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060 無敵の妖精達
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此の国の転移魔法陣に到着し、迎えの馬車に乗った時から違和感を感じていたんだよ。
見下している聖女の俺一人を迎えるのに、即座に教皇と大教主が全員揃ってて待っているなんて有り得ない。
尊大極まりない人間なら、待って迎えるのでは無く呼び付けて跪かせようとするのが当然なんだよ。
《“ふうちゃん”と“しろがね”は逃げたエルドアを結界に入れて持って来てよ》
《ん、直ぐに持って来る》
《任せて》
空を飛ぶ精霊から逃げるのは不可能だろうから、直ぐに見つかるだろう。
先ずは自称教皇猊下らか尋問だ。
「教皇猊下、普段のお仕事は何かなぁ~♪」
〈だっ、出して下さい〉
「良いよ、何時でも出してあげるよ。だから普段のお仕事は何かな」
言い淀むので、バリアの中に転がる死体を球体に包み込み小さく絞っていく。
目の前で死体が不自然に動き小さくなっていくのを呆然とみていたが、直径が80センチ程度になると悲鳴を上げてお漏らしをしてしまった。
「尋ねた事に答えないのなら、お前は生きたまま小さくなって死ぬ事になるぞ。最後だ・・・普段は何をしている」
〈しゃべ・・・喋りますから殺さないで〉
「そんな事を聞いて無い、話す気が無いのなら死ね!」
そう言って球体を縮めていくと必死に喋り出したが、予想通りというか定番と言うか影武者でした。
重要案件以外の殆どを務める影武者で、夜目遠目の場所は補佐の者の指示に従って全てやっていたそうだ。
確かに間近では見破られるからな、今回も離れているし直接話す訳ではないのでお前がやれと言われましたと喋った。
“ふうちゃん”と“しろがね”がエルドアを捕まえたよと言ってきた。
大広間に続く扉の結界を解除して開けると、警護の騎士が腰を抜かしてへたり込んでいる。
その前には、球体の結界に入れられて風魔法で転がされてきたエルドアが、息も絶え絶えにしゃがみ込んでいる。
大教主様とゲロのシェイクなんて見たくも無かったので、クリーンで綺麗にしてやる。
「エルドア大教主様、色々と歓迎準備をしていただき感謝しております。教皇猊下や他の大教主様の所へご案内願いますね♪」
エルドアの恨めしそうな顔に向かって、極上の笑顔でお願いする。
(嫌なら殺すぞ!)との無言の威圧は十分感じ取れたのか、赤べこ並みに首を振っている。
「お前、自分の首に何が巻き付いているのか忘れたのか。」
そう言われてハッとし、首の結界を確かめている。
またゲロを吐かれても嫌なので結界を解除し、尻を蹴って大広間の中へ入れる。
影武者の教皇や大教主以下、護衛の騎士や魔法使い全てが球体の結界に包まれているのを見て呆けている。
「よく見ろ、此処に居る奴等は俺か精霊が結界を解除しなければ何れ死ぬ。オンデウス大教主は何日生きていた? オンデウスの様な死に方をしたくなければ、手間を掛けさせるな」
それだけを警告して、教皇達の所へ案内しろと尻を蹴りつけた。
よろよろと宮殿内を歩くエルドア大教主を見た者達が、顔色を変えて引き返したり部屋に入って鍵を掛けている。
俺の捕獲に失敗し反撃を受けている事が知れ渡っている様だ。
《みんな攻撃されたら反撃しても良いよ。但しこのおっさんに似た服装の奴は“しろがね”が捕まえるから殺しちゃ駄目だよ》
《任せて、みんな凍らせちゃうから》
《やっちゃうもんね》
《アキュラは守るからねっ》
《ぎゅっとしちゃうよ♪》
ウエポンズフリーを宣言したら張り切っちゃてるね。
此の世界の交戦規定なんて知らないが、攻撃を受けたし殺られる前に殺れだ。
遠くから荒々しい足音と鎧の金具が擦れ合う音が近づいて来る。
角から現れたのはハルバートを掲げた一団で、横一列になり隊列を整えて前進してくる。
エルドア大教主の姿なんて見えてないかの様に、振りかぶったハルバートを振り下ろしてくる。
〈待て! 待たんかぁー儂だ! エルドアじゃ、大教主のエルド ・・・ ヒァーッァァァ〉
エルドアの制止の声などまるで無視して、振り下ろされるハルバート。
横一列八名の兵が振り下ろすハルバート、エルドアのミンチは見たくないし道案内も必要なのでシールドを掛けてやる。
〈ガキーン〉〈バキーン〉〈ドガッ〉
〈ヒャァーァァァ〉
悲鳴と共にハルバートに打ち据えられ、転がって行くエルドア大教主様。
聖布がハルバートに切り刻まれてボロボロですよ。
ミンチにもならずボロボロの聖布を纏ったエルドア大教主を見て、兵士達が驚きの声を上げる。
目の前のハルバートの煌めきを見て、必死に這いずって逃げるエルドアちゃん。
〈何で生きているんだ〉兵の一人が疑問を口にするが、誰もそれに答えられない。
〈何をやっている! 攻撃の手を緩めるな! 殺しさえしなければ多少の怪我なんぞ聖女様が治して下さる。遠慮せずに遣れ!〉
んー? 殺れの間違いだろうが!
《エイッ、燃えちゃぇ》
《んじゃー、溺れちゃぇ》
おいおい、火炙りに水を掛けてどうするんだよ。
《あー“すいちゃん”火事にならない様に水は建物に掛けてねー》
《えー・・・溺れさせちゃ駄目なのぉー》
《御免ね、燃えちゃったら困るから又今度ねっ》
巨大ファイヤーボールにアイスバレットとストーンバレットが降り注ぎ、あっという間に数十名の兵が撃ち倒される。
一瞬の静寂の後通路に槍の穂先が見えると兵士の隊列が現れたが、目の前に横たわるハルバート部隊の悲惨な姿に前進が止まる。
〈止まるな! 何を遣っている!〉
怒鳴り声と共に現れた上官が、目の前の惨劇を見て声を無くした瞬間、〈バリバリバリドーオォォォン〉と建物を揺るがす落雷音が響き渡る。
雷撃魔法が降り注ぎ通路にいた兵達をなぎ倒す。
〈逃げろー、化け物だ!〉
〈冗談じゃねぇ、あんな魔法に立ち向かえるかよ〉
〈止まれ! 逃げる事は許さんぞ!〉
〈お前が行け! 行って勝手に死ね!〉
〈うおぉぉぉ〉
雄叫びを上げて通路の横から現れた男は、此方を見た瞬間真っ青な顔でガクガクと震えながら回れ右をする。
背中を見せた男が“ふうちゃん”の強風に煽られて、通路の向こうまで吹き飛ばされ転がって行く。
「エルドア大教主様ぁ~、行きましょうね♪」
ボロボロの聖布を纏い、ブルブル震えるエルドアに優しく声を掛けて道案内をお願いする。
「たっ助けて下さい。お許し下さい聖女様! 死にたくない。アリューシュ神様にお詫びし大教主を辞めます。命だけはお助け下さい」
って泣き言どころか、大声を上げて泣き出したよ。
残念だが俺に泣き落としは通用しない、俺を殺そうとしたり奴隷扱いをする気だった奴に掛ける情けは無い。
首の結界を軽く締めて尻を蹴りつける。
「行けよ、教皇猊下やお仲間の大教主の所へ案内するのがお前の仕事で、生き延びるたった一つの方法だ」
と言っても目の前の死体の山が邪魔で前進できない。
《“てんちゃん”、向こう側に送ってよ。このおっさんもね》
《ほい!》
軽い返事と共に目の前に有る死体の山が消え、代わりにボロボロの聖衣を着たおっさんが現れた。
「おらッ、さっさと案内しろ!」
エルドア大教主様の尻を蹴る不敬を働き、道案内を要求する。
暫く歩くと今度は魔法攻撃のお迎えだ。
ファイヤーボールの一斉射に続き、ストーンランスからアイスランスへと連続攻撃が続く。
全て“しろがね”の結界に止められて俺達の所まで届かないが、反撃は凄まじかった。
ファイヤーボールには“ほむら”が特大のファイヤーボールを撃ち返し、ストーンランスには“だいち”が特大のストーンバレット(岩石)を撃ち返す。
〈ドッカンーン〉〈ドーン、ガラガラガラゴーン〉と、岩石が轟音を立てて転がって行く。
アイスランスが飛んできたが、途中で氷の槍は消えて通路の壁や天井が凍り魔法攻撃が止んだ。
攻撃が止まったので、凍った通路の先を見ると全てが凍っていた。
魔法部隊の氷漬けって・・・南無。
魔力300の精霊の魔法攻撃って半端ないな、魔力100の三倍どころの威力じゃ無いぞ。
魔法攻撃はそれでお終い、俺とエルドアの姿を見た警備兵や下働きの者達が悲鳴を上げて逃げて行く。
騎士や警備兵は疎か魔法部隊の一斉攻撃も通用せず、即座に反撃を受けて全滅していれば逃げるよな。
「エルドア、シャキッと歩け! 教皇猊下と大教主の所へ辿り着く事が、お前が生き残るたった一つの方法なんだからな。出来ないと看做したらその場で火炙りにしてやるぞ」
震え破れてズタボロの聖衣を引き摺りながら、必死に歩くエルドア。
辿り着いたところは権力の中枢に相応しく、柱や扉は華麗な彫刻が施され板壁はピカピカに磨き上げられている。
が・・・無人だ。
通路の左右の扉には華麗な彫刻が施されているが、扉の前に立つ警備兵の姿が無い。
居ないって言うか、槍が転がっているので逃げてしまった様だ。
アクティブ探査には物陰から様子を窺う者達を確認出来るが、敵意を持った者の気配が無い。
よろよろと前を歩くエルドアが、一つの扉を押し開けて中に入って行く。
豪華なソファーが置かれ左右にも八個のソファーが並ぶ会議室の様だが、それには目もくれず隣の部屋に入っていく。
礼拝所、正面には等身大のアリューシュ神像が立つが出入り口は此処しかない。
アクティブ探査に引っ掛かるのは足下からの気配、敵意は無いが息を潜めている雰囲気は感じ取れる。
「開けろ」
「へっ・・・お判りになられるので?」
「地下に潜む奴の気配はな。出入り口までは判らないから開けろと言ったのさ。転移魔法で飛び込んで、心臓麻痺でも起こされたら困るからな」
出入り口の操作をするが、直ぐに情けない顔になり首を振る。
「駄目です、中から閂を掛けられています」
面倒な奴等だね、“てんちゃん”にお願いして中の奴等を引き摺り出してもらう事にした。
見下している聖女の俺一人を迎えるのに、即座に教皇と大教主が全員揃ってて待っているなんて有り得ない。
尊大極まりない人間なら、待って迎えるのでは無く呼び付けて跪かせようとするのが当然なんだよ。
《“ふうちゃん”と“しろがね”は逃げたエルドアを結界に入れて持って来てよ》
《ん、直ぐに持って来る》
《任せて》
空を飛ぶ精霊から逃げるのは不可能だろうから、直ぐに見つかるだろう。
先ずは自称教皇猊下らか尋問だ。
「教皇猊下、普段のお仕事は何かなぁ~♪」
〈だっ、出して下さい〉
「良いよ、何時でも出してあげるよ。だから普段のお仕事は何かな」
言い淀むので、バリアの中に転がる死体を球体に包み込み小さく絞っていく。
目の前で死体が不自然に動き小さくなっていくのを呆然とみていたが、直径が80センチ程度になると悲鳴を上げてお漏らしをしてしまった。
「尋ねた事に答えないのなら、お前は生きたまま小さくなって死ぬ事になるぞ。最後だ・・・普段は何をしている」
〈しゃべ・・・喋りますから殺さないで〉
「そんな事を聞いて無い、話す気が無いのなら死ね!」
そう言って球体を縮めていくと必死に喋り出したが、予想通りというか定番と言うか影武者でした。
重要案件以外の殆どを務める影武者で、夜目遠目の場所は補佐の者の指示に従って全てやっていたそうだ。
確かに間近では見破られるからな、今回も離れているし直接話す訳ではないのでお前がやれと言われましたと喋った。
“ふうちゃん”と“しろがね”がエルドアを捕まえたよと言ってきた。
大広間に続く扉の結界を解除して開けると、警護の騎士が腰を抜かしてへたり込んでいる。
その前には、球体の結界に入れられて風魔法で転がされてきたエルドアが、息も絶え絶えにしゃがみ込んでいる。
大教主様とゲロのシェイクなんて見たくも無かったので、クリーンで綺麗にしてやる。
「エルドア大教主様、色々と歓迎準備をしていただき感謝しております。教皇猊下や他の大教主様の所へご案内願いますね♪」
エルドアの恨めしそうな顔に向かって、極上の笑顔でお願いする。
(嫌なら殺すぞ!)との無言の威圧は十分感じ取れたのか、赤べこ並みに首を振っている。
「お前、自分の首に何が巻き付いているのか忘れたのか。」
そう言われてハッとし、首の結界を確かめている。
またゲロを吐かれても嫌なので結界を解除し、尻を蹴って大広間の中へ入れる。
影武者の教皇や大教主以下、護衛の騎士や魔法使い全てが球体の結界に包まれているのを見て呆けている。
「よく見ろ、此処に居る奴等は俺か精霊が結界を解除しなければ何れ死ぬ。オンデウス大教主は何日生きていた? オンデウスの様な死に方をしたくなければ、手間を掛けさせるな」
それだけを警告して、教皇達の所へ案内しろと尻を蹴りつけた。
よろよろと宮殿内を歩くエルドア大教主を見た者達が、顔色を変えて引き返したり部屋に入って鍵を掛けている。
俺の捕獲に失敗し反撃を受けている事が知れ渡っている様だ。
《みんな攻撃されたら反撃しても良いよ。但しこのおっさんに似た服装の奴は“しろがね”が捕まえるから殺しちゃ駄目だよ》
《任せて、みんな凍らせちゃうから》
《やっちゃうもんね》
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此の世界の交戦規定なんて知らないが、攻撃を受けたし殺られる前に殺れだ。
遠くから荒々しい足音と鎧の金具が擦れ合う音が近づいて来る。
角から現れたのはハルバートを掲げた一団で、横一列になり隊列を整えて前進してくる。
エルドア大教主の姿なんて見えてないかの様に、振りかぶったハルバートを振り下ろしてくる。
〈待て! 待たんかぁー儂だ! エルドアじゃ、大教主のエルド ・・・ ヒァーッァァァ〉
エルドアの制止の声などまるで無視して、振り下ろされるハルバート。
横一列八名の兵が振り下ろすハルバート、エルドアのミンチは見たくないし道案内も必要なのでシールドを掛けてやる。
〈ガキーン〉〈バキーン〉〈ドガッ〉
〈ヒャァーァァァ〉
悲鳴と共にハルバートに打ち据えられ、転がって行くエルドア大教主様。
聖布がハルバートに切り刻まれてボロボロですよ。
ミンチにもならずボロボロの聖布を纏ったエルドア大教主を見て、兵士達が驚きの声を上げる。
目の前のハルバートの煌めきを見て、必死に這いずって逃げるエルドアちゃん。
〈何で生きているんだ〉兵の一人が疑問を口にするが、誰もそれに答えられない。
〈何をやっている! 攻撃の手を緩めるな! 殺しさえしなければ多少の怪我なんぞ聖女様が治して下さる。遠慮せずに遣れ!〉
んー? 殺れの間違いだろうが!
《エイッ、燃えちゃぇ》
《んじゃー、溺れちゃぇ》
おいおい、火炙りに水を掛けてどうするんだよ。
《あー“すいちゃん”火事にならない様に水は建物に掛けてねー》
《えー・・・溺れさせちゃ駄目なのぉー》
《御免ね、燃えちゃったら困るから又今度ねっ》
巨大ファイヤーボールにアイスバレットとストーンバレットが降り注ぎ、あっという間に数十名の兵が撃ち倒される。
一瞬の静寂の後通路に槍の穂先が見えると兵士の隊列が現れたが、目の前に横たわるハルバート部隊の悲惨な姿に前進が止まる。
〈止まるな! 何を遣っている!〉
怒鳴り声と共に現れた上官が、目の前の惨劇を見て声を無くした瞬間、〈バリバリバリドーオォォォン〉と建物を揺るがす落雷音が響き渡る。
雷撃魔法が降り注ぎ通路にいた兵達をなぎ倒す。
〈逃げろー、化け物だ!〉
〈冗談じゃねぇ、あんな魔法に立ち向かえるかよ〉
〈止まれ! 逃げる事は許さんぞ!〉
〈お前が行け! 行って勝手に死ね!〉
〈うおぉぉぉ〉
雄叫びを上げて通路の横から現れた男は、此方を見た瞬間真っ青な顔でガクガクと震えながら回れ右をする。
背中を見せた男が“ふうちゃん”の強風に煽られて、通路の向こうまで吹き飛ばされ転がって行く。
「エルドア大教主様ぁ~、行きましょうね♪」
ボロボロの聖布を纏い、ブルブル震えるエルドアに優しく声を掛けて道案内をお願いする。
「たっ助けて下さい。お許し下さい聖女様! 死にたくない。アリューシュ神様にお詫びし大教主を辞めます。命だけはお助け下さい」
って泣き言どころか、大声を上げて泣き出したよ。
残念だが俺に泣き落としは通用しない、俺を殺そうとしたり奴隷扱いをする気だった奴に掛ける情けは無い。
首の結界を軽く締めて尻を蹴りつける。
「行けよ、教皇猊下やお仲間の大教主の所へ案内するのがお前の仕事で、生き延びるたった一つの方法だ」
と言っても目の前の死体の山が邪魔で前進できない。
《“てんちゃん”、向こう側に送ってよ。このおっさんもね》
《ほい!》
軽い返事と共に目の前に有る死体の山が消え、代わりにボロボロの聖衣を着たおっさんが現れた。
「おらッ、さっさと案内しろ!」
エルドア大教主様の尻を蹴る不敬を働き、道案内を要求する。
暫く歩くと今度は魔法攻撃のお迎えだ。
ファイヤーボールの一斉射に続き、ストーンランスからアイスランスへと連続攻撃が続く。
全て“しろがね”の結界に止められて俺達の所まで届かないが、反撃は凄まじかった。
ファイヤーボールには“ほむら”が特大のファイヤーボールを撃ち返し、ストーンランスには“だいち”が特大のストーンバレット(岩石)を撃ち返す。
〈ドッカンーン〉〈ドーン、ガラガラガラゴーン〉と、岩石が轟音を立てて転がって行く。
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攻撃が止まったので、凍った通路の先を見ると全てが凍っていた。
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魔力300の精霊の魔法攻撃って半端ないな、魔力100の三倍どころの威力じゃ無いぞ。
魔法攻撃はそれでお終い、俺とエルドアの姿を見た警備兵や下働きの者達が悲鳴を上げて逃げて行く。
騎士や警備兵は疎か魔法部隊の一斉攻撃も通用せず、即座に反撃を受けて全滅していれば逃げるよな。
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震え破れてズタボロの聖衣を引き摺りながら、必死に歩くエルドア。
辿り着いたところは権力の中枢に相応しく、柱や扉は華麗な彫刻が施され板壁はピカピカに磨き上げられている。
が・・・無人だ。
通路の左右の扉には華麗な彫刻が施されているが、扉の前に立つ警備兵の姿が無い。
居ないって言うか、槍が転がっているので逃げてしまった様だ。
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よろよろと前を歩くエルドアが、一つの扉を押し開けて中に入って行く。
豪華なソファーが置かれ左右にも八個のソファーが並ぶ会議室の様だが、それには目もくれず隣の部屋に入っていく。
礼拝所、正面には等身大のアリューシュ神像が立つが出入り口は此処しかない。
アクティブ探査に引っ掛かるのは足下からの気配、敵意は無いが息を潜めている雰囲気は感じ取れる。
「開けろ」
「へっ・・・お判りになられるので?」
「地下に潜む奴の気配はな。出入り口までは判らないから開けろと言ったのさ。転移魔法で飛び込んで、心臓麻痺でも起こされたら困るからな」
出入り口の操作をするが、直ぐに情けない顔になり首を振る。
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