懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

文字の大きさ
上 下
698 / 701

第697話 ヤる時はヤレ!

しおりを挟む
 カレンさんが店長を勤めるファミレスの事は前から知っていた。
 エイさんは席に並んで着かされた事を少し理解していない様子だ。
 そして、お母さんは正直何を考えているのか解らない。

 いつも、一日で起こった事を話すのは食卓なのが鮫島家の流れじゃなかったの!? 前から彼との関係が進むように、トントトーン♪ って背中を押してきたのにコレはあまりにも急だ。
 お母さんの意図が読めない……

「カレンちゃん。エイちゃん。聞いて~」

 あたしと彼が口もごんでいると三人のセンターに座るお母さんが語る。

「私たちは~今まで子供達の事で協力してきて~親身になって~手を取り合って来たわよね~?」
「ホント、二人には助けられっぱなしだよ。私は」
「何を今更! 私達はチームである以上に家族だ! 家族を助ける事に何を躊躇う!?」
「家族……そう、家族なの。リンちゃん、ケンゴ君。二人で決めた大切な報告は私だけじゃなくて“家族”みんなで聞きたいの」

 そう語るお母さんの眼はとても優しくて、嬉しそうで、そして全てを理解している様子だった。
 そうか……これはあたしと彼だけの特別な話しじゃない。
 あたし達を見守ってくれていた人達もその場で聞いて欲しいとお母さんは思ったんだ。

 お母さんに連れられて今のアパートにやって来て、彼に出会った事で始まった沢山の縁。母と二人だけだったあたし達にとって……特に強く繋がった人達は――

「セナさん」

 すると彼が真剣な眼で母を見る。そして、

「オレはリンカちゃんの事が好きです。彼女とお付き合いしたいと思っています」
「あたしも、彼の事が好き。だから、お母さん。あたしも彼と付き合いたい」

 彼が前に踏み出したから、あたしもその隣に並んで告げた。





「オレはリンカちゃんの事が好きです。彼女とお付き合いしたいと思っています」

 オレはセナさんに言った。言ってやったぞ! リンカが好きで付き合いたいって! 何だろう……滅茶苦茶恥ずかしい! 何ならリンカに告白した時よりも恥ずかしいぞ! すると、

「あたしも、彼の事が好き。だから、お母さん。あたしも彼と付き合いたい」

 リンカも同じ様にママさんチームを向かって告白した。そのおかげで少しだけ心に余裕を持てた気がする。なんだか、恥ずかしさを分け合った感じ。
 すると、

「やっと?」

 カレンさんが、笑いながら呆れつつもソーダをストローで飲む。

「や、やっとです……ハイ」

 オレがそう言うと、リンカは改めて恥ずかしくなったのか顔を赤くして下を向く。

「まぁ、アンタらならいつかはこうなると思ってたから私としては意外性は無いかな。おめでと」
「あ、ありがと。カレンさん」

 リンカのお礼にカレンさんは、ん、と微笑むとポケットから何かを取り出すと手で隠すようにテーブルに置く。

「リンカ、私の手に重ねて」
「? こう?」

 リンカはカレンさんの手の甲に自分の手を持ってくると、入れ違いでカレンさんは引っ込めた。

「どうせ近い内に必要になるからね。あげる」
「? ……!!? カ、カレンさん! こ、これ!」

 ソレを手の平の感覚で理解したリンカが顔を赤くしてカレンさんに追求する。

「昨日の深夜に店でさ。トイレをラブホ代わりに使おうとしたヤツらを出禁にした時の戦利品。帰ったら捨てるつもりだったけど、丁度良いからあげる。どうせ、ケンゴも持ってないでしょ?」

 あ、そのセリフでナニをリンカが渡されたのか全部解ったぞ。

「カレンさん。オレはリンカちゃんと健全な付き合いをします。ソレは必要ありません!」
「言うね~ケンゴ。さてさて、若々しい乙女の身体を前に何日持つかな?」

 ニヤニヤとカレンさんは笑う。しかし、オレはこれまで数々の性戦を乗り越えてきた。ほんの数年くらい越えて見せるさ!
 越えて見せるぅ……よぉ……

「最低限の備えってヤツだよ。ある意味、性行は依存性も高い行為だからね。その時の感情に任せてその後の人生に苦労する必要は無いってこと」

 その言葉は、カレンさんがその道を通ってきた事を反面教師にするように言っている様だった。

「私からは、ヤる時はヤレ! ただし、日常生活に支障が出る様な無計画はナシって所かな」

 ハイ、次。とカレンさんは会話のバトンを渡すようにそう言うと、隣に座るセナさんかエイさんを見る。

 オレは二人を見るとセナさんに関しては顎に手を当てて何か考えていた。何考えてるんだろう? エイさんは――

「…………」

 腕を胸の下で組んで力強く眼を閉じている。目の前に置かれた烏龍茶はいつの間にか空になって置かれていた。こっちも何考えてるのかわかんねぇ。

 カレンさんはソーダを、ズズズ……とストローで飲みながら、残り二人とオレらの会話の着地点が何処に落ち着くのかを楽しそうに見ている。まぁ、第三者からすれば格好のイベントだもんなぁ。

「ケンゴ、リンカ」

 先に考えをまとめたのはエイさんだった。閉じた眼をゆっくりと開けると強い瞳でオレらを見る。

「お前達、まだ付き合って無かったのか?」

 普段は察しの良いエイさんの口からは少し意外な言葉が出てきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2024.8.2)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の加瀬桔梗のクラスには、宝来向日葵という女子生徒がいる。向日葵は男子生徒中心に人気が高く、学校一の美少女と言われることも。  しかし、桔梗はなぜか向日葵に1年生の秋頃から何度も舌打ちされたり、睨まれたりしていた。それでも、桔梗は自分のように花の名前である向日葵にちょっと興味を抱いていた。  ゴールデンウィーク目前のある日。桔梗はバイト中に男達にしつこく絡まれている向日葵を助ける。このことをきっかけに、桔梗は向日葵との関わりが増え、彼女との距離が少しずつ縮まっていく。そんな中で、向日葵は桔梗に可愛らしい笑顔を段々と見せていくように。  桔梗と向日葵。花の名を持つ男女2人が織りなす、温もりと甘味が少しずつ増してゆく学園ラブコメディ!  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしています。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※続編がスタートしました!(2025.2.8)  ※1日1話ずつ公開していく予定です。  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

処理中です...