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015 金よりお肉
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八日程でハルト達が帰ってきたと聞き、コーエン侯爵は無理だったかと落胆した。
見届け人として付けた部下が報告にやって来て一礼したが、表情が硬いのを見て不審に思った。
「アーマーバッファローを三頭討伐致しました。残り三頭は逃げたそうです」
固い声で報告する部下の声を聞き、思わず聞き直した。
「間違い御座いません。マジックポーチにアーマーバッファロー三頭と、プレイリーウルフ16頭ブラックウルフ8頭を持ち帰りました」
「ハルト達はどうした」
「出入り商人の待合室にて待機させています」
「ヘイル、ハルトと護衛の冒険者達を連れてこい」
命じられた執事のヘイルが慌てて待合室に向かった。
ハルトと金色の牙の六人が執務室に現れると、コーエン侯爵は満面の笑みで迎えた。
「ハルト見せて貰って良いかな」
「どうぞ確認して下さい」
以前魔法の試しに使った訓練場に行き、アーマーバッファローを出してもらう。
マジックポーチを持つ、見届け役の男が硬い表情で三体を並べる。
侯爵様がマジマジと見て唸っている。
話があると言われ全員で執務室に戻ると、侯爵様から一番大きなアーマーバッファローを買い取りたいと提案された。
ホランの顔を見ると黙って頷き、他のメンバーも其れにならうので了解する。
満足気に頷く侯爵様が、オークションの関係で正確な値段の算出が出来ないので、一時金として俺に金貨40枚金色の牙に金貨20枚を渡す事にする。
オークション価格決定後、残金を冒険者ギルド経由で支払われる事になった。
翌日冒険者ギルドで残りの二頭とウルフを受け取り、それをもって依頼完了と了解してもらう。
一時金と依頼料合わせて金貨50枚を貰い、金色の牙も金貨20枚と護衛料を受け取り侯爵邸を後にした。
「いやーこんなに楽して稼いだのは初めてだ、感謝するぜハルト」
〈一時金だけで金貨20枚だぞ〉
〈後二頭いるから1/3を貰うと少なくとも金貨60枚、最低でも一人金貨10枚か〉
〈こりゃーギルドに預けておかないと呑んでしまいそうだぜ〉
〈おりゃー武器の新調だな〉
皆と浮かれ気味に街に帰り、明日ギルドでの待ち合わせを約束して別れた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
解体責任者とギルマスの立ち会いの下で、見届け人の男がマジックポーチからアーマーバッファロー二頭と、プレイリーウルフ16頭にブラックウルフ8頭を解体場に並べる。
「ハルトだったな、アーマーバッファローはオークションに掛けるから直ぐには精算出来ないぞ」
「結構ですが、小さい方のお肉が欲しいんですが無理ですか」
「此処では無理だな。解体してオークションに掛けると値が落ちるから」
なんだよそれ、お肉が美味しいって聞いて楽しみにしていたのに。
横たわるアーマーバッファローを睨んで考えていたが、1/3は金色の牙に権利があるんだよなー。
値を下げるのは〔金色の牙〕の連中も嫌がるだろうし、此処で閃いたね。
金は十分有る、なら〔金色の牙〕の取り分を増やせば文句は無いだろう。
「ホランさん、小さい方を上げますから大きい方は自由にさせて貰いますが宜しいですか」
解体場が珍しいらしく、傍らで話を聞いていた見届け人の男が呆れている。
「お前、肉が食いたくて稼ぎを捨てる気か。1/3の約束だがこれじゃ俺達の取り分が多過ぎるが」
呆れ顔のホランさんの言葉に、仲間達も同意見の様で変人を見る目で俺を見ている。
見届け人の男は呆れたのか、首を振り振り帰って行った。
ホラン達の同意を得て、小さい方は〔金色の牙〕の取り分になり大きい方は解体して貰う事になった。
肉の塊2,3個を引き取り、後は全てギルド経由で売り払えば半額くらいにはなるだろう。
ギルマスと解体責任者やその部下達も、変なものを見る目で俺を見ているのが解せぬ。
プレイリーウルフ16頭にブラックウルフ8頭の代金まで受け取るのは心苦しいと言われ全て俺の取り分となった。
お肉の受け取りは3日後で話が纏まり、プレイリーウルフとブラックウルフの代金は俺の口座に入れておいて貰うことのした。
ギルマスが俺の冒険者カードを持って受付に行き、ウルフの清算金を俺の口座に全て入れる様に指示している。
「ハルトは今日からシルバーランクだな」
そう言ってカードを返してくれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
帰って来た部下から引き渡し完了の報告を受け、アーマーバッファローを王都冒険者ギルドで解体してもらう事を考えていた。
然し部下が去り際に漏らした言葉に、コーエン侯爵は仰天した。
「待て! 今なんと言った」
「はい? 何の事でしょうか」
「アーマーバッファローを解体して肉と言ったな」
「はい、二頭の内の小さい方を護衛の冒険者達に渡し、大きい方を解体して肉が欲しいと言い出した時にはいやはや。相当な金額を受け取れるのに放棄して、肉が欲しいなど考えられません」
「ヘイル馬車の用意をしろ! 冒険者ギルド・・・いや、ハルトの宿泊している場所は判るか?」
「確か〔月夜の亭〕だったと思いますが」
「呼んで来い! 解体するアーマーバッファローについて相談があると言ってな」
〔月夜の亭〕で寛いでいるハルトの部屋に女将が来て、コーエン侯爵様の使者が見えられているので下までお越し下さいと告げた。
依頼は完了していて、用は無いはずだが何だろうとホールに降りて行くと、執事の二段落ちって感じのフロックコートの男が立っていた。
「ハルトですが何か御用ですか」
「コーエン侯爵様がお呼びだ! 即刻出頭せよ!」
此奴何を言ってるのだろう、もう依頼の件は全て終わり呼び出される謂れはないのにと考えていると、怒号が響く。
「何を愚図愚図している。即刻と申したのが聞こえぬか」
「もう呼び出される謂れは無いのだが、それと俺は冒険者で侯爵様の配下でも領民でも無い。お前に怒鳴りつけられる事をした覚えも無いが、何様のつもりだ?」
「おっお前はコーエン侯爵様に刃向かうつもりか」
「刃向かうも何も、配下でも領民でも無い一介の冒険者を、貴族である侯爵様が勝手気儘に扱おうってのが可笑しいだろう。帰れ!」
真っ赤な顔でプルプル震えながら帰っていったよ。
「あんた、侯爵様のお使者様にあんな事言って大丈夫なの」
「心配ないよ。昨日までは侯爵様の頼みで仕事をしていたんだ。依頼は全て終わって金も貰ったから、呼び出される謂れは無いよ」
それでも心配そうな女将さんを安心させる為に笑って部屋に戻る。
使者の男は怒りに震えながら帰り、執事にハルトなる冒険者に侯爵様のお召しと伝えたのに、出頭を拒否されたと伝えた。
執事のヘイルは、ハルトが呼び出しを断ったとコーエン侯爵に伝えると、お前が行って事情を話し来て貰えと命じられた。
その夜ハルトは就寝寸前に二度目の来客を迎える事になった。
「今度は何ですか、いくら貴族だからといっても冒険者を配下と間違えて、即刻出頭せよ何て命令は受けられません」
「はい?」
不思議そうに聞き返す執事に先程の事を説明し、用が有るなら明日にしてくれと言って背を向けた。
溜め息一つ吐くと、明日出直して来るからと恐々覗く女将に告げてヘイルは帰っていった。
少し遅い朝食を取っていると、また執事のヘイルが現れた。
美味い朝食の味がいきなり不味くなる。
たっく煩い奴等だ、余り面倒事になる様ならお前等全員脳味噌をフリーズさせてやるぞと考えていると、ヘイルは隅のテーブルに座り俺の食事が終わるのを待つ構えになった。
「度々申し訳ないハルト殿。主人がアーマーバッファローを解体すると聞き、ご相談したい事が有るのでご足労願いたいと申しておりますが」
「執事様、俺は一介の冒険者ですから殿は不要です。相談とは?」
「解体された一部を買えないかとの仰せです。一度屋敷に来て貰えませんか」
何か以前より大分下手に出てきているね、どうせ絶品のお肉を買いたいって事だろう。俺も全てのお肉は引き取れないし、高値で売りつけてやるか。
渋々の執事の馬車に同乗して侯爵邸に向かうが、今日は待合室で待たされる事もなく侯爵様の執務室に直行した。
「使用人が無礼をした様だな、来て貰ったのは他でもない。アーマーバッファローを解体すると聞いたが」
「はい、肉を食べたくて一つ二つ塊を受け取るつもりですが」
「其れを譲って貰う訳にはいかないかね」
「侯爵様の頼みですが、残りの肉はオークションに出すつもりです」
「判っている。其処で相談だが君が引き取った残りの半分を譲って欲しいのだ、オークションに出した肉の価格に二割の上乗せをしよう」
高値で売りつけるつもりだったが二割増しなら御の字だ、即座に了承し二日後に冒険者ギルドの解体場で肉の引き渡しが決まった。
その時に引き取りの者を寄越す様にお願いして侯爵邸を後にする。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
解体場の台の上に並べられたお肉、大の男の胴体くらい有る肉の塊がドンと置かれている。
その数16個と小振りの肉塊が二つ、俺が二個と小振りの肉塊二つを受け取ると、侯爵様差し回しの男が七個の肉を受け取って帰っていく。
残りをギルドでオークションに掛けて貰う事で話がつき、皮や魔石を売った代金と共に俺の口座に振り込んで貰う様に手配する。
エールを一杯やっていくかと食堂に行くと、ホラン達〔金色の牙〕の面々がのんびりエール片手に談笑している。
「おーハルト肉を受け取りに来たのか」
「良いところで会った、今夜〔月夜の亭〕に来ませんか受け取ったお肉の食べ放題ですよ」
〈行くぞ!〉
〈食わせてくれるのか?〉
〈是非食わせてくれ〉
〈お前って良い奴だな〉
〈うむ、良い子だ〉
見届け人として付けた部下が報告にやって来て一礼したが、表情が硬いのを見て不審に思った。
「アーマーバッファローを三頭討伐致しました。残り三頭は逃げたそうです」
固い声で報告する部下の声を聞き、思わず聞き直した。
「間違い御座いません。マジックポーチにアーマーバッファロー三頭と、プレイリーウルフ16頭ブラックウルフ8頭を持ち帰りました」
「ハルト達はどうした」
「出入り商人の待合室にて待機させています」
「ヘイル、ハルトと護衛の冒険者達を連れてこい」
命じられた執事のヘイルが慌てて待合室に向かった。
ハルトと金色の牙の六人が執務室に現れると、コーエン侯爵は満面の笑みで迎えた。
「ハルト見せて貰って良いかな」
「どうぞ確認して下さい」
以前魔法の試しに使った訓練場に行き、アーマーバッファローを出してもらう。
マジックポーチを持つ、見届け役の男が硬い表情で三体を並べる。
侯爵様がマジマジと見て唸っている。
話があると言われ全員で執務室に戻ると、侯爵様から一番大きなアーマーバッファローを買い取りたいと提案された。
ホランの顔を見ると黙って頷き、他のメンバーも其れにならうので了解する。
満足気に頷く侯爵様が、オークションの関係で正確な値段の算出が出来ないので、一時金として俺に金貨40枚金色の牙に金貨20枚を渡す事にする。
オークション価格決定後、残金を冒険者ギルド経由で支払われる事になった。
翌日冒険者ギルドで残りの二頭とウルフを受け取り、それをもって依頼完了と了解してもらう。
一時金と依頼料合わせて金貨50枚を貰い、金色の牙も金貨20枚と護衛料を受け取り侯爵邸を後にした。
「いやーこんなに楽して稼いだのは初めてだ、感謝するぜハルト」
〈一時金だけで金貨20枚だぞ〉
〈後二頭いるから1/3を貰うと少なくとも金貨60枚、最低でも一人金貨10枚か〉
〈こりゃーギルドに預けておかないと呑んでしまいそうだぜ〉
〈おりゃー武器の新調だな〉
皆と浮かれ気味に街に帰り、明日ギルドでの待ち合わせを約束して別れた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
解体責任者とギルマスの立ち会いの下で、見届け人の男がマジックポーチからアーマーバッファロー二頭と、プレイリーウルフ16頭にブラックウルフ8頭を解体場に並べる。
「ハルトだったな、アーマーバッファローはオークションに掛けるから直ぐには精算出来ないぞ」
「結構ですが、小さい方のお肉が欲しいんですが無理ですか」
「此処では無理だな。解体してオークションに掛けると値が落ちるから」
なんだよそれ、お肉が美味しいって聞いて楽しみにしていたのに。
横たわるアーマーバッファローを睨んで考えていたが、1/3は金色の牙に権利があるんだよなー。
値を下げるのは〔金色の牙〕の連中も嫌がるだろうし、此処で閃いたね。
金は十分有る、なら〔金色の牙〕の取り分を増やせば文句は無いだろう。
「ホランさん、小さい方を上げますから大きい方は自由にさせて貰いますが宜しいですか」
解体場が珍しいらしく、傍らで話を聞いていた見届け人の男が呆れている。
「お前、肉が食いたくて稼ぎを捨てる気か。1/3の約束だがこれじゃ俺達の取り分が多過ぎるが」
呆れ顔のホランさんの言葉に、仲間達も同意見の様で変人を見る目で俺を見ている。
見届け人の男は呆れたのか、首を振り振り帰って行った。
ホラン達の同意を得て、小さい方は〔金色の牙〕の取り分になり大きい方は解体して貰う事になった。
肉の塊2,3個を引き取り、後は全てギルド経由で売り払えば半額くらいにはなるだろう。
ギルマスと解体責任者やその部下達も、変なものを見る目で俺を見ているのが解せぬ。
プレイリーウルフ16頭にブラックウルフ8頭の代金まで受け取るのは心苦しいと言われ全て俺の取り分となった。
お肉の受け取りは3日後で話が纏まり、プレイリーウルフとブラックウルフの代金は俺の口座に入れておいて貰うことのした。
ギルマスが俺の冒険者カードを持って受付に行き、ウルフの清算金を俺の口座に全て入れる様に指示している。
「ハルトは今日からシルバーランクだな」
そう言ってカードを返してくれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
帰って来た部下から引き渡し完了の報告を受け、アーマーバッファローを王都冒険者ギルドで解体してもらう事を考えていた。
然し部下が去り際に漏らした言葉に、コーエン侯爵は仰天した。
「待て! 今なんと言った」
「はい? 何の事でしょうか」
「アーマーバッファローを解体して肉と言ったな」
「はい、二頭の内の小さい方を護衛の冒険者達に渡し、大きい方を解体して肉が欲しいと言い出した時にはいやはや。相当な金額を受け取れるのに放棄して、肉が欲しいなど考えられません」
「ヘイル馬車の用意をしろ! 冒険者ギルド・・・いや、ハルトの宿泊している場所は判るか?」
「確か〔月夜の亭〕だったと思いますが」
「呼んで来い! 解体するアーマーバッファローについて相談があると言ってな」
〔月夜の亭〕で寛いでいるハルトの部屋に女将が来て、コーエン侯爵様の使者が見えられているので下までお越し下さいと告げた。
依頼は完了していて、用は無いはずだが何だろうとホールに降りて行くと、執事の二段落ちって感じのフロックコートの男が立っていた。
「ハルトですが何か御用ですか」
「コーエン侯爵様がお呼びだ! 即刻出頭せよ!」
此奴何を言ってるのだろう、もう依頼の件は全て終わり呼び出される謂れはないのにと考えていると、怒号が響く。
「何を愚図愚図している。即刻と申したのが聞こえぬか」
「もう呼び出される謂れは無いのだが、それと俺は冒険者で侯爵様の配下でも領民でも無い。お前に怒鳴りつけられる事をした覚えも無いが、何様のつもりだ?」
「おっお前はコーエン侯爵様に刃向かうつもりか」
「刃向かうも何も、配下でも領民でも無い一介の冒険者を、貴族である侯爵様が勝手気儘に扱おうってのが可笑しいだろう。帰れ!」
真っ赤な顔でプルプル震えながら帰っていったよ。
「あんた、侯爵様のお使者様にあんな事言って大丈夫なの」
「心配ないよ。昨日までは侯爵様の頼みで仕事をしていたんだ。依頼は全て終わって金も貰ったから、呼び出される謂れは無いよ」
それでも心配そうな女将さんを安心させる為に笑って部屋に戻る。
使者の男は怒りに震えながら帰り、執事にハルトなる冒険者に侯爵様のお召しと伝えたのに、出頭を拒否されたと伝えた。
執事のヘイルは、ハルトが呼び出しを断ったとコーエン侯爵に伝えると、お前が行って事情を話し来て貰えと命じられた。
その夜ハルトは就寝寸前に二度目の来客を迎える事になった。
「今度は何ですか、いくら貴族だからといっても冒険者を配下と間違えて、即刻出頭せよ何て命令は受けられません」
「はい?」
不思議そうに聞き返す執事に先程の事を説明し、用が有るなら明日にしてくれと言って背を向けた。
溜め息一つ吐くと、明日出直して来るからと恐々覗く女将に告げてヘイルは帰っていった。
少し遅い朝食を取っていると、また執事のヘイルが現れた。
美味い朝食の味がいきなり不味くなる。
たっく煩い奴等だ、余り面倒事になる様ならお前等全員脳味噌をフリーズさせてやるぞと考えていると、ヘイルは隅のテーブルに座り俺の食事が終わるのを待つ構えになった。
「度々申し訳ないハルト殿。主人がアーマーバッファローを解体すると聞き、ご相談したい事が有るのでご足労願いたいと申しておりますが」
「執事様、俺は一介の冒険者ですから殿は不要です。相談とは?」
「解体された一部を買えないかとの仰せです。一度屋敷に来て貰えませんか」
何か以前より大分下手に出てきているね、どうせ絶品のお肉を買いたいって事だろう。俺も全てのお肉は引き取れないし、高値で売りつけてやるか。
渋々の執事の馬車に同乗して侯爵邸に向かうが、今日は待合室で待たされる事もなく侯爵様の執務室に直行した。
「使用人が無礼をした様だな、来て貰ったのは他でもない。アーマーバッファローを解体すると聞いたが」
「はい、肉を食べたくて一つ二つ塊を受け取るつもりですが」
「其れを譲って貰う訳にはいかないかね」
「侯爵様の頼みですが、残りの肉はオークションに出すつもりです」
「判っている。其処で相談だが君が引き取った残りの半分を譲って欲しいのだ、オークションに出した肉の価格に二割の上乗せをしよう」
高値で売りつけるつもりだったが二割増しなら御の字だ、即座に了承し二日後に冒険者ギルドの解体場で肉の引き渡しが決まった。
その時に引き取りの者を寄越す様にお願いして侯爵邸を後にする。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
解体場の台の上に並べられたお肉、大の男の胴体くらい有る肉の塊がドンと置かれている。
その数16個と小振りの肉塊が二つ、俺が二個と小振りの肉塊二つを受け取ると、侯爵様差し回しの男が七個の肉を受け取って帰っていく。
残りをギルドでオークションに掛けて貰う事で話がつき、皮や魔石を売った代金と共に俺の口座に振り込んで貰う様に手配する。
エールを一杯やっていくかと食堂に行くと、ホラン達〔金色の牙〕の面々がのんびりエール片手に談笑している。
「おーハルト肉を受け取りに来たのか」
「良いところで会った、今夜〔月夜の亭〕に来ませんか受け取ったお肉の食べ放題ですよ」
〈行くぞ!〉
〈食わせてくれるのか?〉
〈是非食わせてくれ〉
〈お前って良い奴だな〉
〈うむ、良い子だ〉
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