懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

文字の大きさ
上 下
537 / 701

第536話 鬼灯パパ

しおりを挟む
 彼女の先導で父親の元へ向かう際に、鬼灯二回、俺一回、ナンパと逆ナンに当たった。
 一緒に歩いてコレだ。声かけスポットを歩く時はリョウを連れてないと進行に普段の倍はかかる。これもイケメンのサガ故か。鬼灯に負けてるけど……

「普段はこんなに声をかけられる事は無いわ」
「そうなのか?」

 確かに……学校へ行き来する際も鬼灯は基本的に一人っぽいもんな。あ、多分――

「普段は制服着てるからじゃね? 相手が高校生ってなると声かけてる所は結構印象に残りやすいし」
「そうかしら?」

 鬼灯は首を傾げるが、制服とは自らが未成年である事を周囲にアピールしていると言っても良い。その為、声をかけづらいし何かあった時に人の印象に残りやすい。

「今は俺らは私服だろ? その点の外見的要因が無い分、声を掛けられやすいんだと思うぜ」
「そうかしら」

 俺は身だしなみは整えているが、鬼灯の私服はカーディガンにロングスカートと靴と言う地味な姿。しかし、元の素材がSSS以上なので服装の地味さを上回って光っている。
 一緒に出歩く時は人混みを避けた場所が良いな。デートする時の参考に覚えて置こう。

「それなら手でも繋いでみる?」

 と、まるで義務のような無機質な口調で鬼灯は手を差し出す。表情も変わり無し。恥じらいの欠片も無いな……

「カップルだと見られれば声を掛けられないと思うわ」
「……もう駅は離れたし、進むのを優先しようぜ」
「そう」

 俺の返答に鬼灯は手を引っ込めるとくるっと踵を返す。あ、やっぱり、繋げば良かったと若干後悔。
 無表情と笑顔以外に鬼灯の表情が見れたかも知れなかったからだ。





「ここよ」
「ここって……鬼灯ん家じゃん」

 鬼灯のナビの最中、何か見慣れた道だなぁ、と思っていると目的地ゴールは彼女の家だった。一昨日と昨日で二度送ったので地理は覚えていたのだ。

「言ってくれれば俺が足を運んだよ」
「七海君は今日はお客さんだから、向かえに行くのは当然よ」

 律儀と言うか、なんと言うか……効率重視なイメージが強くある鬼灯には少し意外な行動だ。

「それで、父親さんは今日は休み?」
「本来なら。でも仕事が入ったわ」
「在宅ワーク?」
「ある意味そうね。会えば解るわ」

 そう言って、ただいまー、と鬼灯は扉を開ける。俺も、失礼しまーす、と声を出しながらその後に続いて扉の内側へ。

「お帰り、ミライ」

 すると、コーヒーカップを持った中年男性が廊下を通る所だった。眼鏡をかけて白髪の混じる黒髪に無精髭が生えているものの、顔のパーツは美形な様を感じる。髪を黒に染めて髭を剃れば10代は若く見えるな。

「ただいまお父さん」
「お帰り。彼かな?」
「七海智人と言います」

 俺が名乗ると鬼灯の父親さんは、近寄って来て空いている手で握手を求めてくる。

鬼灯篤ほおずきあつしだ。よろしく、七海君」

 その手を俺は握り返す。
 彼の第一印象は……優しそうなお父さん。そして、俺も悪くないファーストコンタクトを決めれたと思う。

「娘から聞いてるよ。僕に会いに来たんだろう?」
「はい。この度は……娘さんとお付き合いをさせて頂きたいと思いまして」

 俺のその言葉に鬼灯さんは少し驚いた様だった。まるで、予想してなかった言葉をもらった様な雰囲気を――はっ! そう言えば俺は金髪のままだ! 完全にミスった! 髪を黒に染め戻して来るんだった!
 こんな髪染め野郎が、娘さんとお付き合いさせてください、なんて……許して貰えるハズがない! 挽回できるか!?

「ふむ。七海君、私には娘が二人居るのだが、どっちと交際を?」
「え? あ、その……ミライさんと……」
「では、君のご家族は外国人の血は入っているのかい?」

 やっぱり、髪色の事か……

「いえ……父も母も親戚も皆、純粋な日本人です……」
「その髪は家族の意向かな?」
「……いえ……俺が自主的に染めてます」

 下手に言い繕うのは逆効果。髪染め男でも誠実なんだと思ってもらう為に……ここは正直に行く!

「ふむ……残念ながら、その様に自分の姿を歪める人間と娘の交際を認められない!」

 ビシィ! とされる宣言に俺は膝から崩れ落ちて項垂れる。
 ぐほぉ!? や、やっぱり……コレは致命的だった……か……。これは……出直しか……

「お父さん……」
「ミライは少し黙っていなさい。しかし、私も外見で全てを決めるワケじゃない。そこで、私に証明してくれないかい?」

 その言葉は七海智人と言う人間の内面を証明するチャンスだ! 鬼灯さんを見上げると彼は俺の意思を確認する様に手を差し出していた。

「私の仕事を少し手伝ってくれないか? それで、君がどういう人間かを見極めさせて欲しい!」
「是非! やらせてください!」

 俺はその手を躊躇いなく即座に、がっしりと握る。
 そんな俺らの様子を見ていた鬼灯が額に手を当てて、やれやれ、といった感じだったのは少し気になった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ズッ友宣言をしてきたお隣さんから時々優しさが運ばれてくる件

遥 かずら
恋愛
両親が仕事で家を空けることが多かった高校生、栗城幸多は実質一人暮らし状態。そんな幸多のお隣さんには中学が一緒だった笹倉秋稲が住んでいる。 彼女は幸多が中学時代に告白した時、爽やかな笑顔を見せながら「ずっと友達ならいいですよ」とズッ友宣言をしてきた快活系女子だった。他にも彼女に告白した男子も数知れずいたもののやはり友達止まり。そんな笹倉秋稲に告白した男子たちの間には、フラれたうちに入らない無傷の戦友として友情が芽生えたとかなんとか。あくまで友達扱いをしていた彼女は、男女関係なく分け隔てない優しさがあったので人気は不動のものだった。 「高校生になってもずっとお友達だよ!」 「……あ、うん」 「友達は友達だからね?」 やんわりとお断りされたけどお友達な関係、しかもお隣同士な二人の不思議な関係。 本音がつかめない女子、笹倉秋稲と栗城幸多の関係はとてもゆっくりとした時間の中から徐々に本当の気持ちを運ぶようになる――

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の加瀬桔梗のクラスには、宝来向日葵という女子生徒がいる。向日葵は男子生徒中心に人気が高く、学校一の美少女と言われることも。  しかし、桔梗はなぜか向日葵に1年生の秋頃から何度も舌打ちされたり、睨まれたりしていた。それでも、桔梗は自分のように花の名前である向日葵にちょっと興味を抱いていた。  ゴールデンウィーク目前のある日。桔梗はバイト中に男達にしつこく絡まれている向日葵を助ける。このことをきっかけに、桔梗は向日葵との関わりが増え、彼女との距離が少しずつ縮まっていく。そんな中で、向日葵は桔梗に可愛らしい笑顔を段々と見せていくように。  桔梗と向日葵。花の名を持つ男女2人が織りなす、温もりと甘味が少しずつ増してゆく学園ラブコメディ!  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしています。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

処理中です...