猫被りの恋。

圭理 -keiri-

文字の大きさ
上 下
32 / 48
《afterstory #01》恋人観察日記 / SIDE:水都

03:三日め、自分といない時の彼

しおりを挟む
お題【恋人観察日記編】お借りしています
サイト名:TOY/管理人:遊
サイトアドレス:http://toy.ohuda.com/

■■■



———3回目の週末。今日は蒼夜が大学の友だちと予定があるって言って、朝から出掛けてた。
せっかくお天気もいいし、オレも昼過ぎに出掛けて、久しぶりに私服を買ったり蒼夜に飲んでほしい紅茶や食べてほしいお菓子を買いに行ってきた。
そういえば、途中で立ち寄ったカフェで、ひときわ賑やかな大学生のグループがいたんだけど、気になって遠目に見てたら、蒼夜がいた。
オレの見たことのない、他の人といる時の蒼夜。思わず観察してしまった。———





そう書き始めた、3回目の観察日記。
つらつらと書き連ねながら、今日のできごとを思い返す。



昨日の夕飯を一緒に食べながら、週末の予定を確認した時に、「大学の友だちと出掛ける予定が入ってるんだ」って少しすまなそうに言うから、「気にしなくていいよ」って言ったけど。
ほんとは今朝、ちょっとだけ面白くなかった。
久しぶりに出掛けられそうだなって楽しみにしてたから。
とはいえ、つまんないヤキモチで蒼夜そうやの交友関係に口出して嫌われるのはいやだし。
なんとなくスッキリしないモヤモヤを晴らそうと出掛けた先で、オレの知らない蒼夜そうやに出会っちゃうなんて。
運がいいのか悪いのかわからないや。


気付かれないようにこそっと様子を見守ってると、男女4人ずつの大所帯。
蒼夜そうやの両隣に座ってるのは、バッチリメイクして可愛く着飾ってる女の子たち。
女の子たちはすごくニコニコしてて、楽しそうに話してる。
蒼夜そうやも穏やかにその子たちに答えていて、遠目に見てるとすごく楽しそうだった。
え、なにこれ。合コン??

…なんか、またちょっと…もやっとした…

胸の中の違和感に首を傾げつつ、それでも蒼夜そうやの様子が気になって、またチラ見した。
見たところ、ホットコーヒー飲んでるみたい。オレと出かけた時や家ではいつも紅茶なのに、珍しい。
一緒にいる友だちはみんなケーキと紅茶を楽しんでる中で、蒼夜そうやはゆったりコーヒーを飲んでて。
甘いものだって、家で自作してまで食べるほど好きなはずなのに、なんで頼まなかったんだろう。
それにしても、ああやってカフェで優雅に過ごしてる姿は、みとれるほどかっこいい。欲目100パーセントだけど。



…って、あれ?
なんか、蒼夜そうやいつもと違ってた…?



よーく思い出してみると…多分メガネ。
そうだ、オレといる時はいつもメガネしてないんだった。
だからいつも甘くて蕩けるような綺麗な茶色の瞳が間近で見れる。
ふと気づいて、そのこともノートに書き留めた。
メガネの蒼夜そうやは、クールで有能そうな印象で、すごく大人っぽく見える。
いつもの蒼夜そうやとは違う魅力がダダ漏れだった。
あれはあれですごくいい。






そんな風に心の中でみとれて惚気けまくってたせいか、後から帰ってきた蒼夜そうやを出迎えた時、間近であのクールで知的なメガネ姿をみてしまって固まった。
そうだ、こいつのキラキライケメン度舐めてた…って。
「ただいま」って嬉しそうに目元を緩めて、それから当たり前のようにハグ。玄関先で。
まだ慣れないんだよな、あれ。
なんであんなに嬉しそうに柔らかく笑うんだろう。
あのカフェでちらっと見た笑顔と全然違う。
小さく「おかえり」って返せば、これまた当たり前のようにデコチューだもん。
この甘々な人、一体誰?って思う。



それから、久しぶりにオレが手料理振る舞って、蒼夜そうやが美味しいって絶賛して食べてくれて、食後の紅茶を楽しみつつソファーでまったりして。
今日の出掛けた話もいろいろと教えてくれた。
大学の同じ学年のメンバーで、全員無事に卒論提出おめでとうの集まりしたんだって。
さり気なく何飲んでたのか聞いたら、やっぱりコーヒーだって。
なんでって聞いたら、「なんとなく、スイと飲むのが当たり前になってるのかも?」とか言い出してびっくりした。
でも、その言葉に、カフェで感じたモヤモヤが晴れたんだよね。不思議。
何気なく触れる指先が、手のひらの温度が、甘い眼差しが、オレのなかのモヤモヤした気持ちをきれいに取り去ってくれる。
というか、他のことが考えられなくなるんだよね。
そうしてオレをたっぷり甘やかした蒼夜そうやは、さっきお風呂に行った。






———オレと一緒じゃない時の蒼夜をみたのは、ほとんど初めてだった。
知らない誰かと笑いあってるのをみたのは、正直ちょっと面白くなかったけど、帰ってきた蒼夜をみたら吹き飛んだ。
あんなに甘く緩んだ顔は、多分オレだけが知ってる。他の人は知らない。自意識過剰かもしれないけど。

確かに、メガネ掛けてるのもすごくかっこよかったし、あんな風に大人っぽく、いや、大人だけど、落ち着いた雰囲気をまとってるのも魅力的だった。
多分あの中に、蒼夜に好意を持ってる子もいるんだろうなって思った。両隣の子たちとか。

今日あのシーンをみて、蒼夜が周りにどう見られてるのかが少しわかった気がする。モテるんだろうな。
だから、いまオレが蒼夜の隣にいられることは夢みたいなんだけど。
だからといって、今のこの立ち位置を、他の誰かに譲りたくないなって改めて思った。
オレは、オレのできることを頑張りたい。———





なんだか、最後は何書きたいかぐちゃぐちゃになった気がしたけどまあいいや。
そろそろ蒼夜そうやもお風呂から出てくる頃だし、またリビングに戻ろうかな。

そうしてノートを閉じて本棚に隠した。
また来週、今度は蒼夜そうやとデートした記録が残せるといいなあって思いながら。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

【完結】星影の瞳に映る

只深
BL
高校三年生の夏。 僕たちは出会って一年を迎えた。 夏の大会に向けて腕を上げたいと言う、キラキライケメンヤンチャ系の『星 光(ほし ひかる)』と熟練した技を持ち、精神的にに早熟しながらもふわふわフラフラした性格で陰キャの『影 更夜(かげ こうや)』。 青春の時を過ごしながら、お互いの恋に気づき卒業前に思いを遂げるが、卒業とともに距離が離れて…。 高校生の人としておぼつかない時期の恋愛から大人になって、なおも激しく燃え上がる恋心の行方は…。 一日で書き上げたストーリーです。 何も考えず本能のままの青くさい物語をお楽しみください! この小説は小説家になろう、アルファポリスに掲載しています。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。 ※シリーズごとに章で分けています。 ※タイトル変えました。 トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。 ファンタジー含みます。

処理中です...