ子が生まれる。」
「そうだな。」
神子などと同じ【白】や壊すもの【黒】とかは可哀想だけれど、きっと強い子だ。
本当に楽しみだよ。
◇◇◇
《オンギャー!!ホギャー!!!》
「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」
物凄く元気すぎる子が生まれたな…
あの子の時もそうだった。
片割れはそれ程でもなかったんだが、あの子は元気すぎたなぁ。
綱にもよく懐いていたよなぁ。
あの子達を思い出すと胸が締め付けられるが…
「お母さん、名前は決めていますか?」
産まれてきた子を視る。
…………………この子は、まさか?!
「…、…ぃ、…ラン。」
「ラン、ですか?」
「ラン…ディ、にします。」
まさか、こんなところで会うことになるなんて…
涙がどんどん溢れて止まらない。
「あらあらお母さんは感動して泣いちゃいましたね。
ランディくんは預かりますね。
あとの処置などもありますから。」
◇◇◇
「しかし、ファイゲンバウム、
貴方のところもうちの子と同じ日、同じ時間に生まれるなんて珍しいな。
名はもう決まったかい?
うちの子はランディだ。
とても元気すぎる子で大変だよ。」
「あぁ、母が一目見て決めたよ。
『久しぶりですね、…、こ…ん。』とか不思議なことを言っていたけれどな。」
「しかし…どうにもどこか不思議な雰囲気を持っていて、妻が不気味がっていてなぁ…」
「そんなことを言っては可哀想だろう。」
「それはそうなんだが、私も少しな…」
「何を言っているんだ。上の子と同じようにしないと本当に可哀想だからな。」
「母はよく可愛がっているんだがなぁ…」
私とランディが彼と出会う運命の日まで数年の歳月を要する。
───────────
お義母様の名前は赫夜です。
肉色も人色も存在します。
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