能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

暇野無学

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031 レブンの自爆

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 「落ち着けよ。炎のレブンちゃん、それともお漏らしのレブンって呼んでやろうか」

 〈ブッー〉とか〈ブハッ〉とか聞こえて来る。

 「お前の望み通りになったじゃないか。おまけには分け前をやらないって言いだしたのはお前だぞ」

 「そうだ! お前が言い出した事だし、本来は俺達オシウスの牙にこの二人が同行する話だったんだ。シンヤよりお前の方がおまけだな」
 「討伐もフランが全てやった事だしな」
 「そうそう、あの大きさのホーンボアでも俺達の手に余る」
 「メンバーに魔法使いが居ない悲しさだな」
 「ブラウンベア討伐も、シンヤの案内と手助けが有ってこそ出来た事だ」
 「お前は、フランやシンヤのただ飯を食っていただけだ」

 「と、言う事で俺は分け前を受け取れないし受け取らない。当然お前の言葉通りにお前も無しって事だが、文句はあるまいな。それと、毒消しのポーションを買っておけよ。まさかとは思うが、2本目もただで飲めるとは思っていないよな」

 フランが、あちゃーって顔をして天井を見ているが、俺に喧嘩を吹っ掛けてきたのは奴だからな。
 まっ、フランに嫌がらせをしているのを知った時から、潰してやろうと狙っていたんだ。

 「フラン、臨時収入の確認に行こうぜ」

 精算カウンターでギルドカードを渡し、振り込み確認をして貰ったが3,742,500ダーラ。
 ランク1のマジックポーチと、残り二つはランク不明だったが予想よりも多い。

 「思ったより多かったですね」

 「伯爵様とギルドが金貨10枚ずつに、捕らえた10人分の褒賞込みだからな。首謀者逃亡で、一番多い奴に逃げられたのが痛いよな」

 「シンヤ、本当に要らないのか?」

 「要りません! 臨時収入もたっぷり入ったので問題ないです」

 書き留めてくれた用紙を振って見せ、金貨37枚を受け取り端数は預けておく。

 「ほう、話しに聞いてはいたが、シンヤも結構稼いでいるんだな」

 「誰かさんみたいな、間抜けな奴が結構多いので助かっています」

 「では6人で分配だが、割り切れないので一人頭270,000ダーラな。残りは飯代だ」

 それぞれが精算カウンターで金を貰いほくほくだが、レブン一人が泣きそうな顔でそれを見ている。
 自分で言い出したんだ、それを皆に突っ込まれてどうにもならなくなったのには笑える。

 「俺達は買い物を済ませたら明日には帰るが、お前達はどうする?」

 「フランはたっぷり買い物をするつもりの様ですし、俺も一緒に村へ行きますよ。スーちゃんを置いてきたし、村で色々試したい事もありますので」

 ドラドさん達と別れ、フラン兄弟と隣の冒険者御用達の店に直行する。

 * * * * * * * *

 フランは冒険者御用達の店に入るとカウンターへ直行し、マジックポーチを買い使用者登録を兄にさせる。
 両親用にも2個買い、店の親父と兄を驚かせている。

 爆買い中のフランを放置して、俺は冬に備えて衣服を見繕い手袋や寝袋代わりのフード付きマントに、マットレス代わりの毛皮を買い込む。
 序でに短弓の矢が軽いので鏃の重い物を20本購入。
 合計401,000ダーラを支払っていると「フラン、そんなに入らないぞ」って声が聞こえる。
 父と兄用の服やブーツに、ナイフに手槍とごっそり抱えている。
 村の生活では冒険者用の物が頑丈で使い勝手が良いからといっても、買い過ぎだろう。

 「金のあるうちに、当面必要な物を買って帰るよ。母さんの物や調理器具に調味料類もね」

 こりゃー2,3日買い物に付き合わされるなと覚悟した。
 母親への衣類や祖父母への土産にと彼此買いあさり、ランク4のマジックバッグで足りるのかと心配したが、商業ギルドに預けた金に手を付けることは無かった。
 食料もたっぷり買い込み、ザンドラを後にオシウス村に向かったのは6日めの朝だった。

 「どうかな?」

 「4,5人はいると思いますよ。ちょっと派手に買いすぎたかな」

 「あれを、ちょっととは言わないと思うよ」

 「お前が帰ってきて、確り稼いだからと親父に金貨を渡したときは仰天したが、こんなに金を持っていたのか」

 「あっ、もう手持ちは殆ど無いよ。シンヤさんと組んでから大変だったけど、その分稼ぎになったからね。シンヤさんを見習って、金の有るときに必要な物を買うことにしたんだ」

 「それにしても買い過ぎだろう」

 「グランさん、今のフランの腕なら金は幾らでも稼げますよ。今回の分け前を見たでしょう」

 「シンヤは受け取らなくても良かったのか?」

 「ギルマスに呼ばれて話を聞いて、それで金貨37枚と少々ですよ。俺もフランと同程度稼いでますので心配ないです」

 「それよりどうします?」

 「直ぐには来ないだろうし、途中でビーちゃんに任せるよ」

 「何の話だ?」

 「あっ、俺の護衛みたいな蜂の話です」

 「そういえばテイマーで、テイマー神の加護を授かってるそうだな」

 「ええ、お陰で大助かりですよ。ほんっと、感謝してます」

 早めに野営地を決めようと街道から外れると、草叢にかくれる様に急接近してきたが、ビーちゃん達の無差別攻撃を受けて逃走。
 街道まで戻れた奴も、草原の草叢に潜り込んだ奴も全て動かなくなったと教えてくれたので、ドームの外にお肉を置いてお疲れ様と労っておいた。

 * * * * * * * *

 たっぷり入れておいた食料を食い尽くし《マスター、お腹すいた》の第一声に迎えられた。
 途中で狩ったホーンボアの内臓を与え、心ゆくまで食べさせてやった。
 小さい割に食欲旺盛で、スライムってこんなに食べるのかと思ったが、どうやら食いだめらしい。
 スライムの大きい奴も、餌が無いと小さくなるとドラド達から聞いて脱力。

 フランがお土産を持って家族の元へ行くと、俺はスライムのスーちゃんをお供に村を出て森に向かう。
 門衛に余り遠くへ行くなと注意を受けたが、少し離れた場所で野営用結界を置いて訓練するのだと告げて村を出た。
 ただ、ちょっと訓練の方法が違うので他人に見られたくないだけだ。

 手頃な木の近くに野営用結界を展開し、スーちゃんを連れて木の下へ行く。
 地上から3mの所に印を付け、5m、7m、9mにも目印を付ける。

 《スーちゃんは此処に居て、合図をしたら真上に跳んでくれるかな》

 《はい、マスター》

 スーちゃんの返事を聞きながら急いで木の下から離れる。

 《良いよー、跳んで見て》

 プルッとしたかと思ったらポーンといった感じで垂直上昇。
 推定7mの印より身体一個分低い所まで跳んだので6.6、7mかな。
 スーちゃんが身体の20倍の高度までジャンプ出来るのなら、能力を貰った俺が何処までジャンプ出来るかだ。

 周囲に人が居ないのをビーちゃんに確認して貰い、クーちゃんの木登りを使って全力の木登りから試す。
 登っていて此れって本当に俺が登っているのと驚くほど素速く登れる。
 揺れる梢の先迄は無理だが、幹の太さが6,7cmの所まで登れたが揺れる揺れる。
 降りるのも自然に危なげなくスルスルと降りることが出来たので、木登りの能力確認ヨシ!

 次はジャンプだが、此れを一度に全力で跳ぶのは着地が恐い。
 目印の前に立ち、軽く膝を曲げてそのままジャンプ。

 〈オワーッ〉軽く5mの印が目の前に来たぞ。
 日本での身長が172cm、此の世界でもほぼ同じで度量衡も同じとしても跳びすぎだろう。
 5mの印が目の前に見えたので、3.4mくらいは跳び上がった事になる。
 着地も殆ど衝撃も無くできたので、再度軽くジャンプ。
 二度目もほぼ同じ5mの所まで跳び上がったので、着地と同時に少し強くジャンプする。
 7m越え、次いで9mを越えたところで、枝が邪魔になり危険なので中止する。

 身長の5倍まで跳んだことになるが、最後は膝を曲げて垂直跳びの様に跳んだが全力では無い。
 多分全力で跳ぶと身長の7,8倍は跳べるだろがあまり必要無さそうだ。
 問題は前方にどれ位跳べるのかと、左右と後方だが広い場所が無い。
 障害物の無い開けた場所でも、20数メートル程度の空き地しか無いので軽く測定したが、両足揃えてせーので一気に跳べた。

 片足を前に踏み込めば、右足で踏み込んで左足が地面に着く前に飛び越え、目の前の藪に突っ込んでしまった。
 全力測定は危険なので、身体のコントロールに重点を置いての訓練に切り替える。

 * * * * * * * *

 めっきり寒くなったが、スーちゃんを連れての森のお散歩が俺の日課になった。
 静止状態から力を込めて踏み出せば25mちょい位は跳べるし、加速を付ければ30mをラクに飛べるのは確認済み。
 一足を軽く20m程度で跳び、着地と同時に次の着地点を目指して踏みだす。
 その後をスーちゃんが追ってくるので、時に上へ向かって跳び樹の枝を利用して次へ跳ぶ。
 猿と変わらんなと思うが、地上も樹上も自由自在なので俺の方が早い。
 スーちゃんは跳び上がる迄はついてこられるが、枝を利用して方向転換が出来ないので遅れる。

 その代わりに、ビーちゃん達が喜んで後を追いかけてくる。

 《マスター、上に飛んでー》
 《もっと高くーーー♪》
 《流石はマスターです! 羽根が無いのに飛べるんだ!》
 《キャッハハハハハ♪》

 樹上の枝を踏み台に前方の木に向かって跳んだときに、着地前に足場の枝から何かが跳び上がった。

 〈ニギャャーァァァ〉

 ぞくりとする鳴き声と顔に走る衝撃にバランスを崩し、樹の枝への着地失敗。
 落下を始めたが取り敢えず足を下にして何とか着地した。

 《マスターを攻撃したぞ!》
 《許すまじ》
 《逃がすなー!》
 《刺しまくってやる!》

 何か小動物の様だったので《刺すのは待って》と止めておく。

 《マスター顔が濡れているよ》

 そうだった。顔に衝撃を受けてバランスを崩したんだったと思いだし・・・べっとりと手に血が付いた。
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