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091 招待
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表の王都の家と森の家のメイド長はエレン、森の家はシンディ,ノーラン,ソフィアの三人の分担だ。
最初の命令は、お嬢様扱いされて酷い目に遭ったのでお嬢様呼びの禁止。
エレンにもそれを伝えると共に、基本的に三人以外が森の家に関わらない様にさせる。
先程の馬丁の男に注意して、俺達の周辺に興味を示さない様に仕事に専念させろと言い置く。
・・・・・・
王都に帰ってから一週間が過ぎ、使用人達も馴れてきたのでランカン達には五日間の自由行動を告げる。
俺は森の家でのんびりしながら、新たに造った柵に蔓性の植物を匍わせる為の準備をする。
並べられた石柱の柵は、一本が約10センチ角の荒い素材で植物が絡みやすくなっている。
その柱を3センチ程の隙間を空けて並べているので、植物が絡めば綺麗になるだろう。
尤も、柵の石柱を造って立てたのは“だいち”で、俺はお願いをしただけ。
地下道も岩盤を掘り抜いた様な見掛けで、人工物・・・精霊の制作とは思うまい。
柵に匍わせる植物はガルムとバンズにお願いして、薬草と花の咲く植物を混生する様に精霊達に協力して貰うつもりだ。
秋の盛りなので準備だけはしておかなければ、来年の花の見頃を逃す事になる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
住み始めて一月少々、呼びもしない客がやって来る。
街の家を預けているラムゼンから、サランドル王国の派遣大使ラングス・ニールセン伯爵より面会の申し込みが有ったと連絡が来た。
その際、サランドル王国国王陛下名代として、聖女様にご挨拶を申し上げたいと言ったとか。
まったく此の世界はプライバシーなんて言葉が無いのか! 他人の事に首を突っ込みすぎ。
俺を聖女と呼ぶのは、エメンタイル王国の女神教とアリューシュ神教国教団の者だけのはずで、一般には誰も知らないはずだ。
但し、一般にはってのが曲者で、張り巡らされた情報網から逃れるのは至難の業だ。
無視しても良いが、俺を聖女と呼び面会を求める以上は、治癒師に関する事だろうと思われる。
王都の家に来ても、ネイセン伯爵かレムリバード宰相以外は返答をする必要無しと言ってある。
使いの者なら書状箱に投函して返事を待つ事になる。
他国の派遣大使で有ろうとも、王都の家や森の家で会う気は無い。
意に沿わないが、治癒師の事が気になるので街の家へ行く事にした。
・・・・・・
ボルヘンに頼み、王都の家に行く前に女神教大神殿に寄って貰い、フェルナドとウェルバからサランドル王国の事を訊ねる。
一般的な事と断られてだが、サランドル王国は人族中心主義の国で人族の血が濃いほど優遇される。
エルフ族やドワーフ族は人族の範疇として扱われ、遠い祖先に獣の血を引くと思われている者は獣人族と呼ばれて貴族にはなれない。
治癒師の場合も、人族の者は優遇されて王侯貴族に召し抱えられるが、獣人族と看做される者は在野の治癒師ギルドか教会に所属するしかない。
極端な差別は無いが、厳然とした区別がある国だそうだ。
過去に極端な差別をして、体力で勝る獣人族の反乱を招き内乱一歩手前までなった経緯から、区別と言った曖昧な事になっている。
此れは他国からの派遣大使の中には、獣人族の者も含まれていて差別が原因で国家間の争議にもなった事もある。
他者を見下し、自分を優位に立たせるのは何処も同じって事か。
因みにその他の国の状況は
〔クリルローン王国〕王侯貴族の絶対親政国家、冒険者は屑扱い、
〔アリューシュ神教国〕創造神アリューシュ神を崇める教会統治の宗教国家
〔マラインド王国〕七つの国の中央に位置し、周辺国から追放された者や犯罪者が多数流れ込み、犯罪者の多い国家と言われている。
〔エメンタイル王国〕比較的穏健で公平と言われている。
〔ブルマズ王国〕野獣が多いので、冒険者や各地を守る兵の数も多くて気性が荒いとそうだ。
〔スリナガン大公国〕獣人族の力が強く、純粋な人族やエルフ,ドワーフ等の地位が低い。
エメンタイル王国、比較的穏健で公平と言われている・・・ねぇ。
日本人の感覚とは違うのは判るが、それでも疑問符が付くのは貴族社会だからだろう。
エンデとシエルにも会いサランドル王国から来た治癒師の事を訊ねると、生粋のサランドル王国の者で人族と看做される範疇の者に、その傾向があると教えてくれた。
故に、サランドル王国へ派遣されるのを嫌がる治癒師も多いと教えてくれた。
自分が差別の対象だと判れば、行きたくないのは人情だな。
気になる情報として、サランドル王国は人族の治癒師を受け入れ囲い込む一方、獣人族と看做す治癒師を国外に出して、人族の治癒師を集めていると噂になっていると教えてくれた。
主義主張は勝手にすればと思うが、サランドル王国に派遣された、治癒師の自由を奪っているのならば見過ごせない。
ラングス・ニールセン派遣大使とやらに会って、話を聞く事にした。
・・・・・・
多数の護衛を引き連れてやって来たニールセン派遣大使、開口一番「漸くお会い出来ましたねアキュラ様、それとも聖女様とお呼びした方が宜しいでしょうか」と抜かしやがった。
「色々とご存じの様ですが、ご用件は?」
「外交辞令は必要無さそうですね。単刀直入に申しますと、我が国より連れ出された治癒魔法師を、返して欲しいのです」
「それを私に要求するのは筋違いではありませんか。それよりも可笑しな事を言っていませんか? 人族の治癒師を取り込んで帰らせないと聞いているのですが、其の理由をお聞かせ下さい」
「我が国に招聘した治癒師達には、最高のもてなしと地位が与えられていますので、帰国を望まないだけですよ。それよりも、我がサランドル王国の国王陛下が、貴女様を我が国にご招待したいと申しておりますが」
「私はエルフと龍人族のハーフですよ、貴方達の価値観では招待するに値しない筈なのではありませんか」
「少し誤解があるようですね。我が国は優秀な者には相応の礼儀を持って報いる国です。御当地の王家は、貴女様の功績に報いる事が少なすぎるようです。我等がオリオス・サランドル国王陛下は、貴女様に伯爵位と豊かな領地を約束しようとの仰せです」
高々冒険者風情相手に宮廷用語を使われても困るけど、本当に単刀直入な引き抜きだな。
「伯爵位と領地ですか・・・その条件は何でしょうか?」
「我がサランドル王国に巣くう、女神教の支配を王家に」
「なるほど、御当家も女神教に手を焼いているようですね」
「貴女様が女神教を支配し、精霊の巫女として両国の治癒師から絶大な信頼を受けている事は承知しております。我が国を女神教の軛から解放していただけるのならば、当然の報酬です」
差別や圧政は、人を宗教に走らせるからな。
そして、支配者が尤も手を焼くのが宗教だ。
元の世界も、選挙で撰ばれた為政者や王家の者達は国民と同じ宗派に属するか教皇や神の子として振る舞い、民からの圧力を躱すのが常套手段だったな。
「精霊の巫女ですか・・・何処まで御存知ですか?」
「こう申しては何ですが、私共も何故多数の者に幻覚を見せる事が出来るのか、まったく不明です。しかし、アリューシュ神様を利用して、お伽噺の精霊を見せるとは思いも寄らぬ方法です」
「あれは結構準備が大変ですのでね♪」
そう易々と教える訳が無いだろうが、ばーか。
「アキュラ様は、我がサランドル王国にお出で願えると思って良いでしょうか」
「確認したい事が御座います。伯爵位と仰られましたがどの程度の位置づけですか?」
「我が国はサランドル王家を筆頭に、公爵家5家,侯爵家11家,伯爵家28家,子爵家43家,男爵家が116家御座います。新たに爵位を賜られますと、同位貴族の末席になるとご承知おき願いたい」
全部で219家か、徳川幕府が300諸侯とか何とか、だが実質は250前後だった筈。
子爵家では大小あれど街一つが精々の支配地だし、男爵が116人も居るが領地も持っていたとしても村か町程度だし、ヘマをすれば即潰される。
徳川幕府も大小名を数百潰したと言われているからな。
「つまり貴族位としては45番目ですか・・・」
上位貴族として45番目で、冒険者に領地の大小等判るまいと思われてそうだな。
ちょっと安く見過ぎじゃねえの。
「誤解無き様に言わせて貰えれば、サランドル王家はアキュラ様に侯爵家をと考えました。然し、我が国に馴染みの無いアキュラ様を、いきなり侯爵に任じては臣下の反発を招きかねません。アキュラ様が女神教を王家のものとし、精霊の巫女として下々の信頼を得ればと・・・」
その頃には精霊の秘密を暴き、影武者を仕立てて俺は用済みになっている筈だろうな。
「お話しは判りましたがサランドル王国へ出向くにも、精霊の"幻覚"・・・準備もありますので暫くお待ち願えますか」
おっ、俺の"失言"にお目々キラリンでほくそ笑んでいるね。
「承知致しております。私が貴女様の元を訪れた事も、エメンタイル王家に伝わっているでしょう。無用な注意を引いて邪魔をされたくありません。本日は聖女様にご挨拶に伺った事にしておきますので・・・」
「承知しております。使用人達にもそう話しておきましょう」
首尾は上々と思い意気揚々と帰って行ったが、治癒師達に手を出したのだ覚悟していろよ。
・・・・・・
「アキュラ殿、サランドル王国の派遣大使の訪問を受けられたとか」
ラムゼンから連絡を受けているのだろう、早速やって来た侯爵様が心配気に尋ねてきた。
「ええ、表向き聖女に対する挨拶に訪れたと、その様に情報が入るでしょうが招待と言う名の引き抜きですね」
「引き抜き?」
「サランドル王国から、伯爵位と領地を与えるとの申し出を受けましたよ」
「お受けなされる、おつもりですか」
「爵位や領地に興味が無い事は御存知でしょう」
侯爵様、あからさまにほっとしているよ。
最初の命令は、お嬢様扱いされて酷い目に遭ったのでお嬢様呼びの禁止。
エレンにもそれを伝えると共に、基本的に三人以外が森の家に関わらない様にさせる。
先程の馬丁の男に注意して、俺達の周辺に興味を示さない様に仕事に専念させろと言い置く。
・・・・・・
王都に帰ってから一週間が過ぎ、使用人達も馴れてきたのでランカン達には五日間の自由行動を告げる。
俺は森の家でのんびりしながら、新たに造った柵に蔓性の植物を匍わせる為の準備をする。
並べられた石柱の柵は、一本が約10センチ角の荒い素材で植物が絡みやすくなっている。
その柱を3センチ程の隙間を空けて並べているので、植物が絡めば綺麗になるだろう。
尤も、柵の石柱を造って立てたのは“だいち”で、俺はお願いをしただけ。
地下道も岩盤を掘り抜いた様な見掛けで、人工物・・・精霊の制作とは思うまい。
柵に匍わせる植物はガルムとバンズにお願いして、薬草と花の咲く植物を混生する様に精霊達に協力して貰うつもりだ。
秋の盛りなので準備だけはしておかなければ、来年の花の見頃を逃す事になる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
住み始めて一月少々、呼びもしない客がやって来る。
街の家を預けているラムゼンから、サランドル王国の派遣大使ラングス・ニールセン伯爵より面会の申し込みが有ったと連絡が来た。
その際、サランドル王国国王陛下名代として、聖女様にご挨拶を申し上げたいと言ったとか。
まったく此の世界はプライバシーなんて言葉が無いのか! 他人の事に首を突っ込みすぎ。
俺を聖女と呼ぶのは、エメンタイル王国の女神教とアリューシュ神教国教団の者だけのはずで、一般には誰も知らないはずだ。
但し、一般にはってのが曲者で、張り巡らされた情報網から逃れるのは至難の業だ。
無視しても良いが、俺を聖女と呼び面会を求める以上は、治癒師に関する事だろうと思われる。
王都の家に来ても、ネイセン伯爵かレムリバード宰相以外は返答をする必要無しと言ってある。
使いの者なら書状箱に投函して返事を待つ事になる。
他国の派遣大使で有ろうとも、王都の家や森の家で会う気は無い。
意に沿わないが、治癒師の事が気になるので街の家へ行く事にした。
・・・・・・
ボルヘンに頼み、王都の家に行く前に女神教大神殿に寄って貰い、フェルナドとウェルバからサランドル王国の事を訊ねる。
一般的な事と断られてだが、サランドル王国は人族中心主義の国で人族の血が濃いほど優遇される。
エルフ族やドワーフ族は人族の範疇として扱われ、遠い祖先に獣の血を引くと思われている者は獣人族と呼ばれて貴族にはなれない。
治癒師の場合も、人族の者は優遇されて王侯貴族に召し抱えられるが、獣人族と看做される者は在野の治癒師ギルドか教会に所属するしかない。
極端な差別は無いが、厳然とした区別がある国だそうだ。
過去に極端な差別をして、体力で勝る獣人族の反乱を招き内乱一歩手前までなった経緯から、区別と言った曖昧な事になっている。
此れは他国からの派遣大使の中には、獣人族の者も含まれていて差別が原因で国家間の争議にもなった事もある。
他者を見下し、自分を優位に立たせるのは何処も同じって事か。
因みにその他の国の状況は
〔クリルローン王国〕王侯貴族の絶対親政国家、冒険者は屑扱い、
〔アリューシュ神教国〕創造神アリューシュ神を崇める教会統治の宗教国家
〔マラインド王国〕七つの国の中央に位置し、周辺国から追放された者や犯罪者が多数流れ込み、犯罪者の多い国家と言われている。
〔エメンタイル王国〕比較的穏健で公平と言われている。
〔ブルマズ王国〕野獣が多いので、冒険者や各地を守る兵の数も多くて気性が荒いとそうだ。
〔スリナガン大公国〕獣人族の力が強く、純粋な人族やエルフ,ドワーフ等の地位が低い。
エメンタイル王国、比較的穏健で公平と言われている・・・ねぇ。
日本人の感覚とは違うのは判るが、それでも疑問符が付くのは貴族社会だからだろう。
エンデとシエルにも会いサランドル王国から来た治癒師の事を訊ねると、生粋のサランドル王国の者で人族と看做される範疇の者に、その傾向があると教えてくれた。
故に、サランドル王国へ派遣されるのを嫌がる治癒師も多いと教えてくれた。
自分が差別の対象だと判れば、行きたくないのは人情だな。
気になる情報として、サランドル王国は人族の治癒師を受け入れ囲い込む一方、獣人族と看做す治癒師を国外に出して、人族の治癒師を集めていると噂になっていると教えてくれた。
主義主張は勝手にすればと思うが、サランドル王国に派遣された、治癒師の自由を奪っているのならば見過ごせない。
ラングス・ニールセン派遣大使とやらに会って、話を聞く事にした。
・・・・・・
多数の護衛を引き連れてやって来たニールセン派遣大使、開口一番「漸くお会い出来ましたねアキュラ様、それとも聖女様とお呼びした方が宜しいでしょうか」と抜かしやがった。
「色々とご存じの様ですが、ご用件は?」
「外交辞令は必要無さそうですね。単刀直入に申しますと、我が国より連れ出された治癒魔法師を、返して欲しいのです」
「それを私に要求するのは筋違いではありませんか。それよりも可笑しな事を言っていませんか? 人族の治癒師を取り込んで帰らせないと聞いているのですが、其の理由をお聞かせ下さい」
「我が国に招聘した治癒師達には、最高のもてなしと地位が与えられていますので、帰国を望まないだけですよ。それよりも、我がサランドル王国の国王陛下が、貴女様を我が国にご招待したいと申しておりますが」
「私はエルフと龍人族のハーフですよ、貴方達の価値観では招待するに値しない筈なのではありませんか」
「少し誤解があるようですね。我が国は優秀な者には相応の礼儀を持って報いる国です。御当地の王家は、貴女様の功績に報いる事が少なすぎるようです。我等がオリオス・サランドル国王陛下は、貴女様に伯爵位と豊かな領地を約束しようとの仰せです」
高々冒険者風情相手に宮廷用語を使われても困るけど、本当に単刀直入な引き抜きだな。
「伯爵位と領地ですか・・・その条件は何でしょうか?」
「我がサランドル王国に巣くう、女神教の支配を王家に」
「なるほど、御当家も女神教に手を焼いているようですね」
「貴女様が女神教を支配し、精霊の巫女として両国の治癒師から絶大な信頼を受けている事は承知しております。我が国を女神教の軛から解放していただけるのならば、当然の報酬です」
差別や圧政は、人を宗教に走らせるからな。
そして、支配者が尤も手を焼くのが宗教だ。
元の世界も、選挙で撰ばれた為政者や王家の者達は国民と同じ宗派に属するか教皇や神の子として振る舞い、民からの圧力を躱すのが常套手段だったな。
「精霊の巫女ですか・・・何処まで御存知ですか?」
「こう申しては何ですが、私共も何故多数の者に幻覚を見せる事が出来るのか、まったく不明です。しかし、アリューシュ神様を利用して、お伽噺の精霊を見せるとは思いも寄らぬ方法です」
「あれは結構準備が大変ですのでね♪」
そう易々と教える訳が無いだろうが、ばーか。
「アキュラ様は、我がサランドル王国にお出で願えると思って良いでしょうか」
「確認したい事が御座います。伯爵位と仰られましたがどの程度の位置づけですか?」
「我が国はサランドル王家を筆頭に、公爵家5家,侯爵家11家,伯爵家28家,子爵家43家,男爵家が116家御座います。新たに爵位を賜られますと、同位貴族の末席になるとご承知おき願いたい」
全部で219家か、徳川幕府が300諸侯とか何とか、だが実質は250前後だった筈。
子爵家では大小あれど街一つが精々の支配地だし、男爵が116人も居るが領地も持っていたとしても村か町程度だし、ヘマをすれば即潰される。
徳川幕府も大小名を数百潰したと言われているからな。
「つまり貴族位としては45番目ですか・・・」
上位貴族として45番目で、冒険者に領地の大小等判るまいと思われてそうだな。
ちょっと安く見過ぎじゃねえの。
「誤解無き様に言わせて貰えれば、サランドル王家はアキュラ様に侯爵家をと考えました。然し、我が国に馴染みの無いアキュラ様を、いきなり侯爵に任じては臣下の反発を招きかねません。アキュラ様が女神教を王家のものとし、精霊の巫女として下々の信頼を得ればと・・・」
その頃には精霊の秘密を暴き、影武者を仕立てて俺は用済みになっている筈だろうな。
「お話しは判りましたがサランドル王国へ出向くにも、精霊の"幻覚"・・・準備もありますので暫くお待ち願えますか」
おっ、俺の"失言"にお目々キラリンでほくそ笑んでいるね。
「承知致しております。私が貴女様の元を訪れた事も、エメンタイル王家に伝わっているでしょう。無用な注意を引いて邪魔をされたくありません。本日は聖女様にご挨拶に伺った事にしておきますので・・・」
「承知しております。使用人達にもそう話しておきましょう」
首尾は上々と思い意気揚々と帰って行ったが、治癒師達に手を出したのだ覚悟していろよ。
・・・・・・
「アキュラ殿、サランドル王国の派遣大使の訪問を受けられたとか」
ラムゼンから連絡を受けているのだろう、早速やって来た侯爵様が心配気に尋ねてきた。
「ええ、表向き聖女に対する挨拶に訪れたと、その様に情報が入るでしょうが招待と言う名の引き抜きですね」
「引き抜き?」
「サランドル王国から、伯爵位と領地を与えるとの申し出を受けましたよ」
「お受けなされる、おつもりですか」
「爵位や領地に興味が無い事は御存知でしょう」
侯爵様、あからさまにほっとしているよ。
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