能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

暇野無学

文字の大きさ
上 下
75 / 170

075 思わぬ出会い

しおりを挟む
 俺の攻撃に耐えた結界障壁を、満足そうに見て微笑むアリエラと褒める亭主。
 なかなか微笑ましいが、この程度の結界を破る方法はあるのだけれど、喜びに水を差すほど野暮じゃない。

 * * * * * * * *

 交代のパーティーに後を任せ、二度目の休息の為にタンザの街に戻ると冒険者ギルドに直行したが、前回同様人で溢れかえっている。
 買い取り受付ではサブマスが仕切っていて、俺達の顔を見ると二階の会議室へ行けと言われた。
 首を捻るグレンの後に続いて会議室に行くと、此処も冒険者達で溢れていた。

 「ギルマス、何の用ですか」

 「おう、ご苦労。どんな塩梅だ?」

 「湧いて出るって感じですよ。一番酷い場所をあてがったんじゃないでしょうね」

 「まぁ多い場所の一つではあるな。それでお前達の所にもう一組加えようと思ってな。知り合いでもいれば連れて行ってくれ。いなけりゃ適当なパーティーをあてがうから案内してくれ」

 「シンヤさん! 何でこんな所にいるんですか?」

 そんな事を話している俺達の背後から、俺の名を呼ぶ声がした。
 振り向けば、フランがお目々をまん丸にして叫んでいたし、オシウスの牙の面々がニヤリと笑っている。

 「フラン、どうしたの?」

 「ザンドラの冒険者ギルドから招集が掛かって、タンザへ応援に行けと言われたんですよ」

 「おー、お前達が知り合いなら丁度良い。何て名のパーティーだ?」

 「オシウスの牙ですよ」

 「それじゃ、タンザの楯とオシウスの牙にシンヤで頼むわ」

 「又ですか、て言うより、さっき帰ってきてエールも飲んでないんですよ」

 「判った、エールを飲んだら頼むぞ」

 真面に聞いちゃいないね。
 ドラドをグレンに紹介して取り敢えずエールを飲みに食堂へ行くが、人が多すぎて飲むのに苦労しそうだ。

 「飲めそうもないが、どうする?」

 「取り敢えず獲物だけ放り出して街へ繰り出そうぜ」
 「飲まなきゃ街から出ねえぞ!」

 「あんた達はどうする?」

 「のんびり飲める雰囲気でも無さそうなので、取り敢えず獲物を見せてくれないか」

 解体場も混雑していて順番待ちの行列が出来ているので、見た瞬間にゲップがでそうだった。

 「あ~あ、此処だけは逃げ出す訳にもいかないな」
 「マジックバッグを空にしなきゃ、討伐しても捨てるだけになるからな」

 「シンヤさんは、どうしてこの街に?」

 「知り合いを訪ねてきて、序でにゴールドマッシュを採取していたんだ」

 「あ~、ミーちゃんとフーちゃんがいるからね」

 「その後タンザの森の見物をしていて、帰ろうかと思ってギルドに獲物を売りに来たら、強制招集に引っ掛かったんだよ」

 「なんだ、シンヤもDランクになっていたのか」

 「運の悪いことにね。しかしザンドラにまで応援要請をしてるって事は、大事なの?」

 「何十年に一度らしいぞ。普通は王都の南から呼び寄せる何て事はしないって聞いたな」

 解体係の職員が俺達の顔を見てやって来る。

 「おい、タンザの楯が来ているのなら声を掛けろよ」

 「割り込んじゃ悪いと思ってな」

 「今回も多いのか?」

 「ああ、シンヤのマジックバッグに大物がたっぷりな」

 「じゃあー奥へ来てくれ」

 解体係に呼ばれて奥へ向かうと、順番待ちの列から怒号が飛んできた。

 「おい、俺達を待たせてそいつ等を先に回すとは何だ!」
 「同じ様に討伐に駆り出されているんだぞ! 舐めた真似をするとただじゃ済まさねぇぞ!」

 「あー、あんた。獲物は何を持ってきたんだ?」

 「それと、そいつ等を優先する事に何の関係が有るんだ!」

 「あるから聞いているんだよ。獲物はなんだい?」

 「オーク三頭とホーンボアにグレイウルフ五頭だ!」

 「ふーん、で、そっちの兄さんも不服らしいが獲物は?」

 「ブラックベアとハイオーク二頭にハウルドッグ八頭だ!」

 「少ないね。それじゃ列に並んでもらわないと駄目だな」

 「なら、そいつ等の獲物はなんだ!」

 「グレンさん、今回も同じ様な物かい」

 「ああ、殆どシンヤが狩った物だけど、ベア類だけでも20頭くらいだな」

 「だ、そうだ。大物で数も多いから、其方に並ばせると後ろがつかえて仕事にならなくなるんだよ。嘘だと思うのならついて来なよ」

 解体係にしれっと言われて二の句がつけないのか、文句を言っていた奴等が黙り込んだ。

 〈またかよ! 前回も大物ばかり狩って来て大騒ぎになっていたからな〉
 〈ギルマスがCランクに格上げして、俺達より奥へ行かせているからな〉
 〈彼奴らの後ろを受け持った連中は大物以外のオークやドッグ系草食系か殆どだと言っているぞ〉
 〈大物をタンザの楯が狩っていて、小物を後ろに流しているって噂だからな〉
 〈それでもオークを含めて手子摺る物ばかりだからな〉

 「シンヤさん、何か凄いことを言ってますが、そんなに危険な場所なんですか?」

 「ん、フランなら問題ないよ。シェルターとストーンランスで楽勝さ。練習は続けているんだろう」

 「勿論ですし、使える回数も増えましたよ」
 「おお、今じゃフランはオシウス村一番の使い手だし、一人で遠征も出来るぞ」

 「ほっほ~う、それじゃフランに頑張ってもらおうかな」

 解体係の示した場所に獲物を並べて行くが、ドラドさん達オシウスの牙が知っている、以前の俺と現在の差に驚いている。

 ゴールデンベア、3頭
 ブラウンベア、4頭
 レッドベア、4頭
 ブラックベア、8頭
 キングタイガー、3頭
 ファングタイガー、5頭
 ビッグキャット、3頭
 ブラックキャット、4頭
 ビッグホーン、2頭
 オークキング、1頭
 ハイオーク、9頭
 フォレストウルフ、24頭
 グレイウルフ、18頭
 バッファロー、7頭
 ビッグエルク、13頭
 ホーンボア、11頭

 「相変わらず凄い獲物だな」

 「サブマスの指示した場所に行ったら、次々と出て来るんですよ」

 「そりゃー、サブマスはあの辺で稼いでいた冒険者だ、獲物の通り道は良く知っているからな」

 「なに、それ!」
 「かー、サブマスに嵌められたのか」
 「獲物の通り道に俺達を送り込んだのか」
 「俺達だけじゃあんな所は即座に放棄だな」
 「シンヤがいなきゃ死んでるわよ。頼りにしているわよ、シンヤ」

 「今度はフランもいるから気楽に出来るよ」

 「へえ~ぇ。シンヤがそう言うのなら、あんたも相当な使い手なのね」

 「フランの魔法を良く見ていれば、勉強になるよ」

 〈おい、見ろよ!〉
 〈今回も凄えなぁ~〉
 〈幾ら獲物がいるからって、奴等の持ち場は御免だな〉
 〈それをホイホイ狩ってくるんだからなぁ~〉

 獲物の査定が終わったら、タンザの楯と俺の口座に均等に振り込んでくれと頼み、煩くなった解体場から逃げ出す。
 グレン達オシウスの牙が黙ってついてくるが、フランだけはどんな所かと興味深げに聞いてくる。

 * * * * * * * *

 市場で大量の食料とエールの樽を仕入れて街を出ると、デエルゴ村へ向かう途中で数日間休みを取ることにする。
 フランに頼み、総勢13名が宴会が出来るドームを作ってもらい、その中で親睦を兼ねた酒盛りが始まった。
 しかし、アリエラがフランのドーム作りを見て驚愕し、フランの側に座り込んで彼此尋ねている。

 聞かれてフランが俺の方をチラチラ見るので「知っている事は教えてあげなよ」とにっこり笑っておく。
 俺が色々と説明する手間が省けるってものだ。
 フランも、説明より実際に目の前で作りながらの方が説明しやすいと思ったのか、明日の朝に作って見せますと逃げて宴会に加わってしまった。
 そこで俺に目を向けるアリエラだが、フランの魔法を見ながらの説明が一番判り易いので明日だと、エールをあおる。

 久し振りに外部の音が聞こえないドームの中で寝ているのに、朝早くからアリエラに叩き起こされてしまった。
 腕の中にいたはずのミーちゃんは、アリエラに抱えられて迷惑そうに《マスター、爪を立てちゃだめですか》と聞いて来る。
 許してやりたいが、軽く爪を立てても怪我は確実なので不許可。
 外に出ると、フランが眠そうな顔で待っていた。

 「悪いね、こんなに熱心だとは思わなかったよ」

 「なにを言ってるのよ。あんたの言った魔力の流れを毎晩確かめているのに、それから先を教えてくれないからよ」

 「でも、結界は未だに14~15枚しか作れないのだろう。魔力を少なく出来る様になってからだよ」

 「アリエラさん、魔力を減らしても同じ魔法を使えますよ。俺の時も、シンヤさんに教えられて苦労はしましたけど出来る様になりました。ほんの僅かずつでも減らしていけば、魔法が発動しない限界も判りますし、使える回数も増えます」

 「魔力の使用量を減らすのは寝る前に続けるとして、フランのシールドから見てもらおうか」

 フランが頷き「シールド」と声に出すと同時に、10m程前にシールドが一瞬で立ち上がる。
 連続三回シールドを立てると、続けてシェルターを自分を包む様に作る。

 「なに、此れ?」

 「緊急時のシェルター、避難所だよ。此れの応用が野営用のドームになるのさ。多分、俺の全力攻撃にも耐えられると思うよ」

 「それ、良いですね。今のところ誰にも壊されてないけど、シンヤさんの攻撃に耐えられたら安心ですよ」

 「フランに俺の全力攻撃を見せたことはないはずだぞ」

 「いやいや、シンヤさんの力は獲物を見れば判りますよ。ゴールデンベアの頭の傷を見れば、並みの力じゃないと判ります」

 「そうよね、ゴールデンベアの頭に一撃なんて並みじゃないわ。力自慢の獣人族でも頭なんて攻撃しないわよ」

 お言葉に甘えて短槍を取り出し、軽く助走をつけて魔鋼鉄の短槍をシェルターに叩き付ける。
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

処理中です...