38 / 48
《afterstory #01》恋人観察日記 / SIDE:水都
09:最終日、今日は書くのが恥ずかしい
しおりを挟む
お題【恋人観察日記編】お借りしています
サイト名:TOY/管理人:遊
サイトアドレス:http://toy.ohuda.com/
■■■
———今年最後の恋人観察日記。今日は、クリスマスイブの蒼夜からのプロポーズのその後を記録しておこうと思う。正直恥ずかしくてちゃんと書けるか分からないけど。というか、なんて書いたらいいのか分からなくて、今も頭を抱えてるんだけど。———
クリスマスイブのプロポーズをきちんと理解してから三日。
オレは仕事そっちのけでひたすら悩んだ。
そして昨日の夜。
やっと決心して、蒼夜と話をしたんだ。
話、というか…プロポーズの、返事をしたくて。
一昨日仕事納めになって、昨日からは社会人の冬休み。
蒼夜の大学は一足早く冬休みに入ったみたいで、バイトも昨日で年内最後。
蒼夜がバイトでいない部屋は、なんとなくいつもと違っていて。
蒼夜の気配のする生活が当たり前になってるんだな、って実感した。
『スイの隣にいる権利がほしい』、蒼夜の言葉。
それがずっと頭の中を巡って、耳に何度も聞こえてくるようで、離れてくれない。
蒼夜がそばにいて、手を伸ばせば触れられるという幸せな生活。
それがこの先ずっと続く、と思うと、正直なところとても嬉しい。
できるなら手放したくない、オレにとって一番大切な時間だから。
けれど、春から学校の先生になる蒼夜のことを思うと、これからいろんな人に出逢って、その中に心惹かれる人がいるかもしれないって不安になる。
今よりも少し広い世界に進んだ時、それでも変わらずにオレを求めてくれるだろうかって。
バイトが終わって「ただいま」って帰ってきた蒼夜を「おかえり」って出迎えた。
いつもと逆のやりとりに、ほんのり嬉しい気持ちが込み上げてきて。
夜の風に当たって冷えた身体にギュッと抱きこまれて、胸が高鳴った。
オレの作ったあまり手の込んでない夕食を、それでも嬉しそうに「美味しい」って食べてくれる姿に幸せだなって感じた。
オレが洗い物を片付けている間に風呂に入った蒼夜が、ソファーで座って待っていたオレをいつものごとく後ろから抱きしめてくる。
湯上がりの体温と、ほのかに香るオレと同じシャンプーの匂い。
一緒に住んでるんだなって実感する。
一日の中のいくつものささやかな幸せを噛みしめて、やっと蒼夜ときちんと話せる気持ちが固まった。
「あのね、クリスマスイブに、蒼夜の言ってたこと…考えたんだ」
「うん」
「あれって…プロポーズ、だよね。あと、22のキス。昔、オレが蒼夜に話したネット小説のやつ。後からやっと分かったんだ」
「分かってもらえてよかった」
「すごく、嬉しかった。ありがとう。でも…」
二人並んでソファーに座って、自然と触れるオレの右手と蒼夜の左手。
なんとなく照れ臭くて、視線をあちこちに彷徨わせてしまう。
カラカラに乾いたのどに、言葉が絡みつくようで。
やっとゆっくり話し始めるオレを、蒼夜はただひたすら穏やかに聞いていてくれた。
蒼夜のこと、すごく大好きなこと。
ずっとそばにいてほしい、そう思ってること。
でも、蒼夜がこれから新しい世界でいろんな人に出会ったとき、それでもオレのそばにいてくれるのか不安になってること。
ひとつひとつ声に出していくたびに、オレの視界が歪んでいく。
掠れて震える声は、もうごまかしようもないほどの涙声。
23歳にもなって情けないことに泣いてしまった。
「スイ、ぎゅってさせて」
蒼夜は泣きじゃくるオレを膝の上に乗せた。
逃げようにも言葉通りぎゅっと抱きしめられて、逃れられない。
だから泣いたままの顔を肩口に埋めて隠した。
そんなオレをあやすように、蒼夜が背中を撫でてくれる。
オレの大好きな、甘くて蕩けるような体温。
「スイの言うとおり、俺はこれからいろんな人に出会うと思う」
「でもね。どんな人に出会っても、スイじゃないならみんな一緒」
「どん底で、スイへの気持ちさえ諦めようとしてた俺を拾い上げてくれたのは、スイだよ」
「俺を信じて3年も待っていてくれたのは、スイなんだよ」
「治療が終わって帰国したとき、スイがもう俺のこと好きじゃなかったらどうしようって思ってた」
「それでもスイは変わらずに好きでいてくれて、おかえりって言ってくれたよね」
「あのときからずっと、俺の帰る場所はスイのいるところで」
「もう絶対スイのそばから離れないようにしようって思ってた」
「スイにかっこいいって思ってもらえるように、もっとずっと好きになってもらえるように、そのためだけに料理だって人付き合いだって頑張ってきただけで」
「ただ、スイの帰る場所になれたらいいなって、そう思ってる。あの時からずっと。」
「愛してる。俺はぜーんぶスイのものだよ」
蒼夜の思いがけない告白は、オレの涙腺をぶっ壊して。
とめどなく溢れる涙で、蒼夜の部屋着の肩口が湿っていく。
オレが不安に思ってたことは、全部、オレのためだけに頑張った結果で。
蒼夜の思いの向く先には、必ずオレがいるんだって。
その言葉が何よりも嬉しかった。
「ねえスイ。約束する。俺はスイを幸せにする」
「だから、お願い。俺のことは、スイが幸せにして」
極上の蜂蜜みたいに甘い蒼夜の声に、グズグズになったまま肩口で頷くだけしかできなかったのは言うまでもない。
———約束する。蒼夜のことは、オレが幸せにする。これから先ずーっと。———
■■■
泣き虫水都くんと溺愛蒼夜くん。
水都くんが泣くと、蒼夜くんは膝抱っこでよしよしするタイプです。
なんせ超溺愛。
蒼夜くんがドイツで治療している時、ひまつぶしにとネット小説を紹介していた水都くん。
水都くんが読んで面白かったものや気に入ったものを紹介していた、と言う裏設定あり。(めっちゃわかりづらくてすみません。)
意外とロマンチストな水都くんと、そんな水都くんをよく理解して、要望に応えようとする蒼夜くんです。
サイト名:TOY/管理人:遊
サイトアドレス:http://toy.ohuda.com/
■■■
———今年最後の恋人観察日記。今日は、クリスマスイブの蒼夜からのプロポーズのその後を記録しておこうと思う。正直恥ずかしくてちゃんと書けるか分からないけど。というか、なんて書いたらいいのか分からなくて、今も頭を抱えてるんだけど。———
クリスマスイブのプロポーズをきちんと理解してから三日。
オレは仕事そっちのけでひたすら悩んだ。
そして昨日の夜。
やっと決心して、蒼夜と話をしたんだ。
話、というか…プロポーズの、返事をしたくて。
一昨日仕事納めになって、昨日からは社会人の冬休み。
蒼夜の大学は一足早く冬休みに入ったみたいで、バイトも昨日で年内最後。
蒼夜がバイトでいない部屋は、なんとなくいつもと違っていて。
蒼夜の気配のする生活が当たり前になってるんだな、って実感した。
『スイの隣にいる権利がほしい』、蒼夜の言葉。
それがずっと頭の中を巡って、耳に何度も聞こえてくるようで、離れてくれない。
蒼夜がそばにいて、手を伸ばせば触れられるという幸せな生活。
それがこの先ずっと続く、と思うと、正直なところとても嬉しい。
できるなら手放したくない、オレにとって一番大切な時間だから。
けれど、春から学校の先生になる蒼夜のことを思うと、これからいろんな人に出逢って、その中に心惹かれる人がいるかもしれないって不安になる。
今よりも少し広い世界に進んだ時、それでも変わらずにオレを求めてくれるだろうかって。
バイトが終わって「ただいま」って帰ってきた蒼夜を「おかえり」って出迎えた。
いつもと逆のやりとりに、ほんのり嬉しい気持ちが込み上げてきて。
夜の風に当たって冷えた身体にギュッと抱きこまれて、胸が高鳴った。
オレの作ったあまり手の込んでない夕食を、それでも嬉しそうに「美味しい」って食べてくれる姿に幸せだなって感じた。
オレが洗い物を片付けている間に風呂に入った蒼夜が、ソファーで座って待っていたオレをいつものごとく後ろから抱きしめてくる。
湯上がりの体温と、ほのかに香るオレと同じシャンプーの匂い。
一緒に住んでるんだなって実感する。
一日の中のいくつものささやかな幸せを噛みしめて、やっと蒼夜ときちんと話せる気持ちが固まった。
「あのね、クリスマスイブに、蒼夜の言ってたこと…考えたんだ」
「うん」
「あれって…プロポーズ、だよね。あと、22のキス。昔、オレが蒼夜に話したネット小説のやつ。後からやっと分かったんだ」
「分かってもらえてよかった」
「すごく、嬉しかった。ありがとう。でも…」
二人並んでソファーに座って、自然と触れるオレの右手と蒼夜の左手。
なんとなく照れ臭くて、視線をあちこちに彷徨わせてしまう。
カラカラに乾いたのどに、言葉が絡みつくようで。
やっとゆっくり話し始めるオレを、蒼夜はただひたすら穏やかに聞いていてくれた。
蒼夜のこと、すごく大好きなこと。
ずっとそばにいてほしい、そう思ってること。
でも、蒼夜がこれから新しい世界でいろんな人に出会ったとき、それでもオレのそばにいてくれるのか不安になってること。
ひとつひとつ声に出していくたびに、オレの視界が歪んでいく。
掠れて震える声は、もうごまかしようもないほどの涙声。
23歳にもなって情けないことに泣いてしまった。
「スイ、ぎゅってさせて」
蒼夜は泣きじゃくるオレを膝の上に乗せた。
逃げようにも言葉通りぎゅっと抱きしめられて、逃れられない。
だから泣いたままの顔を肩口に埋めて隠した。
そんなオレをあやすように、蒼夜が背中を撫でてくれる。
オレの大好きな、甘くて蕩けるような体温。
「スイの言うとおり、俺はこれからいろんな人に出会うと思う」
「でもね。どんな人に出会っても、スイじゃないならみんな一緒」
「どん底で、スイへの気持ちさえ諦めようとしてた俺を拾い上げてくれたのは、スイだよ」
「俺を信じて3年も待っていてくれたのは、スイなんだよ」
「治療が終わって帰国したとき、スイがもう俺のこと好きじゃなかったらどうしようって思ってた」
「それでもスイは変わらずに好きでいてくれて、おかえりって言ってくれたよね」
「あのときからずっと、俺の帰る場所はスイのいるところで」
「もう絶対スイのそばから離れないようにしようって思ってた」
「スイにかっこいいって思ってもらえるように、もっとずっと好きになってもらえるように、そのためだけに料理だって人付き合いだって頑張ってきただけで」
「ただ、スイの帰る場所になれたらいいなって、そう思ってる。あの時からずっと。」
「愛してる。俺はぜーんぶスイのものだよ」
蒼夜の思いがけない告白は、オレの涙腺をぶっ壊して。
とめどなく溢れる涙で、蒼夜の部屋着の肩口が湿っていく。
オレが不安に思ってたことは、全部、オレのためだけに頑張った結果で。
蒼夜の思いの向く先には、必ずオレがいるんだって。
その言葉が何よりも嬉しかった。
「ねえスイ。約束する。俺はスイを幸せにする」
「だから、お願い。俺のことは、スイが幸せにして」
極上の蜂蜜みたいに甘い蒼夜の声に、グズグズになったまま肩口で頷くだけしかできなかったのは言うまでもない。
———約束する。蒼夜のことは、オレが幸せにする。これから先ずーっと。———
■■■
泣き虫水都くんと溺愛蒼夜くん。
水都くんが泣くと、蒼夜くんは膝抱っこでよしよしするタイプです。
なんせ超溺愛。
蒼夜くんがドイツで治療している時、ひまつぶしにとネット小説を紹介していた水都くん。
水都くんが読んで面白かったものや気に入ったものを紹介していた、と言う裏設定あり。(めっちゃわかりづらくてすみません。)
意外とロマンチストな水都くんと、そんな水都くんをよく理解して、要望に応えようとする蒼夜くんです。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
【完結】星影の瞳に映る
只深
BL
高校三年生の夏。
僕たちは出会って一年を迎えた。
夏の大会に向けて腕を上げたいと言う、キラキライケメンヤンチャ系の『星 光(ほし ひかる)』と熟練した技を持ち、精神的にに早熟しながらもふわふわフラフラした性格で陰キャの『影 更夜(かげ こうや)』。
青春の時を過ごしながら、お互いの恋に気づき卒業前に思いを遂げるが、卒業とともに距離が離れて…。
高校生の人としておぼつかない時期の恋愛から大人になって、なおも激しく燃え上がる恋心の行方は…。
一日で書き上げたストーリーです。
何も考えず本能のままの青くさい物語をお楽しみください!
この小説は小説家になろう、アルファポリスに掲載しています。
ふれて、とける。
花波橘果(はななみきっか)
BL
わけありイケメンバーテンダー×接触恐怖症の公務員。居場所探し系です。
【あらすじ】
軽い接触恐怖症がある比野和希(ひびのかずき)は、ある日、不良少年に襲われて倒れていたところを、通りかかったバーテンダー沢村慎一(さわむらしんいち)に助けられる。彼の店に連れていかれ、出された酒に酔って眠り込んでしまったことから、和希と慎一との間に不思議な縁が生まれ……。
慎一になら触られても怖くない。酒でもなんでも、少しずつ慣れていけばいいのだと言われ、ゆっくりと距離を縮めてゆく二人。
小さな縁をきっかけに、自分の居場所に出会うお話です。
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─
藜-LAI-
BL
ヤスナの国に住む造り酒屋の三男坊で放蕩者のシグレは、友人からある日、なんでもその姿を見るだけで一億円に相当する『一千万ゼラ』が必要だという、昔話に準えて『一目千両』と呼ばれる高級娼婦の噂を聞く。
そんな中、シグレの元に想定外の莫大な遺産が入り込んだことで、『一目千両』を拝んでやろうと高級娼館〈マグノリア〉に乗り込んだシグレだったが、一瞬だけ相見えた『一目千両』ことビャクは、いけ好かない高慢ちきな美貌のオトコだった!?
あまりの態度の悪さに、なんとかして見る以外のことをさせようと、シグレは破格の『五千万ゼラ』を用意して再び〈マグノリア〉に乗り込んだのだが…
〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜
シグレ(26) 造り酒屋〈龍海酒造〉の三男坊
喧嘩と玄人遊びが大好きな放蕩者
ビャク(30〜32?) 高級娼館〈マグノリア〉の『一目千両』
ヤスナでは見かけない金髪と翠眼を持つ美丈夫
〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜
Rシーンは※をつけときます。

アリスの苦難
浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ)
彼は生徒会の庶務だった。
突然壊れた日常。
全校生徒からの繰り返される”制裁”
それでも彼はその事実を受け入れた。
…自分は受けるべき人間だからと。

【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる