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一章 降って湧いた災難
既成事実を作ろう! 弐
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──その日は妙に熱っぽく、体がだるかったのは覚えている。
「百合、今日は皇宮に行き皇様にもお会いする。
身なりをしっかりと整え、絶対にいつもの様な態度をしてはならんぞ」
このところ頓にうるさくなった父が言う。
跡継ぎだと言い、上に立つ者の教育を施しながらも『淑やかに、控えめに、美しくあれ』と無茶をなことを言う。
(それでどうやって上に立つんだよ!)
そんな父や家の者に、この頃の僕は反抗していた。
そうはいっても、我が一族の最高権力者の方にお会いするのは、僕ら【青】の家の者、それも当主や跡取りでも稀だ。
何の用件でお会いするのかは父も教えてくれず、わからない。
だが、ここは大人しく淑やかに振る舞うことにする。
皇様の不興を買えば始末され、魂まで【消去】されたり、喰われるらしい。
皇様は大変恐ろしい方。
今回、お会いすることになる末の皇子殿下も、とんでもなく恐ろしく怖い方だと聞いている。
僕の家である【青】は、【四家】の一つなのに問題を起こしすぎて、宗家の者も含め、一族は幾度も粛清されていた。
皇様からもかなり血が遠くなっており、父以外のおぼえもよろしくない。
……実のところ没落寸前だ。
だからより慎重になっているんだろう。
「承知しました、父様。
ご存知かと思いますが、僕は外ではそんな真似など致しません」
「…全く、なぜこうも生意気に育ったのか?
あの方によく似て、稀なる美貌と力を持つ『【青】の美姫』とまで呼ばれ、その為今回もお声が掛かったが…頭が痛い」
父は僕とは似ても似つかない、少しばかりメスっぽい秀麗な顔を顰める。
頭からは立派な二本の青い角が出ている父は、αらしさやΩらしさに妙に拘り、僕にそれを強要する。
頭の硬い鬼のαにありがちな、『Ωはか弱く美しいものが当たり前』そういった価値観の父や、家の者たちは僕に厳しい。
亡くなった母に良く似た美貌や才を褒められるが、それ故に煩い。
鬼の上位の四つの家の一つである、【智】を司る【青】の家。
その宗家であるうちは、父が大臣ということもあり、皆が忙しくしている。
絶世の美貌で知られた母は僕を産んですぐに亡くなった。
母の元従者たちと九十歳ほど歳の離れた姉が僕を育ててくれていたが、姉は数年前に家を飛び出していた。
耳長族の長と結婚すると宣言して反対されたからだ。
姉を皇族に嫁がせたい者たちがおり、当時は大変な騒ぎになったことを覚えている。
それからは母の元従者の耳長たちに、偶に母の出身の耳長族の国より、わざわざ来てくれる乳母くらいしか、僕の面倒を見ていない。
(【青】から付けられる教育係もいるけど、選民思想の塊でクソみたいなやつなんだ)
偶に会う父に甘えたいあまりにこういった態度を取るが、それも理解してくれない。
「帰ったら僕の好きな【黄】渡りのお菓子を買って来てくれる約束。忘れないでくださいね?」
ガリガリの父は忙しいのか更に痩せ窶れており心配だが、なんとなく目的をぼやかされていたのが嫌で、生意気にこんな事を言ってしまった。
「…事がうまく運べばな」
僕に目茶苦茶甘い父はこんな事を言っても怒らず、僕の機嫌はより悪くなった。
そんな遣り取りがあり、父と共に皇宮に参内した。
妙に粧し込まされて父に付き添い、皇様に目通りするために本殿まで来ていた。
鬼の守護者たる、亜神様が御座す場所に来るのは初めてだった。
僕は家から滅多に出してもらえず、少しばかりはしゃいでいた。
拝殿にて順番を待つが、まだまだ時間がかかりそうなので、許可を取り本殿の周りを少し散歩することにした。
『この皇宮では、后陛下のお花の菊が中庭で常に咲いています。
他にも美しい花や、鯉なども泳いでいる池などがおすすめですよ』
そんなふうに勧められたので行ってみた。
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・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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