僕の番が怖すぎる。〜旦那様は神様です!〜

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一章 降って湧いた災難

朱と梔子と緋 四

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 ◆◆◆


 皇宮への帰路についた私の前に、旧友が声をかけてきた。

「ほんっとに酷い男だなぁ…アイツは」

 目の前の友に合うのは何年ぶりだろうか?
 五年ぶりくらいだったか?

「──。久しぶりですね。見られてしまいましたね…」
「君の様な善い女を振るなんて、アホとしか言いようがないね。
それから、その名はアイツが消したから、使えないんだ。
今はアケ。ヨロシク!」

 軽く、手を上げてこちらに挨拶をする、美しい紅い髪と金の瞳の豪奢な美女。

 この友人は、なんというか掴みどころがなく、常に先をているかのような言動をする。

「う~ん、うちの可愛いリリィの為に帰ってきたけれど、友人の為にも一肌脱いじゃおう!」

 顎に手あて何か考え込み、手のひらをポンッと打って、そんなことを言った。

「緋、一体何のことかしら?」
「うん。梔子、君の『運命』は運命じゃないけれど、善いオスだよ!」
「良くわからないのだけれど?」
「君はアイツがメスだったときの婿候補だったけれど、それはない」

 私はあの方にメスとして愛されたかったから、そちらは望まない。
 なかなか消化しきれない気持ちも残っている。

 何しろ百年近く燻ぶらせてきた想いだ。

「先程のあれはそういうことですか?」
「違うね!」

 私に色々と話してくれる友の話はまだ続く。

「何を考えてか、アイツは君の『運命』の繋がりも完全に消したみたいなんだ。
全く、ホントに色々と勝手するやつで困るよね?」

 感情も一緒に消してくれれば良いのに、そういった器用なことは出来ないのだろう。
 もしくは、主はひとの心の機微にとても疎いから、わからないだけだろう。

「そんな友人に私はプレゼント…あー、贈り物をあげよう!」
「はい?」

 この様に友は突然不思議なことを言い出したり、変わった行動をすることが度々ある。

「本当はね~新しい出会いとか?そういったものにしたいところなんだ。
でも君は気持ちの切り替えができていない!」
「は、はぁ…」
「なのでそのお手伝いだ」

 そう、言うな否や彼女は私の額に何かを描き、口づけを落とした。

「え?えぇ?!エッ!!」

 突然のことに驚く私を意に介さず、友人は話す。

「【エイワズ】を贈った。腐れ縁とバイバイ…かな?
色々と転換の時期に来ているんだよ。
すぐに忘れるのは無理でも、それが君の助けになれば…ね?
気休めと思ってくれたらいいよ」

「…ありがとう」

 決して押し付けてはないと言うことを念押しする友人。
 その気持ちがありがたい。

 腕を組み嫣然と微笑んでいた友人は、その美しい顔を少し曇らせる。

「んー、ごめんね。これは私のせいかもしれないんだ。
うちの弟が恋敵で本当に申し訳ないね。
でも、君も今度は自分で『運命』を掴むんだよ。
弟と朱にも『自分で掴め』って贈り物をした」
「百合様にもですか?」
「うん、母との約束でね。今回帰ってきたのもあの子の為。
なので暫くはよろしくね!」

 そう言うと私に向かって片目だけ器用に瞑ってみせた。

 昔のように二人で話しながら帰るのも悪くない。
 帰途を歩きはじめると彼女は話しだした。

「恋も愛もヒトを変えるし狂わせる。私だって鬼を捨てた。
アイツもちょっと賛成できないことをしているよね?」

 嫌な予感がした。

「あ…知っているんですね?」
「私の伴侶が持つ、神器たる鏡でそれをた。だから来た」

 彼女の伴侶となった【アマテラス】様は過去や未来を見る鏡をお持ちだ。
『血を飲むもの』の一族に伝えられた三つの神器の一つ『八咫鏡やたのかがみ』だ。

 その力でこの先に起こることなどを知っているのだろう。

「まぁ…かなり怒っているよ。ふふふふふふふ」
 
 そう言って微笑むが目は笑っていない。

「しっかりと詳細を教えてもらうよ?」
「わかりました」
スメラギ様や后陛下はご存知なのかなぁ?ねぇ?梔子?」
「いえ…まだかと」
「アイツは嘘はつかないが意図的に話さないのも良くないな…
ヒルメに言って、【戦乙女ヴァルキュリヤ】の過激派でもよこしてもらうか…」

 このまま彼女に尋問されながら帰るのだろうか?
 頭の中を覗かれているような、心を暴くような、そんな力を彼女は持つ。
 今日は私にとってのとんでもない災難の日であるみたいだ。

 主の従者になったときから、私もあの方に振り回され続けている。
 それにその日々はまだまだ続くみたいだ。


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