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088 斬撃
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久し振りのヤラセンでは、懐かしい顔が次々と現れて宴会になる。
お土産用に狩ってきたゴールデンベアと、王都で買い入れた酒を振る舞いバルバスを酔い潰す手伝いをして貰う。
勿論報酬には、上等な酒をたっぷりと出しておいた。
エルフのお姉ちゃんに、顎の下をこちょこちょされてご満悦の熊チャンを置いて、俺達は精霊樹の元に向かう。
「アキュラにも驚いたが、お前さん達全てが精霊持ちとはな。懐かれたとは言え、此れほど精霊持ちが集まっているのは初めてだろう」
「見事な薬草畑だな」
「それもそうだが、此処の精霊って薬草畑から殆ど出てきてないな」
「王都に在る精霊樹の精霊達は、それ程広範囲に広がっているのかね」
「500メートル四方くらいの森一杯に広がって、飛んでいるよ。此処の精霊 達も、無断で境界を越える事を許さないのだろう」
「此処では精霊樹に敬意を払い無闇に踏み込まないので、滅多な事は起きないがね。然し、迷い人の伝承が少し変わる事になりそうだわい」
「その事を聞いておきたかったのだけど、街では精霊すらも子供のお伽噺、戯れ言だと思われていたよ。それ以上の事は誰も知らなかったし」
「それは我々長老達や、授かったり見える者の少数にのみ伝えられた、秘密の伝承だからじゃよ。迂闊に口にすれば、その者が正気とは思われなくなるのが落ちじゃ。だから話さないし後世に伝わらない、広まらないのは当然じゃよ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はぁ~・・・やーっと帰って来たぜ。この街がこんなに懐かしいなんてよ」
「だから言ったじゃない。一度森に入ると長くなるって」
「でもよう、1~2ヶ月って聞いていたのに、もう夏だぜ。三月以上になるなんて思わないだろう」
ぼやきの多いバルバスが、仲間にも見せてやりたいと頼むので一度家に寄り、翌朝全員で冒険者ギルドへ獲物の処分に行く。
総勢13人、六人は揃いの冒険者服に子供に見間違う俺と、熊さん達一行は非常に目立つ。
然も、最近冒険者ギルドにご無沙汰二組のパーティーなので、ジロジロと値踏みする視線が纏わり付く。
知らない顔が増えたと、ガルムが教えてくれた。
「おう親爺、奥へ行くぞ」
バルバスの一声で、混み合って居たギルドの中で解体場へ行く道が開ける。
お前は、モーゼかと心の中でツッコミを入れながら後に続く。
解体主任との遣り取りはバルバスにお任せ、ごっつい熊ちゃんみたいなおっさんに絡んで来る奴はいない。
俺が行くと、鼻で笑われて追い返されるので、バルバスと居ると便利。
解体主任の示す場所が狭すぎると文句を言い、広い場所を要求している。
「あーん、久し振りにきたと思ったら随分羽振りが良いじゃねえか」
「まぁ・・・俺が狩ったわけじゃねえけどな」
バルバスが小声で呟き、指定された場所をアリシアに示す。
ブラックウルフ・9頭
フォレストウルフ・19頭
グレイベア・2頭
ビッグエルク・5頭
ブラックタイガー・1頭
ホーンボア・4頭
〈ちょっと待て! いったいどれだけ出すんだ!〉
「えーと・・・ゴールデンベアが2頭と、名前は知らないけど牙の大きなタイガーが1頭に、バッファローが3頭かな。後は王都で処分するので、此れだけね」
アリシアが、並べて行く側から剣と牙の五人から溜め息と歓声が上がる。
〈ようようリーダー、薬草採取に行ったんじゃないのかよ〉
〈何だよ、この獲物の数って言うか種類は。風の翼ってシルバーランクのパーティーだろう〉
〈リーダーは何れを討伐したんだ〉
〈殆ど見た事ない奴ばかりだぜ〉
「ばーか、俺は見ているだけの約束で付いていったのを、忘れたのか」
「此れを、風の翼が全て狩ってきたのか?」
「まぁね。私達には守護神が居るので、西の森奥深くまで行けるからね」
騒ぎを聞きつけたのか、何時の間にか多数の冒険者が解体場に入って来て、獲物を見て彼此騒いでいる。
〈見ろよ、焦げているのは多分雷撃魔法だぜ〉
〈一撃で倒すなんて、凄腕の魔法使いだな〉
〈バッファローなんて、喉に大穴が開いているぞ〉
〈ストーンランスかアイスランスだな〉
〈マジックバッグ持ちとは羨ましい限りだぜ。討伐した奴を捨てずに済むからな〉
「大物を大量に持ち込んだパーティーはどいつだ?」
「ああ、ギルマス、風の翼ですよ」
「お前達、何時の間にこんなに腕を上げたんだ。ん・・・全て魔法で倒したのか」
バルバスの陰に隠れていたのに、ギルマスと目が合って問い詰められた。
「アキュラだったな、最近は王都に居るんじゃないのか」
「えーと、風の翼に色々と手伝って貰ってます」
「ポーション作りは止めてないよな」
「作っていますよ。春先にも侯爵様から分けて貰っているでしょう」
「なら、何で風の翼がこんなに獲物を持ち込むんだ?」
「ギルマス、アキュラの手伝いで、西の森奥深くへ薬草採取に行っていたんですよ。薬草採取の邪魔になる奴を間引いたら、こんな数になっちゃったんです」
「そうそう、何時もなら無視するんだけどねぇ」
「バルバスが怖がるものだから、やむなく討伐しちゃったわ」
「てめぇらあぁぁ、アキュラの結界に馴れているお前等と一緒にするな! こんな奴等が、目の前で俺を見ながら涎を垂らしているのを見て平気な、お前等が異常なんだよ!」
「あら、ゴールデンベアなんて、バルバスを見て涎を垂らしていたじゃない。私達には興味なさそうだったし」
「そうよねぇ、バルバスなら食べがいが有りそうだものね」
「今回はバルバスが付いてきたから、お土産もいると思って討伐したんです。なので、此れは全部バルバスと剣と牙の物ね」
〈・・・・・・エッ〉
〈・・・・・・〉
〈・・・ はっ?〉
〈・・・エッ、えぇー〉
「アキュラ・・・良いのかよ? 風の翼の獲物だぜ」
「バルバス、良いんだよ。未だ沢山有るし、俺達の雇い主はアキュラだ」
「そうだぜ、アキュラがそう言うのなら、それはバルバス達剣と牙のものさ」
「有り難う御座います。アキュラさん♪」
「やったぁ~、バルバスが抜けてしんどい思いをした甲斐があったぜ」
「いやー、侯爵様に雇われて臨時ボーナスまで貰えるとはねぇ」
「かーちゃんが喜ぶよ、有り難てえなぁ~」
「おい、未だ有るのなら全部出せ!」
「後は王都の冒険者ギルドで出すよ。侯爵様のお土産も有るしね」
「では冒険者カードを出せ」
「ん、俺はシルバーにされたからこれ以上はいらない」
「何でだ?」
「薬草採取しかしていないのに、ゴールドランクなんて恥ずかしいだろう」
「相変わらずお前はよく判らん奴だな。まあポーションさえ提供してくれるのなら何でもいいか。お前のポーションで冒険者達も助かっているからな。それと風の翼は全員一ランクアップだ、ギルドカードを出せ!」
「ギルマス、アキュラの方が強いのに、俺達がそれ以上のランクって不味いよ」
「阿呆、護衛が雇い主より低ランクじゃ話にならん」
ギルマスには逆らえず渋々カードを手渡したが、返されたカードはアリシアとメリンダがゴールドランクになっている。
「ちょっと~、ギルマス、ゴールドはやり過ぎじゃない」
「そうよ、ブロンズからゴールドなんて変よ」
「お前等二人が倒したキラードッグを見たが、十分ゴールドランクの資格が有ると俺が認めたんだ。この近辺で、お前等二人より優れた魔法使いは先ずいないからな」
「良いんじゃない。パーティー内にゴールドランクが居るって箔が付くよ」
「なあ、もう良いだろう。エールが俺を呼んでいるんだ、食堂に行こうぜ」
「あっきれた、あれだけ良いお酒をたっぷり飲んでおいてエールって」
「かあちゃん、あれとエールは別腹さ」
「エールで乾杯といきますか♪」
・・・・・・
無粋な奴は何処にでも居るが、人が楽しく飲んでいるのに声を掛けてくる。
それも極悪非道を擬人化した様な奴がリーダーだと名乗り、頼みもしていないのに売り込んでくる。
「アキュラとか言ったな、護衛なら俺達を雇えよ。お前の取り巻き連中よりも腕は確かだぜ」
「お断り! 極悪非道な顔だけで雇う気が失せるわ。失せろ!」
「詰まんないギャグ」
「切れの悪い冗談ね」
「何でだよ、魔法でゴールドになった奴なんて、近接戦闘はからっきしで護衛の役に立たねえぞ」
〈俺達〔斬撃〕は、プラチナランカーとゴールドランクが三人に、シルバーが二人だ。女を盾にしている奴等とは違うぜ〉
〈魔法使い以外はシルバーとブロンズじゃ、弱すぎて話にならんだろう〉
〈魔法使いの女二人を、斬撃に加えればほぼ無敵だぜ〉
〈雇い主も女だしな〉
〈夜が楽しみだ〉」
「気に入らないね、弱い奴等は食堂の片隅でゴブリン討伐の相談でもしていろ」
〈ゴブリンには飽き飽きしているんだよ。抱けもしねぇしなぁ〉
〈ご主人様、模擬戦で俺達の強さを試してからで良いから雇ってくれよ〉
〈おお、俺達は夜も強いぜぇ~〉
「お前等良い度胸だな。模擬戦でお前等の強さってのを教えてくれよ」
「俺も知りたいな、ゴブリンキング程度の腕で、プラチナランカーなんて吹いてる奴は初めて見たぜ」
「うん、どう見てもランカンやバルバスより一段落ちる腕のようだし。こんな奴等ハランドに居たっけ?」
「食い詰めて流れてきたんだろう。暫く顔を出してなかったからなぁ」
模擬戦だ模擬戦だと騒ぎ、ギルマスを呼びに行っている斬撃と名乗った連中。
ボルヘンが周囲の奴に斬撃の事を尋ねている、半年ほど前に現れて好き勝手をしていると聞き込んできた。
プラチナ,ゴールドランクが四人居て、パーティーとしても一流だと嘯いているらしいって。
「誰がプラチナランカーか知らないけど、四人とも似たような腕だよ」
「ん、アキュラも遣る気なのか?」
「接近戦は俺達より強いから気にするな。それより誰とやりたい、俺は声を掛けて来た奴な」
お土産用に狩ってきたゴールデンベアと、王都で買い入れた酒を振る舞いバルバスを酔い潰す手伝いをして貰う。
勿論報酬には、上等な酒をたっぷりと出しておいた。
エルフのお姉ちゃんに、顎の下をこちょこちょされてご満悦の熊チャンを置いて、俺達は精霊樹の元に向かう。
「アキュラにも驚いたが、お前さん達全てが精霊持ちとはな。懐かれたとは言え、此れほど精霊持ちが集まっているのは初めてだろう」
「見事な薬草畑だな」
「それもそうだが、此処の精霊って薬草畑から殆ど出てきてないな」
「王都に在る精霊樹の精霊達は、それ程広範囲に広がっているのかね」
「500メートル四方くらいの森一杯に広がって、飛んでいるよ。此処の精霊 達も、無断で境界を越える事を許さないのだろう」
「此処では精霊樹に敬意を払い無闇に踏み込まないので、滅多な事は起きないがね。然し、迷い人の伝承が少し変わる事になりそうだわい」
「その事を聞いておきたかったのだけど、街では精霊すらも子供のお伽噺、戯れ言だと思われていたよ。それ以上の事は誰も知らなかったし」
「それは我々長老達や、授かったり見える者の少数にのみ伝えられた、秘密の伝承だからじゃよ。迂闊に口にすれば、その者が正気とは思われなくなるのが落ちじゃ。だから話さないし後世に伝わらない、広まらないのは当然じゃよ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はぁ~・・・やーっと帰って来たぜ。この街がこんなに懐かしいなんてよ」
「だから言ったじゃない。一度森に入ると長くなるって」
「でもよう、1~2ヶ月って聞いていたのに、もう夏だぜ。三月以上になるなんて思わないだろう」
ぼやきの多いバルバスが、仲間にも見せてやりたいと頼むので一度家に寄り、翌朝全員で冒険者ギルドへ獲物の処分に行く。
総勢13人、六人は揃いの冒険者服に子供に見間違う俺と、熊さん達一行は非常に目立つ。
然も、最近冒険者ギルドにご無沙汰二組のパーティーなので、ジロジロと値踏みする視線が纏わり付く。
知らない顔が増えたと、ガルムが教えてくれた。
「おう親爺、奥へ行くぞ」
バルバスの一声で、混み合って居たギルドの中で解体場へ行く道が開ける。
お前は、モーゼかと心の中でツッコミを入れながら後に続く。
解体主任との遣り取りはバルバスにお任せ、ごっつい熊ちゃんみたいなおっさんに絡んで来る奴はいない。
俺が行くと、鼻で笑われて追い返されるので、バルバスと居ると便利。
解体主任の示す場所が狭すぎると文句を言い、広い場所を要求している。
「あーん、久し振りにきたと思ったら随分羽振りが良いじゃねえか」
「まぁ・・・俺が狩ったわけじゃねえけどな」
バルバスが小声で呟き、指定された場所をアリシアに示す。
ブラックウルフ・9頭
フォレストウルフ・19頭
グレイベア・2頭
ビッグエルク・5頭
ブラックタイガー・1頭
ホーンボア・4頭
〈ちょっと待て! いったいどれだけ出すんだ!〉
「えーと・・・ゴールデンベアが2頭と、名前は知らないけど牙の大きなタイガーが1頭に、バッファローが3頭かな。後は王都で処分するので、此れだけね」
アリシアが、並べて行く側から剣と牙の五人から溜め息と歓声が上がる。
〈ようようリーダー、薬草採取に行ったんじゃないのかよ〉
〈何だよ、この獲物の数って言うか種類は。風の翼ってシルバーランクのパーティーだろう〉
〈リーダーは何れを討伐したんだ〉
〈殆ど見た事ない奴ばかりだぜ〉
「ばーか、俺は見ているだけの約束で付いていったのを、忘れたのか」
「此れを、風の翼が全て狩ってきたのか?」
「まぁね。私達には守護神が居るので、西の森奥深くまで行けるからね」
騒ぎを聞きつけたのか、何時の間にか多数の冒険者が解体場に入って来て、獲物を見て彼此騒いでいる。
〈見ろよ、焦げているのは多分雷撃魔法だぜ〉
〈一撃で倒すなんて、凄腕の魔法使いだな〉
〈バッファローなんて、喉に大穴が開いているぞ〉
〈ストーンランスかアイスランスだな〉
〈マジックバッグ持ちとは羨ましい限りだぜ。討伐した奴を捨てずに済むからな〉
「大物を大量に持ち込んだパーティーはどいつだ?」
「ああ、ギルマス、風の翼ですよ」
「お前達、何時の間にこんなに腕を上げたんだ。ん・・・全て魔法で倒したのか」
バルバスの陰に隠れていたのに、ギルマスと目が合って問い詰められた。
「アキュラだったな、最近は王都に居るんじゃないのか」
「えーと、風の翼に色々と手伝って貰ってます」
「ポーション作りは止めてないよな」
「作っていますよ。春先にも侯爵様から分けて貰っているでしょう」
「なら、何で風の翼がこんなに獲物を持ち込むんだ?」
「ギルマス、アキュラの手伝いで、西の森奥深くへ薬草採取に行っていたんですよ。薬草採取の邪魔になる奴を間引いたら、こんな数になっちゃったんです」
「そうそう、何時もなら無視するんだけどねぇ」
「バルバスが怖がるものだから、やむなく討伐しちゃったわ」
「てめぇらあぁぁ、アキュラの結界に馴れているお前等と一緒にするな! こんな奴等が、目の前で俺を見ながら涎を垂らしているのを見て平気な、お前等が異常なんだよ!」
「あら、ゴールデンベアなんて、バルバスを見て涎を垂らしていたじゃない。私達には興味なさそうだったし」
「そうよねぇ、バルバスなら食べがいが有りそうだものね」
「今回はバルバスが付いてきたから、お土産もいると思って討伐したんです。なので、此れは全部バルバスと剣と牙の物ね」
〈・・・・・・エッ〉
〈・・・・・・〉
〈・・・ はっ?〉
〈・・・エッ、えぇー〉
「アキュラ・・・良いのかよ? 風の翼の獲物だぜ」
「バルバス、良いんだよ。未だ沢山有るし、俺達の雇い主はアキュラだ」
「そうだぜ、アキュラがそう言うのなら、それはバルバス達剣と牙のものさ」
「有り難う御座います。アキュラさん♪」
「やったぁ~、バルバスが抜けてしんどい思いをした甲斐があったぜ」
「いやー、侯爵様に雇われて臨時ボーナスまで貰えるとはねぇ」
「かーちゃんが喜ぶよ、有り難てえなぁ~」
「おい、未だ有るのなら全部出せ!」
「後は王都の冒険者ギルドで出すよ。侯爵様のお土産も有るしね」
「では冒険者カードを出せ」
「ん、俺はシルバーにされたからこれ以上はいらない」
「何でだ?」
「薬草採取しかしていないのに、ゴールドランクなんて恥ずかしいだろう」
「相変わらずお前はよく判らん奴だな。まあポーションさえ提供してくれるのなら何でもいいか。お前のポーションで冒険者達も助かっているからな。それと風の翼は全員一ランクアップだ、ギルドカードを出せ!」
「ギルマス、アキュラの方が強いのに、俺達がそれ以上のランクって不味いよ」
「阿呆、護衛が雇い主より低ランクじゃ話にならん」
ギルマスには逆らえず渋々カードを手渡したが、返されたカードはアリシアとメリンダがゴールドランクになっている。
「ちょっと~、ギルマス、ゴールドはやり過ぎじゃない」
「そうよ、ブロンズからゴールドなんて変よ」
「お前等二人が倒したキラードッグを見たが、十分ゴールドランクの資格が有ると俺が認めたんだ。この近辺で、お前等二人より優れた魔法使いは先ずいないからな」
「良いんじゃない。パーティー内にゴールドランクが居るって箔が付くよ」
「なあ、もう良いだろう。エールが俺を呼んでいるんだ、食堂に行こうぜ」
「あっきれた、あれだけ良いお酒をたっぷり飲んでおいてエールって」
「かあちゃん、あれとエールは別腹さ」
「エールで乾杯といきますか♪」
・・・・・・
無粋な奴は何処にでも居るが、人が楽しく飲んでいるのに声を掛けてくる。
それも極悪非道を擬人化した様な奴がリーダーだと名乗り、頼みもしていないのに売り込んでくる。
「アキュラとか言ったな、護衛なら俺達を雇えよ。お前の取り巻き連中よりも腕は確かだぜ」
「お断り! 極悪非道な顔だけで雇う気が失せるわ。失せろ!」
「詰まんないギャグ」
「切れの悪い冗談ね」
「何でだよ、魔法でゴールドになった奴なんて、近接戦闘はからっきしで護衛の役に立たねえぞ」
〈俺達〔斬撃〕は、プラチナランカーとゴールドランクが三人に、シルバーが二人だ。女を盾にしている奴等とは違うぜ〉
〈魔法使い以外はシルバーとブロンズじゃ、弱すぎて話にならんだろう〉
〈魔法使いの女二人を、斬撃に加えればほぼ無敵だぜ〉
〈雇い主も女だしな〉
〈夜が楽しみだ〉」
「気に入らないね、弱い奴等は食堂の片隅でゴブリン討伐の相談でもしていろ」
〈ゴブリンには飽き飽きしているんだよ。抱けもしねぇしなぁ〉
〈ご主人様、模擬戦で俺達の強さを試してからで良いから雇ってくれよ〉
〈おお、俺達は夜も強いぜぇ~〉
「お前等良い度胸だな。模擬戦でお前等の強さってのを教えてくれよ」
「俺も知りたいな、ゴブリンキング程度の腕で、プラチナランカーなんて吹いてる奴は初めて見たぜ」
「うん、どう見てもランカンやバルバスより一段落ちる腕のようだし。こんな奴等ハランドに居たっけ?」
「食い詰めて流れてきたんだろう。暫く顔を出してなかったからなぁ」
模擬戦だ模擬戦だと騒ぎ、ギルマスを呼びに行っている斬撃と名乗った連中。
ボルヘンが周囲の奴に斬撃の事を尋ねている、半年ほど前に現れて好き勝手をしていると聞き込んできた。
プラチナ,ゴールドランクが四人居て、パーティーとしても一流だと嘯いているらしいって。
「誰がプラチナランカーか知らないけど、四人とも似たような腕だよ」
「ん、アキュラも遣る気なのか?」
「接近戦は俺達より強いから気にするな。それより誰とやりたい、俺は声を掛けて来た奴な」
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