73 / 100
073 敗者同盟
しおりを挟む
「俺の指示に3日間従えば金貨一枚をやろう。お仕事は簡単で、拘束した此奴等をロープで縛り見張っているだけだ」
「このままじゃいけねえのかよ?」
「良い質問だけど、此れを他の貴族が見たらどうなると思う。王城から警備兵を呼んで引き渡す迄の間、他人の目に触れないようにする必要が有るんだよ」
〈俺は断るぞ、お前が貴族と揉めるのは勝手だが俺達を巻き込むな!〉
〈そうだな、金蔓の貴族を捕らえられ、お前の手伝いをしたとなったら後が怖いや〉
〈依頼は野獣討伐だからお貴族様の護衛は対象外、依頼失敗にはならないし〉
〈貴族を敵に回すより、ずらかった方が安全だわ〉
〈お前の言う事には従えねえよ〉
残念だが仕方がない、冒険者達を一纏めにしてバリアで包み1人ずつ拘束していく。
ランカン達にお願いして、冒険者達全員をロープで括り数珠繋ぎにする。
騎士達も同様にし、街道から外れた場所に不透明な大型のバリアを作って全員監禁する。
馬車や馬も別口のバリアで囲み、外部から見えなくしたが、一仕事が終わった時には陽も大分傾いていた。
閉じ込めたドームの中では冒険者達が騒ぐ騒ぐ、音声遮断をしているから外部に聞こえないけど煩い。
面倒なので一番煩い奴から順に、球体のバリアで包み少し窮屈な程度に絞り込んでやる。
勿論音声遮断のサービス付きだ。
半数ほど包み込んだらやっと静かになった、この状態から侯爵がどうなったのか漸く気付いた様だ。
騎士達は腕と足をギリギリに絞って拘束しているので騒ぐ元気も無く呻いているだけ。
冒険者30名と護衛の騎士30名に従者と御者の32名に、球体の中で小さくなって呻いているマルド・ワラント侯爵様。
侯爵家は兵25名と冒険者25名以上を招集出来ると聞いていたが、規定数より多いとは遣る気十分だな。
騎士達と冒険者達を詰め込んだバリアの中心に、ワラント侯爵の球体を蹴り飛ばして中央に据える。
普通に座れる程度に球体を大きくして尋問開始だ。
「ワラント侯爵様、先程面白い事を口走っていましたね『俺を殺したら、必ず我等貴族同盟が己やネイセン伯爵達に鉄槌を下す・・・』なーんてね」
「知らん! それより此処から出せ! 貴族たる我に不敬の数々許さんぞ!」
「言っておくけど、貴族のお前より俺の方が強いってのが判って無い様だな。
身分でも力でもな♪」
そう言って侯爵の眼前に、王家の紋章入り身分証を突きつけててやる。
「この紋章の意味が判るか? 念のために教えてやるけど、これって王国査察官を示す物で、お前は俺の疑問に答える義務が有るんだよ。貴族同盟の想像はつくが、お前の口から詳しく聞きたくてね」
眼前の身分証を穴の空くほど睨み付け、冷や汗をだらだら流しているワラント侯爵。
どうせ逆恨み同盟だろうけど、又一人ひとり片付けるのは面倒なので丸投げの準備は必要だ。
冷や汗だらだらのワラント侯爵、親爺のワラント公爵共々屑のようだからじっくり焼いてやるかな。
ワラントの鼻先にフレイムを浮かべた時に、ピコーン! と閃いた。
アリシアを見てにっこり笑い、手招きをする。
「あんた・・・またまた良からぬ事を考えているでしょう」
「間違いないわよ。何時もの悪い顔になっているもの」
「大丈夫じゃねっ、相手は其処の侯爵様の様だから俺達には影響はないぜ」
「そそ、アキュラが侯爵様を見る目付きは、猫が鼠を甚振るときの目付きだぞ」
えらいい言われ様だ、俺ってそんなに悪人顔かねぇ~。
「アリシアに新しい魔法を伝授、てか練習で出来なかった方法を教えてあげようかなぁ~っと思ったんだけどな」
「言ってみなさいよ、何をすれば良いの」
「小さな雷を出したいのなら、フレイムの時の事を思い出しなよ」
「そうか、フレイムを出すのに魔力は殆ど使って無かったものね。フレイムを出す要領で〈我が魔力を糧に、我の指し示す物を射ち・・・〉」
「待った! その詠唱は危険だよ。その詠唱を使うと、何時もの様に魔力を使う恐れが有るから駄目! 魔力は必要量だけ在れば良いのさ。此れは周囲に気付かれずに使う事前提の魔法だから、口内詠唱にしよう。〈我の望む場所に魔力を、出でよ球雷!〉かな」
「またまたぁ~、ほんと口から出任せで言ってない?」
「試してみなよ。詠唱と同時に、球雷を出す場所を思い描き、フレイムを五つ数える程度だよ。最初のフレイムから球雷に出来た時の事を思い出してね」
「それじゃ出来ていたんじゃないの?」
「ちょっと違うんだよ、言ったよね『ゴブリンから対人戦、ホーンラビットから大はドラゴン』までって。自在に威力の有る雷を、思った場所に出せたら無敵だよ。今はゴブリンを倒す球雷を作る練習だよ」
ワラント侯爵から少し離してアリシアを立たせ、侯爵の鼻の頭に球雷を出せと指示する。
「アキュラ、忘れてない。結界魔法は魔法攻撃を通さないわよね」
「声が大きいよ、出来るからやりなよ。詠唱は口内で、フレイムが五つ数えている間燃える時間で、鼻の頭だよ」
〈我の望む場所に魔力を、出でよ球雷!〉
球体の中に座り脂汗を流すワラント侯爵の鼻先に、小さな球雷が現れパチパチと雷光を撒き散らして消えた。
僅か五つ数えるほどの時間現れた球雷は、見事に伯爵の鼻に小さな雷撃を加えて消えた。
いきなり現れたピンポン球程の小さな雷様から、鼻に雷撃を食らわされて〈ギャッ〉って悲鳴を上げて仰け反るワラント侯爵。
「出来たわってか、前は掌の上だったけど・・・」
「ここからが難しいんだけど、今日は思った場所に雷様を出す練習ね。ドラゴンを倒す第一歩だから真剣にやりなよ」
真顔になって頷くアリシアに指示して、頭と結界の隙間に球雷を出させる。
二度三度と失敗し、伯爵が頭上の雷光に気付いて頭を防御する。
頭を抱えたので脇ががら空きだ、左右の脇に連続して球雷を出させて侯爵様を脅す。
漸く自分が魔法攻撃の練習で遊ばれていると知ったようだが、防ぎようが無く涙目の侯爵様。
三度鼻先に球雷を出して雷撃を加えたものだから、侯爵様の鼻は真っ赤を通り越して少し焦げている。
涙をポロポロ零しながらお祈りポーズの侯爵様、俺の問いかけに答えないので股間に雷撃を指示する。
ランカン達が微妙な顔で俺を見ているが、容赦はしないよ。
股間の一撃は効いたねぇ~、雷光と共に白目を剥き涎を垂らして昏倒してしまった。
一瞬死んだかと思って慌てて(鑑定! 状態)〔火傷多数、重傷〕にほっとする。
ガルムやバンズが、同じ男として見ていられないと言ってゲンナリしている。
俺だってあの痛みは良く知っているが、言っても信じて貰えないだろうから黙っている。
ウォーターの水をバシャバシャと顔に掛け、頭の天辺にフレイムを乗せて強制的に起こす。
「未だ、貴族同盟について喋るつもりが無いのかな。次は股間にフレイムを乗せて、お前のお坊ちゃまを火炙りにするよ。言っておくが、此に耐えた冒険者や荒くれ達は一人もいないからね」
アリシアに合図して再び伯爵の面前に球雷を浮かべてやると、即座に何でも話しますと泣き声を上げた。
話は単純、俺に無体な要求をした為に反撃を受けて殺されたり降格された貴族達が、俺に仕返しをするつもりだった。
然しファラナイト公爵の第一夫人が、嫡男のゼブラン・ファラナイトを唆して俺を襲わせようとしたが、逆にファラナイト家が消滅した。
此れを知った俺に恨みを持つ貴族達が連絡を取り合い、協力して俺に恨みを晴らすことを誓い合った。
貴族家の一つや二つが手を取り合っても潰されるが、多数の貴族が団結すれば王家も手が出せない・・・と。
赤信号、皆で渡れば、恐くない、って事ね。
斯くして出来上がった貴族同盟、現在は貴族街での一件に関わった貴族以外に、はやり病の薬草提供を怠り隠居させられた貴族の半数近くが加盟しているそうだ。
貴族同盟の盟主マルド・ワラント侯爵、元公爵家たる我が盟主となりてお前を討つ、なーんて情けない格好で言われてもねぇ。
あと張り切っているのがデオル・フルカン元侯爵で、貴族の身で在りながら敵前逃亡を責められて侯爵家は取り潰しとなり、俺を殺して侯爵家を復興させ様と目論んでいるそうだが・・・無理だろうな。
もう一人張り切っているのが、アラム・フルンド伯爵の嫡男ベルガ・フルンドで、父を殺された上に爵位を剥奪され王都から追放された恨みを晴らすと。
はて、伯爵辺りで爵位剥奪のうえ王都から追放になる様な奴っていたっけと思ったら、謝罪の途中に抜き討って来て返り討ちにした馬鹿の息子だった。
貴族が謝罪の途中で抜き打ち攻撃するなど、エメンタイル王国貴族の恥以外の何ものでもない、と国王の逆鱗に触れたらしい。
ノルト・ガーラント侯爵家は、冒険者如きに膝を屈するなどと三男が承知せず、内紛状態で三男が貴族同盟に参加。
マライド・ルークス伯爵家は、親族が親の敵も討てない当主を認めず親族が参加しているそうだ。
カルス・レムイド伯爵は隠居をしたけれど、家族が恥を掻かされたと不満たらたらで貴族同盟に参加。
コムロン・クリフォード伯爵、六男を後継に指名して謝罪に赴き俺に殺された為に、嫡男や次男が承知せず彼等が中心となって貴族同盟に参加。
ネイセン伯爵に無理難題を言って来た貴族達だ、そう何時までも大人しくはしていないだろうと思ったが、そうきたか。
「ところでボリス・ザブランド侯爵の名が無いが・・・」
「あんな腰抜けは貴族同盟に入る資格は無い! 真っ先に膝を屈しお前に詫びを入れるだけでなく、他の者まで詫びさせた貴族の風上のも置けぬ奴!」
流民の冒険者に叩き潰されて膝を屈した挙げ句、王家からも爵位剥奪,降格,隠居に領地替えと散々な目に遭ったのだ。
プライドだけで生きている奴等としては、我慢がならないのだろう。
馬鹿がこんな所で俺に難癖を付けなければ、ワンチャン・・・ネイセン伯爵辺りになら意趣返しが出来ただろうに。
貴族同盟なんて作るから破滅の淵に立つ事になるんだ、さしずめ敗者同盟だな。
「このままじゃいけねえのかよ?」
「良い質問だけど、此れを他の貴族が見たらどうなると思う。王城から警備兵を呼んで引き渡す迄の間、他人の目に触れないようにする必要が有るんだよ」
〈俺は断るぞ、お前が貴族と揉めるのは勝手だが俺達を巻き込むな!〉
〈そうだな、金蔓の貴族を捕らえられ、お前の手伝いをしたとなったら後が怖いや〉
〈依頼は野獣討伐だからお貴族様の護衛は対象外、依頼失敗にはならないし〉
〈貴族を敵に回すより、ずらかった方が安全だわ〉
〈お前の言う事には従えねえよ〉
残念だが仕方がない、冒険者達を一纏めにしてバリアで包み1人ずつ拘束していく。
ランカン達にお願いして、冒険者達全員をロープで括り数珠繋ぎにする。
騎士達も同様にし、街道から外れた場所に不透明な大型のバリアを作って全員監禁する。
馬車や馬も別口のバリアで囲み、外部から見えなくしたが、一仕事が終わった時には陽も大分傾いていた。
閉じ込めたドームの中では冒険者達が騒ぐ騒ぐ、音声遮断をしているから外部に聞こえないけど煩い。
面倒なので一番煩い奴から順に、球体のバリアで包み少し窮屈な程度に絞り込んでやる。
勿論音声遮断のサービス付きだ。
半数ほど包み込んだらやっと静かになった、この状態から侯爵がどうなったのか漸く気付いた様だ。
騎士達は腕と足をギリギリに絞って拘束しているので騒ぐ元気も無く呻いているだけ。
冒険者30名と護衛の騎士30名に従者と御者の32名に、球体の中で小さくなって呻いているマルド・ワラント侯爵様。
侯爵家は兵25名と冒険者25名以上を招集出来ると聞いていたが、規定数より多いとは遣る気十分だな。
騎士達と冒険者達を詰め込んだバリアの中心に、ワラント侯爵の球体を蹴り飛ばして中央に据える。
普通に座れる程度に球体を大きくして尋問開始だ。
「ワラント侯爵様、先程面白い事を口走っていましたね『俺を殺したら、必ず我等貴族同盟が己やネイセン伯爵達に鉄槌を下す・・・』なーんてね」
「知らん! それより此処から出せ! 貴族たる我に不敬の数々許さんぞ!」
「言っておくけど、貴族のお前より俺の方が強いってのが判って無い様だな。
身分でも力でもな♪」
そう言って侯爵の眼前に、王家の紋章入り身分証を突きつけててやる。
「この紋章の意味が判るか? 念のために教えてやるけど、これって王国査察官を示す物で、お前は俺の疑問に答える義務が有るんだよ。貴族同盟の想像はつくが、お前の口から詳しく聞きたくてね」
眼前の身分証を穴の空くほど睨み付け、冷や汗をだらだら流しているワラント侯爵。
どうせ逆恨み同盟だろうけど、又一人ひとり片付けるのは面倒なので丸投げの準備は必要だ。
冷や汗だらだらのワラント侯爵、親爺のワラント公爵共々屑のようだからじっくり焼いてやるかな。
ワラントの鼻先にフレイムを浮かべた時に、ピコーン! と閃いた。
アリシアを見てにっこり笑い、手招きをする。
「あんた・・・またまた良からぬ事を考えているでしょう」
「間違いないわよ。何時もの悪い顔になっているもの」
「大丈夫じゃねっ、相手は其処の侯爵様の様だから俺達には影響はないぜ」
「そそ、アキュラが侯爵様を見る目付きは、猫が鼠を甚振るときの目付きだぞ」
えらいい言われ様だ、俺ってそんなに悪人顔かねぇ~。
「アリシアに新しい魔法を伝授、てか練習で出来なかった方法を教えてあげようかなぁ~っと思ったんだけどな」
「言ってみなさいよ、何をすれば良いの」
「小さな雷を出したいのなら、フレイムの時の事を思い出しなよ」
「そうか、フレイムを出すのに魔力は殆ど使って無かったものね。フレイムを出す要領で〈我が魔力を糧に、我の指し示す物を射ち・・・〉」
「待った! その詠唱は危険だよ。その詠唱を使うと、何時もの様に魔力を使う恐れが有るから駄目! 魔力は必要量だけ在れば良いのさ。此れは周囲に気付かれずに使う事前提の魔法だから、口内詠唱にしよう。〈我の望む場所に魔力を、出でよ球雷!〉かな」
「またまたぁ~、ほんと口から出任せで言ってない?」
「試してみなよ。詠唱と同時に、球雷を出す場所を思い描き、フレイムを五つ数える程度だよ。最初のフレイムから球雷に出来た時の事を思い出してね」
「それじゃ出来ていたんじゃないの?」
「ちょっと違うんだよ、言ったよね『ゴブリンから対人戦、ホーンラビットから大はドラゴン』までって。自在に威力の有る雷を、思った場所に出せたら無敵だよ。今はゴブリンを倒す球雷を作る練習だよ」
ワラント侯爵から少し離してアリシアを立たせ、侯爵の鼻の頭に球雷を出せと指示する。
「アキュラ、忘れてない。結界魔法は魔法攻撃を通さないわよね」
「声が大きいよ、出来るからやりなよ。詠唱は口内で、フレイムが五つ数えている間燃える時間で、鼻の頭だよ」
〈我の望む場所に魔力を、出でよ球雷!〉
球体の中に座り脂汗を流すワラント侯爵の鼻先に、小さな球雷が現れパチパチと雷光を撒き散らして消えた。
僅か五つ数えるほどの時間現れた球雷は、見事に伯爵の鼻に小さな雷撃を加えて消えた。
いきなり現れたピンポン球程の小さな雷様から、鼻に雷撃を食らわされて〈ギャッ〉って悲鳴を上げて仰け反るワラント侯爵。
「出来たわってか、前は掌の上だったけど・・・」
「ここからが難しいんだけど、今日は思った場所に雷様を出す練習ね。ドラゴンを倒す第一歩だから真剣にやりなよ」
真顔になって頷くアリシアに指示して、頭と結界の隙間に球雷を出させる。
二度三度と失敗し、伯爵が頭上の雷光に気付いて頭を防御する。
頭を抱えたので脇ががら空きだ、左右の脇に連続して球雷を出させて侯爵様を脅す。
漸く自分が魔法攻撃の練習で遊ばれていると知ったようだが、防ぎようが無く涙目の侯爵様。
三度鼻先に球雷を出して雷撃を加えたものだから、侯爵様の鼻は真っ赤を通り越して少し焦げている。
涙をポロポロ零しながらお祈りポーズの侯爵様、俺の問いかけに答えないので股間に雷撃を指示する。
ランカン達が微妙な顔で俺を見ているが、容赦はしないよ。
股間の一撃は効いたねぇ~、雷光と共に白目を剥き涎を垂らして昏倒してしまった。
一瞬死んだかと思って慌てて(鑑定! 状態)〔火傷多数、重傷〕にほっとする。
ガルムやバンズが、同じ男として見ていられないと言ってゲンナリしている。
俺だってあの痛みは良く知っているが、言っても信じて貰えないだろうから黙っている。
ウォーターの水をバシャバシャと顔に掛け、頭の天辺にフレイムを乗せて強制的に起こす。
「未だ、貴族同盟について喋るつもりが無いのかな。次は股間にフレイムを乗せて、お前のお坊ちゃまを火炙りにするよ。言っておくが、此に耐えた冒険者や荒くれ達は一人もいないからね」
アリシアに合図して再び伯爵の面前に球雷を浮かべてやると、即座に何でも話しますと泣き声を上げた。
話は単純、俺に無体な要求をした為に反撃を受けて殺されたり降格された貴族達が、俺に仕返しをするつもりだった。
然しファラナイト公爵の第一夫人が、嫡男のゼブラン・ファラナイトを唆して俺を襲わせようとしたが、逆にファラナイト家が消滅した。
此れを知った俺に恨みを持つ貴族達が連絡を取り合い、協力して俺に恨みを晴らすことを誓い合った。
貴族家の一つや二つが手を取り合っても潰されるが、多数の貴族が団結すれば王家も手が出せない・・・と。
赤信号、皆で渡れば、恐くない、って事ね。
斯くして出来上がった貴族同盟、現在は貴族街での一件に関わった貴族以外に、はやり病の薬草提供を怠り隠居させられた貴族の半数近くが加盟しているそうだ。
貴族同盟の盟主マルド・ワラント侯爵、元公爵家たる我が盟主となりてお前を討つ、なーんて情けない格好で言われてもねぇ。
あと張り切っているのがデオル・フルカン元侯爵で、貴族の身で在りながら敵前逃亡を責められて侯爵家は取り潰しとなり、俺を殺して侯爵家を復興させ様と目論んでいるそうだが・・・無理だろうな。
もう一人張り切っているのが、アラム・フルンド伯爵の嫡男ベルガ・フルンドで、父を殺された上に爵位を剥奪され王都から追放された恨みを晴らすと。
はて、伯爵辺りで爵位剥奪のうえ王都から追放になる様な奴っていたっけと思ったら、謝罪の途中に抜き討って来て返り討ちにした馬鹿の息子だった。
貴族が謝罪の途中で抜き打ち攻撃するなど、エメンタイル王国貴族の恥以外の何ものでもない、と国王の逆鱗に触れたらしい。
ノルト・ガーラント侯爵家は、冒険者如きに膝を屈するなどと三男が承知せず、内紛状態で三男が貴族同盟に参加。
マライド・ルークス伯爵家は、親族が親の敵も討てない当主を認めず親族が参加しているそうだ。
カルス・レムイド伯爵は隠居をしたけれど、家族が恥を掻かされたと不満たらたらで貴族同盟に参加。
コムロン・クリフォード伯爵、六男を後継に指名して謝罪に赴き俺に殺された為に、嫡男や次男が承知せず彼等が中心となって貴族同盟に参加。
ネイセン伯爵に無理難題を言って来た貴族達だ、そう何時までも大人しくはしていないだろうと思ったが、そうきたか。
「ところでボリス・ザブランド侯爵の名が無いが・・・」
「あんな腰抜けは貴族同盟に入る資格は無い! 真っ先に膝を屈しお前に詫びを入れるだけでなく、他の者まで詫びさせた貴族の風上のも置けぬ奴!」
流民の冒険者に叩き潰されて膝を屈した挙げ句、王家からも爵位剥奪,降格,隠居に領地替えと散々な目に遭ったのだ。
プライドだけで生きている奴等としては、我慢がならないのだろう。
馬鹿がこんな所で俺に難癖を付けなければ、ワンチャン・・・ネイセン伯爵辺りになら意趣返しが出来ただろうに。
貴族同盟なんて作るから破滅の淵に立つ事になるんだ、さしずめ敗者同盟だな。
145
お気に入りに追加
2,637
あなたにおすすめの小説
指令を受けた末っ子は望外の活躍をしてしまう?
秋野 木星
ファンタジー
隣国の貴族学院へ使命を帯びて留学することになったトティ。入国しようとした船上で拾い物をする。それがトティの人生を大きく変えていく。
※「飯屋の娘は魔法を使いたくない?」のよもやま話のリクエストをよくいただくので、主人公や年代を変えスピンオフの話を書くことにしました。
※ この作品は、小説家になろうからの転記掲載です。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!

強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる