57 / 75
057 商人殺し
しおりを挟む
ザールスと執事のケラハンに書かせた用紙の一枚を、警備の責任者に渡す。
「その用紙に書かれている名前は、ザールスに便宜を図り好き放題させていた貴族の名前だ。場合によっては其奴等も潰す。ブルーゼン宰相に、俺がそう言っていたと報告しろ。其れと後五つほど商家で騒動が起きるが、邪魔をするなよ」
ケラハンに用意させた馬車を呼び、タイエア通りのリエンツ商会にいけと命じる。
走り出した馬車の後ろを、必死で追いかけてくる警備兵がいるが無視する。
邪魔するなら蹴散らすまでだ、王家が邪魔するなら今度こそ国王もろとも鏖にしてやる。
もう、名を隠し静かに行動しても無駄なので、立ち塞がる奴は徹底的に叩き潰す事に決めた。
・・・・・・
タイエア通り、大きいが質素な外観の家の前に馬車が止まる〔リエンツ商会〕宝石商の小さな看板が掛かっている。
扉の前に立っていた男が馬車のドアを開けてくれる。
馬車の中には、商家の子弟風な小僧が一人だけなので不思議そうだ。
男の前に立ち、リエンツに呼ばれてやって来たハルトだと告げると、確認しますと中に入って行ったが直ぐに出てきてお入り下さいと頭を下げる。
質素な外観とは裏腹にホールの壁は精緻な彫刻が施され、貴族や豪商相手の商いだと知れる。
広いホールにはぽつんと机が一つ、フロックコートの男が客の確認をすると手元のベルを鳴らす。
ホールの突き当たりのドアが開き、フロックコートを着用しているが屈強な体格の男が現れ俺を奥へと案内する。
二つのドアの前を通り過ぎたが、間隔が広く見事な彫刻が施されているところを見ると商談室の様だ。
階段ホールから2階に案内され、一つのドアの前に止まるとノックをする。
「ハルト様をお連れしました」
コーエン侯爵様の所でも、此れほど堅苦しくはなかったと思っていると中からドアが開けられた。
またもや同じ様な服装で屈強な男、宝石商の警備を任されて居るのだろうが場違い感半端ない。
ご主人様はお食事中の様で、長テーブルの正面に座り俺を品定めしながら切り分けた肉を口に運ぶ。
「リエンツ、俺を呼び寄せた訳を聞こうか」
〈貴様! 勝手に喋るな!〉怒鳴りつけて来た男は軽鎧に兜を被った護衛の一人、左右の壁際に二人ずつ立っている。
ナプキンで口を拭きながら、片手を上げて怒鳴りつけて来た男を制する。
「なかなかの治癒魔法を使うそうだな」
「そんな理由で俺を呼び付けたのか?」
「お付き合い頂いている、公爵家の大奥様が最近体調不良でな」
「それが俺に何の関係がある」
「少し口の利き方を教えておく必要があるな」
「それは俺も同じ意見だ」
そう同意して、壁際の護衛四人とドアの左右に立つ男二人に案内したきた男の両手足にアイスニードルを射ち込む。
〈糞ッ〉
〈何故だ?〉
〈旦那様逃げて・・・〉
倒れながらも主人を気遣うなかなかの忠臣ぶりだ。
アイスニードルを喉に射ち込むと声も消えたので、その忠臣ぶりも伝わらないのが残念だけど。
水のグラスを持ったままフリーズしている男の両肩にもアイスニードルをプレゼント。
給仕役のメイド達は、何が起きているのか理解出来ずに棒立ちで俺とご主人様を見ている。
主人の正面席左右を指差し、座れとメイドに命令するが思考力が麻痺しているのか棒立ちのままだ。
「リエンツ、メイドに座る様に命じろ」
此奴も何が起きているのか理解出来ずフリーズしたままだ。
今度は二の腕にアイスニードルを射ち込んでやると、やっと俺が攻撃している事を理解した。
「小僧、儂を傷付けるとは良い度胸だ。泣き叫び許しを請いながら死ぬことになるぞ」
「それはお前の方だよ」
そう言ってリエンツの鼻に拳大の火球を乗せてやる。
〈ウオーゥ〉一声吠えて仰け反ったが、両腕が使えないので椅子ごと後ろに倒れる。
リエンツが居なくなった場所に浮かぶ火球を消し、メイド二人を椅子に座らせるとリエンツの傍らに立つ。
「クロドスの所に、俺を寄越せと捩じ込んだな。俺はお前の駒か? 何様のつもりだ」
倒れたままのリエンツの横腹を蹴り、立てと命じる。
イヤイヤをする様に首を振るので、顔の形が変わるまで蹴り続ける。
腕と肩のアイスニードルの魔力を抜き、再度立てと命令する。
傷と血に塗れた顔で、呻きながら立ち上がったリエンツを椅子に座らせる。
「お前、俺を自由に使えると思っていたのか? クロドスの所に俺を寄越せと脅しの書簡を送りつけたが、お前はそれ程偉いのか」
返事をしないので、柔らかなアイスバレットを胸に射ち込む。
砕けた氷を撒き散らしながら後ろに吹き飛び、動かなくなったリエンツの手を取り治療する。
〈旦那様何事ですか〉
〈いまの声は何でしょう
か〉
ドンドンとドアが叩かれ、問いかけの声が増えていく。
ドアの左右に倒れている男達が、助けが来たと思い生気が戻った様だが甘い。
〈失礼します〉の声と共に武装した男達が雪崩れ込んで来たが、室内の状況を見て動きが止まる。
的が止まっている間に、ソフトボール大のアイスバレットの乱れ打ちだ。
〈ギャー〉
〈ウッ〉
〈ゲッ〉
悲鳴と共に後方に吹き飛び倒れる護衛7人、ドアの陰にも居る様なのでドアを穴だらけにしておく。
〈ドン〉〈ドン〉〈バッキーン〉と擬音が鳴り響く。
足下で呻き声がするので見ると、リエンツのお目覚めだ。
腹の上に火球を乗せ、すっきりはっきり目覚める様にお手伝い。
服が燃え、一瞬の間を置いて〈ウオー〉と吠えながら跳ね起きるリエンツ。
何が起きたのか判らず痛む腹を抱えるが、火傷の為に顔を顰めて痛む場所を見る。
腹の部分が燃えていて、直ぐ隣では炎の玉が浮かんでいるのを見て、状況を理解した様だ。
「治癒魔法を体験した感想を聞かせて貰えるかな」
何を言われているのか判らずポカンとしている。
「顔だよ、痛まないだろう。肩も腕も自由に動くよな」
俺に言われて初めて、腕が自由に動くことに気づいた様だ、顔に手を当て撫でさすっている。
「俺を自由に出来ると思った、その根拠から聞かせて貰おうか。喋らなければ、今度は顔をこんがり焼いてやるからな」
俺にそう言われた瞬間、顔が引き攣り汗が流れ落ちる。
「お前が強気になる理由は判る、強気の元となる名前を全て書き出せ。裏仕事の連中の名もな、書き漏らしたら」
そう言って眼前に火球を浮かべる。
紙とペンを取り出し、リエンツに手渡し書けと顎でダイニングテーブルを示す。
後四つも行かなければならないんだ、仕事は手っ取り早くしなきゃ邪魔が入る。
フロックコートの男に問いかけると、執事をしていますと答えるのでアイスニードルを溶かして立たせる。
主人の正面に座らせると、リエンツと同じ事を書けと言って紙とペンを差し出す。
ペンを受け取る素振りで手首を掴み腕を捻ろうとしたので懐に飛び込み肘打ちを側頭部に叩き込む。
魔力を張り巡らせている俺と、速さで勝負しようとは見上げたものだが期待に応えてやる義理はない。
脳震盪を起こしたのか、椅子に座り込んでいる男の両足をアイスアローで撃ち抜き固定すると、お仕置きとして頭の上に火球を一つ乗せる。
髪が焼け臭い匂いがし出すころ、熱さで意識が戻り必死になって頭を振り手で払っている。
「余計な事をするな、次は火達磨にして殺すぞ」
そう言ってテーブルの上に、直径1メートル程の火球を浮かべて見せる。
其れを見てゴクリと唾を飲む執事、魔力を抜いて火球を消す。
二人が書き出した用紙を照らし合わせると、後ろ盾の貴族名も裏仕事の連中の名前も半分ちかく違っている。
「二人とも真面目に書く気が無さそうだな。俺が此処に来る前にザールス商会に寄ってきたんだが、奴がどうなったと思う」
リエンツの顔を見ながらそう言い、執事の男を火球で包む。
〈ギャーァァァ〉
悲鳴と共に転がって逃げようとするが、両足を固定しているし、逃げる先に火球を作ってやる。
悲鳴は直ぐに消え執事の男も動かなくなり、後は肉の焦げる匂いが部屋に充満する。
リエンツにもう一度紙を渡し、次はないぞと告げて書かせる。
歯の根も合わないのかカチカチ音を立て、震えながら必死で紙にペンを走らせる。
用紙を受け取り迷惑料徴収と思ったが、金が欲しい訳ではない。
ただの嫌がらせだが、面倒なのでリエンツを殺して引き上げる事にした。
俺が用紙を受け取ってドアの方に歩き出すと、背後で大きく息を吐き出している。
壊れたドアの手前で振り向き、軽い魔力でアイスランスを胸に撃ち込む。
リエンツが後ろに吹き飛び転がっているが、氷の短槍が突き立っている。
俺が近づくと、ドア周辺にいる怪我人達が這って逃げ出す。
通路の両端には、抜き身の剣を持った男達がいるが、近寄って来ようとしない。
念のために、バレーボール大のアイスバレットを数発ずつ叩き込んでから階段室に向かう。
玄関ホールへのドアは閉まっているが、濃厚な人の気配がする。
すんなり帰すつもりが無いなら強行突破だ、バレーボール大のアイスバレットを数発ドアに叩き込む。
〈ウオー〉
〈ギャーァァ〉
〈逃げろー〉
〈馬鹿! 逃げるな!〉
沢山居る様なのでドアに近づき、今度は扇形にアイスバレットを10発射ち込む。
〈駄目だ、死にたくない〉
〈待ってくれ〉
〈助けて・・・〉
壊れたドアの穴から、玄関ホールに倒れている者達が見えるが王都の警備兵の様だ。
死傷者多数の様だが、建物内に侵入して姿を隠しているのが悪いのだ、然し姿を見た以上一応挨拶はしておこう。
「その用紙に書かれている名前は、ザールスに便宜を図り好き放題させていた貴族の名前だ。場合によっては其奴等も潰す。ブルーゼン宰相に、俺がそう言っていたと報告しろ。其れと後五つほど商家で騒動が起きるが、邪魔をするなよ」
ケラハンに用意させた馬車を呼び、タイエア通りのリエンツ商会にいけと命じる。
走り出した馬車の後ろを、必死で追いかけてくる警備兵がいるが無視する。
邪魔するなら蹴散らすまでだ、王家が邪魔するなら今度こそ国王もろとも鏖にしてやる。
もう、名を隠し静かに行動しても無駄なので、立ち塞がる奴は徹底的に叩き潰す事に決めた。
・・・・・・
タイエア通り、大きいが質素な外観の家の前に馬車が止まる〔リエンツ商会〕宝石商の小さな看板が掛かっている。
扉の前に立っていた男が馬車のドアを開けてくれる。
馬車の中には、商家の子弟風な小僧が一人だけなので不思議そうだ。
男の前に立ち、リエンツに呼ばれてやって来たハルトだと告げると、確認しますと中に入って行ったが直ぐに出てきてお入り下さいと頭を下げる。
質素な外観とは裏腹にホールの壁は精緻な彫刻が施され、貴族や豪商相手の商いだと知れる。
広いホールにはぽつんと机が一つ、フロックコートの男が客の確認をすると手元のベルを鳴らす。
ホールの突き当たりのドアが開き、フロックコートを着用しているが屈強な体格の男が現れ俺を奥へと案内する。
二つのドアの前を通り過ぎたが、間隔が広く見事な彫刻が施されているところを見ると商談室の様だ。
階段ホールから2階に案内され、一つのドアの前に止まるとノックをする。
「ハルト様をお連れしました」
コーエン侯爵様の所でも、此れほど堅苦しくはなかったと思っていると中からドアが開けられた。
またもや同じ様な服装で屈強な男、宝石商の警備を任されて居るのだろうが場違い感半端ない。
ご主人様はお食事中の様で、長テーブルの正面に座り俺を品定めしながら切り分けた肉を口に運ぶ。
「リエンツ、俺を呼び寄せた訳を聞こうか」
〈貴様! 勝手に喋るな!〉怒鳴りつけて来た男は軽鎧に兜を被った護衛の一人、左右の壁際に二人ずつ立っている。
ナプキンで口を拭きながら、片手を上げて怒鳴りつけて来た男を制する。
「なかなかの治癒魔法を使うそうだな」
「そんな理由で俺を呼び付けたのか?」
「お付き合い頂いている、公爵家の大奥様が最近体調不良でな」
「それが俺に何の関係がある」
「少し口の利き方を教えておく必要があるな」
「それは俺も同じ意見だ」
そう同意して、壁際の護衛四人とドアの左右に立つ男二人に案内したきた男の両手足にアイスニードルを射ち込む。
〈糞ッ〉
〈何故だ?〉
〈旦那様逃げて・・・〉
倒れながらも主人を気遣うなかなかの忠臣ぶりだ。
アイスニードルを喉に射ち込むと声も消えたので、その忠臣ぶりも伝わらないのが残念だけど。
水のグラスを持ったままフリーズしている男の両肩にもアイスニードルをプレゼント。
給仕役のメイド達は、何が起きているのか理解出来ずに棒立ちで俺とご主人様を見ている。
主人の正面席左右を指差し、座れとメイドに命令するが思考力が麻痺しているのか棒立ちのままだ。
「リエンツ、メイドに座る様に命じろ」
此奴も何が起きているのか理解出来ずフリーズしたままだ。
今度は二の腕にアイスニードルを射ち込んでやると、やっと俺が攻撃している事を理解した。
「小僧、儂を傷付けるとは良い度胸だ。泣き叫び許しを請いながら死ぬことになるぞ」
「それはお前の方だよ」
そう言ってリエンツの鼻に拳大の火球を乗せてやる。
〈ウオーゥ〉一声吠えて仰け反ったが、両腕が使えないので椅子ごと後ろに倒れる。
リエンツが居なくなった場所に浮かぶ火球を消し、メイド二人を椅子に座らせるとリエンツの傍らに立つ。
「クロドスの所に、俺を寄越せと捩じ込んだな。俺はお前の駒か? 何様のつもりだ」
倒れたままのリエンツの横腹を蹴り、立てと命じる。
イヤイヤをする様に首を振るので、顔の形が変わるまで蹴り続ける。
腕と肩のアイスニードルの魔力を抜き、再度立てと命令する。
傷と血に塗れた顔で、呻きながら立ち上がったリエンツを椅子に座らせる。
「お前、俺を自由に使えると思っていたのか? クロドスの所に俺を寄越せと脅しの書簡を送りつけたが、お前はそれ程偉いのか」
返事をしないので、柔らかなアイスバレットを胸に射ち込む。
砕けた氷を撒き散らしながら後ろに吹き飛び、動かなくなったリエンツの手を取り治療する。
〈旦那様何事ですか〉
〈いまの声は何でしょう
か〉
ドンドンとドアが叩かれ、問いかけの声が増えていく。
ドアの左右に倒れている男達が、助けが来たと思い生気が戻った様だが甘い。
〈失礼します〉の声と共に武装した男達が雪崩れ込んで来たが、室内の状況を見て動きが止まる。
的が止まっている間に、ソフトボール大のアイスバレットの乱れ打ちだ。
〈ギャー〉
〈ウッ〉
〈ゲッ〉
悲鳴と共に後方に吹き飛び倒れる護衛7人、ドアの陰にも居る様なのでドアを穴だらけにしておく。
〈ドン〉〈ドン〉〈バッキーン〉と擬音が鳴り響く。
足下で呻き声がするので見ると、リエンツのお目覚めだ。
腹の上に火球を乗せ、すっきりはっきり目覚める様にお手伝い。
服が燃え、一瞬の間を置いて〈ウオー〉と吠えながら跳ね起きるリエンツ。
何が起きたのか判らず痛む腹を抱えるが、火傷の為に顔を顰めて痛む場所を見る。
腹の部分が燃えていて、直ぐ隣では炎の玉が浮かんでいるのを見て、状況を理解した様だ。
「治癒魔法を体験した感想を聞かせて貰えるかな」
何を言われているのか判らずポカンとしている。
「顔だよ、痛まないだろう。肩も腕も自由に動くよな」
俺に言われて初めて、腕が自由に動くことに気づいた様だ、顔に手を当て撫でさすっている。
「俺を自由に出来ると思った、その根拠から聞かせて貰おうか。喋らなければ、今度は顔をこんがり焼いてやるからな」
俺にそう言われた瞬間、顔が引き攣り汗が流れ落ちる。
「お前が強気になる理由は判る、強気の元となる名前を全て書き出せ。裏仕事の連中の名もな、書き漏らしたら」
そう言って眼前に火球を浮かべる。
紙とペンを取り出し、リエンツに手渡し書けと顎でダイニングテーブルを示す。
後四つも行かなければならないんだ、仕事は手っ取り早くしなきゃ邪魔が入る。
フロックコートの男に問いかけると、執事をしていますと答えるのでアイスニードルを溶かして立たせる。
主人の正面に座らせると、リエンツと同じ事を書けと言って紙とペンを差し出す。
ペンを受け取る素振りで手首を掴み腕を捻ろうとしたので懐に飛び込み肘打ちを側頭部に叩き込む。
魔力を張り巡らせている俺と、速さで勝負しようとは見上げたものだが期待に応えてやる義理はない。
脳震盪を起こしたのか、椅子に座り込んでいる男の両足をアイスアローで撃ち抜き固定すると、お仕置きとして頭の上に火球を一つ乗せる。
髪が焼け臭い匂いがし出すころ、熱さで意識が戻り必死になって頭を振り手で払っている。
「余計な事をするな、次は火達磨にして殺すぞ」
そう言ってテーブルの上に、直径1メートル程の火球を浮かべて見せる。
其れを見てゴクリと唾を飲む執事、魔力を抜いて火球を消す。
二人が書き出した用紙を照らし合わせると、後ろ盾の貴族名も裏仕事の連中の名前も半分ちかく違っている。
「二人とも真面目に書く気が無さそうだな。俺が此処に来る前にザールス商会に寄ってきたんだが、奴がどうなったと思う」
リエンツの顔を見ながらそう言い、執事の男を火球で包む。
〈ギャーァァァ〉
悲鳴と共に転がって逃げようとするが、両足を固定しているし、逃げる先に火球を作ってやる。
悲鳴は直ぐに消え執事の男も動かなくなり、後は肉の焦げる匂いが部屋に充満する。
リエンツにもう一度紙を渡し、次はないぞと告げて書かせる。
歯の根も合わないのかカチカチ音を立て、震えながら必死で紙にペンを走らせる。
用紙を受け取り迷惑料徴収と思ったが、金が欲しい訳ではない。
ただの嫌がらせだが、面倒なのでリエンツを殺して引き上げる事にした。
俺が用紙を受け取ってドアの方に歩き出すと、背後で大きく息を吐き出している。
壊れたドアの手前で振り向き、軽い魔力でアイスランスを胸に撃ち込む。
リエンツが後ろに吹き飛び転がっているが、氷の短槍が突き立っている。
俺が近づくと、ドア周辺にいる怪我人達が這って逃げ出す。
通路の両端には、抜き身の剣を持った男達がいるが、近寄って来ようとしない。
念のために、バレーボール大のアイスバレットを数発ずつ叩き込んでから階段室に向かう。
玄関ホールへのドアは閉まっているが、濃厚な人の気配がする。
すんなり帰すつもりが無いなら強行突破だ、バレーボール大のアイスバレットを数発ドアに叩き込む。
〈ウオー〉
〈ギャーァァ〉
〈逃げろー〉
〈馬鹿! 逃げるな!〉
沢山居る様なのでドアに近づき、今度は扇形にアイスバレットを10発射ち込む。
〈駄目だ、死にたくない〉
〈待ってくれ〉
〈助けて・・・〉
壊れたドアの穴から、玄関ホールに倒れている者達が見えるが王都の警備兵の様だ。
死傷者多数の様だが、建物内に侵入して姿を隠しているのが悪いのだ、然し姿を見た以上一応挨拶はしておこう。
96
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します
すもも太郎
ファンタジー
伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。
その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。
出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。
そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。
大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。
今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。
※ハッピーエンドです

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる