能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

暇野無学

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138 ドラゴン討伐

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 口内いっぱい氷で塞がれ息が出来ないドラゴンが大慌て、ジタバタしていたが前足で氷を掻き出す事が出来ずに倒れ込んだ。
 こりゃー、普通の冒険者には使えない攻撃方法だなと考えていると、ドラゴンの足がビクビク痙攣している。

 (テイム・57・53・49・45・40・33)
 (テイム・11・8・6・4)

 (テイム・テイム)・・・
 (テイム・テイム)〔ロングドラゴン・1〕

 ふぅ~、何とかテイム出来たので、氷の魔力を抜き死なない様にする。

 《聞こえるか、お前の名はロングドラゴンだ、判ったな》

 《はい、マスター》〔ロングドラゴン・装甲・凶悪無比〕

 凶悪無比なんて要らないが装甲には興味が有ったので試してみたが、皮膚感覚がなくなり掌を合わせても感触がなく硬質音が聞こえたので放棄した。
 ロングドラゴンの支配を解放せず、口からアイスランスを撃ち込んで殺す。
 マジックバッグにと思ったが、大きすぎて無理なので空間収納を試すとあっさり目の前から消えた。
 どうも腹の中に収まっている様な気分で余り気持ちの良いものではないが、冒険者達への見本なのだと自分に言い聞かせて諦める。
 ファングベアの仔もアイスランスで仕留めて空間収納に放り込む。

 東にタンザに向かって進むが、馴染みのゴールデンベアやブラウンベア等大きくて強いが、支配を持っているので〈退けっ〉と一喝して歩く。
 初めての地なので支配のない野獣が多く、無視させてくれない奴が現れた。

 魚の背びれの様なタテガミが見事な虎だが、身体も巨大でゴールデンタイガーの三割増し位の大きさがある。
 取り敢えず結界のバリアを張り(テイム・メインタイガー・194)ふむふむと虎をじっくり観察する。

 淡く光る結界越しとはいえ炯々と光る目は吸い込まれる様な迫力だが、恐れ気も無く見ている俺が不思議なのか、目の前まで近づいて来るといきなりの猫パンチ。
 〈ドン〉と音がするが爪が俺に届かないので、二度三度猫パンチを繰り出してくる。
 ストーンランスかアイスランスで倒せそうだが、面倒なので口の中にファイヤーボールを放り込み爆発させる。
 文字通り口から火を噴いて倒れたところで、土魔法を使って首を押さえ込みゆっくりと締め上げる。

 魔法が使えるって便利、野獣討伐も簡単で安心安全。
 ドラゴン系以外はそんなに苦労する事はなさそうなので、魔法を使う冒険者達なら多少の被害は出るだろうが対応出来ると思う。
 その後も、馬並みの大きさの狼でグレイウルフを大きくした様な見掛けのビッグウルフを支配に加えた後討伐して空間収納に入れる。

 面倒だったのがグリーンスネーク、太った緑色の蛇で体長は30m程度だと思うが胴体も太く、こんな奴に巻き付かれたら骨まで潰れそう。
 試しに結界のバリアを縦長の筒状にして誘ってみると、最初は飛びかかってきて一呑みにする気だった様だがバリアに阻まれてしまった。
 怒ってバリアに巻きつき締めてきたが、ドラゴンの体当たりに耐える強度なので無理そう。
 ミシッともならないので揶揄うのは止め、地面から柱を立ち上げて首に巻きつかせる。

 ぶっとい首輪に締め上げられ、蛇が暴れる暴れる。
 それこそ七転八倒した挙げ句縺れたロープの様になり、最後は尻尾の痙攣でテイムのタイミングだと思い、すかさずテイムして支配を手に入れる。

 ドラゴンの多い場所では、思ったよりも簡単に倒せて支配もさくさく手に入った。
 何せ、ロングドラゴンと違って腹の下に装甲が無いのだから、地面からランスを突き上げれば傷を負わせる事が出来る。

 ただ一頭、タートルドラゴン・・・しょせん亀だけどテイムではドラゴンと頭に浮かぶので、便宜上ドラゴンと呼ぶが手足と頭を引っ込めると、此方としては固い甲羅に手も足も出ない。

 ひっくり返すのも大変そうなので、手足を引っ込めたときに甲羅の周囲に柱を立てて動けなくし、頭の所へ薪を積み上げて火炙りの刑。
 熱くてジタバタしだすと頭も出て来るので、地面から伸びた柱を首に巻き付けて締め上げてからテイム。

 * * * * * * * *

 RとLの二頭と合流し、タンザに帰り着いたときには四ヶ月余りが経っていた。
 空間収納のエールはすっからかんなので、冒険者ギルドへ直行してエールを堪能する。
 一息ついて受付で銀貨一枚を支払って、タンザの楯宛に帰った報告の用紙を貼りだして貰い、再度食堂へ戻ってエールを楽しむ。
 滅多に来ないタンザの冒険者ギルド、ジロジロと俺を見ていく奴が結構多いが、丸腰でふんぞり返ってエールをあおる俺を遠巻きに見ている。

 「シンヤさん、何時タンザに戻ったんですか」

 問いかけて来る声に振り向くと、エライザが仲間らしき五人と立っていた。

 「さっきギルドに辿り着いて、エールを堪能しているところさ。調子はどうだ?」

 「ファングが良く働いてくれるので助かっています。薬草採取の時も、薬草を教えたら色々と見つけてくれました。今は〔風と剣〕ってパーティーに入れて貰い斥候役をしています」

 エライザが仲間の方を振り向き、嬉しそうに話す。
 無能なテイマーからそれなりに役立つ事を示せば、仲間も出来るって事か。

 「シンヤだ、宜しくな」

 「風と剣のリーダーをしていますアラドです。シンヤさんの噂は良く聞いています。お会いできて光栄です」

 ちょ、背中がこそばゆいぞ。

 「邪魔だ! 小僧共横へ寄れ! 低ランクのドチンピラは壁際に張り付いていろ!」

 アラドが謝罪して移動しようとするのに絡んで来る屑。

 「お前、この広い食堂で、テーブルの側に居る俺達の所へ来て邪魔だって喚くが、喧嘩を売りに来たのか? 飯を食いに来たのなら反対側だ。お前達こそ横へ寄れ」

 「あ~ん、猫なんか抱えて態度がでかい小僧だな」
 「見た事のない顔だな。何処のパーティーの者だ?」

 「俺はソロだよ。お前達の様に、群れて意気がる趣味はないからな。喧嘩なら買ってやるが、薬師ギルドで高品質なポーションを買ってからにしろ」

 「シンヤ、面白い事をしているわね。模擬戦ならあんたに賭けるから頑張れー」
 「帰って来たのなら連絡しろよ」

 「さっき帰って来たんだよ。エールがなくなったから飲みに来たのさ。張り紙は必要無かったな」

 「お前等、自分のランクをよーく頭に入れてから喧嘩を売れよ」

 「なんでぇ、俺達より小僧の方が強いってのか」

 「そう言っているだろうが。周りをよく見ろよ、模擬戦になれば知らない奴はお前等に賭けるだろうさ」
 「大穴だからなぁ」
 「大穴だけど底なしだから、配当は期待出来ないけどな」
 「万に一つもお前達が勝てる要素はないな。ポーションの用意はあるのか」

 〈グレン、余計な事を教えるなよ!〉
 〈高々Dランクでブイブイ言っている間抜けだ。そいつ等が血反吐を吐くところを見られたのに〉
 〈流れて来て意気がっていても、森の奥へ行けない腰抜けには丁度良い刺激だったのに〉
 〈姐さん、後でシールドを頼まぁ~〉
 〈あ~あ、面白い所だったのに〉
 〈おい、遠慮せずに続きをやれよ!〉

 野次馬に焚きつけられたが、分が悪いと思ったのかコソコソと食堂から逃げ出した。

 「で、どうだった?」

 「麓までは行ってきたよ。収穫もそれなりにかな。そっちは?」

 「昔話が少しね。後は昔の強制招集の話しだけだな。獲物を売ってくるので待っててくれ」

 グレン達が解体場へ向かったので、エライザに銀貨を渡してエールとつまみを買ってこさせる。

 「座りなよ。意気がる奴は長生き出来ないし、この街に居れば馬鹿にされるから消えるさ」

 「俺達、こんなど真ん中に座るのは初めてですよ」

 「俺だって初めてだよ。何時もは隅っこで飲んでいるんだけど。今日は真ん中が空いていたんだ」

 * * * * * * * *

 査定を済ませたグレン達に見せろとせがまれたが、ギルドで出したら大騒ぎ確実なので拒否し街の外へ連れ出す。
 小一時間以上街から離れて窪地を探し、ビーちゃん達に近くに人族がいない事を確認してもらう。

 「何か凄く慎重ね」
 「勿体付けるなよ」
 「早く見せてくれ!」

 「ギルドで出したら大騒ぎ確実だし、プラチナカードのSランクにされてしまうだろう」

 「良いじゃねぇか、久しくプラチナランカーなんて居なかった筈だし、貴族にしてもらえるぞ」

 「貴族なんてなりたくないよ。それより問題なのは、俺の魔法と加護を知られたら大騒ぎじゃ済まないからな」

 「魔法を五つも授かっているのを知られたら、そうなるわね」

 「違うんだよ、魔法は七つに加護が十個で魔力は710有るんだ。ギルドカードが新しくなったら、それが知られてしまうんだ。Aランクになった時はテイマーで加護持ち、魔力は10とギルドカードに掲載された。それが魔法が七つに加護の数は判らなくても魔力が710となっていたら、大騒ぎじゃ済まないだろう」

 「そんな馬鹿な!」
 「お前が魔法を使える事には驚いたし、アマデウス様の話も話半分で信じたが、流石にそれは吹きすぎだぞ」
 「ちょっと信じられんな」
 「魔法を七つ使えるって、火・土・氷に結界と転移魔法。それ以外に何が使えるの?」

 「治癒魔法と空間収納だよ。空間収納が使えなければドラゴンを持ち帰る事が出来ないよ」

 「治癒魔法を使えるのか?」

 「使えるよ。昔の古傷でも治せると思うので・・・」

 「じゃー、この傷は治せるか?」

 ドーランがズボンの裾を捲りあげると、変色した古傷が見えた。
 少し引き攣っている様だが、再生治療で治るはずと思い、少し魔力多めにして(元の様に綺麗に治れ・・・ヒール!)

 少し離れていたが、掌から溢れ出た治癒の光りがドーランの古傷に降りかかり、身体に吸い込まれた光りが溢れ出る。
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