68 / 100
068 お披露目
しおりを挟む
ウルバン教皇とシンドの間に位置する俺は前後を3メートル程開けているので見間違う事もない。
“こがね”が肩に止まり、他の精霊達も勝手気儘に飛び回っているので、まやかしでは無いと一目で判る。
〈精霊の巫女様・・・〉
〈やはり、オンデウス大教主達三人が巫女様を害しようとしたのね〉
〈巫女様を守護する精霊は、途轍もない魔法を使うそうだ〉
〈あれ程神々しい御方を害しようなんて、何と言う罰当たりな!〉
教団の宮殿内をほぼ見て回り、王城への通路に向かっているときに進路を塞ぐ一団が現れた。
「精霊の巫女殿とお見受け致しますが、何故貴方を害しようとしたウルバン教皇やエルドア大教主に与するのですか?」
「アリューシュ神様の僕として生きる彼等は、精霊の加護を受ける私の僕となる事を望んだからです」
「つまり、貴方はアリューシュ神様が使わされた神の代理だと言われるのですか?」
「いいえ、私は只人ですよ。喜怒哀楽の感情を持ち齢を重ね消えゆく者です」
「賢しらげに言うが、お前の周辺に居るものがアリューシュ神様より遣わされたと証明出来るのか」
〈そうだ! そもそもそんな小さな物が魔法を使うなどと法螺にも程が有る!〉
〈そこに浮かぶ精霊とやらがアリューシュ神様より遣わされてたものならば、敬虔なるアリューシュ神様の僕達を殺めるはずは無い!〉
おっ鋭いところを突いてくるけど、残念ながらちょっと的外れ。
彼奴らが敬虔なるアリューシュ神様の僕と証明出来てないし、精霊がアリューシュ神様から遣わされたとは一言も言ってない。
まっ、信じる気の無い者に証明する気は無い。
俺はアリューシュ神様に会った事も無ければ、精霊が何処から来たのかも知らない。
《アキュラ、殺しても良い?》
《そうだね、1人ずつね。周囲に被害が出ないように出来るかな》
《出来るよー》
《おっ“すいちゃん”か、お任せするよ》
お任せした瞬間、俺に問答を仕掛けてきた男の周囲に水の幕が出現し、目の前で水死体が出来あがるのを見せつけられる事になった。
周囲に居た者達も、藻掻き、苦しみ死んで行く様子を見せられて真っ青になり、祈る者,ゲロを吐き蹲る者,涙を流す者と騒然となる。
《次ぎ、私!》
“ふうちゃん”が名乗りを上げると、水死した男に同調して騒いでいた男の周囲に風が巻き起こる。
直径1メートル高さ4メートル程の風の筒は、中の男を独楽のようにくるくる回したかと思うと一瞬で血煙に包まれた。
風が収まり崩れ落ちた男は、風の刃に切り刻まれたのかズタボロである。
《エッ・・・まさか、止めてくれーぇぇぇ》足下から凍っていく男は、悲鳴を上げた形のまま凍って白い像になる。
その隣は口から火が溢れ出て、悲鳴すら上げずに倒れる。
〈にっ、逃げろー!〉
〈嫌ーぁぁぁ〉
〈たっ助けてぇぇぇ〉
〈お許しをー〉
頭の天辺に落雷を受け黒焦げになり、次の者は壁から土の槍が突き出て心臓を一突きされている。
快楽殺人の現場みたいになってきたので中止させる。
いやー、大規模魔法で吹き飛ばす方が人道的だと知った。
精霊達がアリューシュ神様から遣わされたとの悪魔の証明は出来ないが、魔法が使える証明はバッチリ出来た。
男に同調して付いてきていた者達が、ひれ伏し祈りの言葉を呟き震えている。
邪魔者がいなくなったので、通路を通って王城内に入り巡回を続ける。
王城に勤める高官達や、陳情の為に控えの間で待っている者達の所にも顔を出しておく。
時に病を抱えている者には“こがね”に頼んで治療してもらうおまけ付き。
この頃になると王城内に俺と精霊の事が伝わっていて、通路には多数の人々が犇めき祈りを捧げる者も多数いた。
精霊達のお披露目になってしまったが、これで文句を言い出す奴等は見ていた者達が黙らせるだろう。
ウルバン教皇猊下、俺の前を胸を張り得意げに歩いているが、俺の露払いにしかなっていないのを判って無い様だな。
俺と精霊を見て祈りを捧げる人々からは、お前さんはただの案内係りだぞ。
以後俺に反旗を翻したら、信徒から離反され教皇の座を引きずり下ろされる事になるのだが、判っちゃねぇなこのおっさん。
「シンド、これで暫く教皇達に刃向かう者は出ないと思うよ。このおっさん達だけでは心細いだろうけど、魔法使い達の事を宜しくね」
君の頑張りに俺の気楽な生活がかかっているので宜しく。
アリューシュ神教国の人心安定はレムリバード宰相達の仕事で、その為に神教国管理という利益を与えているのだから頑張って貰わねば。
さっさと帰って、アリシアとメリンダに魔法を教える方が俺には重要課題だ。
・・・・・・
二人がフレイムを出した時に、極僅かな少量の魔力が抜けるのを感じられると言い出したので、女神教の魔法訓練場に向かう。
「以前の事を覚えている、掌の上に極小さな雷を出してみてよ。フレイムを出すときの魔力の流れを意識してね。もう一つ、雷を出す場所を見ている事」
念のために二人にシールドを張り、アリシアの横で掌を見ている。
真剣な顔で腕を差し出し、掌を上に向けて詠唱を始める。
〈我が魔力を糧に、出でよ! 雷光!〉掌の上50センチ程の場所に、ピンポン球程の光が現れ小さな閃光を放ち消えていく。
「もう一度、今の感触を忘れない様にして続けて」
アリシアの顔が喜びで溢れているが、俺に言われて真剣な顔に戻り詠唱を始める。
五度程繰り返させて次の段階に進む事にした。
「アリシアのフレイムは、焚きつけに火を点けるときにどれ位で消えてしまう」
「10から15数えるくらいの間かしら」
「では次ぎに雷を出すときに、フレイムと同じ大きさと時間くらいと思ってやってみて」
〈我が魔力を糧に、出でよ! 雷光!〉掌の上に現れた球雷が消える事無く雷光を放っていて、ちょっと危険な線香花火のよう。
「良いわねぇ~。ねぇアキュラ、私も教えてよ」
「慌てないでよ、メリンダのは氷結と風魔法だろう。雷撃魔法とはやり方がちがうのだからちょっと待ってよ。メリンダの魔法も危険すぎるからね」
アリシアが今の状態を忘れない様に連続してやらせ、魔力残量が20を斬った時点で中止させた。
「どう、体調は?」
「少し疲れたわ」
「自分の魔力が、どれ位残っているのか判る?」
「さっきの話しの事?」
「そう、自分が何回魔法を使ったか数えて無いでしょう。討伐の最中に今の状態になったらどうなると思う。あと五回魔法を撃てるけど、身体は疲れ切っていて魔法はまともに当たらないよ。自分達の生死が掛かっていれば無理もする、六発目には魔力切れであの世行き確実だね」
「あんたは常に数えているの」
「俺は鑑定が使えるから、鑑定を使って魔力残量を確認しているよ」
アリシアを休ませ、メリンダにも最初はフレイムを出して貰う。
メリンダのフレイムも、現れてから14~15数えると消えた。
三度ほど同じ事をしてから、フレイム大の氷を掌にのせてみろと指示する。
「それって、アリシアのフレイムと同じ要領で良いのよね」
「そうだよ、基本的な部分は変わらないと思うね。詠唱としては〈我が魔力を糧に、凍てつく礫を現せ!〉かな。取り敢えず氷の塊をイメージしてやってみてよ」
「なんか適当に言ってない」
「んじゃ、メリンダが何時も唱えている詠唱でどうぞ」
「んー・・・長いのより短い方が楽だから、アキュラの方でやってみる」
〈我が魔力を糧に、凍てつく礫を現せ!〉
差し出した掌の上にピンポン球大の氷が一つ現れる。
「ふふん・・・どうよ」
「そこ、威張るところじゃないよ。出来て当たり前、散々アリシアのを見ていたのだからね。後学の為に、メリンダが何時も使っている詠唱を聴かせて貰えるかな」
ウッ、と言った顔で黙り込み睨んでくる。
「アキュラちゃん、意地が悪いと今夜一緒に寝てあげるよ♪」
「メリンダお姉様、魔法の練習を続けましょうね」
魔力切れ寸前まで遣らせて、怠くて身動き出来ない様にしてやろうかしら。
氷作りが難なく出来るのでホテルに戻り、明日は王都の外で練習と告げる。
・・・・・・
数日分の食料を確保して王都の外に出るのだが、馬車は貴族専用通路に入れろと言っているのにボルヘンが嫌がる。
レムリバード宰相直属の身分証を持つ者が、六人も居るのだから心配するなと叱咤して貴族専用通路に進ませる。
俺なんて貴族も恐れる、王国査察官と同等の物だぞ街の出入りで気安く出せる物じゃない。
目立つだろうとは思っていたが、貴族の紋章入りや豪商達の豪華な馬車列の中に混じると目立つ目立つ。
好奇心溢れる多数の眼差しが突き刺さり、御者席のボルヘンとバンズが小声で文句を言ってくる。
まっ、通行証を見せたら黙って通してくれるから其れ迄の辛抱だ。
流石に王都の出入り門、貴族の馬車だからと言って素通りはさせない。
何でこんなに貴族の馬車が多いのか、領都間は転移魔法陣を遣う筈だろう。
それに貴族の馬車の護衛に冒険者が多数混じっている。
少しずつ前進していると、いきなり御者席の横で怒声が響き渡る。
〈何処の田舎者が貴族専用通路に居座っている! 道を開けろ!〉
〈ドカーン〉と馬車の扉にも何かが叩き付けられた。
勘弁してくれよー、王都の出入り口で多数の目がある中で騒ぎを起こすなよ。
ボルヘンやバンズ達では相手が出来ないだろうからと思い、馬車の扉を開けると鞭が飛んできた。
〈バシーン〉って良い音がして被っていたフードの先が破れた。
シールドを張っているから怪我はしないが、やってくれるじゃないの。
《誰も出ちゃ駄目だよ! 静かにしていてね》
《アキュラを攻撃したよ!》
《許すまじ、殺す!》
《ギュウギュウにしてやる!》
《駄目! 絶対に駄目だからね!》
〈お前は何処の小倅だ! 貴族専用通路にのうのうと居座りやがって、馬車をどけろ!〉
“こがね”が肩に止まり、他の精霊達も勝手気儘に飛び回っているので、まやかしでは無いと一目で判る。
〈精霊の巫女様・・・〉
〈やはり、オンデウス大教主達三人が巫女様を害しようとしたのね〉
〈巫女様を守護する精霊は、途轍もない魔法を使うそうだ〉
〈あれ程神々しい御方を害しようなんて、何と言う罰当たりな!〉
教団の宮殿内をほぼ見て回り、王城への通路に向かっているときに進路を塞ぐ一団が現れた。
「精霊の巫女殿とお見受け致しますが、何故貴方を害しようとしたウルバン教皇やエルドア大教主に与するのですか?」
「アリューシュ神様の僕として生きる彼等は、精霊の加護を受ける私の僕となる事を望んだからです」
「つまり、貴方はアリューシュ神様が使わされた神の代理だと言われるのですか?」
「いいえ、私は只人ですよ。喜怒哀楽の感情を持ち齢を重ね消えゆく者です」
「賢しらげに言うが、お前の周辺に居るものがアリューシュ神様より遣わされたと証明出来るのか」
〈そうだ! そもそもそんな小さな物が魔法を使うなどと法螺にも程が有る!〉
〈そこに浮かぶ精霊とやらがアリューシュ神様より遣わされてたものならば、敬虔なるアリューシュ神様の僕達を殺めるはずは無い!〉
おっ鋭いところを突いてくるけど、残念ながらちょっと的外れ。
彼奴らが敬虔なるアリューシュ神様の僕と証明出来てないし、精霊がアリューシュ神様から遣わされたとは一言も言ってない。
まっ、信じる気の無い者に証明する気は無い。
俺はアリューシュ神様に会った事も無ければ、精霊が何処から来たのかも知らない。
《アキュラ、殺しても良い?》
《そうだね、1人ずつね。周囲に被害が出ないように出来るかな》
《出来るよー》
《おっ“すいちゃん”か、お任せするよ》
お任せした瞬間、俺に問答を仕掛けてきた男の周囲に水の幕が出現し、目の前で水死体が出来あがるのを見せつけられる事になった。
周囲に居た者達も、藻掻き、苦しみ死んで行く様子を見せられて真っ青になり、祈る者,ゲロを吐き蹲る者,涙を流す者と騒然となる。
《次ぎ、私!》
“ふうちゃん”が名乗りを上げると、水死した男に同調して騒いでいた男の周囲に風が巻き起こる。
直径1メートル高さ4メートル程の風の筒は、中の男を独楽のようにくるくる回したかと思うと一瞬で血煙に包まれた。
風が収まり崩れ落ちた男は、風の刃に切り刻まれたのかズタボロである。
《エッ・・・まさか、止めてくれーぇぇぇ》足下から凍っていく男は、悲鳴を上げた形のまま凍って白い像になる。
その隣は口から火が溢れ出て、悲鳴すら上げずに倒れる。
〈にっ、逃げろー!〉
〈嫌ーぁぁぁ〉
〈たっ助けてぇぇぇ〉
〈お許しをー〉
頭の天辺に落雷を受け黒焦げになり、次の者は壁から土の槍が突き出て心臓を一突きされている。
快楽殺人の現場みたいになってきたので中止させる。
いやー、大規模魔法で吹き飛ばす方が人道的だと知った。
精霊達がアリューシュ神様から遣わされたとの悪魔の証明は出来ないが、魔法が使える証明はバッチリ出来た。
男に同調して付いてきていた者達が、ひれ伏し祈りの言葉を呟き震えている。
邪魔者がいなくなったので、通路を通って王城内に入り巡回を続ける。
王城に勤める高官達や、陳情の為に控えの間で待っている者達の所にも顔を出しておく。
時に病を抱えている者には“こがね”に頼んで治療してもらうおまけ付き。
この頃になると王城内に俺と精霊の事が伝わっていて、通路には多数の人々が犇めき祈りを捧げる者も多数いた。
精霊達のお披露目になってしまったが、これで文句を言い出す奴等は見ていた者達が黙らせるだろう。
ウルバン教皇猊下、俺の前を胸を張り得意げに歩いているが、俺の露払いにしかなっていないのを判って無い様だな。
俺と精霊を見て祈りを捧げる人々からは、お前さんはただの案内係りだぞ。
以後俺に反旗を翻したら、信徒から離反され教皇の座を引きずり下ろされる事になるのだが、判っちゃねぇなこのおっさん。
「シンド、これで暫く教皇達に刃向かう者は出ないと思うよ。このおっさん達だけでは心細いだろうけど、魔法使い達の事を宜しくね」
君の頑張りに俺の気楽な生活がかかっているので宜しく。
アリューシュ神教国の人心安定はレムリバード宰相達の仕事で、その為に神教国管理という利益を与えているのだから頑張って貰わねば。
さっさと帰って、アリシアとメリンダに魔法を教える方が俺には重要課題だ。
・・・・・・
二人がフレイムを出した時に、極僅かな少量の魔力が抜けるのを感じられると言い出したので、女神教の魔法訓練場に向かう。
「以前の事を覚えている、掌の上に極小さな雷を出してみてよ。フレイムを出すときの魔力の流れを意識してね。もう一つ、雷を出す場所を見ている事」
念のために二人にシールドを張り、アリシアの横で掌を見ている。
真剣な顔で腕を差し出し、掌を上に向けて詠唱を始める。
〈我が魔力を糧に、出でよ! 雷光!〉掌の上50センチ程の場所に、ピンポン球程の光が現れ小さな閃光を放ち消えていく。
「もう一度、今の感触を忘れない様にして続けて」
アリシアの顔が喜びで溢れているが、俺に言われて真剣な顔に戻り詠唱を始める。
五度程繰り返させて次の段階に進む事にした。
「アリシアのフレイムは、焚きつけに火を点けるときにどれ位で消えてしまう」
「10から15数えるくらいの間かしら」
「では次ぎに雷を出すときに、フレイムと同じ大きさと時間くらいと思ってやってみて」
〈我が魔力を糧に、出でよ! 雷光!〉掌の上に現れた球雷が消える事無く雷光を放っていて、ちょっと危険な線香花火のよう。
「良いわねぇ~。ねぇアキュラ、私も教えてよ」
「慌てないでよ、メリンダのは氷結と風魔法だろう。雷撃魔法とはやり方がちがうのだからちょっと待ってよ。メリンダの魔法も危険すぎるからね」
アリシアが今の状態を忘れない様に連続してやらせ、魔力残量が20を斬った時点で中止させた。
「どう、体調は?」
「少し疲れたわ」
「自分の魔力が、どれ位残っているのか判る?」
「さっきの話しの事?」
「そう、自分が何回魔法を使ったか数えて無いでしょう。討伐の最中に今の状態になったらどうなると思う。あと五回魔法を撃てるけど、身体は疲れ切っていて魔法はまともに当たらないよ。自分達の生死が掛かっていれば無理もする、六発目には魔力切れであの世行き確実だね」
「あんたは常に数えているの」
「俺は鑑定が使えるから、鑑定を使って魔力残量を確認しているよ」
アリシアを休ませ、メリンダにも最初はフレイムを出して貰う。
メリンダのフレイムも、現れてから14~15数えると消えた。
三度ほど同じ事をしてから、フレイム大の氷を掌にのせてみろと指示する。
「それって、アリシアのフレイムと同じ要領で良いのよね」
「そうだよ、基本的な部分は変わらないと思うね。詠唱としては〈我が魔力を糧に、凍てつく礫を現せ!〉かな。取り敢えず氷の塊をイメージしてやってみてよ」
「なんか適当に言ってない」
「んじゃ、メリンダが何時も唱えている詠唱でどうぞ」
「んー・・・長いのより短い方が楽だから、アキュラの方でやってみる」
〈我が魔力を糧に、凍てつく礫を現せ!〉
差し出した掌の上にピンポン球大の氷が一つ現れる。
「ふふん・・・どうよ」
「そこ、威張るところじゃないよ。出来て当たり前、散々アリシアのを見ていたのだからね。後学の為に、メリンダが何時も使っている詠唱を聴かせて貰えるかな」
ウッ、と言った顔で黙り込み睨んでくる。
「アキュラちゃん、意地が悪いと今夜一緒に寝てあげるよ♪」
「メリンダお姉様、魔法の練習を続けましょうね」
魔力切れ寸前まで遣らせて、怠くて身動き出来ない様にしてやろうかしら。
氷作りが難なく出来るのでホテルに戻り、明日は王都の外で練習と告げる。
・・・・・・
数日分の食料を確保して王都の外に出るのだが、馬車は貴族専用通路に入れろと言っているのにボルヘンが嫌がる。
レムリバード宰相直属の身分証を持つ者が、六人も居るのだから心配するなと叱咤して貴族専用通路に進ませる。
俺なんて貴族も恐れる、王国査察官と同等の物だぞ街の出入りで気安く出せる物じゃない。
目立つだろうとは思っていたが、貴族の紋章入りや豪商達の豪華な馬車列の中に混じると目立つ目立つ。
好奇心溢れる多数の眼差しが突き刺さり、御者席のボルヘンとバンズが小声で文句を言ってくる。
まっ、通行証を見せたら黙って通してくれるから其れ迄の辛抱だ。
流石に王都の出入り門、貴族の馬車だからと言って素通りはさせない。
何でこんなに貴族の馬車が多いのか、領都間は転移魔法陣を遣う筈だろう。
それに貴族の馬車の護衛に冒険者が多数混じっている。
少しずつ前進していると、いきなり御者席の横で怒声が響き渡る。
〈何処の田舎者が貴族専用通路に居座っている! 道を開けろ!〉
〈ドカーン〉と馬車の扉にも何かが叩き付けられた。
勘弁してくれよー、王都の出入り口で多数の目がある中で騒ぎを起こすなよ。
ボルヘンやバンズ達では相手が出来ないだろうからと思い、馬車の扉を開けると鞭が飛んできた。
〈バシーン〉って良い音がして被っていたフードの先が破れた。
シールドを張っているから怪我はしないが、やってくれるじゃないの。
《誰も出ちゃ駄目だよ! 静かにしていてね》
《アキュラを攻撃したよ!》
《許すまじ、殺す!》
《ギュウギュウにしてやる!》
《駄目! 絶対に駄目だからね!》
〈お前は何処の小倅だ! 貴族専用通路にのうのうと居座りやがって、馬車をどけろ!〉
125
お気に入りに追加
2,637
あなたにおすすめの小説

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる