能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

暇野無学

文字の大きさ
上 下
91 / 170

091 交代要員?

しおりを挟む
 〈おいおい、凄い腕自慢が来たぞ〉
 〈かーっ、清々しいほどの勘違い野郎だな〉
 〈テイマーがソロだってよ〉

 「ん、お前テイマーか?」

 「そうです。タンザの招集の時には、腕利きのパーティーにバックアップをして貰っていたんです。このパーティーだと俺が面倒を見なきゃならなくなって討伐にならない」

 「お前の使役獣は?」

 「此のミーちゃんと・・・」

 〈ミッ、ミーちゃん〉
 〈だっ、駄目だ〉
 〈久々に強烈なギャグを聞いたぜ!〉

 傍らで聞いていた奴等が吹き出して大笑いしやがるので、殺気、王の威圧をぶつけると同時に、眼光で睨み黙らせる。
 一瞬で半数は黙り込み、残りは武器を手に身構える奴や、もたついて焦る奴。

 「ミーちゃんとフォレストウルフ二頭だけど」

 「フォレストウルフ二頭だと・・・もう一度ギルドカードを見せろ!」

 「お前があのシンヤか」俺のカードを手に、サブマスが頷きながらぼそりと呟く。

 〈お前! 良い度胸じゃねえか〉
 〈俺達に殺気を向けるとは、死にたい様だな〉

 「喧しい! 此奴に喧嘩を売るつもりなら、強制招集が終わってからにしろ! その時に遣り合う気が残っていたらな」

 騒ぐ奴等を一気に黙らせるとは、このサブマスも中々の威圧と貫禄だな。

 「そいつ等の腕はそんなに悪いのか?」

 「此処へ来る時に、フレイムドッグの群れと出会った。その時に倒した物を持っているので見てくれ」

 「判った。広場で見せて貰おうか」

 サブマスについて村の広場に行き、マジックバッグからフレイムドッグを取り出して並べる。
 その隣りにフェルザンが仲間の分も含めて八頭を並べる。

 〈おいおい、奴のは全て一撃・・・ていうか、殴り殺しているのもあるぞ〉
 〈それよりも隣を見ろよ〉
 〈あー、こりゃーDランクパーティーだな〉
 〈それよりも見ろよ、Dランクパーティーにしては、下手糞が混じっているぞ〉
 〈フレイムドッグをこんなに傷だらけにするってのは、ちょっとした才能が必要だな〉
 〈中々の才能と言いたいが、こんな奴が混じっていたら足を引っ張られるて死ぬぞ〉
 〈あれだ、仲間からおこぼれを貰ってランクアップした手口だな〉
 〈時々いるんだよな。仲間よりランクが下だと拗ねる奴〉
 〈そんなお子ちゃまが混じっているパーティーと、組みたくないのは当然だな〉

 「此れをやったのは誰だ?」

 聞かれたフェルザンが困った顔でエザードを見る。

 「此の男を外したら・・・」

 「駄目だ、タンザでは俺の手が回らないときは、バックアップのパーティーに流していたんだ。ブラックベアやキングタイガー程度ならパーティーだけで始末できる腕でないとな」

 〈おいおい、ソロのくせに大きく出たな〉
 〈サブマス、そんな奴は一人でやらせろよ〉
 〈だな、それだけの自信があれば出来るだろう〉

 「そこで笑っている馬鹿共とやるのなら、俺は一人の方が良いな」

 「判った、ちょい獲物が多い場所だから、手に余れば後ろに流せ。お前の配置は、防御線の少し前になるので防御線の所まで案内させる」

 「判った、交代は来るのか?」

 「マジックポーチが一杯になったら下がって良いぞ」

 〈おい、マジかよ〉
 〈一人で防御線の前に出すのか〉
 〈奴って、そんなに凄腕なのか〉

 * * * * * * * *

 サブマスが付けてくれた案内人について、配置位置の手前まで連れて行って貰ったが、そこに居たパーティーの男はフーちゃん達を見て俺に名前を尋ねてきた。

 「シンヤだ、此処より少し前に出るので、手に余る物は後ろに流すから宜しく」

 「フォレストウルフ二頭と猫か、噂は聞いているぜ。俺達の所へは可愛い奴を流してくれよ」
 「噂通りなら、大物は任せたぞ!」
 「此れで一息付けるな」
 「その前にお客さんだ、2頭居るぞ」

 指差す先にレッドベアが見えると、フーちゃん達が左右に分かれて駆けだし、ミーちゃんも元の大きさに戻って俺の横を走る。

 〈おいおい一人で向かったぜ〉
 〈噂通りの様だな〉
 〈ああ、お手並み拝見といくか〉
 〈それより、正面から行くか!〉
 〈いや、ウルフが何かしているな〉
 〈おっ、飛び込んだぞ!〉
 〈畜生、此処からじゃ遠すぎる〉
 〈近くで見たいのなら行っても良いが。俺は此処からで十分だ〉

 〈おっ、一頭やったぞ!〉
 〈凄えなぁ。レッドベアを手玉に取ってるぞ〉
 〈噂どおりってか、噂以上じゃねえか〉
 〈あっさり二頭を倒して、マジックバッグにポイかよ〉
 〈相当容量の大きいマジックバッグらしいな。羨ましいぜ〉
 〈欲しいのなら確り稼がなきゃな〉

 レッドベアを倒した後は、2時間程前進して目印の岩に到着して一休み。
 その間に出会ったのはホーンボア一頭だけで、タンザ程ではなさそうな気配に一安心。
 しかし、ミーちゃんも大物狩りに慣れたのか、レッドベアの正面から飛び込み鼻先に乗ると目を狙って爪を立てる。
 レッドベアが驚いた隙に、俺が飛び込んで一突きして討伐完了と楽な物だ。

 フーちゃん達に交代で見張って貰い、ミーちゃんは近くの木の上で寛ぎながら監視し、俺はのんびり食事を済ませてお茶を楽しむ。

 * * * * * * * *

 「サブマス、帰ったぜ」

 「おお、ご苦労。現場の様子と送り込んだ奴はどうだ?」

 「タンザ程酷くねえな。あの時は凄腕が相当集まっていた様だし。奴の事も話しに聞いていたが噂以上だな」
 「レッドベア二頭をあっと言う間にかたづけて持ち場に向かったぜ」

 「タンザの時の噂は聞いているが、バックアップに付いたパーティーも腕が良かったらしいな」

 男がタンザで見聞きしたシンヤと、バックアップに付いたタンザの楯との連携の凄さを話す。
 別の男が、遅れて参加したシンヤと知り合いの土魔法使いのパーティーは、シンヤと競う様に討伐数を増やして有名だったと伝える。

 交代で帰ってきてその話を聞いていた男達の一人が、話しに割り込んできてシンヤの行った場所をサブマスに尋ねている。

 「それを聞いてどうするんだ?」

 「サブマス、俺は冒険者をやっているが歴とした子爵家の一員だ」

 そう言うと、子爵家の家族を示す身分証を突きつける。

 「ほう、貴族のお坊ちゃまが、落ちぶれて冒険者になっているのか。小遣い稼ぎは実力に見合った野獣を相手にしろよ。俺達と違って、野獣は貴族の穀潰しに遠慮しないからな」

 「無礼な! その言葉を取り消せ!」

 怒鳴った瞬間、サブマスから発せられた殺気によって黙らされる。

 「貴族の穀潰しが何を偉そうにぬかす。お前も貴族の身内を名乗るのなら、ギルドと王家の取り決めを知らない訳はないよな。クルト・ホーヘンか王都の本部へ報告させて貰うが、相応の覚悟はしておけよ」

 「お許し下さい!」即行で土下座をして、掌返しの謝罪を口にする。

 周囲の冒険者が興味津々で見守っていたが、見事な土下座を見て失笑するがサブマスの目付きは険しいままだ。

 「シンヤの持ち場を教えてやるので、奴のサポートをしろ。お前の思いどおりに出来たら、今の事は忘れてやる」

 「サブマス、本気ですかい?」
 「こんな、洟垂れに奴を差し出すんですか?」

 騒ぎ出す冒険者達を見て、ニヤリと笑うサブマス。
 その笑いを見て察した冒険者達も、ニヤリと笑って抗議の声をしずめる。
 シンヤを持ち場に案内した者が呼ばれ、クルト達七人をシンヤを案内した場所まで送ってやってくれと頼む。

 「此の男が案内してくれるのでついていけ! 案内料は銀貨二枚な。貴族のお坊ちゃまなんだからケチるなよ」

 それを聞いた男が嬉しそうに掌を突き出す。
 渋い顔で銀貨を払い「案内しろ!」と横柄に命じるが、周りの冒険者達がニヤニヤ笑いで案内の男に頷く。

 * * * * * * * *

 「おっ、交代が早いじゃねえか」

 「あー違うよ。シンヤって人の所へ行くってさ。サブマスに此処まで案内して、方角と目印を教えてやってくれと頼まれたんだ」

 「ヒョロそうなのばかり七人で大丈夫なのか?」

 「ふん、俺には凄腕の魔法使いが配下にいるので問題ない」

 「魔法使いか、なら大丈夫かな。此処から西へ2時間程行けば目印の石が見える筈だ」

 「なんだ、案内してくれないのか?」

 「恐けりゃ行くのを止めな。奴は一人で行ったって聞いたぞ」
 「お前達は七人もいるし魔法使いもいるんだろう」

 「判った、行くぞ、ヨシ」

 「へいへい、行きゃー良いんでしょ」
 「兄貴、獲物が多いのなら稼ぎになりますぜ」
 「タンザに行きそびれたので、此処で稼ぎましょうや」

 「おう、テイマー如きが倒せる野獣なら、俺の雷撃で黒焦げにしてやるよ」

 「その男を我がホーヘン家へ奉公させることが出来れば、父上も喜ばれて褒美を貰えるぞ」

 「五男坊が偉そうに、もっと金を寄こせってんだ」

 「ん、何か?」

 「いえいえ、独り言ですよ・・・馬鹿!」

 * * * * * * * *

 《マスター、人族が七人やって来ます》

 人族って、この持ち場は俺一人の筈なので、他のパーティーが迷い込んだのかな。

 「クルト、あれじゃねえのか?」

 「クルト様だ! 何度言えば判るんだ」

 「へいへい、自分で様を付けて恥ずかしくないんかねぇ~。おい、奴がシンヤに違いないか確かめてこい!」

 「兄貴、フォレストウルフがいるので間違いなさそうですぜ」

 「だ、そうですぜクルト・・・様」

 明らかに俺目当てで来ている様なので、用心の為にフードを被っておく。
 声も掛けずにやってくると、フーちゃん達と俺をジロジロと見て鼻で笑う。

 「自分の持ち場も判らない間抜けなのか」

 「シンヤだな。サブマスに聞いたとおりなので間違いない」

 又々厄介事の様だが、サブマスに聞いただと?

 「そうか、では俺は暫く寝るので交代してくれ」

 「待て! 勝手な事は許さん。マリンカル領トランドの領主、ノイエス・ホーヘン子爵が五男、クルト・ホーヘンの麾下に加えてつかわす!」
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

処理中です...