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《afterstory #01》恋人観察日記 / SIDE:水都
05:四日め、彼とのデート日記
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お題【恋人観察日記編】お借りしています
サイト名:TOY/管理人:遊
サイトアドレス:http://toy.ohuda.com/
■■■
———蒼夜と一緒に暮らし始めて、4回目の週末。そう、今日は同棲1ヶ月の記念の週末だ。まさか蒼夜も覚えててくれるとは思わなくて、昨日から出掛ける約束はしてたけど、今朝「1ヶ月記念のデートだね」って言われてすごく驚いた。前回デートしたいなって書いたけど、ほんとに実現したんだ。オレの考えてることはお見通しなのかな。蒼夜はすごい———
今日の観察日記は、どうしてもすぐに書きたくて、それに書きたいことがたくさんありすぎて、いつもは蒼夜とのんびり過ごすこの時間に部屋にこもった。
ちょっと無理矢理に離脱してきたから、もしかしたら怪しまれてるかもしれないけど、今日のデートの記録をどうしても残したくて。
だって今日一日、すごく楽しくてしあわせな時間だったんだ。
朝からのことを思い出しながら、いつも以上にこと細かに書き込んでいく。
振り返るとどうにもくすぐったくて、それでいてしあわせで、思わずにやけてしまう。そんなデートだった。
今日のデート、蒼夜がこっそり準備していてくれたみたい。
ブランチに、と連れ出してくれたのは、めちゃくちゃ美味しいガレットのお店。
とっても天気が良くて、案内されたテラス席は綺麗な花壇の見えるベストスポット。
蒼夜が『美味しい』っていうお店だから、当然ガレットは最高に美味しくて。
また行きたいなって思ういいところだった。
のんびりとガレットを楽しんだ後は、オレが前に『面白そう』って言ってた謎解きイベントへ。
鉄道会社と某映画キャラのコラボイベントで、蒼夜曰く、肩慣らしだって。
それでも、普段は乗らない路線に乗って、謎解きして、最後に景品貰って、すごく楽しかった。
あまりにも楽しくて、またこういうイベントやってみたいって言ったら、年末に蒼夜イチオシの謎解きイベントに行こうって。
難易度上がるし、めちゃくちゃ歩くから覚悟してねって言われたけど、今から楽しみになった。
謎解きイベントが終わる頃にはもうおやつタイムで。
小腹もすいてたからか、たこ焼き食べようって話になって、これまた蒼夜オススメのたこ焼き屋さんまで行った。
これがまた最高に美味しくて、ほっぺた落ちるかと思ったんだよね。ここもまた行きたい。
たこ焼き屋さんの近くには大きな公園があって、せっかくだからってことで公園も散策した。
休みの日だから家族連れとかカップルとかたくさんいて、視界に入る彼らがほんの少し羨ましいなって思った。
その、繋がれた手が。
「スイ、こっち」
一瞬ぼけっとしてたオレの手を、横から攫うように繋ぐ手。
はっとして周りを見渡したけど、だれもこっちを見てる様子がなくてほっとした。
それと同時に、繋がれた手の温もりが、急に照れくさくなって…俯いたまま視線をあげられなくなってしまった。
そんなオレの様子はお構いなしに、俺の手を引いて公園の奥へ足を進める蒼夜。
しばらく行くと、木々に囲まれた小さな噴水のある場所に出た。
近くには少しレトロなベンチ。
周りには誰もいない。多分、奥まったところだからなんだろう。
「ここ、座って」
そうして連れてこられたのは、ここに唯一かもしれないベンチで。
オレが座ると、蒼夜はいつもの定位置…オレの右側…に座ると思いきや、そのまま横たわって、オレの足に頭を乗せてきた。
いわゆる、膝枕だ。
予想外の行動と、見慣れない角度から見る蒼夜の表情に、オレの心臓が早鐘を打ち始める。
多分、顔も赤くなってるはず。
行き場をなくしたオレの右手は、蒼夜の左手に絡め取られて。
ゆっくり近付く右手の指先が、オレの赤くなってるだろう頬をなぞる。
「さすがに街中で繋いだら、スイに逃げられちゃいそうで。でも、せっかくのデートなんだし、手ぐらい繋ぎたいと思って。ここならほとんど人も来ないから、しばらくこのままでいさせて」
甘い、甘い、蒼夜の瞳。
じっとオレを見つめる眼差しがあまりにも熱っぽくて、言われるまま膝枕をして、手を握った。
それと、オレの大好きなキラキラの銀髪を撫でた。
蒼夜は何も言わない。
けれど、嬉しそうに口元を緩めて、目を閉じてる。
チョコレートみたいな瞳が見えないのは残念だけど、こんな風に甘えられるのも悪くないなって。
ついさっきまで、だれかに見られたらどうしようって思ってたのが嘘みたいだ。
小さな噴水の水の音と、風に揺らされる針葉樹の音。
まるでここだけくっきりと切り取られたような、穏やかな空間。
「いかがでしたか?本日の記念日デートは」
わざと茶化すような物言いをする蒼夜が可笑しくて、なんだかよくわからないツボに入ってしばらく笑いが止まらなかったけど、「最高」って言ったら嬉しそうに笑ってくれた。
ほんと、最高のデートだよね。
蒼夜が美味しいと思ったものをオレにも食べさせてくれて。
オレが興味を持ってたイベントを聞き逃さないでいてくれて。
すごく大切にされてるなって実感した。
それから青空がオレンジに染まるまで公園でのんびりと過ごした。
ふたりで家に帰って、お互いに「ただいま」と「おかえり」を言い合って、一緒に夕飯を作って食べた。
穏やかでのんびりした温かな一日。
———オレは蒼夜になにも出来ないのに、こんなに大切にしてもらってていいのかな。オレが蒼夜のためにできることってないかな。蒼夜はなにをしたら喜んでくれるかな———
そこまで書いて、手が止まった。
ほんと、オレにできることはないのかな。
蒼夜を喜ばせられるような、なにか。
「スイ?そろそろ寝よう。先に部屋に戻ってるね」
考え込んでいたところに、軽快なノック音と、蒼夜の柔らかな声。
急いでノートを本棚に戻して、蒼夜の部屋に急いだ。
今日のデートのお礼を改めて伝えよう、と決意して。
サイト名:TOY/管理人:遊
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———蒼夜と一緒に暮らし始めて、4回目の週末。そう、今日は同棲1ヶ月の記念の週末だ。まさか蒼夜も覚えててくれるとは思わなくて、昨日から出掛ける約束はしてたけど、今朝「1ヶ月記念のデートだね」って言われてすごく驚いた。前回デートしたいなって書いたけど、ほんとに実現したんだ。オレの考えてることはお見通しなのかな。蒼夜はすごい———
今日の観察日記は、どうしてもすぐに書きたくて、それに書きたいことがたくさんありすぎて、いつもは蒼夜とのんびり過ごすこの時間に部屋にこもった。
ちょっと無理矢理に離脱してきたから、もしかしたら怪しまれてるかもしれないけど、今日のデートの記録をどうしても残したくて。
だって今日一日、すごく楽しくてしあわせな時間だったんだ。
朝からのことを思い出しながら、いつも以上にこと細かに書き込んでいく。
振り返るとどうにもくすぐったくて、それでいてしあわせで、思わずにやけてしまう。そんなデートだった。
今日のデート、蒼夜がこっそり準備していてくれたみたい。
ブランチに、と連れ出してくれたのは、めちゃくちゃ美味しいガレットのお店。
とっても天気が良くて、案内されたテラス席は綺麗な花壇の見えるベストスポット。
蒼夜が『美味しい』っていうお店だから、当然ガレットは最高に美味しくて。
また行きたいなって思ういいところだった。
のんびりとガレットを楽しんだ後は、オレが前に『面白そう』って言ってた謎解きイベントへ。
鉄道会社と某映画キャラのコラボイベントで、蒼夜曰く、肩慣らしだって。
それでも、普段は乗らない路線に乗って、謎解きして、最後に景品貰って、すごく楽しかった。
あまりにも楽しくて、またこういうイベントやってみたいって言ったら、年末に蒼夜イチオシの謎解きイベントに行こうって。
難易度上がるし、めちゃくちゃ歩くから覚悟してねって言われたけど、今から楽しみになった。
謎解きイベントが終わる頃にはもうおやつタイムで。
小腹もすいてたからか、たこ焼き食べようって話になって、これまた蒼夜オススメのたこ焼き屋さんまで行った。
これがまた最高に美味しくて、ほっぺた落ちるかと思ったんだよね。ここもまた行きたい。
たこ焼き屋さんの近くには大きな公園があって、せっかくだからってことで公園も散策した。
休みの日だから家族連れとかカップルとかたくさんいて、視界に入る彼らがほんの少し羨ましいなって思った。
その、繋がれた手が。
「スイ、こっち」
一瞬ぼけっとしてたオレの手を、横から攫うように繋ぐ手。
はっとして周りを見渡したけど、だれもこっちを見てる様子がなくてほっとした。
それと同時に、繋がれた手の温もりが、急に照れくさくなって…俯いたまま視線をあげられなくなってしまった。
そんなオレの様子はお構いなしに、俺の手を引いて公園の奥へ足を進める蒼夜。
しばらく行くと、木々に囲まれた小さな噴水のある場所に出た。
近くには少しレトロなベンチ。
周りには誰もいない。多分、奥まったところだからなんだろう。
「ここ、座って」
そうして連れてこられたのは、ここに唯一かもしれないベンチで。
オレが座ると、蒼夜はいつもの定位置…オレの右側…に座ると思いきや、そのまま横たわって、オレの足に頭を乗せてきた。
いわゆる、膝枕だ。
予想外の行動と、見慣れない角度から見る蒼夜の表情に、オレの心臓が早鐘を打ち始める。
多分、顔も赤くなってるはず。
行き場をなくしたオレの右手は、蒼夜の左手に絡め取られて。
ゆっくり近付く右手の指先が、オレの赤くなってるだろう頬をなぞる。
「さすがに街中で繋いだら、スイに逃げられちゃいそうで。でも、せっかくのデートなんだし、手ぐらい繋ぎたいと思って。ここならほとんど人も来ないから、しばらくこのままでいさせて」
甘い、甘い、蒼夜の瞳。
じっとオレを見つめる眼差しがあまりにも熱っぽくて、言われるまま膝枕をして、手を握った。
それと、オレの大好きなキラキラの銀髪を撫でた。
蒼夜は何も言わない。
けれど、嬉しそうに口元を緩めて、目を閉じてる。
チョコレートみたいな瞳が見えないのは残念だけど、こんな風に甘えられるのも悪くないなって。
ついさっきまで、だれかに見られたらどうしようって思ってたのが嘘みたいだ。
小さな噴水の水の音と、風に揺らされる針葉樹の音。
まるでここだけくっきりと切り取られたような、穏やかな空間。
「いかがでしたか?本日の記念日デートは」
わざと茶化すような物言いをする蒼夜が可笑しくて、なんだかよくわからないツボに入ってしばらく笑いが止まらなかったけど、「最高」って言ったら嬉しそうに笑ってくれた。
ほんと、最高のデートだよね。
蒼夜が美味しいと思ったものをオレにも食べさせてくれて。
オレが興味を持ってたイベントを聞き逃さないでいてくれて。
すごく大切にされてるなって実感した。
それから青空がオレンジに染まるまで公園でのんびりと過ごした。
ふたりで家に帰って、お互いに「ただいま」と「おかえり」を言い合って、一緒に夕飯を作って食べた。
穏やかでのんびりした温かな一日。
———オレは蒼夜になにも出来ないのに、こんなに大切にしてもらってていいのかな。オレが蒼夜のためにできることってないかな。蒼夜はなにをしたら喜んでくれるかな———
そこまで書いて、手が止まった。
ほんと、オレにできることはないのかな。
蒼夜を喜ばせられるような、なにか。
「スイ?そろそろ寝よう。先に部屋に戻ってるね」
考え込んでいたところに、軽快なノック音と、蒼夜の柔らかな声。
急いでノートを本棚に戻して、蒼夜の部屋に急いだ。
今日のデートのお礼を改めて伝えよう、と決意して。
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