猫被りの恋。

圭理 -keiri-

文字の大きさ
上 下
2 / 48
猫被りの出逢い 《高校1年生》

第2話 その瞳は誰を追う

しおりを挟む
〈SIDE: 蒼夜〉



その瞳が何を映しているのか知りたくて。

その瞳が何を欲しているのか知りたくて。



久しぶりに面白いことが起きそうな予感がした、青葉の季節。


















君にとらわれたあの日から一ヶ月半。




結果的に言うと、俺達はただのクラスメートのままだ。
お互い付き合う友人が違ったから、関わる機会がなくなったのだ。


俺は相変わらず猫かぶりのまま『オトモダチ』を作った。
彼は彼なりに友人を作ったようだ。
俺の苦手なタイプのグループだったけど。
それ以来、彼は興味の対象であり、近づきたくない人となった。












それからしばらく。
いろいろ言っても彼は気になる存在だったから、ずっと視線だけで追っていた。


いつもと変わらない学校生活。
入学して半年も経たずに飽き飽きしながら、それでも自ら動くのが面倒で、その「つまらない」日常に埋もれかけていたそのとき。
ふと見つけた小さなこと。
些細な、それこそ、他の誰も気づかないようなこと。



君の瞳に映った『感情』。



本来なら友人と仲良く喋って、一日の中で一番楽しくなるであろう昼食の時間。
笑って話しているはずの君の瞳が笑っていなかった。





『つまらない』
『くだらない』





そんな瞳だった。
たった一つの発見で、飽き飽きしていた日常が変わっていく。
そのことに俺は思わずふっ…と笑った。






蒼夜そうや?どうしたんだ…?」






一緒に昼食をとっていた『オトモダチ』の声にはっと気付くと、俺は食事の手を止めて一点を見ていたようだった。
幸いなことに、見ていた相手にも『オトモダチ』にも気付かれてはいないようだったが。

心配そうにこっちをみる『オトモダチ』に、俺は偽物の笑顔を見せる。






「何でもないよ。少しぼんやりしてただけ」






そう言えば、「そっか」と言ってまた楽しそうに話し始める。
俺はそんな『オトモダチ』の話を意識半分で聞いて、適当に相づちを打ちながら彼に目を向けた。
相変わらずつまらなそうな瞳で笑っている。
どうして誰も気付かないのか不思議に思うくらいだったけど…
それは多分彼が俺と同類だからだろう。





同じニオイ。
猫被りの人間のニオイ。




近づきたくなかったけど…それ以上にもっと知りたいと思った自分。
身の危険を案じることより好奇心が勝ったのか…。
いずれにしても、これまでの生活が一気に変化しそうだな、と抑えきれない喜びが湧き上がってきた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】星影の瞳に映る

只深
BL
高校三年生の夏。 僕たちは出会って一年を迎えた。 夏の大会に向けて腕を上げたいと言う、キラキライケメンヤンチャ系の『星 光(ほし ひかる)』と熟練した技を持ち、精神的にに早熟しながらもふわふわフラフラした性格で陰キャの『影 更夜(かげ こうや)』。 青春の時を過ごしながら、お互いの恋に気づき卒業前に思いを遂げるが、卒業とともに距離が離れて…。 高校生の人としておぼつかない時期の恋愛から大人になって、なおも激しく燃え上がる恋心の行方は…。 一日で書き上げたストーリーです。 何も考えず本能のままの青くさい物語をお楽しみください! この小説は小説家になろう、アルファポリスに掲載しています。

ふれて、とける。

花波橘果(はななみきっか)
BL
わけありイケメンバーテンダー×接触恐怖症の公務員。居場所探し系です。 【あらすじ】  軽い接触恐怖症がある比野和希(ひびのかずき)は、ある日、不良少年に襲われて倒れていたところを、通りかかったバーテンダー沢村慎一(さわむらしんいち)に助けられる。彼の店に連れていかれ、出された酒に酔って眠り込んでしまったことから、和希と慎一との間に不思議な縁が生まれ……。  慎一になら触られても怖くない。酒でもなんでも、少しずつ慣れていけばいいのだと言われ、ゆっくりと距離を縮めてゆく二人。  小さな縁をきっかけに、自分の居場所に出会うお話です。

【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。 幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。 逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。 見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。 何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。 しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。 お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。 主人公楓目線の、片思いBL。 プラトニックラブ。 いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。 2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。 最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。 (この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。) 番外編は、2人の高校時代のお話。

超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─

藜-LAI-
BL
ヤスナの国に住む造り酒屋の三男坊で放蕩者のシグレは、友人からある日、なんでもその姿を見るだけで一億円に相当する『一千万ゼラ』が必要だという、昔話に準えて『一目千両』と呼ばれる高級娼婦の噂を聞く。 そんな中、シグレの元に想定外の莫大な遺産が入り込んだことで、『一目千両』を拝んでやろうと高級娼館〈マグノリア〉に乗り込んだシグレだったが、一瞬だけ相見えた『一目千両』ことビャクは、いけ好かない高慢ちきな美貌のオトコだった!? あまりの態度の悪さに、なんとかして見る以外のことをさせようと、シグレは破格の『五千万ゼラ』を用意して再び〈マグノリア〉に乗り込んだのだが… 〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜 シグレ(26) 造り酒屋〈龍海酒造〉の三男坊 喧嘩と玄人遊びが大好きな放蕩者 ビャク(30〜32?) 高級娼館〈マグノリア〉の『一目千両』 ヤスナでは見かけない金髪と翠眼を持つ美丈夫 〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜 Rシーンは※をつけときます。

アリスの苦難

浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ) 彼は生徒会の庶務だった。 突然壊れた日常。 全校生徒からの繰り返される”制裁” それでも彼はその事実を受け入れた。 …自分は受けるべき人間だからと。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

処理中です...