懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第659話 J捜索網

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『こちらセグ1。“居た”か?』
『こちらセグ2。人相の老人は居ない。藁の中から針を探すようなモンだ』
『こちらセグ3。対象“J”を見つけたらどうするんだ?』
『下手に隠そうとするな。両手を見える所に出しつつこちらの身分を明かして、敵対の意志が無いことを伝えろ。間違ってもポケットに手を入れて近づくなよ。五感のどれかを潰されても正当防衛で処理されるからな』
『そんなにヤバいのか? 片腕の老人だろ?』
『老人だからだ。自分が全盛期よりも弱くなってると自覚してるから油断は欠片もない。間違っても『神島』ですか? なんて話しかけるなよ? 即殺されても“事故”扱いになる』
『セグ1、諜報室から新しい情報よ。“J”の姿を発見』
『! どこだ!?』
『隣街の駅よ。改札でカメラに映ってた。幹事長に確認したら本人だって。以降はカメラに映ってないから多分、まだそこにいる』
『よし、総員移動だ。ただし、現地にはまばらに捜索を始めろ。悟られるとまた雲隠れするかもしれん』

 



 万引きなんぞ、月に一回か二回は必ずある。月末の棚卸しで、商品と売り上げの帳尻が合わない事が毎月あるからだ。
 防止しようにもカメラや人の目では限界がある。無くそうとしても中々上手くいかない。
 ただでさえ幾つも仕事が重なるのに、万引きの対応までやっているとストレスが増える一方だ。そんなある日、遂に万引き犯人を捕まえた。
 やっていたのは女子高生で理由は、何となく、である。
 子供の気まぐれのような感情に対して、こちらは四六時中、どうすれば良いのか考えて考えて考えて、ストレスを抱え続けたのだ。

“ふざけんなよ、お前!”

 悪びれる様子もなくスマホをいじる様子につい店長は声を荒げたが女子高生は、はいはい、と空返事するだけだった。

 完全に大人をナメてやがる……

 ストレスと我慢の限界だった。そこからは理性が制御出来なかった。
 密室。年頃の女。立場的には女の方が不利。身体能力も成人男性である俺の方が上。つまり――

 再び理性が戻った時には女子高生は泣きながら乱れた衣服を晒していた。
 一気に血の気が引いたが、圧し殺す様に、ごめんなさい……ごめんなさい……と謝る女子高生を見て焦りや罪悪感よりも征服感が心を満たしていく。

 そうだ……この店では俺が一番偉いんだ。客のために身を粉にして働いている。だからコレはソレを横から平然と踏みにじろうとするヤツへの正当な制裁なのだ。

 写真を撮り、脅迫の材料にして女子高生は帰してやった。誰かに泣きついてもいい。俺は捕まるが、お前には一生もののデジタルタトゥーを刻んでやる、と。

 以降は呼び出す事はしない。何故ならリスクが伴うからだ。対してあの女子高生は怯えているだろう。もし、何かしら訴えてきたらこっちには万引きの証拠もある。
 しかし、制裁できるのは一個人。万引きは止まる事がない。すると、ある日バイトが、

“店長、面白い噂を聞きましたよ”

 何でも隣街の高校で万引きチャレンジと呼ばれる遊びが流行っているらしい。
 一回の万引きでどれだけの金額を盗めるか。と言う事を競って優劣を決めているとか。

“前に店長、万引き犯成敗したじゃないですか。あれ、ウチのクラスのヤツだったんですけど、カースト上位でうるさくてウザかったんですよ。勝手に人の机に座るしパシるし。ホント、店長のおかげで過ごしやすくなってますよ”

 そう認識させてくれるバイトの言葉にこの正義感は正しいモノだと感じさせる。

“それで、他校のダチからさっきの万引きチャレンジの件を聞いたんです。こりゃ店長に話すしかねぇって。何とかしてくれませんか?”

 何とかはできねぇ。俺はこの店を任されてる店長だ。ここが狙われでもしない限りな。
 そう言うとバイトは、今度は俺にもお零れ下さい♪ と見返りは“制裁”に加担する事だった。

 結果としては正義を成した。
 この店はチョロい。そんな噂がどこから流れたのか、万引きの頻度が途端に増えた。こんな所では珍しい隣街の高校生がカメラに映る度により警戒する。
 そして、しれっと店内から出ようとした瞬間に万引き防止用のゲートを鳴らす・・・のだ。

 ガキどもはどこから知恵を着けたのか。そんなゲートに引っ掛からない様に鞄の中を細工している。本来なら低予算で設置したウチのゲートも掻い潜られるが、リアルタイムで監視しつつ鳴らす事で捕まえる事が出来る。
 意外にも万引き犯は女が多かった。捕まっても簡単に出てこれると思っているのだろう。
 だが、犯行瞬間の映像と、事務所に連行した際の会話録音で完璧にこちらの正当性を確保しつつ、制裁してやった。
 完璧な正義。
 時に制裁したガキの両親がやってくる事があったが、明らかな証拠を突きつけて警察を呼ぶ。
 万引きの証拠は完璧だが、制裁の証拠は皆無。普段から股を開いているガキどもの言葉など、証拠の前には無に等しい。
 そして、万引きチャレンジなどと言うふざけた遊びは一時期の流行りだったらしく、ナリを潜めた。
 月末の棚卸しの帳尻も合うようになり、ようやく望んだ形に落ち着いたと思っていたのだが――

「ちっ、万引きしねぇか」

 正義を成す機会が減り、どことなく虚無感が心に生まれる。あの時の高揚感は忘れられない。
 正義の名の元に制裁を下し、相手が許しを乞う征服感を――

 そこからは怪しい動きをしたヤツをマークした。俺とバイトの二人で隙を見て、万引きをしそうなヤツの鞄に商品を入れる。

 万引きはしてない。だが、未遂にしてしまえば他でやるかもしれない。故に、コレは被害を未然に防ぐ行為――正義なのだ!

「店長、ヤバいお客さん来ましたよ」

 搬入した荷をチェックしていたら、バイトがそう言ってくる。また、高校生が来たのかと、バックヤードから店内に様子を見に行くと、

「ほら、あの背の高い女っすよ。超美女で超グラマーっす。マジでヤベー身体してるでしょ?」

 それは、極上と言っても良い程の存在だった。ラフで地味な服装でも強調される凹凸は男ならつい振り返る程だろう。

「ちょっと様子を見たんすけど、魚醤にご執心の様です。もしかしたら盗むかも」
「それなら、事前に食い止めないとな」
「さっすが店長♪」

 正義を成さなければ。そして、制裁で解らせなければならない。

 女が他の客に手間をかけてる隙を突いて、バイトが、そのバッグに魚醤を入れた。俺はバックヤードのカメラモニターで待機。いつもの流れだ。ゲートに近づいた時にブザーを鳴らす。

 女は不思議そうにゲートを見るがバイトが声をかけて事務所へ連行。特に言い訳も抵抗もしなかったが、余計な手間がなくて良かった。
 これから、制裁の時間だ。万引きなどと言う考えを起こさせない為にも徹底的にやらなければならない。
 そう、正義の為に――

「誤解です~。私、店内を出てませんよ~?」

 面と向かって話して見てわかった。
 この女は遠目で見る以上に極上だ。グラマラスな身体つきとおっとりとした雰囲気が魅力となり、なおのこと“制裁”はしなければならないだろう。

 しかし、こちらの意見を提示しても女は、やってない、の一点張り。往生際が悪い。状況証拠は全部こっちが有利だと物語っているのだ。多少粗があっても警察は真剣には調べない。
 何故なら、俺は何度も万引き犯を捉えて連絡して、連行して貰っている。警察からもある程度の信頼を得ているのだ。

 しかし、事務所の会話では一押しする言質を女からとれないと察し、録音を切る。

「反省の色がないとなると、こっちも数ある証拠品を持って警察に対応して貰わないとな」
「それは~少し横暴じゃなくては~?」
「嫌なら……まぁ、誠意次第では解らんでもない」
「そうっすね」

 早く制裁させろ。お前は犯罪者なんだからよ!

「おい、じゃまするぞ」

 押しきれそうな様子だったと言うのに、知らないジジィが入ってきた。
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