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第25話

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青年の言葉にルシアは大きく目を見開いた。何故そんなことを言われたのか分からず、けれどそれに対して、どうしてとすぐ投げかけるには驚きが大きすぎた。
「引き止めて申し訳ありません。ですが、このまま貴女を行かせれば僕はきっと後悔をしてしまいます。」
「な、にを?」
ルシアがなんとか青年の言葉に質問を返すと、青年は頬をほんのり赤く染めて真剣な顔で彼女を見る。その顔にルシアの胸がひどく締め付けられるのを感じると、彼女は困惑した。
「(どうして私、この方の顔を見てこんな……。)」
あまりの真剣さにルシアが青年に目を逸らせずいると、彼は彼女をまっすぐ見て告げた。
「初めて見た時から、心惹かれておりました。どうか、この僕を貴女の唯一の男にしていただけませんか?」
青年の答えに言われた言葉を理解しようと思えば思うほど理解できず、ルシアは混乱した。
「一体、なにをおっしゃっているのですか……?先程会ったばかりでそんな……。」
「馬鹿げたことだと重々承知しております。」
混乱のあまりにルシアが問いかけた質問に青年はそう応えた。
普通なら、ルシアがどこにでもいる令嬢ならば、青年ほど優しく美しい男性にそう言われたらときめいてしまうものだろう。だが、ルシアの心にそう言ったものはなかった。何故なら、ルシアはまるで普通の令嬢ではなく、そんなルシアを慕っていると告げる青年もまた普通ではないとわかっているからだ。
「それに、それに……私の姿をよく見てください。貴方は私が大人の淑女に見えているのですか?」
「己が非常識であることは重々承知しております。ですが、この想いを止められないのです……。」
見た目が年端もいかぬ少女であることを自覚しているルシアがそう青年に問うと、彼はそう返してきた。両者の間に沈黙が流れる。
「……………」
「……………」
ルシアは青年に対して憤っていた。
何を思ってそんなことを言っているのか。少し話したぐらいできっと私のことをわかった気になっているのだろう。彼はきっと、私の素性を聞けば、一目で惹かれたなど2度と言わないに決まっている。
だって、私は呪われているのだから!
ルシアは唇を噛み、青年に厳しい目を向けた。
「貴方は、私のことを何も知らないのに、どうしてそんなことが言えるのですか?」
青年はルシアの目に少したじろぐ。このような目を向けられたことがないか、あるいは行動が予想外だったのか、ルシアはどちらでもよかった。
ただ、ルシアに惹かれているという心を疑われてなんと言うのか、それだけが彼女は気になった。
「一目で惹かれることは確かにあります。でも、本当のことを知ってそれでも貴方は私のことを心惹かれていると言えるのですか?」
青年はルシアの厳しい目も態度も静かに受け止め、ルシアの問いに答えた。
「何も知らないからこそ、今が惜しいと思ったのです。」
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