124 / 170
124 殴り込み
しおりを挟む
一日借り切った辻馬車の御者に、王都は初めてなので広い道で王都を一巡りしてくれと頼む。
御者はお上りさんとみて気を利かせてくれたが、創造神アマデウスを称える大聖堂とアマデウス大神像。
俺が見たアマデウスと似ても似つかぬ神々しい姿に、笑いそうになってしまった。
闘技場に貴族学院、後は何やら記念堂とか劇場に商業ギルドと冒険者ギルド。
観光都市ではないので見て回る所が少なすぎ、この先がウルファング王国の王城だと教えられたところは巨大な石の門が建つ大通り。
お城も見てみたいと言ったが、衛兵が煩いので止した方がいいと言われてしまった。
王城の場所さえ判れば、無理して見る必要もないので素直に諦め、美味いエールの醸造所へ案内させる。
二日で六カ所の醸造所を巡り、仕入れたエールの樽の数は19樽、暫くは街に戻らなくてもエールに不自由はしないはずだ。
それから美味しいお茶の店を巡ったり茶葉や茶菓子をたっぷりと買い込んだ。
のんびり王都見物と市場での食料仕入れで10日程過ごしてから、冒険者の姿にもどるとホテルを引き払い、王都デュランディスを後にした。
ペイデン街道を小一時間ほど歩いてから草原に分け入り、街道から見えない場所に野営用結界を展開して陽が落ちるのを待つ。
* * * * * * * *
「ルシアン、見つけたわよ!」
「お目出度う御座います。どんな感じですか?」
「何かもやっとした感じね。身体の中にこんなものが有ったなんて驚きだわ」
「それを何時でも何処出ても直ぐに感知出来ますか?」
ルシアンに尋ねられて朝食の手を止めて魔力を探る
「今日の朝初めて感じたのよ、直ぐには無理ね」
「何時でも魔力を感じられるようになったら、次は魔力を捏ねたり引っ張ったりする練習です」
「あれを? あんな物どうやって触るの?」
「心の中で魔力を捏ねたり引っ張って遊ぶんです。あっ、子供の時の泥遊びみたいな感じでです」
「困ったわねぇ~、私は泥遊びって知らないのよ」
「えっ・・・そうでした。私は子供の時を思い出してそうしたんですが、ミレーネ様は泥遊びなんて出来なかったんですね。じゃあ、ブルーを撫でたり尻尾で遊ぶように魔力を触ってみればどうですか」
「そうね、試してみるわ」
* * * * * * * *
街道に人影はなし、入場門も固く閉じられていて衛兵の気配が僅かに感じられる。
入場門から横に移動し、ミーちゃんを塀の上に放り上げる。
塀の上で周囲を観察したミーちゃんが《マスター誰も居ません》と教えてくれたので、軽く膝を曲げてジャンプ。
俺の身長の4、5倍程度の塀なので楽勝、そのまま王都の暗がりに飛び降り灯りの消えた街の中を王城目指して突っ走る。
見覚えの有る巨大な石の門を避け、闇を拾って進むと城門が見え衛兵の姿も見える。
城門の左右には広い掘りが水をたたえて静まりかえっていて、俺のジャンプ力では飛び越せそうもない。
忍者装束は用意したが、みずぐもの用意は無いので正面突破に決めた。
ミーちゃんに元の大きさにもどって貰い、衛兵の足を引っ掻いておいでと送り出す。
暗がりを選んで衛兵に近づき、全力疾走で足下に近寄るミーちゃん〈ギャー〉と悲鳴が上がると〈ウワーァァ〉と再び悲鳴が上がる。
すかさず城門に走り寄ると、小さくなったミーちゃんを抱いてジャンプ。
城門の上に立ち、周囲を観察して人影のない城内に飛び降りると、建物の暗がりを目指して走る。
後ろでは衛兵の悲鳴が聞こえたのか、灯りが灯り騒ぎになっている。
中程度の建物を幾つか過ぎると、巨大な建物が正面にデンと横たわっていたので駆け寄りジャンプ。
しかし、高々四階の屋根に手が届かない。
スーちゃんのジャンプ力を貰った俺は、身長の10倍は跳べる筈なのに届かないって何だよ!
よく見たら此処はお城で、各部屋の天井が矢鱈と高い作りだったのを忘れていた。
特に、一階なんて馬鹿じゃねぇかと思うほど天井が高い。
俺の身長が約170cm、10倍なら17mなのに届かないなんて無駄な作りをしやがって。
仕方がないので三階の張り出しに手を掛けてぶら下がり、クーちゃん譲りの木登りの技を使い、柱を掴んで登り屋根の庇も難なくクリア。
建物がでかけりゃ屋根もでかく、屋根裏部屋も多そう。
明かり取りの窓から内部の気配を探り、人気のないのを確認して窓をこじ開けて侵入すると、ミーちゃんを偵察に出して俺は夜明けまで一休み。
* * * * * * * *
《・・・スター》《・・・てください。マスター》《マスター、明るくなりましたよ。起きてください》
《ああ、ミーちゃんお早う》
《大きい部屋と森の近くの家を見つけました》
《大きい部屋は何処にある?》
《マスターの寝ている下の近くです》
《有り難う。大きな部屋の外で待っててね。俺が行ったら、植え込みの陰にでも隠れていなよ》
さて、一暴れしてやるか。
覆面を被り手袋をはき、確り身支度を済ませて忍び込んだ窓から外へ出る。
戸締まりはきっちりして、俺が居た痕跡は少なくしておく。
屋根の上からミーちゃんを探すと、尻尾を振りながら上を見上げている。
《もういいよ、離れて》
ミーちゃんが建物から離れて植え込みの中に潜り込むのを確認し、ミーちゃんの居た場所へ飛び降りる。
ジャンプ能力を超える高さから飛び降りると、流石に着地のショックは大きいが怪我をする程ではない。
遠くで建物の周囲を警戒していた兵士達が騒いでいるが、無視して窓から中へ飛び込む。
うん、中々広い空間であるが、玉座は無い。
どうせ似たような部屋が近くにあるはずなので、大きな扉を引き開けて通路に出る。
ワゴンを押したメイドさんとごっつんことはならなかったが、俺を見てびっくりしているので「お早う、ご苦労様」と挨拶をしてすれ違い隣の部屋へ向かう。
扉と扉の間隔が広い所が大広間の筈なので、それを目印に部屋を確認して行く。
三つ目の部屋を確認していると、大勢の足音が聞こえて来た。
〈貴様! 何者だ!〉
〈屋根から飛び降りたと聞いたが、何処に居た!〉
「客人だ! 呼ばれてないけどな。ウルファング国王は居るか?」
〈なっ、痴れ者め!〉
〈取り押さえろ!〉
〈何処から侵入してきたのか聞き出すので、殺すなよ!〉
殺すなよって言いながら、腰の剣を抜いているじゃねぇか。
俺は短槍訓練用木槍を取り出し、相手をする事に。
「贈答品が欲しいのなら、頭を下げてお願いしろと国王に伝えろ!」
〈叩き潰せ!〉
吠え声と共に殺到して来る警備兵や騎士達だが、彼等の頭上を飛び越えて背後に回り最後尾の兵を捕まえて投げ捨てる。
突然頭上を飛び越され、戸惑う兵や騎士達の背後から仲間が飛んで来てドミノ倒しに状態になる。
ふん、と思ったが未だまだ湧いてくるので、倒れている奴を掴んでは応援の集団に向けて投げつける。
〈な、なな、何だ此奴は?〉
〈化け物か!〉
〈一斉に行け!〉
手槍を水平に並べて突っ込んで来るが、怪力無双で木槍を振り回して手槍を弾き飛ばす。
遠慮のない力で振り回したので、手槍が手から離れたときには衝撃で手首を骨折したようだ。
前列が手を押さえて膝から崩れ落ちて邪魔になり、後ろの兵や騎士達が怒声をあげる。
〈何をやっとる〉
〈さっさと叩き伏せろ!〉
〈邪魔だ! 退け!〉
お望みなら相手をしてやるよ。
叫んでいる奴を目掛けて跳び、顔を蹴り付けて次の男の頭を踏みつける。
広い通路が兵や騎士達で埋め尽くされているが、たった一人を相手にどうなってんの。
通路の壁を使った連続三角跳びを披露し、大きな扉の前に着地すると扉を全力で蹴り開ける。
部屋の中に入ると通路の騎士達が殺到してきたので、開いた扉を全力で蹴り付けた。
ギャグアニメみたいに、重い扉に跳ね返されて吹っ飛び、二人ほど扉に挟まれている。
さっきの部屋と比べ豪華だが、玉座らしき物は見当たらないので次をと思ったが、扉を押し開けて広間に雪崩れ込んで来る兵や騎士達。
面倒になって来たので、開いた扉を力任せに引っ張り引き剥がす。
室内に雪崩れ込んで来た騎士達が背後から攻撃してくるのだが、魔法付与の服は良い働きをする。
〈攻撃が通用しないぞ!〉
〈何故だ!〉
〈魔法付与の服だ! 宰相閣下に連絡しろ!〉
〈目を狙え!〉
引っぺがした扉は少々持ちにくいが、振り回して周囲の者達をなぎ倒す。
こりゃー使い勝手がいいなと思い、暇な時に長くて太い棒をマジックバッグに保存しておく事に決めた。
「宰相閣下、一大事です! 曲者が舞踊の間に乱入し、現在大暴れをしております」
「申し上げます。賊が訳の判らぬ事を叫び、国王陛下に伝えろと叫んでいます!」
「王城の、しかも、大広間に曲者が乱入したと言っているのか?」
「はっ、最初の報告では屋根の上から飛び降りたそうです」
ディオルス宰相は、報告される内容がさっぱり理解出来なかった。
「申し上げます! 賊は広間の扉を引き剥がし、振り回して抵抗する為に負傷者多数。魔法部隊の応援をお願い致します!」
「お前達は、何を言っている! 大広間の扉を振り回すだと、それに王城内で魔法攻撃をするつもりなのか?」
「閣下、宰相閣下、現場は大混乱です!」
「あれは化け物です!」
「建物内で暴れられては包囲攻撃すら出来ません」
「なら、建物から追い出せ!」
「それが、陛下を呼べとか何とか喚いていたのですが、この混乱で聞き取れません」
「お前が行って、確認してこい」
傍らの補佐官に命じる宰相は、訳の判らぬ状況に苛立っていた。
御者はお上りさんとみて気を利かせてくれたが、創造神アマデウスを称える大聖堂とアマデウス大神像。
俺が見たアマデウスと似ても似つかぬ神々しい姿に、笑いそうになってしまった。
闘技場に貴族学院、後は何やら記念堂とか劇場に商業ギルドと冒険者ギルド。
観光都市ではないので見て回る所が少なすぎ、この先がウルファング王国の王城だと教えられたところは巨大な石の門が建つ大通り。
お城も見てみたいと言ったが、衛兵が煩いので止した方がいいと言われてしまった。
王城の場所さえ判れば、無理して見る必要もないので素直に諦め、美味いエールの醸造所へ案内させる。
二日で六カ所の醸造所を巡り、仕入れたエールの樽の数は19樽、暫くは街に戻らなくてもエールに不自由はしないはずだ。
それから美味しいお茶の店を巡ったり茶葉や茶菓子をたっぷりと買い込んだ。
のんびり王都見物と市場での食料仕入れで10日程過ごしてから、冒険者の姿にもどるとホテルを引き払い、王都デュランディスを後にした。
ペイデン街道を小一時間ほど歩いてから草原に分け入り、街道から見えない場所に野営用結界を展開して陽が落ちるのを待つ。
* * * * * * * *
「ルシアン、見つけたわよ!」
「お目出度う御座います。どんな感じですか?」
「何かもやっとした感じね。身体の中にこんなものが有ったなんて驚きだわ」
「それを何時でも何処出ても直ぐに感知出来ますか?」
ルシアンに尋ねられて朝食の手を止めて魔力を探る
「今日の朝初めて感じたのよ、直ぐには無理ね」
「何時でも魔力を感じられるようになったら、次は魔力を捏ねたり引っ張ったりする練習です」
「あれを? あんな物どうやって触るの?」
「心の中で魔力を捏ねたり引っ張って遊ぶんです。あっ、子供の時の泥遊びみたいな感じでです」
「困ったわねぇ~、私は泥遊びって知らないのよ」
「えっ・・・そうでした。私は子供の時を思い出してそうしたんですが、ミレーネ様は泥遊びなんて出来なかったんですね。じゃあ、ブルーを撫でたり尻尾で遊ぶように魔力を触ってみればどうですか」
「そうね、試してみるわ」
* * * * * * * *
街道に人影はなし、入場門も固く閉じられていて衛兵の気配が僅かに感じられる。
入場門から横に移動し、ミーちゃんを塀の上に放り上げる。
塀の上で周囲を観察したミーちゃんが《マスター誰も居ません》と教えてくれたので、軽く膝を曲げてジャンプ。
俺の身長の4、5倍程度の塀なので楽勝、そのまま王都の暗がりに飛び降り灯りの消えた街の中を王城目指して突っ走る。
見覚えの有る巨大な石の門を避け、闇を拾って進むと城門が見え衛兵の姿も見える。
城門の左右には広い掘りが水をたたえて静まりかえっていて、俺のジャンプ力では飛び越せそうもない。
忍者装束は用意したが、みずぐもの用意は無いので正面突破に決めた。
ミーちゃんに元の大きさにもどって貰い、衛兵の足を引っ掻いておいでと送り出す。
暗がりを選んで衛兵に近づき、全力疾走で足下に近寄るミーちゃん〈ギャー〉と悲鳴が上がると〈ウワーァァ〉と再び悲鳴が上がる。
すかさず城門に走り寄ると、小さくなったミーちゃんを抱いてジャンプ。
城門の上に立ち、周囲を観察して人影のない城内に飛び降りると、建物の暗がりを目指して走る。
後ろでは衛兵の悲鳴が聞こえたのか、灯りが灯り騒ぎになっている。
中程度の建物を幾つか過ぎると、巨大な建物が正面にデンと横たわっていたので駆け寄りジャンプ。
しかし、高々四階の屋根に手が届かない。
スーちゃんのジャンプ力を貰った俺は、身長の10倍は跳べる筈なのに届かないって何だよ!
よく見たら此処はお城で、各部屋の天井が矢鱈と高い作りだったのを忘れていた。
特に、一階なんて馬鹿じゃねぇかと思うほど天井が高い。
俺の身長が約170cm、10倍なら17mなのに届かないなんて無駄な作りをしやがって。
仕方がないので三階の張り出しに手を掛けてぶら下がり、クーちゃん譲りの木登りの技を使い、柱を掴んで登り屋根の庇も難なくクリア。
建物がでかけりゃ屋根もでかく、屋根裏部屋も多そう。
明かり取りの窓から内部の気配を探り、人気のないのを確認して窓をこじ開けて侵入すると、ミーちゃんを偵察に出して俺は夜明けまで一休み。
* * * * * * * *
《・・・スター》《・・・てください。マスター》《マスター、明るくなりましたよ。起きてください》
《ああ、ミーちゃんお早う》
《大きい部屋と森の近くの家を見つけました》
《大きい部屋は何処にある?》
《マスターの寝ている下の近くです》
《有り難う。大きな部屋の外で待っててね。俺が行ったら、植え込みの陰にでも隠れていなよ》
さて、一暴れしてやるか。
覆面を被り手袋をはき、確り身支度を済ませて忍び込んだ窓から外へ出る。
戸締まりはきっちりして、俺が居た痕跡は少なくしておく。
屋根の上からミーちゃんを探すと、尻尾を振りながら上を見上げている。
《もういいよ、離れて》
ミーちゃんが建物から離れて植え込みの中に潜り込むのを確認し、ミーちゃんの居た場所へ飛び降りる。
ジャンプ能力を超える高さから飛び降りると、流石に着地のショックは大きいが怪我をする程ではない。
遠くで建物の周囲を警戒していた兵士達が騒いでいるが、無視して窓から中へ飛び込む。
うん、中々広い空間であるが、玉座は無い。
どうせ似たような部屋が近くにあるはずなので、大きな扉を引き開けて通路に出る。
ワゴンを押したメイドさんとごっつんことはならなかったが、俺を見てびっくりしているので「お早う、ご苦労様」と挨拶をしてすれ違い隣の部屋へ向かう。
扉と扉の間隔が広い所が大広間の筈なので、それを目印に部屋を確認して行く。
三つ目の部屋を確認していると、大勢の足音が聞こえて来た。
〈貴様! 何者だ!〉
〈屋根から飛び降りたと聞いたが、何処に居た!〉
「客人だ! 呼ばれてないけどな。ウルファング国王は居るか?」
〈なっ、痴れ者め!〉
〈取り押さえろ!〉
〈何処から侵入してきたのか聞き出すので、殺すなよ!〉
殺すなよって言いながら、腰の剣を抜いているじゃねぇか。
俺は短槍訓練用木槍を取り出し、相手をする事に。
「贈答品が欲しいのなら、頭を下げてお願いしろと国王に伝えろ!」
〈叩き潰せ!〉
吠え声と共に殺到して来る警備兵や騎士達だが、彼等の頭上を飛び越えて背後に回り最後尾の兵を捕まえて投げ捨てる。
突然頭上を飛び越され、戸惑う兵や騎士達の背後から仲間が飛んで来てドミノ倒しに状態になる。
ふん、と思ったが未だまだ湧いてくるので、倒れている奴を掴んでは応援の集団に向けて投げつける。
〈な、なな、何だ此奴は?〉
〈化け物か!〉
〈一斉に行け!〉
手槍を水平に並べて突っ込んで来るが、怪力無双で木槍を振り回して手槍を弾き飛ばす。
遠慮のない力で振り回したので、手槍が手から離れたときには衝撃で手首を骨折したようだ。
前列が手を押さえて膝から崩れ落ちて邪魔になり、後ろの兵や騎士達が怒声をあげる。
〈何をやっとる〉
〈さっさと叩き伏せろ!〉
〈邪魔だ! 退け!〉
お望みなら相手をしてやるよ。
叫んでいる奴を目掛けて跳び、顔を蹴り付けて次の男の頭を踏みつける。
広い通路が兵や騎士達で埋め尽くされているが、たった一人を相手にどうなってんの。
通路の壁を使った連続三角跳びを披露し、大きな扉の前に着地すると扉を全力で蹴り開ける。
部屋の中に入ると通路の騎士達が殺到してきたので、開いた扉を全力で蹴り付けた。
ギャグアニメみたいに、重い扉に跳ね返されて吹っ飛び、二人ほど扉に挟まれている。
さっきの部屋と比べ豪華だが、玉座らしき物は見当たらないので次をと思ったが、扉を押し開けて広間に雪崩れ込んで来る兵や騎士達。
面倒になって来たので、開いた扉を力任せに引っ張り引き剥がす。
室内に雪崩れ込んで来た騎士達が背後から攻撃してくるのだが、魔法付与の服は良い働きをする。
〈攻撃が通用しないぞ!〉
〈何故だ!〉
〈魔法付与の服だ! 宰相閣下に連絡しろ!〉
〈目を狙え!〉
引っぺがした扉は少々持ちにくいが、振り回して周囲の者達をなぎ倒す。
こりゃー使い勝手がいいなと思い、暇な時に長くて太い棒をマジックバッグに保存しておく事に決めた。
「宰相閣下、一大事です! 曲者が舞踊の間に乱入し、現在大暴れをしております」
「申し上げます。賊が訳の判らぬ事を叫び、国王陛下に伝えろと叫んでいます!」
「王城の、しかも、大広間に曲者が乱入したと言っているのか?」
「はっ、最初の報告では屋根の上から飛び降りたそうです」
ディオルス宰相は、報告される内容がさっぱり理解出来なかった。
「申し上げます! 賊は広間の扉を引き剥がし、振り回して抵抗する為に負傷者多数。魔法部隊の応援をお願い致します!」
「お前達は、何を言っている! 大広間の扉を振り回すだと、それに王城内で魔法攻撃をするつもりなのか?」
「閣下、宰相閣下、現場は大混乱です!」
「あれは化け物です!」
「建物内で暴れられては包囲攻撃すら出来ません」
「なら、建物から追い出せ!」
「それが、陛下を呼べとか何とか喚いていたのですが、この混乱で聞き取れません」
「お前が行って、確認してこい」
傍らの補佐官に命じる宰相は、訳の判らぬ状況に苛立っていた。
981
お気に入りに追加
2,285
あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる