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086 腕試し
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王都の森の家も完成して半月、暖かくなり始めたので久方ぶりにハランドの街に跳び、侯爵様から借りている家に腰を下ろした。
「おう、漸く顔を出したか」
「久し振りバルバス、元気?」
「おめえ達が全然帰って来ないから暇でよぅ。侯爵様との契約で対人戦の訓練をする日々よ。討伐の腕が鈍りそうだが、仲間が楽で稼げる仕事から抜ける気が無くてよ」
「楽で安全できっちり金は貰える。その上三食暖かい飯を食って屋根の下ベッドの上で寝られるなんて、冒険者冥利に尽きるじゃねえか。」
「冒険者冥利に尽きるとは言わねえと思うけど、冒険者としては最高の生活だと思うよ」
「全然冒険者らしくないけどな」
「あんた達も元気そうで安心だよ」
「一人増えたのか?」
「おう、家の警備とはいえ、流石に五人じゃ交代で休むのも厳しいいしな。俺達も訓練で腕を上げたから、今度手合わせをやろうぜ」
「まっ、森から帰ってからだな」
「森に行くのか?」
「十日前後、近場で身体を慣らしてから行くってよ」
「4~5日周辺で身体を慣らしてから、森で小物の討伐で勘を取り戻すよ。奥に向かうのはそれからだな」
「やけに慎重だな」
「そりゃそうだよ、無闇に意気がって死にたくないからね」
アリシアやメリンダがクスクス笑っているし、男共は呆れ顔で肩を竦めている。
その夜はバルバス達〔剣と牙〕も交えて宴会になり楽しく過ごした。
部屋が綺麗なので聞いてみると、一週間に2度ほど侯爵様の使用人が掃除に来ているって、何かお礼のお土産でも持って帰らなくっちゃね。
翌朝出掛けようとするとバルバス達三人が付いてくると言って聞かない。
最近ウルフやドッグ系の野獣が増えているって噂だし、俺達も一応お前の護衛だからと、久し振りに草原で討伐したいとウズウズしているのが丸わかり。
街の出入り口でいきなり声を掛けられた。
「おいおい、お前達は此処じゃない! 列に並べ!」
慣れた場所だが、最近来てなかったから知らない衛兵だった。
ランカン達が慌てて身分証を見せて事なきを得る。
「王都に行きっぱなしで、勘が鈍っているってのは本当だな」
「いやー、身分証も見せずに貴族専用通路を通ろうって・・・」
「流石に、それは無いよなぁ~」
完全に揶揄われているが、肩を竦めておく。
先頭はガルム、次いでアリシア,メリンダと続きランカン,バンズ,ボルヘン。
その後ろをバルバス達三人が続き、俺は最後尾を歩く。
バルバスがこの並びじゃお前の護衛が出来ないと怒ったが、俺達と行動を共にするのなら従えと無視する。
ランカン達が、本来ならアキュラは一人でも何の問題も無いから気にするなと言って宥めているが、納得がいかないようである。
俺は説明が面倒なので、野獣と出会したら判るよと笑っておく。
ハランドの街を遠くに見ながら一回りしていると、バルバスがごねてフラグを立てたからなのか、ガルムが足を止める。
探索スキルの腕は衰えていないようで、アリシアも同じ方角を見ている。
「どうした?」
「居るわよ、待ち伏せされたようね」
「草叢に潜んでいるな。アキュラ他には?」
「大丈夫、近くに大物はいないよ」
「おいおい、本当かよ」
「バルバス、予定通りの陣形を組め!」
「おう、本当なら久し振りの討伐だぜ」
嬉しそうだけど、バルバスの出番があるかな。
メリンダとアリシアの間にランカンとバルバスが陣取り、左右にガルムとバンズが位置し背後をボルヘンが構える。
その両隣を剣の牙の二人が加わって円陣となり、中心に俺が立ち全周警戒と言う名の見物人となる。
「おい・・・何処に居るんだよ」
アリシアが黙って短槍を使い、遠くの草叢を指し示す。
「何処だよう、なーんにも見えねえけど」
「短槍の先、少し大きな草叢が有るでしょう」
「嘘だろう、200メートル以上有るぞ。よく見えるなぁ」
アリシアが肩を竦めて笑っている。
言えないよな索敵半径300メートル前後なんて、見ているんじゃ無く感じているんだと言っても信じてもらえないだろうし。
ガルムも苦笑いをしているが何も言わない。
俺達が円陣を組んで動かないので痺れを切らしたのか、草叢を掻き分けてのっそりと姿を現したが草の色に紛れて見えにくい。
「来るわよ、円陣は崩さないで護衛を宜しく」
「本当だ・・・キラードッグの群れだぜ」
100メートル近くになって初めてバルバスが視認し声を上げた。
嬉しそうにバルバスが剣を振るのを、ランカンが「魔法攻撃の邪魔になるので、撃ち漏らした奴が突っ込んで来るまでじっとしていろ」と叱っている。
バルバスの熊チャン、運が良ければ一頭くらい倒せるかな。
俺達のパーティーに加わったんだ、ランカンの指示には従えよ。
疾走してくるキラードッグが50メートル程の距離になった時〈バリバリドーン〉と落雷音が響き渡り、戦闘の幕が切って落とされた。
先頭を走っていたキラードッグは雷撃が直撃し、もんどり打って倒れた瞬間一つ隣のキラードッグにアイスランスが突き立っていた。
〈バリバリドーン〉〈バリッドーン〉〈バリッドーン〉と三連射した時に50メートルを疾走してきたキラードッグがアリシアを目掛けてジャンプ。
透かさずランカンが短槍を突き出し受け止める。
「バルバス、其奴を頼む」
「任せろ!」 〈フン!〉肩に担いだ大剣を袈裟斬りに振り下ろして一刀両断する。
〈バリッドーン〉・・・ 〈バリッドーン〉
襲い掛かって来る奴を無視して、少し離れた奴に雷撃を続けるアリシア。
〈ギャン〉って聞こえるのはメリンダのアイスランスを食らって悲鳴を上げるキラードッグ。
短縮詠唱で標的と自分の中間地点から落雷を落としているので、落雷音が短く連射も早くなっている。
メリンダの正面と左右に、六頭のキラードッグがアイスランスを受けて倒れたり藻掻いたりしている。
近接戦闘が出来る氷結魔法の方が乱戦では有利だね。
雷撃魔法は接近戦に向かないので、夫唱婦随で頑張れーと応援しておく。
「はい終わりー、残りは逃げ出したよー」
「もう終わりかよう。たった一振りしただけだぞ」
「俺は剣を構えて見ていただけ」
「凄ぇ魔法だな」
「幾ら魔法が使えるからって、連続攻撃とは恐れ入るな。二人とも何時のまにそんなに腕を上げたんだ」
「ふふん、アキュラがいれば防御はいらないから、その分必死で練習したわよ」
「雷撃で五頭、アイスランスで六頭かよ」
「バルバスとランカンに、バンズが一頭ずつ斬り捨て
終わりとはね」
「こんな楽な戦闘は初めてだぜ」
「あっと言う間に、キラードッグを14頭討伐なんて初めてだよ」
・・・・・・
早めに冒険者ギルドに戻り、解体場でキラードッグを並べる。
「お前達最近全然姿を見ないと思っていたが、ハランドに帰って来たのか」
「時々帰って来ているわよ。でも売る獲物が無いのよねぇ」
「獲物は沢山見るんだけど、討伐を面倒くさがるへそ曲がりがいるのよ」
「でもしっかり稼いでいるからな」
キラードッグ14頭を並べて食堂に向かう。
「時間も早いし森に行く前に手合わせをやろうぜ、対人訓練の成果を見せてやるよ。キラードッグ一頭じゃ、消化不良で今夜は寝れねえよ」
「じゃあ、リーダー同士の一騎打ちでどう。二人に結界魔法を掛けるから怪我の心配が無いので心置きなくやれるよ」
「あれか、不思議何だよなぁ。なーんにも判らないのに、痛くも痒くも無い何てよ」
「よしっ、一丁やってみるか。バルバスと遣り合った事は無いからな」
全員で訓練場に入り、二人が木剣を選ぶ。
ランカンは何時もの長剣タイプ、バルバスは長く重そうな大剣タイプを手にして素振りをする。
流石は熊ちゃん、重そうな木剣を軽々と振り回している。
数人の冒険者が訓練しているが隅の方なので、訓練場の中央を二人以外の者が円陣になる。
「二人とも腕を出して」
結界魔法を掛けて、差し出された腕を訓練用の木刀でぶん殴る。
〈ガン〉〈ガン〉そんなに力を入れていないが、龍人族の血が為せるのか二人がよろめく。
「はあー ・・・ やっぱり不思議だわ」
「止めって言ったら止めなよ。でないと、ギュウギュウに締め上げて泣かせちゃうよ」
ランカンとバルバスが左右に分かれて向かい合う。
振り下ろした腕を合図に、お互いが隙を伺いつつにじり寄っていく。
「あんた、負けるんじゃ無いよ」
「そうそう、風の翼は魔法使いだけじゃ無い所を見せろよ」
「兄貴! 此処は剣と牙の腕の見せ所ですぜ」
「あ~・・・賭けときゃ良かった」
「賭けてもつまらんぞ、どっちみち自分達のリーダーに賭けるんだから」
剣先が触れ合う寸前でバルバスが踏み込み、大上段から振り下ろす。
それを木剣を斜めにして受け流すランカン、次の瞬間体当たり気味に木剣の柄で胸に一撃を入れる。
後ろに跳ばされたバルバスを、横殴りの追い打ちが襲うが辛うじて受け止める。
一瞬の攻防の後、再び睨み合うが二人の顔が紅潮して真っ赤になっている。
今度はランカンが突きを入れ、バルバスが身体を捻って躱すと透かさず切り返す。
後は十数合打ち合って互いに距離を取るが、二人とも肩で息をして追撃が出来ない。
お互いが全力の攻防をしたので、息が上がっている。
「はい、止めー。これ以上続けても似たような腕だから。決着が付くまでに時間が掛かりそうだよ。早く食堂に行かないと混み合っちゃうよ」
「俺達の勝負より、エールかよ」
「息が上がってるよ。全力の打ち合いを十数合すれば無理も無いけどね」
二人のバリアを解除して食堂に向かい、エールで一日の疲れを癒やす。
久し振りに一日草原を歩き思っていたより疲れているので、やはり身体が馴れてから森に入るのが正解だ。
「おう、漸く顔を出したか」
「久し振りバルバス、元気?」
「おめえ達が全然帰って来ないから暇でよぅ。侯爵様との契約で対人戦の訓練をする日々よ。討伐の腕が鈍りそうだが、仲間が楽で稼げる仕事から抜ける気が無くてよ」
「楽で安全できっちり金は貰える。その上三食暖かい飯を食って屋根の下ベッドの上で寝られるなんて、冒険者冥利に尽きるじゃねえか。」
「冒険者冥利に尽きるとは言わねえと思うけど、冒険者としては最高の生活だと思うよ」
「全然冒険者らしくないけどな」
「あんた達も元気そうで安心だよ」
「一人増えたのか?」
「おう、家の警備とはいえ、流石に五人じゃ交代で休むのも厳しいいしな。俺達も訓練で腕を上げたから、今度手合わせをやろうぜ」
「まっ、森から帰ってからだな」
「森に行くのか?」
「十日前後、近場で身体を慣らしてから行くってよ」
「4~5日周辺で身体を慣らしてから、森で小物の討伐で勘を取り戻すよ。奥に向かうのはそれからだな」
「やけに慎重だな」
「そりゃそうだよ、無闇に意気がって死にたくないからね」
アリシアやメリンダがクスクス笑っているし、男共は呆れ顔で肩を竦めている。
その夜はバルバス達〔剣と牙〕も交えて宴会になり楽しく過ごした。
部屋が綺麗なので聞いてみると、一週間に2度ほど侯爵様の使用人が掃除に来ているって、何かお礼のお土産でも持って帰らなくっちゃね。
翌朝出掛けようとするとバルバス達三人が付いてくると言って聞かない。
最近ウルフやドッグ系の野獣が増えているって噂だし、俺達も一応お前の護衛だからと、久し振りに草原で討伐したいとウズウズしているのが丸わかり。
街の出入り口でいきなり声を掛けられた。
「おいおい、お前達は此処じゃない! 列に並べ!」
慣れた場所だが、最近来てなかったから知らない衛兵だった。
ランカン達が慌てて身分証を見せて事なきを得る。
「王都に行きっぱなしで、勘が鈍っているってのは本当だな」
「いやー、身分証も見せずに貴族専用通路を通ろうって・・・」
「流石に、それは無いよなぁ~」
完全に揶揄われているが、肩を竦めておく。
先頭はガルム、次いでアリシア,メリンダと続きランカン,バンズ,ボルヘン。
その後ろをバルバス達三人が続き、俺は最後尾を歩く。
バルバスがこの並びじゃお前の護衛が出来ないと怒ったが、俺達と行動を共にするのなら従えと無視する。
ランカン達が、本来ならアキュラは一人でも何の問題も無いから気にするなと言って宥めているが、納得がいかないようである。
俺は説明が面倒なので、野獣と出会したら判るよと笑っておく。
ハランドの街を遠くに見ながら一回りしていると、バルバスがごねてフラグを立てたからなのか、ガルムが足を止める。
探索スキルの腕は衰えていないようで、アリシアも同じ方角を見ている。
「どうした?」
「居るわよ、待ち伏せされたようね」
「草叢に潜んでいるな。アキュラ他には?」
「大丈夫、近くに大物はいないよ」
「おいおい、本当かよ」
「バルバス、予定通りの陣形を組め!」
「おう、本当なら久し振りの討伐だぜ」
嬉しそうだけど、バルバスの出番があるかな。
メリンダとアリシアの間にランカンとバルバスが陣取り、左右にガルムとバンズが位置し背後をボルヘンが構える。
その両隣を剣の牙の二人が加わって円陣となり、中心に俺が立ち全周警戒と言う名の見物人となる。
「おい・・・何処に居るんだよ」
アリシアが黙って短槍を使い、遠くの草叢を指し示す。
「何処だよう、なーんにも見えねえけど」
「短槍の先、少し大きな草叢が有るでしょう」
「嘘だろう、200メートル以上有るぞ。よく見えるなぁ」
アリシアが肩を竦めて笑っている。
言えないよな索敵半径300メートル前後なんて、見ているんじゃ無く感じているんだと言っても信じてもらえないだろうし。
ガルムも苦笑いをしているが何も言わない。
俺達が円陣を組んで動かないので痺れを切らしたのか、草叢を掻き分けてのっそりと姿を現したが草の色に紛れて見えにくい。
「来るわよ、円陣は崩さないで護衛を宜しく」
「本当だ・・・キラードッグの群れだぜ」
100メートル近くになって初めてバルバスが視認し声を上げた。
嬉しそうにバルバスが剣を振るのを、ランカンが「魔法攻撃の邪魔になるので、撃ち漏らした奴が突っ込んで来るまでじっとしていろ」と叱っている。
バルバスの熊チャン、運が良ければ一頭くらい倒せるかな。
俺達のパーティーに加わったんだ、ランカンの指示には従えよ。
疾走してくるキラードッグが50メートル程の距離になった時〈バリバリドーン〉と落雷音が響き渡り、戦闘の幕が切って落とされた。
先頭を走っていたキラードッグは雷撃が直撃し、もんどり打って倒れた瞬間一つ隣のキラードッグにアイスランスが突き立っていた。
〈バリバリドーン〉〈バリッドーン〉〈バリッドーン〉と三連射した時に50メートルを疾走してきたキラードッグがアリシアを目掛けてジャンプ。
透かさずランカンが短槍を突き出し受け止める。
「バルバス、其奴を頼む」
「任せろ!」 〈フン!〉肩に担いだ大剣を袈裟斬りに振り下ろして一刀両断する。
〈バリッドーン〉・・・ 〈バリッドーン〉
襲い掛かって来る奴を無視して、少し離れた奴に雷撃を続けるアリシア。
〈ギャン〉って聞こえるのはメリンダのアイスランスを食らって悲鳴を上げるキラードッグ。
短縮詠唱で標的と自分の中間地点から落雷を落としているので、落雷音が短く連射も早くなっている。
メリンダの正面と左右に、六頭のキラードッグがアイスランスを受けて倒れたり藻掻いたりしている。
近接戦闘が出来る氷結魔法の方が乱戦では有利だね。
雷撃魔法は接近戦に向かないので、夫唱婦随で頑張れーと応援しておく。
「はい終わりー、残りは逃げ出したよー」
「もう終わりかよう。たった一振りしただけだぞ」
「俺は剣を構えて見ていただけ」
「凄ぇ魔法だな」
「幾ら魔法が使えるからって、連続攻撃とは恐れ入るな。二人とも何時のまにそんなに腕を上げたんだ」
「ふふん、アキュラがいれば防御はいらないから、その分必死で練習したわよ」
「雷撃で五頭、アイスランスで六頭かよ」
「バルバスとランカンに、バンズが一頭ずつ斬り捨て
終わりとはね」
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「あっと言う間に、キラードッグを14頭討伐なんて初めてだよ」
・・・・・・
早めに冒険者ギルドに戻り、解体場でキラードッグを並べる。
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「時々帰って来ているわよ。でも売る獲物が無いのよねぇ」
「獲物は沢山見るんだけど、討伐を面倒くさがるへそ曲がりがいるのよ」
「でもしっかり稼いでいるからな」
キラードッグ14頭を並べて食堂に向かう。
「時間も早いし森に行く前に手合わせをやろうぜ、対人訓練の成果を見せてやるよ。キラードッグ一頭じゃ、消化不良で今夜は寝れねえよ」
「じゃあ、リーダー同士の一騎打ちでどう。二人に結界魔法を掛けるから怪我の心配が無いので心置きなくやれるよ」
「あれか、不思議何だよなぁ。なーんにも判らないのに、痛くも痒くも無い何てよ」
「よしっ、一丁やってみるか。バルバスと遣り合った事は無いからな」
全員で訓練場に入り、二人が木剣を選ぶ。
ランカンは何時もの長剣タイプ、バルバスは長く重そうな大剣タイプを手にして素振りをする。
流石は熊ちゃん、重そうな木剣を軽々と振り回している。
数人の冒険者が訓練しているが隅の方なので、訓練場の中央を二人以外の者が円陣になる。
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〈ガン〉〈ガン〉そんなに力を入れていないが、龍人族の血が為せるのか二人がよろめく。
「はあー ・・・ やっぱり不思議だわ」
「止めって言ったら止めなよ。でないと、ギュウギュウに締め上げて泣かせちゃうよ」
ランカンとバルバスが左右に分かれて向かい合う。
振り下ろした腕を合図に、お互いが隙を伺いつつにじり寄っていく。
「あんた、負けるんじゃ無いよ」
「そうそう、風の翼は魔法使いだけじゃ無い所を見せろよ」
「兄貴! 此処は剣と牙の腕の見せ所ですぜ」
「あ~・・・賭けときゃ良かった」
「賭けてもつまらんぞ、どっちみち自分達のリーダーに賭けるんだから」
剣先が触れ合う寸前でバルバスが踏み込み、大上段から振り下ろす。
それを木剣を斜めにして受け流すランカン、次の瞬間体当たり気味に木剣の柄で胸に一撃を入れる。
後ろに跳ばされたバルバスを、横殴りの追い打ちが襲うが辛うじて受け止める。
一瞬の攻防の後、再び睨み合うが二人の顔が紅潮して真っ赤になっている。
今度はランカンが突きを入れ、バルバスが身体を捻って躱すと透かさず切り返す。
後は十数合打ち合って互いに距離を取るが、二人とも肩で息をして追撃が出来ない。
お互いが全力の攻防をしたので、息が上がっている。
「はい、止めー。これ以上続けても似たような腕だから。決着が付くまでに時間が掛かりそうだよ。早く食堂に行かないと混み合っちゃうよ」
「俺達の勝負より、エールかよ」
「息が上がってるよ。全力の打ち合いを十数合すれば無理も無いけどね」
二人のバリアを解除して食堂に向かい、エールで一日の疲れを癒やす。
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