猫被りの恋。

圭理 -keiri-

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優しい嘘、残酷な嘘 《高校2年生・夏秋》

第15話 たとえば君と

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〈SIDE: 蒼夜〉


俺の想いと君の想いが重なるなら。
俺の未来と君の未来が重なるなら。
そんな妄想をしても許されるだろうか。





















逃げ回っていた【現実】。
結局はもう逃げられないのだけれど。
ここまでくると、いろいろなことを思い出す。
楽しいこと、辛いこと、面倒なこと、面白かったこと。
でもスイと一緒にいた時間は何もかもが楽しくて、幸せだった。

“あの人”のことなんてすっかり忘れてた。
俺があの人に感じてた好意は、家族なんかに向ける親愛で。
スイへの好意は全く違う、特別な想いだった。
気付いたのは、あの日、彼女を見る冷たい目をしたスイを見てからだけど。
やっと気付いた時には手遅れで、それなら気付きたくなかったと思った。
反面、こんな特別な想いを教えてくれたことに感謝した。

スイが好きで、大切で。
スイだけが特別で、愛おしい。
閉じ込めてしまいたいと思うほどに。
スイがくれた言葉が心にしみた。




「もう限界かな、嘘つくの」




嘘をつくことが難しいわけじゃない。
外面で生きてきた俺にとって、取り繕うのは大したことじゃない。
けれど、スイには、スイだけには、嘘をつくのが苦しい。
スイと逢って変わった俺の心。
スイだけには嘘をつかなくなってた心が痛い。


スイと出逢って、俺は変われた。



もしスイと出逢っていなかったら、ってふと考える。
もし出逢っていなかったらきっと、こんなに苦しい気持ちになったりしなかった。
たった一つのことを伝えるのに、こんなに躊躇ためらったりしなかった。
スイを傷つけるだけの【現実】を伝えることが怖い。
そう思うとやっぱり口に出すことが出来ないんだ。
それでも…





「言うしか、ないのかな…」






出逢わなければ良かった。


でもね。
君に出逢っていなかったら、俺は大切なモノを見つけることが出来なかったと思う。
誰かを想う気持ちが温かいということ。
誰かに寄り添ってもらえることが幸せだということ。
手を伸ばせば触れる温もりが甘いということ。


だから。
出逢って良かった。



(それで嫌われても仕方ない)

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