男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学

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025 待ち伏せ

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 シエナラ街道をちんたら歩いて四日目の早朝、アランドの街に到着して冒険者ギルドに直行した。
 食堂に行くと、げんなりした顔の四人がつまらなそうな顔で朝食を食べていたが、少し離れたテーブルに獲物を狙う目付きの男達がいる。
 朝食を持ってハリスン達の席に向かい、目付きの悪い男達の正面に座り馬車旅の感想を聞く。

 「ユーゴが歩くと言った意味が、良~く判ったよ」
 「色々と訓練をしたけど、尻は鍛えてなかったのを忘れてた」
 「荷馬車に乗っているのと変わらないけど」
 「荷馬車はもっとゆっくりだからなぁ」
 「馬車が軽い分速いけど、尻への攻撃が半端なかったよ」
 「此からは俺も歩くよ」

 四人の感想を聞きながら食事を始めるが、目はハリスン達の奥に座る男達から外さない。
 異変を感じて振り向こうとするハリスンを制し、気にせず食事を続けさせる。

 「知り合いかい?」

 「いや、知り合いじゃ無いけど良く居る手合いだな。俺達を獲物と間違っている様だね」

 「ウルザクといた奴等の様な?」

 「そうだけど大した腕でもなさそうだよ。万年ブロンズの一級って感じかな」

 エールのジョッキを片手に肩を揺すって歩いて来るけど、意気っているってよりも酔っ払いの歩き方だな。

 「よう、見慣れない顔だな。見たところアイアンばかりの様だが、挨拶は無しか」

 「お早う御座います。朝からご機嫌ですねぇ」

 〈ブッー〉
 〈ゲホッ〉
 〈止めろ! 鼻からエールが出たじゃねえか〉
 〈ばーか、新人に揶揄われてやんの〉

 〈煩えぞ!〉

 「お兄さん、頭の上で喚かないでよ。あんたの唾を振りまいた朝食なんて、食べたくないんだから。どうするの? こんな物を食えって言うの」

 「お前、俺達に喧嘩を売っているのか」
 「中々生きの良い新人だな」
 「潰しがいが有りそうだな」

 「ええ~、どう見てもアイアンの俺達に、万年ブロンズが喧嘩を売るって酷くない。ひょっとして勝てる相手にしか喧嘩を売らない主義なの」

 〈お前等、飯を集りに行って虚仮にされてるぞ〉
 〈稼ぎが少ないからって、アイアンに集るなよ〉
 〈アランドの冒険者の恥だから、食堂から出て行け!〉

 「あららら、酷い言われ様ですねぇ。六人も居て全員ブロンズとは情けないね」

 「おのれは・・・夜道に気を付けろよ」

 「ご心配なく、良い子の俺は陽が暮れたら出歩きませんから」

 仲間に顎をしゃくって足音荒く食堂を出て行った。

 「ユーゴ、心臓に悪いから止めてよね」
 「本当に万年ブロンズなの?」

 「すり切れた服にくたびれたブーツ、手入れの悪いロングソードや手槍を見れば、稼ぎが悪いのが丸わかりだよ。でも気を付けなよ、二人がマジックポーチを持っているって事は」

 上着の隙間からチラリと見えたマジックポーチを読み取れば、ランク3の物とランク5の物で低ランク冒険者が持てる様な物じゃない。
 3/90と5/180か、絶対に良からぬ方法で手に入れているはずだ。

 「兄さん、奴等がマジックポーチを持っているって本当か?」

 「ああ、さっき上着の隙間からチラリと見えたけど、冒険者御用達の店で買える様な物じゃなかったな」

 「お前にそれが判るのか?」

 「俺は御用達の店で買った1/5の物を持っているから判るよ。ありゃ~上物だな」

 〈ほう~〉とか〈ふう~ん〉と言いながら離れて行く奴等も、中々の曲者揃いの様だ。
 この町の冒険者ギルドは盗賊の巣窟かよ。

 「ユーゴ、あんまり焚きつけないでよね」
 「俺達が安全に旅立てなくなったら困るよ」

 「大丈夫だよ。冒険者御用達の店で買える安物一つか、高級品を二つか考えるまでもない」

 「呆れた、そこまで考えて周りに聞こえる様に喋っていたの」

 「マジックポーチと言ったら、皆が興味を示していたからね」

 * * * * * * * *

 一日ホテルで身体を休め、市場で食料を仕入れてからアランドの街を出発する。
 次の大きな街はハブァスだが、馬車で5日の距離なので食糧確保は大事。
 夜道に気を付けろって言われたので、真っ昼間の出発になってしまったがどうせ歩き旅で野宿だから気にしない。

 「索敵にも気配察知にも何も引っ掛からないな」
 「絶対に後をつけてくると思ったんだけどな」

 「えっ、先回りって方法もあるよ」

 「止めろ! ユーゴがそう言うと必ずそうなりそうだから不吉なことは言わないで!」

 「まっ、路銀稼ぎに狩りでもしながらのんびり行こうよ」

 街道周辺を探りながら索敵で周囲を伺うが待ち伏せも尾行も無し。
 馬鹿話をしながら歩いていて、二日目にふと思いついてホウルに尋ねて見た。

 「ホウルって魔力が20幾つか有ったよな」

 「ああ、27だな」

 「魔法が使える様になりたいか? ひっょっとしたら使えるかもしれないぞ」

 「魔法を授かって無いので無理だよ」

 「何で、俺も魔法なんて授かって無いぞ。俺のギルドカードを見てみろよ」

 ホウルに俺のカードを手渡すと、何度も何度もひっくり返して見ている。

 「本当だ、魔力が73も有るのに魔法が書かれてないな」

 残りの三人もホウルの手元を覗き込みながら、ひとしきりあれこれと言っているが結論が出ず。

 「ユーゴって、土魔法に氷結魔法と治癒魔法が使えたよね」

 「実は結界魔法も使えるのさ」

 「マジで?」
 「うっそー」
 「四属性の魔法が使えるって・・・」

 王都からアランドに向かって歩きながら結界魔法の練習をしていたので、現在は円筒状と戸板状の結界を張れるんだよな。
 空間収納はマジックポーチとマジックバッグが有るので削除して氷結魔法を再貼付したのは秘密。

 現在俺の腰のマジックポーチは3/360の物で、外見はオーク革のポーチだから気付かれる事は先ずないだろう。
 マジックポーチの中に入れている5/30のマジックバッグも、12/360の物に変えている。

 「俺って授けの儀で魔法を授かったと思ったんだけどな、神父様や他の儀式に参加した者も皆そう思ったんだけど、魔力測定板に浮かんだ文字が読み取れなかったんだ。神父様曰く縦横の線が一杯で文字じゃないって、それで神様の悪戯だってさ。書き損じた文字は縦横に線を引いて読めなくするだろう、あれと同じ様だったな」

 「それでギルドの水晶球も魔法無しとなっているのか」
 「それでも魔法が使えるのだから、羨ましいよ」

 「だからホウルが出来るかどうか試してみたけりゃ、教えてやるよ。但しホウルの魔力だと土魔法だな」

 「土魔法かぁ~、氷結の方が格好いいのに、夏には涼しくて気持ちいいし」

 「馬鹿だねぇ~、土魔法は攻撃と防御に夜のお宿まで作れてお得なのに。出来る様になるかどうか判らないので、気に入らなきゃ別に良いよ」

 「やります! 教えて下さい。ユーゴの教えは間違いないし」
 「それは言えるな」
 「普通ならアイアンの二級になるには、一年以上掛かるって言われているのになれたからな」
 「俺達より前に冒険者登録している者でも全然稼げずにヒイヒイ言っているもんな」

 ホウルに(土魔法・貼付)〔土魔法×10〕と土魔法の記憶が一つ減った。
 (鑑定!・魔法とスキル)〔栽培スキル・工作スキル・索敵スキル・短槍スキル・長剣スキル・土魔法・魔力27〕

 授かった二つのスキル以外に、索敵・短槍・長剣スキルに土魔法が追加されたな。
 今夜から、ちょいと扱いてやろう。

 「あ~・・・ユーゴの顔が恐い」
 「また何か企んでいるね」
 「ホウルを見る目が恐いぞ」

 「今晩キャンプ地で初歩の手ほどきをしてやるけど、此も口外禁止ね」

 ヘッジホッグを見つけて街道から外れたが、カラーバードやチキチキバードまで見つけて狩りに勤しんでいた。
 なのに遠くに人の潜む気配を感知した。

 「あ~・・・待ち伏せの様だな」

 「何人くらいいるの?」

 「10人以上の様だけど、ちょっと揶揄ってやろうぜ」

 「またぁ~ユーゴの悪い癖が出たよ」

 「いやいや、別に闘おうなんて思っていないよ。逆に包囲して石の一つも投げてやろうって思ってね」

 遠回りして慎重に背後から近づいたが何か違和感を感じる。
 待ち伏せの態勢が何かおかしい。
 俺達を襲うのなら包囲態勢を取るはずなのに、街道の左右に適当に散らばって潜んでいる。

 此じゃ街道から来る者を待ち伏せしているのは間違いないが、草原に逃げられない事を想定しているとしか思えない。
 となると待ち伏せの相手は馬車ということになる。

 皆に合図をして集め考えを伝えると、ルッカスがそれならこの先にも馬車を止める集団が居るはずだと言い出した。
 グロスタがそれならと確かめに行ったが、20分程で帰って来ると10人前後が潜んでいると報告した。

 また面倒な事になったと思ったが、四人は知ったからには陰からでも援護したいと言い出した。
 仕方がないので作戦会議、第一目標は奇襲攻撃の阻止と決まったが四人が俺の顔を見る。
 へいへい、作戦は俺に考えろって事ね。

 最初に見つけた集団の手前で馬車を止めれば奇襲は防げるが、相手が逃げ出す様な数じゃないのでどうするか。
 待ち伏せをする様な場所だ、前後左右の見通しは悪いのを利用させて貰おう。
 俺とルッカスが奴等の反対側に回り込み、グロスタとホウルは向かい合う位置に潜み挟み撃ちの態勢を取る。

 ハリスンは賊が潜む場所から50メートル程手前で、馬車を止める役目だ。
 馬車を止めると、矢が飛んで来るはずだから気を付けろと言って送り出す。
 賊が姿を現したら俺達は先ず弓持ちと魔法使いを攻撃すると決めると、前後に20メートル以上離れて待機する。
 その際、反撃を受けたら逃げる事を約束させた。
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