95 / 161
095 ドラゴン検分
しおりを挟む
ノックの音と共に侍従が入って来ると「国王陛下です」と告げる。
グレンが撥ねる様に立ち上がると直ぐに跪くが、俺は立ったまま出迎えて一礼する。
陛下の背後に控える近衛騎士達の視線が痛い。
「討伐大儀であったな」
「依頼ですので当然な事です。依頼の内、冬場に採取すべき物は全て採取しました。暑い季節に残りの物を採取に向かいます」
「うむ、見せて貰えるかな」
「薬師の方と空間収納持ちを呼んで貰えますか」
宰相の合図で直ぐにワゴンを押した男が三人現れた。
用意のワゴンにマジックポーチからそれぞれの薬草を取り出して乗せて行く。
銀色飛び鼠、5匹×2
赤斑蜘蛛、20匹×2
地鈴花の球根、5株×2
氷雪草、20本×2
ワゴンに乗せられた物を一つ一つ鑑定して頷いている。
「予定数より多いが?」
「収納持ちが居るでしょう。度々頼まれるのは面倒なので、必要数の倍採取してきました。火炎華,風精草,精霊草は暑くなったら採取に行って来ます」
「ドラゴン討伐は成すだろうと思っていたが、薬草も必要数以上をよく集められたな」
「薬草採取に慣れた者を連れて行きましたからね。薬草採取が得意な者に任せれば簡単ですよ」
「では、ドラゴンを見せて貰おうか」
「陛下、その前に一つお願いが御座いますが」
「何かな?」
「背後の方々が私をお気に召さない様で、視線と威圧が鬱陶しいのですよ。愛想を振りまけとは言いませんが、私の事は無視する様に命じて貰えませんか。オンデウス男爵は陛下に忠誠を誓っている様ですが、私は依頼を受けているだけですので・・・公式の場でなら、面倒ですが跪きますがそれ以外ではお断りです」
陛下と宰相が近衛騎士達を見回して苦笑している。
「判った、お前達余計な事はするな。フェルナンド、近衛騎士団長に命じておく」
黙って一礼しておく。
ドラゴンの検分は、近衛騎士団の室内訓練場で出す事になった。
訓練場では非番の者達が訓練をしていたが、宰相の先導で国王が現れると静まりかえる。
室内訓練場とは言え土間なので、断って土魔法でコーティングしてからドラゴンを取り出す。
ちょっと茶目っ気を出し、ドラゴンの顔が陛下の目の前に来る様にポイ。
〈ウオォォォォ・・・ふぁ、フェ・・・フェルナンド! 驚かせるでない!〉
〈ウオーォォォ〉
〈化け物!〉
〈ドッ、ドド、ドラゴンだと!〉
〈逃げ・・・〉
あ~あ、大騒ぎになってますがな。
ん、と思ってヘルシンド宰相を見れば、腰を抜かして呆けている。
あ~あ、お漏らしはしていない様なので、見なかったことにしてあげよう。
後ろで変な気配がするので振り向けば、グレンが真っ赤な顔で腹を抱えて震えている。
笑いを我慢するあまり、涙目で痙攣しそうになっていたので背中をひっぱたいて正気に戻してやる。
「いやー、死ぬかと思ったぞ」
「遠慮せずに笑えば良いのに」
「いやいや、驚く陛下を見て大笑をいしてみろよ、背後にいる奴等が抜き討って来そうで恐いからな」
「オンデウス・・・その方も中々の男よのう」
「陛下、生半な神経ではユーゴ・・・フェルナンド男爵と共にドラゴン討伐になど行けませんので」
そう言いながら、未だ肩が震えている。
「ところでフェルナンド、何処からドラゴンを出したのだ? もしや空間収納魔法も使えるのか」
「まぁ~、大きすぎて切り離すのが大変そうだったので仕方なく使って見ました」
「ひょっとして、お前は全ての魔法が使えるのか?」
「風魔法と水魔法は使ったことが有りませんが、多分使えるでしょう。そんな事より、このドラゴンを引き取って下さい」
「済まんが、討伐祝いの時まで預かっておいてくれ」
「それって、俺も出席することになるじゃないですか」
「うむ、年に一度の出席の約束は守るので頼む。オンデウス男爵、その方もな」
「陛下、私は唯の道案内なのですが」
「何を申す。二度までもドラゴンの地を踏んだ者は、その方以外に此の国には居るまい」
案内人が居るじゃない、と思ったがお口にチャック。
「なるべく早くして下さいね。残りの薬草採取に出る用意も有りますので」
ヘルシンド宰相に、ドラゴン討伐と薬草採取の為に雇った11名4ヶ月分の費用、2,640万ダーラの請求書を渡す。
薬草代金と合わせて商業ギルドの俺の口座に振り込みをお願いしておく。
一人一日銀貨二枚、四ヶ月分で240万ダーラ金貨24枚。
合計 金貨24枚×11人=264枚、2,640万ダーラ
銀色飛び鼠・10匹、金貨15枚×10=150枚
赤斑蜘蛛・40匹、金貨10枚×40=400枚
地鈴花の球根・10株、金貨13枚×10=130枚
氷雪草・40本、金貨10枚×40=400枚
合計 金貨1,080枚+264枚=1,344枚
一人平均金貨122枚とちょい。
これにドラゴン一匹と野獣が追加されるので相当な額になる筈だ。
* * * * * * * *
「まったく、笑うに笑えない苦しさをたっぷり味わったぞ」
「でも面白かったでしょう」
「ああ、まさか陛下の目の前にドラゴンを置くとは思わなかったからな。宰相閣下は腰を抜かしていたし、気取った近衛騎士達が狼狽えていたからな」
帰りの馬車の中でオンデウスが疲れた顔でぼやく。
「王家が発表するまで蜥蜴を売りに出せないから、野獣を少しずつ売りに行くかな」
「ゴールデンゴートはどうする?」
「明日にでもコッコラ商会に行こうよ」
「俺もか?」
「ドラゴン討伐の足を提供してくれたんだし、一応男爵が二人だしね。顔つなぎをしておくのも悪くはないと思うよ」
「お前さんがそんな事を言い出すと後が恐いからなぁ」
家に帰ると興味津々で結果を尋ねられたので、ドラゴンを陛下の目の前に出した事を話すと爆笑されてしまった。
爆笑ついでに、グレンが笑うに笑えず苦しんでいたと伝えると、コークスがニンマリしている。
絶対に揶揄いの種にする気だろう。
ハリスン達からはコークス達をマリンダ皮革店へ案内して、服に見合うブーツを注文してきたと教えられた。
而し、一人では広すぎるワンルームと思ったが10人では流石に狭い。
野営中なら気にならないのは、寝る時以外は野外だし広さも状況に応じて変えているからだろう。
暫くは俺の家が拠点になるのに狭いのは困る、困った時の商業ギルドに出掛けた。
* * * * * * * *
部屋を斡旋してくれた係の者に事情を説明すると、何と言う事でしょう。
留守中に(殆ど家にいないけど)お向かいさんがお引っ越ししていなくなっていた。
それに屋根裏部屋が三つ空いているって、即行で借り上げました。
お向かいさんは金貨六枚、屋根裏部屋は金貨一枚と銀貨二枚。
割と裕福な者が住まう地域で市場にも近くて便利、その為に家賃が高いので人の出入りが激しいと教えてくれた。
そりゃそうだろう、同程度で安いところが有れば引っ越していくさ。
家主からは早く借り手を見つけろと煩く言われて大変ですと愚痴る。
パッと頭の中にライトが灯ったね。
ドラゴン討伐が告知されると騒ぎになるが、同時に討伐者である俺の周辺も騒がしくなる・・・筈だ。
多分俺の所へは直接来ないだろうが、コークス達やハリスン達が出歩けば接触してきて頼み事をするだろう。
そして俺の向かいとか屋根裏部屋に住んで居ると判れば、押し掛けて来る様になると思う。
何れ商業ギルドか家主から文句が出るのは必死、先手を打っておこう。
お世話係ににっこりと笑って提案をする。
現在俺の部屋に10人が仮住まいをしている為に部屋を借りたが、割高だし不便なので一軒家を借りたいと告げる。
世話係の小母ちゃんが頭を抱えたよ。
部屋を借りたその後で、出て行く話になるのだから無理もない。
だが流石は商業ギルドにお勤めで、逆提案をしてきた。
いっそ今住んで居る建物を買いませんかと言いだしたのだ。
明日のことが判らない冒険者なので即座に却下したが、金貨数千枚を出して家を買うなんて無理。
取り敢えず4~5部屋を纏めて借りることが出来る物件が有れば知らせてくれと頼んでおく。
お向かいの部屋と屋根裏部屋の鍵を受け取り、誰がどの部屋を使うのかは皆で話し合って決めて貰うことにする。
* * * * * * * *
「ゴールデンゴートを私にですか」
「ええ、長らく馬車をお借りしてご迷惑を掛けたお詫びです」
「宜しいのですか? ゴールデンゴートは滅多に獲れない物で、角も肉もオークションに出る物ですよ」
「大丈夫ですよ。実はドラゴンを売りに出す予定ですので、その前にお渡ししておきたいのですよ」
「なんと・・・ドラゴン討伐に行かれておられましたか。ではファーガネス領の森に入られたと」
「はい、オンデウス男爵の案内で仲間達と行ってきました。その事で又ご迷惑をお掛けするかも知れませんが、例の様に紹介は受け付けないと言われていると断って下さい」
二日後、コッコラ会長の馬車で冒険者ギルドに出向いた。
グレンと俺がコッコラ会長を挟んでギルドに入り、受付で解体場へ行くと告げて奥へ進む。
解体主任が俺を見ると期待の籠もった顔でやって来る。
「今日は何を・・・って誰だ?」
「穀物商コッコラ商会の会長だよ。子爵待遇だそうだ。今日は売り物じゃないんだ、ゴールデンゴートのトロフィーを作りたいので、その解体と肉の引き取りだな。解体料は俺の口座から引き落としてくれ」
「おいおい、ゴールデンゴートなんぞ何年ぶりだか。肉は一欠片も残さないのか?」
「言っただろう。穀物商で子爵待遇だ、王家や支店の在る領地の貴族との付き合いに使うのだから、足りないくらいなのさ。此の取引が終わったら、ギルドに相応の獲物を卸すよ」
解体主任の目が光るが、これ以上は何も言わないぞ。
グレンが撥ねる様に立ち上がると直ぐに跪くが、俺は立ったまま出迎えて一礼する。
陛下の背後に控える近衛騎士達の視線が痛い。
「討伐大儀であったな」
「依頼ですので当然な事です。依頼の内、冬場に採取すべき物は全て採取しました。暑い季節に残りの物を採取に向かいます」
「うむ、見せて貰えるかな」
「薬師の方と空間収納持ちを呼んで貰えますか」
宰相の合図で直ぐにワゴンを押した男が三人現れた。
用意のワゴンにマジックポーチからそれぞれの薬草を取り出して乗せて行く。
銀色飛び鼠、5匹×2
赤斑蜘蛛、20匹×2
地鈴花の球根、5株×2
氷雪草、20本×2
ワゴンに乗せられた物を一つ一つ鑑定して頷いている。
「予定数より多いが?」
「収納持ちが居るでしょう。度々頼まれるのは面倒なので、必要数の倍採取してきました。火炎華,風精草,精霊草は暑くなったら採取に行って来ます」
「ドラゴン討伐は成すだろうと思っていたが、薬草も必要数以上をよく集められたな」
「薬草採取に慣れた者を連れて行きましたからね。薬草採取が得意な者に任せれば簡単ですよ」
「では、ドラゴンを見せて貰おうか」
「陛下、その前に一つお願いが御座いますが」
「何かな?」
「背後の方々が私をお気に召さない様で、視線と威圧が鬱陶しいのですよ。愛想を振りまけとは言いませんが、私の事は無視する様に命じて貰えませんか。オンデウス男爵は陛下に忠誠を誓っている様ですが、私は依頼を受けているだけですので・・・公式の場でなら、面倒ですが跪きますがそれ以外ではお断りです」
陛下と宰相が近衛騎士達を見回して苦笑している。
「判った、お前達余計な事はするな。フェルナンド、近衛騎士団長に命じておく」
黙って一礼しておく。
ドラゴンの検分は、近衛騎士団の室内訓練場で出す事になった。
訓練場では非番の者達が訓練をしていたが、宰相の先導で国王が現れると静まりかえる。
室内訓練場とは言え土間なので、断って土魔法でコーティングしてからドラゴンを取り出す。
ちょっと茶目っ気を出し、ドラゴンの顔が陛下の目の前に来る様にポイ。
〈ウオォォォォ・・・ふぁ、フェ・・・フェルナンド! 驚かせるでない!〉
〈ウオーォォォ〉
〈化け物!〉
〈ドッ、ドド、ドラゴンだと!〉
〈逃げ・・・〉
あ~あ、大騒ぎになってますがな。
ん、と思ってヘルシンド宰相を見れば、腰を抜かして呆けている。
あ~あ、お漏らしはしていない様なので、見なかったことにしてあげよう。
後ろで変な気配がするので振り向けば、グレンが真っ赤な顔で腹を抱えて震えている。
笑いを我慢するあまり、涙目で痙攣しそうになっていたので背中をひっぱたいて正気に戻してやる。
「いやー、死ぬかと思ったぞ」
「遠慮せずに笑えば良いのに」
「いやいや、驚く陛下を見て大笑をいしてみろよ、背後にいる奴等が抜き討って来そうで恐いからな」
「オンデウス・・・その方も中々の男よのう」
「陛下、生半な神経ではユーゴ・・・フェルナンド男爵と共にドラゴン討伐になど行けませんので」
そう言いながら、未だ肩が震えている。
「ところでフェルナンド、何処からドラゴンを出したのだ? もしや空間収納魔法も使えるのか」
「まぁ~、大きすぎて切り離すのが大変そうだったので仕方なく使って見ました」
「ひょっとして、お前は全ての魔法が使えるのか?」
「風魔法と水魔法は使ったことが有りませんが、多分使えるでしょう。そんな事より、このドラゴンを引き取って下さい」
「済まんが、討伐祝いの時まで預かっておいてくれ」
「それって、俺も出席することになるじゃないですか」
「うむ、年に一度の出席の約束は守るので頼む。オンデウス男爵、その方もな」
「陛下、私は唯の道案内なのですが」
「何を申す。二度までもドラゴンの地を踏んだ者は、その方以外に此の国には居るまい」
案内人が居るじゃない、と思ったがお口にチャック。
「なるべく早くして下さいね。残りの薬草採取に出る用意も有りますので」
ヘルシンド宰相に、ドラゴン討伐と薬草採取の為に雇った11名4ヶ月分の費用、2,640万ダーラの請求書を渡す。
薬草代金と合わせて商業ギルドの俺の口座に振り込みをお願いしておく。
一人一日銀貨二枚、四ヶ月分で240万ダーラ金貨24枚。
合計 金貨24枚×11人=264枚、2,640万ダーラ
銀色飛び鼠・10匹、金貨15枚×10=150枚
赤斑蜘蛛・40匹、金貨10枚×40=400枚
地鈴花の球根・10株、金貨13枚×10=130枚
氷雪草・40本、金貨10枚×40=400枚
合計 金貨1,080枚+264枚=1,344枚
一人平均金貨122枚とちょい。
これにドラゴン一匹と野獣が追加されるので相当な額になる筈だ。
* * * * * * * *
「まったく、笑うに笑えない苦しさをたっぷり味わったぞ」
「でも面白かったでしょう」
「ああ、まさか陛下の目の前にドラゴンを置くとは思わなかったからな。宰相閣下は腰を抜かしていたし、気取った近衛騎士達が狼狽えていたからな」
帰りの馬車の中でオンデウスが疲れた顔でぼやく。
「王家が発表するまで蜥蜴を売りに出せないから、野獣を少しずつ売りに行くかな」
「ゴールデンゴートはどうする?」
「明日にでもコッコラ商会に行こうよ」
「俺もか?」
「ドラゴン討伐の足を提供してくれたんだし、一応男爵が二人だしね。顔つなぎをしておくのも悪くはないと思うよ」
「お前さんがそんな事を言い出すと後が恐いからなぁ」
家に帰ると興味津々で結果を尋ねられたので、ドラゴンを陛下の目の前に出した事を話すと爆笑されてしまった。
爆笑ついでに、グレンが笑うに笑えず苦しんでいたと伝えると、コークスがニンマリしている。
絶対に揶揄いの種にする気だろう。
ハリスン達からはコークス達をマリンダ皮革店へ案内して、服に見合うブーツを注文してきたと教えられた。
而し、一人では広すぎるワンルームと思ったが10人では流石に狭い。
野営中なら気にならないのは、寝る時以外は野外だし広さも状況に応じて変えているからだろう。
暫くは俺の家が拠点になるのに狭いのは困る、困った時の商業ギルドに出掛けた。
* * * * * * * *
部屋を斡旋してくれた係の者に事情を説明すると、何と言う事でしょう。
留守中に(殆ど家にいないけど)お向かいさんがお引っ越ししていなくなっていた。
それに屋根裏部屋が三つ空いているって、即行で借り上げました。
お向かいさんは金貨六枚、屋根裏部屋は金貨一枚と銀貨二枚。
割と裕福な者が住まう地域で市場にも近くて便利、その為に家賃が高いので人の出入りが激しいと教えてくれた。
そりゃそうだろう、同程度で安いところが有れば引っ越していくさ。
家主からは早く借り手を見つけろと煩く言われて大変ですと愚痴る。
パッと頭の中にライトが灯ったね。
ドラゴン討伐が告知されると騒ぎになるが、同時に討伐者である俺の周辺も騒がしくなる・・・筈だ。
多分俺の所へは直接来ないだろうが、コークス達やハリスン達が出歩けば接触してきて頼み事をするだろう。
そして俺の向かいとか屋根裏部屋に住んで居ると判れば、押し掛けて来る様になると思う。
何れ商業ギルドか家主から文句が出るのは必死、先手を打っておこう。
お世話係ににっこりと笑って提案をする。
現在俺の部屋に10人が仮住まいをしている為に部屋を借りたが、割高だし不便なので一軒家を借りたいと告げる。
世話係の小母ちゃんが頭を抱えたよ。
部屋を借りたその後で、出て行く話になるのだから無理もない。
だが流石は商業ギルドにお勤めで、逆提案をしてきた。
いっそ今住んで居る建物を買いませんかと言いだしたのだ。
明日のことが判らない冒険者なので即座に却下したが、金貨数千枚を出して家を買うなんて無理。
取り敢えず4~5部屋を纏めて借りることが出来る物件が有れば知らせてくれと頼んでおく。
お向かいの部屋と屋根裏部屋の鍵を受け取り、誰がどの部屋を使うのかは皆で話し合って決めて貰うことにする。
* * * * * * * *
「ゴールデンゴートを私にですか」
「ええ、長らく馬車をお借りしてご迷惑を掛けたお詫びです」
「宜しいのですか? ゴールデンゴートは滅多に獲れない物で、角も肉もオークションに出る物ですよ」
「大丈夫ですよ。実はドラゴンを売りに出す予定ですので、その前にお渡ししておきたいのですよ」
「なんと・・・ドラゴン討伐に行かれておられましたか。ではファーガネス領の森に入られたと」
「はい、オンデウス男爵の案内で仲間達と行ってきました。その事で又ご迷惑をお掛けするかも知れませんが、例の様に紹介は受け付けないと言われていると断って下さい」
二日後、コッコラ会長の馬車で冒険者ギルドに出向いた。
グレンと俺がコッコラ会長を挟んでギルドに入り、受付で解体場へ行くと告げて奥へ進む。
解体主任が俺を見ると期待の籠もった顔でやって来る。
「今日は何を・・・って誰だ?」
「穀物商コッコラ商会の会長だよ。子爵待遇だそうだ。今日は売り物じゃないんだ、ゴールデンゴートのトロフィーを作りたいので、その解体と肉の引き取りだな。解体料は俺の口座から引き落としてくれ」
「おいおい、ゴールデンゴートなんぞ何年ぶりだか。肉は一欠片も残さないのか?」
「言っただろう。穀物商で子爵待遇だ、王家や支店の在る領地の貴族との付き合いに使うのだから、足りないくらいなのさ。此の取引が終わったら、ギルドに相応の獲物を卸すよ」
解体主任の目が光るが、これ以上は何も言わないぞ。
131
お気に入りに追加
1,555
あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる