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121 大量捕獲
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やれやれ、フェルナンド男爵は甘くないって事だな。
この二人がリンレィの治癒魔法を確認に来ていることを知っていて、ほんの僅かばかりの事を教えただけだ。
多分治癒魔法以外の魔法部隊には、役立に立たないものを教えたのだろう。
長い修練の後に辿り着いた現在の能力、それが僅かな助言で一段階上がったのだ。興奮するのも無理はない。
翌日魔法部隊の者が集められ、治癒魔法師が聞いてきた魔力の使用手順で攻撃魔法を使わせたが、宰相の推測通り攻撃魔法では威力が落ちる者が多くいた。
考えれば判るが、攻撃魔法は一気に魔法を投射するもので、カップの水を一気に捨てるのに等しい。
カップを傾けて流す様な使い方では威力が落ちて当然だ。
* * * * * * * *
一週間ベラント通り施療院に通い、病気治療の練習を続けた。
その合間に魔力の使い方を教えた者から、確実に治療の腕が上がったと喜ばれ、同僚達にも教えても良いかと聞かれたので了承しておいた。
リンレィは病状と何回治療すれば良いのかの見極めと実践練習を続ける。
見極めが病状鑑定の練習に繋がるので、ある程度経てば貼付した鑑定で病状や状態確認が出来る様になるはずだ。
一週間も通えば、多少施療院の内情も判ってくる。
アル中の院長ノーザンとサボリ魔の主席治癒魔法師キャンデル・・・最古参らしい。
リンレィの力量確認に来ている二人は、二日目以降俺が何も教えないので興味を無くし付いてこなくなった。
そしてベッドに転がっている健康な男女。
初日に俺達を案内してくれたルリエナ曰く、アル中の院長が金を貰って寝かせている様だと教えてくれた。
柄の悪い連中だが私達や患者には何もしないが、裏社会の人間に間違いないと言う。
根拠は警備兵達が大勢彷徨く様になると人が増えるそうで、常時3~5人が施療院の空きベッドに潜り込んでいるそうだ。
なる程ね。王国の設置した施療院が、裏社会のセーフハウスになっているって事か。
問題が起これば自分達のセーフハウスを失うので、施療院で働く治癒魔法師や患者には手を出さない。
施療院の中は、街の警備兵が滅多に踏み込んで来ない聖域になっているのだから、此れを失うような事はしないって事か。
ハリスン達が施療院に出入りする者の中に、異常にハリスン達を警戒している奴が居ると言っていた。
一宿一飯の・・・治癒魔法練習の場を提供して貰った恩を返しておくか。
アパートに帰ると早速お礼の手紙を認め、何時もの様にホリエントにお願いするが、返事を貰ってきてと頼む。
* * * * * * * *
フェルナンド男爵からの書状と聞き、何やら胃が痛むヘルシンド宰相。
補佐官から受け取った書状を読み進む内に、苦虫を噛み潰した様な顔になる。
とても放置できる事ではないし、フェルナンド男爵の提案に乗れば屑共を一網打尽に出来るかもしれない。
フェルナンドの書状を持って来た男の名がホリエント、エレバリン公爵家の騎士団長だった男の名と同じとは、まさか・・・な。
「騎士団長を呼べ、それとこの書状を持って来た男を連れて来い」
呼ばれてやって来た騎士団長に書状を見せ、警備隊の者の中に通報者がいるので騎士団に動いて貰うと告げる。
「失礼ですが、このフェルナンド男爵とはドラゴン討伐で名を馳せた御方でしょうか。裏社会の奴等は、数名の冒険者と男爵殿で相手が出来る相手ではありません。我々も施療院に潜んでいた方が宜しいのでは?」
「其処に書かれているが、院長も金を貰っている様なので知られるのは不味い。それと、彼なら君達騎士団の者を一人で倒せるからな」
「では、あの話は本当でしょうか」
「あの話とは?」
「その~ぅ、王城内を自由に闊歩し・・・この執務室に忽然と現れたと」
「あぁ本当だ。魔法部隊も近衛騎士団も手も足も出なかった。しかも手加減されてだからな。伊達に賢者と称えた訳じゃない」
「ホリエント様をお連れしました」
補佐官に連れられてやって来た男は、恐れる風も無く一礼している。
「良く来てくれた。フェルナンド男爵の提案に従う事にする。此処に居る者は王国騎士団の騎士団長だ。配下の者が君達に協力する事になるので、騎士団と男爵殿との連絡役を頼みたい」
「私は何も聞かされておりません。ご説明願えますか」
ホリエントの言葉を聞いて、書状を見せる様に補佐官に促す。
書状を受け取り読むホリエントを見て、エレバリン公爵邸へ接収に向かった者からの報告書を思い出していた。
間違いないか聞いてみると、エレバリン公爵に仕えていたことをあっさり認めた。
此の男と後任の騎士団長は地下牢に幽閉され、厳しい拷問を受けて一人は死亡し此の男も瀕死の重傷だった、と記されていたはずだ。
だが目の前の男は傷一つなく五体満足な様子、彼はあの時既に神聖魔法を習得していたのだろう。
然もなくば、多数の魔法使いを指南し治癒魔法が使えない魔法使いを、一流に仕立て上げることなど出来ないだろう。
書状を読み終えたホリエントが、当日齟齬のない様に現場指揮官に会いたいと申し出た。
書状の内容では、明日王都の警備隊に不良分子一斉摘発の為に、待機を命じる事になっている。
待機命令の翌日に、フェルナンドとリンレィはベラント通り施療院へ治療に向かい、お供は何時ものハリスン達四人にホリエントとなる。
施療院へフェルナンド達が入ったのを確認後、周辺の安宿や売春宿等のたまり場へ警備隊が突入する。
前もって逃げ込んでいる奴等と、危険を察知して逃げ込んだ奴等はフェルナンドとハリスン達が捕獲する。
その際、王国騎士団の者達が警備隊に同行して施療院を封鎖し、逃げられない様にし捕獲した者を引き取るとなっていた。
問題は封鎖する騎士団の者達も警備隊の者も全員私服で、双方の見分けがつかない。
その為にホリエントと王国騎士団の責任者の顔合わせと擦り合わせが必要となる・・・と、判っていて何も言わずに使いに出すとはな。
フェルナンドに厄介事を押しつけられたが、楽して高給を貰っているので、日頃の訓練の成果でも確かめるかとニンマリ笑う。
紹介されたのは王国騎士団第二大隊第一中隊長のジーラント、院内で捕獲した奴等は、ジーラントを通してのみ警備隊に引き渡される事になる。
* * * * * * * *
王城から帰ってきたホリエントに愚痴られたが、訓練だけじゃ勘が鈍るだろうと思い実戦の場を提供したんだと胸を張ると、呆れられてしまった。
傍で聞いていたコークスがニヤリと笑い「今度は何を始めたんだ」と嬉しそう。
当日、ユーゴ達のお供で施療院に向かったホリエントは、周辺には住民らしき者の姿以外見えない。
「ユーゴ、誰も居ない様なんだが・・・」
「大丈夫だよ。俺達の後ろに一人付いてきているから、其奴が合図係だろうさ」
施療院に到着するとハリスン達は中に入り、正面玄関内の陰に潜む。
ホリエントは俺の後に続き裏口に回り待機する。
リンレィは後ろで見物だが、ゴブリン相手の治療練習で荒事になれたのか冷静だ。
暫くすると遠くで破裂音が三発聞こえてきた。
三発目の破裂音が響くと、問題の場所から数百メートル離れた物陰から、一斉に私服の騎士達が走り出し決められた建物に殺到する。
建物に踏み込み怒号が響く中、下着姿で逃げ出す者や窓から飛び降りて走り出す者で街は大騒ぎになった。
「お~、ゴブリンの群れがやって来るよ♪」
「入り口付近ではやるなよ」
「判ってるって、できるだけ奥に入ってもらうよ」
「施療院に逃げ込むんだ、怪我をしても直ぐに治るから遠慮の必要はないな」
「違いない、気持ち良く殴らせて貰おうかな」
訓練用木剣を片手に待ち構えているハリスン達。
正面玄関に飛び込んで来た奴は、病室まで辿り着けずに殴り倒されてしまう。
「あれぇ~・・・少ないねぇ」
「となると、皆さんベッドで寝てらっしゃるのかな」
「裏口はどうなっている?」
「裏口の気配は二人程度だったな」
「おい! 大勢走って来るけど此奴等は?」
「建物に入らなければ騎士団の者だろう」
「あっ、ホリエントさん裏口はどうでした?」
「おう、二人だけしか来なくて暇だったぞ」
そう言いながらホリエントが表を確認し、手を上げる。
「ホリエント殿、中の様子は?」
「少し駆け込んで来たが、其奴等は叩き潰しておいたから引き渡すよ」
そう言っていると〈窓から逃げ出したぞ! 逃がすな!〉って叫び声が聞こえてきた。
叩き潰した奴を引き取りに大勢が院内に入ってきたので、異変を察知した奴が逃げ出したらしいが、施療院は私服の騎士達に包囲されているので逃げられないだろう。
「ユーゴ、ベッドで寝ている者の見分けがつかないんだが」
「任せて、俺が指差した奴は殴り倒して・・・てか、もう寝ているけど抵抗すれば遠慮無くどうぞ」
治癒魔法師達の腕が上がった上に、リンレィも加わって治療していたので病人の数は少ない。
昨日までは空きベッドだった所に寝ている奴が大勢いる。
病人も含め全て鑑定し〔健康〕と出た奴を指差すとホリエント達が順番に殴りつけ、後ろを付いてくる騎士達に引き渡す。
諦めの悪い奴はナイフを振りかざして抵抗するが、あっという間に手足をへし折られて転がる羽目になる。
其れを見て抵抗を諦める奴がチラホラいて、即行で縛り上げられていく。
「たたっ、助けて!」
「喧しい、大人しくしていろ! おう、俺に近づくな! 来たら此奴をころ・・・」
即座に両肩にアイスアローを撃ち込み、アイスバレットを鼻に射ち込んで黙らせる。
「煩いよ。人質なんて無駄な事をするな」
「相変わらず見事な手並みだな。大規模魔法も凄いが、無詠唱の連続攻撃とはねぇ」
この二人がリンレィの治癒魔法を確認に来ていることを知っていて、ほんの僅かばかりの事を教えただけだ。
多分治癒魔法以外の魔法部隊には、役立に立たないものを教えたのだろう。
長い修練の後に辿り着いた現在の能力、それが僅かな助言で一段階上がったのだ。興奮するのも無理はない。
翌日魔法部隊の者が集められ、治癒魔法師が聞いてきた魔力の使用手順で攻撃魔法を使わせたが、宰相の推測通り攻撃魔法では威力が落ちる者が多くいた。
考えれば判るが、攻撃魔法は一気に魔法を投射するもので、カップの水を一気に捨てるのに等しい。
カップを傾けて流す様な使い方では威力が落ちて当然だ。
* * * * * * * *
一週間ベラント通り施療院に通い、病気治療の練習を続けた。
その合間に魔力の使い方を教えた者から、確実に治療の腕が上がったと喜ばれ、同僚達にも教えても良いかと聞かれたので了承しておいた。
リンレィは病状と何回治療すれば良いのかの見極めと実践練習を続ける。
見極めが病状鑑定の練習に繋がるので、ある程度経てば貼付した鑑定で病状や状態確認が出来る様になるはずだ。
一週間も通えば、多少施療院の内情も判ってくる。
アル中の院長ノーザンとサボリ魔の主席治癒魔法師キャンデル・・・最古参らしい。
リンレィの力量確認に来ている二人は、二日目以降俺が何も教えないので興味を無くし付いてこなくなった。
そしてベッドに転がっている健康な男女。
初日に俺達を案内してくれたルリエナ曰く、アル中の院長が金を貰って寝かせている様だと教えてくれた。
柄の悪い連中だが私達や患者には何もしないが、裏社会の人間に間違いないと言う。
根拠は警備兵達が大勢彷徨く様になると人が増えるそうで、常時3~5人が施療院の空きベッドに潜り込んでいるそうだ。
なる程ね。王国の設置した施療院が、裏社会のセーフハウスになっているって事か。
問題が起これば自分達のセーフハウスを失うので、施療院で働く治癒魔法師や患者には手を出さない。
施療院の中は、街の警備兵が滅多に踏み込んで来ない聖域になっているのだから、此れを失うような事はしないって事か。
ハリスン達が施療院に出入りする者の中に、異常にハリスン達を警戒している奴が居ると言っていた。
一宿一飯の・・・治癒魔法練習の場を提供して貰った恩を返しておくか。
アパートに帰ると早速お礼の手紙を認め、何時もの様にホリエントにお願いするが、返事を貰ってきてと頼む。
* * * * * * * *
フェルナンド男爵からの書状と聞き、何やら胃が痛むヘルシンド宰相。
補佐官から受け取った書状を読み進む内に、苦虫を噛み潰した様な顔になる。
とても放置できる事ではないし、フェルナンド男爵の提案に乗れば屑共を一網打尽に出来るかもしれない。
フェルナンドの書状を持って来た男の名がホリエント、エレバリン公爵家の騎士団長だった男の名と同じとは、まさか・・・な。
「騎士団長を呼べ、それとこの書状を持って来た男を連れて来い」
呼ばれてやって来た騎士団長に書状を見せ、警備隊の者の中に通報者がいるので騎士団に動いて貰うと告げる。
「失礼ですが、このフェルナンド男爵とはドラゴン討伐で名を馳せた御方でしょうか。裏社会の奴等は、数名の冒険者と男爵殿で相手が出来る相手ではありません。我々も施療院に潜んでいた方が宜しいのでは?」
「其処に書かれているが、院長も金を貰っている様なので知られるのは不味い。それと、彼なら君達騎士団の者を一人で倒せるからな」
「では、あの話は本当でしょうか」
「あの話とは?」
「その~ぅ、王城内を自由に闊歩し・・・この執務室に忽然と現れたと」
「あぁ本当だ。魔法部隊も近衛騎士団も手も足も出なかった。しかも手加減されてだからな。伊達に賢者と称えた訳じゃない」
「ホリエント様をお連れしました」
補佐官に連れられてやって来た男は、恐れる風も無く一礼している。
「良く来てくれた。フェルナンド男爵の提案に従う事にする。此処に居る者は王国騎士団の騎士団長だ。配下の者が君達に協力する事になるので、騎士団と男爵殿との連絡役を頼みたい」
「私は何も聞かされておりません。ご説明願えますか」
ホリエントの言葉を聞いて、書状を見せる様に補佐官に促す。
書状を受け取り読むホリエントを見て、エレバリン公爵邸へ接収に向かった者からの報告書を思い出していた。
間違いないか聞いてみると、エレバリン公爵に仕えていたことをあっさり認めた。
此の男と後任の騎士団長は地下牢に幽閉され、厳しい拷問を受けて一人は死亡し此の男も瀕死の重傷だった、と記されていたはずだ。
だが目の前の男は傷一つなく五体満足な様子、彼はあの時既に神聖魔法を習得していたのだろう。
然もなくば、多数の魔法使いを指南し治癒魔法が使えない魔法使いを、一流に仕立て上げることなど出来ないだろう。
書状を読み終えたホリエントが、当日齟齬のない様に現場指揮官に会いたいと申し出た。
書状の内容では、明日王都の警備隊に不良分子一斉摘発の為に、待機を命じる事になっている。
待機命令の翌日に、フェルナンドとリンレィはベラント通り施療院へ治療に向かい、お供は何時ものハリスン達四人にホリエントとなる。
施療院へフェルナンド達が入ったのを確認後、周辺の安宿や売春宿等のたまり場へ警備隊が突入する。
前もって逃げ込んでいる奴等と、危険を察知して逃げ込んだ奴等はフェルナンドとハリスン達が捕獲する。
その際、王国騎士団の者達が警備隊に同行して施療院を封鎖し、逃げられない様にし捕獲した者を引き取るとなっていた。
問題は封鎖する騎士団の者達も警備隊の者も全員私服で、双方の見分けがつかない。
その為にホリエントと王国騎士団の責任者の顔合わせと擦り合わせが必要となる・・・と、判っていて何も言わずに使いに出すとはな。
フェルナンドに厄介事を押しつけられたが、楽して高給を貰っているので、日頃の訓練の成果でも確かめるかとニンマリ笑う。
紹介されたのは王国騎士団第二大隊第一中隊長のジーラント、院内で捕獲した奴等は、ジーラントを通してのみ警備隊に引き渡される事になる。
* * * * * * * *
王城から帰ってきたホリエントに愚痴られたが、訓練だけじゃ勘が鈍るだろうと思い実戦の場を提供したんだと胸を張ると、呆れられてしまった。
傍で聞いていたコークスがニヤリと笑い「今度は何を始めたんだ」と嬉しそう。
当日、ユーゴ達のお供で施療院に向かったホリエントは、周辺には住民らしき者の姿以外見えない。
「ユーゴ、誰も居ない様なんだが・・・」
「大丈夫だよ。俺達の後ろに一人付いてきているから、其奴が合図係だろうさ」
施療院に到着するとハリスン達は中に入り、正面玄関内の陰に潜む。
ホリエントは俺の後に続き裏口に回り待機する。
リンレィは後ろで見物だが、ゴブリン相手の治療練習で荒事になれたのか冷静だ。
暫くすると遠くで破裂音が三発聞こえてきた。
三発目の破裂音が響くと、問題の場所から数百メートル離れた物陰から、一斉に私服の騎士達が走り出し決められた建物に殺到する。
建物に踏み込み怒号が響く中、下着姿で逃げ出す者や窓から飛び降りて走り出す者で街は大騒ぎになった。
「お~、ゴブリンの群れがやって来るよ♪」
「入り口付近ではやるなよ」
「判ってるって、できるだけ奥に入ってもらうよ」
「施療院に逃げ込むんだ、怪我をしても直ぐに治るから遠慮の必要はないな」
「違いない、気持ち良く殴らせて貰おうかな」
訓練用木剣を片手に待ち構えているハリスン達。
正面玄関に飛び込んで来た奴は、病室まで辿り着けずに殴り倒されてしまう。
「あれぇ~・・・少ないねぇ」
「となると、皆さんベッドで寝てらっしゃるのかな」
「裏口はどうなっている?」
「裏口の気配は二人程度だったな」
「おい! 大勢走って来るけど此奴等は?」
「建物に入らなければ騎士団の者だろう」
「あっ、ホリエントさん裏口はどうでした?」
「おう、二人だけしか来なくて暇だったぞ」
そう言いながらホリエントが表を確認し、手を上げる。
「ホリエント殿、中の様子は?」
「少し駆け込んで来たが、其奴等は叩き潰しておいたから引き渡すよ」
そう言っていると〈窓から逃げ出したぞ! 逃がすな!〉って叫び声が聞こえてきた。
叩き潰した奴を引き取りに大勢が院内に入ってきたので、異変を察知した奴が逃げ出したらしいが、施療院は私服の騎士達に包囲されているので逃げられないだろう。
「ユーゴ、ベッドで寝ている者の見分けがつかないんだが」
「任せて、俺が指差した奴は殴り倒して・・・てか、もう寝ているけど抵抗すれば遠慮無くどうぞ」
治癒魔法師達の腕が上がった上に、リンレィも加わって治療していたので病人の数は少ない。
昨日までは空きベッドだった所に寝ている奴が大勢いる。
病人も含め全て鑑定し〔健康〕と出た奴を指差すとホリエント達が順番に殴りつけ、後ろを付いてくる騎士達に引き渡す。
諦めの悪い奴はナイフを振りかざして抵抗するが、あっという間に手足をへし折られて転がる羽目になる。
其れを見て抵抗を諦める奴がチラホラいて、即行で縛り上げられていく。
「たたっ、助けて!」
「喧しい、大人しくしていろ! おう、俺に近づくな! 来たら此奴をころ・・・」
即座に両肩にアイスアローを撃ち込み、アイスバレットを鼻に射ち込んで黙らせる。
「煩いよ。人質なんて無駄な事をするな」
「相変わらず見事な手並みだな。大規模魔法も凄いが、無詠唱の連続攻撃とはねぇ」
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