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053 強襲
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翌日クルーゲン商会を訪ねて来たのは、ホラン達金色の牙の6人だった。
「なかなか面白そうな事をしているな」
ホランさんの一言に他の面々が、ニヤニヤ笑いながら俺を見ている。
俺からの報酬としてお財布ポーチ2個とランク6のマジックポーチを渡すとビックリしている。
大量にかっさらっているので気前が良いだけだが、内緒だから他言無用と釘を刺す。
その後ヤハン達〔真紅の剣〕と〔旋風〕のハインツ達も合流してきた。
「まさか、ヘイエルの冒険者ギルドが移動してきているんじゃないよな」
「それは大丈夫だよ、ハルトの顔なじみで一度でも一緒に行動した事のあるパーティーだけだから後は無い」
其れを聞いて安心したので二組にもお財布ポーチを二つずつ渡しておく。
その後も少数に分かれ、続々と侯爵様配下の者がザラセンに集まり、周辺のホテルは侯爵様の配下で溢れていた。
侯爵様の返書が来てから二週間目に連絡が来て、明日陛下の勅使と共に行動して欲しいと。
各所に散らばる者達が明日早朝ヴォルフ子爵邸に繋がる道を封鎖し、陛下の勅使の指揮下に入り子爵邸を強襲する事になると言われた。
つまり援護を頼むって事ね、手数料は勝手に取り放題の前払いで貰って居るので快く受ける。
夜明け前、ヴォルフ子爵邸に通じる道に続々と人が集まりだしたが、皆一様にコーエン侯爵騎士団の簡易鎧に身を包んでいるがその数約50名。
俺の周辺だけ冒険者が20数名居るだけなので集団の後ろに控える。
後方から馬が一頭駆けつけてくるが、子爵家の門衛の様なので足止めする。
程なくして騎馬の集団がやって来たが、此方は王国騎士団の出で立ちで道を空けているのに俺の前で止まる。
「ハルト殿とお見受けする」
こんな所で止めて欲しいのだが、声を掛けられた以上無視する訳にもいかない。
「そうですが・・・何か御用でしょうか」
不承不承な俺の返答を受けると、騎馬の一団が下馬し、音の出る様な敬礼の後朗々と喋り出しやがった。
「王国騎士団第一大隊第一小隊所属、ブルスクであります。国王陛下よりヴォルフ子爵を王都に連行せよとの命を受け、ブルーゼン宰相閣下より貴方様に助力を願えと言われております」
「止め! 手伝うからさっさと子爵邸に行こうか」
冒険者達の好奇の目が痛いが、見通しが甘かったと落ち込む俺を尻目に尚も口撃は続く。
「国王陛下名代の馬車に同乗願います」
「それは勘弁願うよ。俺は冒険者として君達の背後から援護するので、先頭に立ってくれ。俺達がその後に続くから」
漸く列が動き出すが、ヤハンやハインツが何か言いたそうにしているのを無視する。
後ろでホラン達の〈こいつはじっくり聞かせて貰う必要があるな〉って声が聞こえる。
・・・・・・
王国騎士団の騎馬が50騎、中団に王国の紋章入り馬車が進む。
その後ろを俺達冒険者の一団が続き、背後にコーエン侯爵様の騎士団50名が続く。
すんなり行くとは思っていなかったが、ヴォルフ子爵も準備が出来ていた様だ。
俺がクルーゲンを押さえてから、早馬を送ったり冒険者を受け入れたりと一月以上経っているし、異様に冒険者紛いの者が増えたので流石に気づくよな。
王国騎士団の者が陛下の勅使の到着を告げた瞬間、門衛の小屋から鐘の音が高らかに鳴り響いた。
同時に一人の衛兵が屋敷に向かって駆け出す、俺は鐘の音と同時に門に駆けより、柵の隙間から走る衛兵に向けアイスアローを射ち込む。
〈門を開けろ!〉
〈国王陛下の勅使をなんと心得るか〉
〈王国に仇為すつもりか〉
〈貴様、覚悟は良いな!〉
俺は駆けだした衛兵を倒した後、門から離れると門柱の隣の柵を直径80センチ程のアイスバレットで吹き飛ばした。
〈ドゴーン〉〈ドゴーン〉〈ドゴーン〉轟音を上げて柵の石組みが吹き飛び、宙づりになった残骸を吹き飛ばす。
「ホラン、皆で門を開けて!」
ホランやヤハン達が予想していた様に、にっこり笑って吹き飛ばされた柵から侵入し、正門の閂を外すと門扉を全開にする。
ハインツが行けと言う様に手を振ると、近衛騎士団が侵入を開始、その後をコーエン侯爵の騎士団が続く。
しかし用意万端の子爵家の騎士達が盾を並べて行く手を阻む。
盾の後ろで槍が煌めき、その後方から矢が飛んでくるので前進を阻まれている。
弓兵の後ろには魔法使いの一団らしき姿が有るが、射程が短いのか攻撃してこない。
しゃーない、さっさと終わらせる為に騎士達の後方からバレーボール大のアイスバレットを最大射程で射ち出す。
仰角45度で打ちだしたアイスバレットは、弓兵のはるか後ろに落下している。
アイスアローなら、水平発射で45メートルの射程があったはず。
目視距離80メートルなら仰角45度で届かないまでも、手前に落ちるはずだと考えるが、大きな勘違いに気がついた。
オズボンの訪問を受ける前に魔力増強に励んでいたんだ、それと2年以上魔力測定をしていない。
増えた魔力での攻撃訓練をしていなかったから調整が必要だ。
仰角25度、大して魔力を込めず気楽にアイスバレットを射ち出す。
今度は頭上スレスレ、仰角20度で魔力をもっと絞って再度アイスバレットを射ち込むと、横一列の弓兵の一人を吹き飛ばす。
三発も撃ち込むと弓兵に動揺がみられ、飛んでくる矢の数が激減したので標的を盾を構える騎士達に切り替える。
今度はほぼ水平発射で、三連射を五回射ち込む。
〈ダルマさんが転んで屁をこいたら臭かった、三連射〉
腕を水平に伸ばし、微妙に腕を横に振りながら射ち出すアイスバレットで次々と吹き飛ぶ騎士達。
口内でブツブツ呟きながら、アイスバレットを射ち込むので無詠唱には見えないはず。
逃げ始めた騎士達を放置して、再度弓兵部隊に攻撃目標を変える。
弓兵達は自分達を守るはずの騎士達が逃げ、飛んでくるアイスバレットに次々と吹き飛ばされて逃げ出した。
魔法使いらしき集団はとっくに姿を消している。
屋敷に向かって駆け出す騎士達の後を追い、俺も走る。
屋敷に立て籠もられたら面倒だ、長引く前に闘争心を叩き折ってやる。
「止まれ!」
俺の声に騎士団の足が止まる、距離にして60メートルくらいだろうから丁度良い。
玄関ホールの左右の壁をアイスジャベリンで撃ち抜き、立て籠もる奴等の度肝を抜いてやる。
〈ダルマさんが転んで屁をこいたら臭かった、三連射〉口内で呟きながらアイスジャベリンを撃ち込む。
〈ドゴーン〉〈ドゴーン〉〈ドゴーン〉連続する轟音と共に正面ドアの左右の壁に三つずつ穴が空いている。
仕上げに正面ドア中央に、直径50センチ程のアイスバレットを一発射ち込むとドアが吹き飛んだ。
「良いぞ、踏み込め!」
俺の言葉に頷き一斉に駆け出す王国騎士団、後に続こうとする冒険者を止めると、その横を侯爵様の騎士団が駆け抜ける。
「何故止めるんだよ。此れからが面白くなる所だぜ」
「ホランさん張り切りすぎ、王国騎士団が先陣を切っているんだぞ、顔を立ててやれよ」
アイスバレットやアイスジャベリンを見た、ヤハンやハインツ達が変な顔をして俺を見ている。
特大のアイスバレットやアイスジャベリンを見たことが有るのは、ホラン達以外はごく少数だからな。
俺達が話しながら邸内に入ると制圧はほぼ完了していた。
王国騎士団小隊長ブルスクに呼ばれて行くと、サロンに寝間着姿の男女が縛られ床に座らされている。
「ブルスクさん何か御用ですか」
「はっ、ご助力誠に有り難う御座います。実は一人治療して欲しい男が御座いまして、死なせる訳にはいかないもので・・・」
段々声が小さくなっていく、聞けばヴォルフ子爵が抵抗が無駄だと悟り、自殺を図り瀕死の状態だと言う。
成る程ね、死なせるには大物過ぎるって事か。
呼ばれたのは俺一人なのでさっさと治療して惚けておこうと思い、ヴォルフ子爵の所に案内してもらう。
豪華な寝室の片隅に男が大の字になって転がっているが、胸にナイフが突き立っている。
胸をナイフで突いたのだが躊躇い傷が複数あり、何とか突き立てたが力が足りなかった様だ。
ナイフを抜かなかったので出血は少ないが、脈拍数は少なくなっている。
脈を測った首筋に手を当てたまま、ゆっくりと魔力を流しながらナイフを抜けと命じる。
一瞬血が溢れたが直ぐに傷が塞がっていき躊躇い傷も消えた。
〈おおっ〉
〈凄い!〉
〈何と・・・〉
「有り難う御座います。ハルト殿」
「多分この屋敷にも違法奴隷がいるはずですから、保護をお願いしますね」
「はっ、それに付きましてはコーエン侯爵殿が近隣貴族達の派遣軍を纏めて近日中に到着するはずです。其れ迄は責任を持って保護致します」
「では俺達は帰るから、後は宜しくね」
ブルスク小隊長にそう告げ、さっさとずらかろうとしたら侯爵様の騎士団の隊長に捕まった。
「ハルト殿、侯爵閣下到着まで居て貰えませんか」
「あーそれね、違法奴隷や奴隷商を押さえているのを引き渡す都合が有るので待ちますよ。エミナ通りのクルーゲン商会にいますから連絡下さい」
それだけ言って子爵邸を後にした。
ハインツがうずうずしているが、クルーゲン商会に帰ってから説明するからと言って黙らせる。
ヤハンの目も爛々と輝いていて恐い。
「なかなか面白そうな事をしているな」
ホランさんの一言に他の面々が、ニヤニヤ笑いながら俺を見ている。
俺からの報酬としてお財布ポーチ2個とランク6のマジックポーチを渡すとビックリしている。
大量にかっさらっているので気前が良いだけだが、内緒だから他言無用と釘を刺す。
その後ヤハン達〔真紅の剣〕と〔旋風〕のハインツ達も合流してきた。
「まさか、ヘイエルの冒険者ギルドが移動してきているんじゃないよな」
「それは大丈夫だよ、ハルトの顔なじみで一度でも一緒に行動した事のあるパーティーだけだから後は無い」
其れを聞いて安心したので二組にもお財布ポーチを二つずつ渡しておく。
その後も少数に分かれ、続々と侯爵様配下の者がザラセンに集まり、周辺のホテルは侯爵様の配下で溢れていた。
侯爵様の返書が来てから二週間目に連絡が来て、明日陛下の勅使と共に行動して欲しいと。
各所に散らばる者達が明日早朝ヴォルフ子爵邸に繋がる道を封鎖し、陛下の勅使の指揮下に入り子爵邸を強襲する事になると言われた。
つまり援護を頼むって事ね、手数料は勝手に取り放題の前払いで貰って居るので快く受ける。
夜明け前、ヴォルフ子爵邸に通じる道に続々と人が集まりだしたが、皆一様にコーエン侯爵騎士団の簡易鎧に身を包んでいるがその数約50名。
俺の周辺だけ冒険者が20数名居るだけなので集団の後ろに控える。
後方から馬が一頭駆けつけてくるが、子爵家の門衛の様なので足止めする。
程なくして騎馬の集団がやって来たが、此方は王国騎士団の出で立ちで道を空けているのに俺の前で止まる。
「ハルト殿とお見受けする」
こんな所で止めて欲しいのだが、声を掛けられた以上無視する訳にもいかない。
「そうですが・・・何か御用でしょうか」
不承不承な俺の返答を受けると、騎馬の一団が下馬し、音の出る様な敬礼の後朗々と喋り出しやがった。
「王国騎士団第一大隊第一小隊所属、ブルスクであります。国王陛下よりヴォルフ子爵を王都に連行せよとの命を受け、ブルーゼン宰相閣下より貴方様に助力を願えと言われております」
「止め! 手伝うからさっさと子爵邸に行こうか」
冒険者達の好奇の目が痛いが、見通しが甘かったと落ち込む俺を尻目に尚も口撃は続く。
「国王陛下名代の馬車に同乗願います」
「それは勘弁願うよ。俺は冒険者として君達の背後から援護するので、先頭に立ってくれ。俺達がその後に続くから」
漸く列が動き出すが、ヤハンやハインツが何か言いたそうにしているのを無視する。
後ろでホラン達の〈こいつはじっくり聞かせて貰う必要があるな〉って声が聞こえる。
・・・・・・
王国騎士団の騎馬が50騎、中団に王国の紋章入り馬車が進む。
その後ろを俺達冒険者の一団が続き、背後にコーエン侯爵様の騎士団50名が続く。
すんなり行くとは思っていなかったが、ヴォルフ子爵も準備が出来ていた様だ。
俺がクルーゲンを押さえてから、早馬を送ったり冒険者を受け入れたりと一月以上経っているし、異様に冒険者紛いの者が増えたので流石に気づくよな。
王国騎士団の者が陛下の勅使の到着を告げた瞬間、門衛の小屋から鐘の音が高らかに鳴り響いた。
同時に一人の衛兵が屋敷に向かって駆け出す、俺は鐘の音と同時に門に駆けより、柵の隙間から走る衛兵に向けアイスアローを射ち込む。
〈門を開けろ!〉
〈国王陛下の勅使をなんと心得るか〉
〈王国に仇為すつもりか〉
〈貴様、覚悟は良いな!〉
俺は駆けだした衛兵を倒した後、門から離れると門柱の隣の柵を直径80センチ程のアイスバレットで吹き飛ばした。
〈ドゴーン〉〈ドゴーン〉〈ドゴーン〉轟音を上げて柵の石組みが吹き飛び、宙づりになった残骸を吹き飛ばす。
「ホラン、皆で門を開けて!」
ホランやヤハン達が予想していた様に、にっこり笑って吹き飛ばされた柵から侵入し、正門の閂を外すと門扉を全開にする。
ハインツが行けと言う様に手を振ると、近衛騎士団が侵入を開始、その後をコーエン侯爵の騎士団が続く。
しかし用意万端の子爵家の騎士達が盾を並べて行く手を阻む。
盾の後ろで槍が煌めき、その後方から矢が飛んでくるので前進を阻まれている。
弓兵の後ろには魔法使いの一団らしき姿が有るが、射程が短いのか攻撃してこない。
しゃーない、さっさと終わらせる為に騎士達の後方からバレーボール大のアイスバレットを最大射程で射ち出す。
仰角45度で打ちだしたアイスバレットは、弓兵のはるか後ろに落下している。
アイスアローなら、水平発射で45メートルの射程があったはず。
目視距離80メートルなら仰角45度で届かないまでも、手前に落ちるはずだと考えるが、大きな勘違いに気がついた。
オズボンの訪問を受ける前に魔力増強に励んでいたんだ、それと2年以上魔力測定をしていない。
増えた魔力での攻撃訓練をしていなかったから調整が必要だ。
仰角25度、大して魔力を込めず気楽にアイスバレットを射ち出す。
今度は頭上スレスレ、仰角20度で魔力をもっと絞って再度アイスバレットを射ち込むと、横一列の弓兵の一人を吹き飛ばす。
三発も撃ち込むと弓兵に動揺がみられ、飛んでくる矢の数が激減したので標的を盾を構える騎士達に切り替える。
今度はほぼ水平発射で、三連射を五回射ち込む。
〈ダルマさんが転んで屁をこいたら臭かった、三連射〉
腕を水平に伸ばし、微妙に腕を横に振りながら射ち出すアイスバレットで次々と吹き飛ぶ騎士達。
口内でブツブツ呟きながら、アイスバレットを射ち込むので無詠唱には見えないはず。
逃げ始めた騎士達を放置して、再度弓兵部隊に攻撃目標を変える。
弓兵達は自分達を守るはずの騎士達が逃げ、飛んでくるアイスバレットに次々と吹き飛ばされて逃げ出した。
魔法使いらしき集団はとっくに姿を消している。
屋敷に向かって駆け出す騎士達の後を追い、俺も走る。
屋敷に立て籠もられたら面倒だ、長引く前に闘争心を叩き折ってやる。
「止まれ!」
俺の声に騎士団の足が止まる、距離にして60メートルくらいだろうから丁度良い。
玄関ホールの左右の壁をアイスジャベリンで撃ち抜き、立て籠もる奴等の度肝を抜いてやる。
〈ダルマさんが転んで屁をこいたら臭かった、三連射〉口内で呟きながらアイスジャベリンを撃ち込む。
〈ドゴーン〉〈ドゴーン〉〈ドゴーン〉連続する轟音と共に正面ドアの左右の壁に三つずつ穴が空いている。
仕上げに正面ドア中央に、直径50センチ程のアイスバレットを一発射ち込むとドアが吹き飛んだ。
「良いぞ、踏み込め!」
俺の言葉に頷き一斉に駆け出す王国騎士団、後に続こうとする冒険者を止めると、その横を侯爵様の騎士団が駆け抜ける。
「何故止めるんだよ。此れからが面白くなる所だぜ」
「ホランさん張り切りすぎ、王国騎士団が先陣を切っているんだぞ、顔を立ててやれよ」
アイスバレットやアイスジャベリンを見た、ヤハンやハインツ達が変な顔をして俺を見ている。
特大のアイスバレットやアイスジャベリンを見たことが有るのは、ホラン達以外はごく少数だからな。
俺達が話しながら邸内に入ると制圧はほぼ完了していた。
王国騎士団小隊長ブルスクに呼ばれて行くと、サロンに寝間着姿の男女が縛られ床に座らされている。
「ブルスクさん何か御用ですか」
「はっ、ご助力誠に有り難う御座います。実は一人治療して欲しい男が御座いまして、死なせる訳にはいかないもので・・・」
段々声が小さくなっていく、聞けばヴォルフ子爵が抵抗が無駄だと悟り、自殺を図り瀕死の状態だと言う。
成る程ね、死なせるには大物過ぎるって事か。
呼ばれたのは俺一人なのでさっさと治療して惚けておこうと思い、ヴォルフ子爵の所に案内してもらう。
豪華な寝室の片隅に男が大の字になって転がっているが、胸にナイフが突き立っている。
胸をナイフで突いたのだが躊躇い傷が複数あり、何とか突き立てたが力が足りなかった様だ。
ナイフを抜かなかったので出血は少ないが、脈拍数は少なくなっている。
脈を測った首筋に手を当てたまま、ゆっくりと魔力を流しながらナイフを抜けと命じる。
一瞬血が溢れたが直ぐに傷が塞がっていき躊躇い傷も消えた。
〈おおっ〉
〈凄い!〉
〈何と・・・〉
「有り難う御座います。ハルト殿」
「多分この屋敷にも違法奴隷がいるはずですから、保護をお願いしますね」
「はっ、それに付きましてはコーエン侯爵殿が近隣貴族達の派遣軍を纏めて近日中に到着するはずです。其れ迄は責任を持って保護致します」
「では俺達は帰るから、後は宜しくね」
ブルスク小隊長にそう告げ、さっさとずらかろうとしたら侯爵様の騎士団の隊長に捕まった。
「ハルト殿、侯爵閣下到着まで居て貰えませんか」
「あーそれね、違法奴隷や奴隷商を押さえているのを引き渡す都合が有るので待ちますよ。エミナ通りのクルーゲン商会にいますから連絡下さい」
それだけ言って子爵邸を後にした。
ハインツがうずうずしているが、クルーゲン商会に帰ってから説明するからと言って黙らせる。
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