407 / 701
第406話 この魔女め
しおりを挟む
「チッチッチッ」
「カツよ。そんなに舌打ちするなら、ショウコとフェニックスに着いて行けばよかろう?」
縁側で足だけ垂らして仰向けになるビクトリアは、ユニコ君『Mk-VII』の調整に勤しむサマーから意見される。
「苦手なんだよね“ミス・グリーン”は。何て言うかサ、心臓を握られる的な」
より、感受性の強いビクトリアは店主も含めて『スイレンの雑貨店』の雰囲気はどうも苦手なのだ。
「サマーこそ、何で届け物をショウコの名義人にしたのさ」
「ショウコの方が“グリーン”に気に入られると思ってのう。受取りに行って変な条件を突きつけられるのは目に見えとる」
「生け贄じゃん」
「フェニックスも共におるし、大事にはならんわい」
「ホントさぁ。皆、あの男のどこが良いのか、さっぱりわかんないなぁ。アタシは」
「自分にとって波長の合わんヤツは何をしても嫌悪に駆られるからのぅ。まぁ、カツはその距離で良いと思うぞ」
カチカチとプログラムを調整するサマー。ビクトリアは寝そべったまま、彼女を見る。
「ちなみに何を頼んだの?」
「ちと、ワシの遺伝子上の“親”についてじゃ」
「『ジーニアス』のデータ? 研究所事、吹き飛んだんじゃ無かったっけ?」
「ワシの血を使ってグリーンに頼んだのじゃ。なに、タダの血液検査じゃ。『ジーニアス』には捕捉されん」
それでも万全に万全を期して、最も足のつかない情報屋にお願いしたのである。
「血の繋がった両親かぁ。アタシには縁の無い話だね。家族はアンタたち」
「わしもじゃ。フェニックスものぅ」
「……アイツは除外」
「ふっふっふ」
当面はビクトリアの態度は軟化する事はない様子にサマーは笑った。
「イッヒッヒ。信用を証明出来ないなら、また後日頼むよ」
スイレンさんにそう言われてオレは、ぬぅ……と唸るしかない。明らかに妨害されてるのは解るんだけど、確証も無いワケで老人と言う事もあり強引に詰め寄るのは……
「御老体、一つ教えて欲しい」
すると、ショウコさんが老婆と向き合う。
「イッヒッヒ。なんだい?」
「私宛に届いた荷物は一体何なんだ?」
「イッヒッヒ。検査結果だよ」
「検査結果?」
意外にも教えてくれる様だ。
「サマー・ラインホルトの両親についてさ。血縁上の人間を調べ上げたんだねぇ。イッヒッヒ」
おいおい。めっちゃ重要な資料じゃん。PS5のうんぬんを抜きにしてでも持ち帰らないと行けないぞ。
「……御老体。貴女が何となく妨害しているのは知っている。正直、迷惑極まりない」
「イッヒッヒ。余生の短い老人の戯言だと思ってもらっても構わないよ」
そうは言うが、まだ半世紀は生きそうな婆さんだよなぁ。
「サマーを連れてきな。あの娘以外に手渡すつもりはないよ」
「……それは許容させてもらう」
すると、ショウコさんが真面目に婆さんと向き合う。ショウコさーん。真面目に向き合う必要は無いですよー。
「サマーが私に頼んだのだ。重要な資料の受取人として。なら、私はその信頼に応えなければならない」
「イッヒッヒ。強い眼をしているねぇ。とてもとても強い眼さ」
なんか、ジブ○みたいな事を言い出したぞ、この婆さん。
「どうすれば資料を渡してくれるんだ?」
「アンタが信頼に足ると証明してくれれば、すぐにでも渡すよ。イッヒッヒ」
「条件の提示を」
「そうさね。それじゃ、写真でも撮らせて貰おうかね。イッヒッヒ」
「ちょっとちょっと、お婆ちゃん」
上手く行きそうだったので傍観者を気取っていたが、流石に口を挟む。
「確か証明出来ないのはこっちの落ち度だけどさ。店内のジャミング切ってよ。サマーちゃんに連絡するからさ」
「イッヒッヒ。ジャミングって何の事だい?」
ぬぅ……シラを切るか、この魔女め。
「うぅ……暴力かい? こんな転んだら死ぬような老人を痛めつけようなんて……ごほっごほっ……」
うわぁ、面倒くさいなぁ。しかし、婆さんの条件が無茶苦茶なのは誰が見ても明らかだ。最初に許容すると、もっと無理難題を押しつけられるかもしれん。ここは、引いてはダメ――
「わかった。写真を撮られれば良いんだな」
「イッヒッヒ。そうさ」
オレの懸念をよそに、ショウコさんは使命感に燃える眼をしている。
「いいの? ショウコさん」
「何も魂を抜かれるワケじゃない。それに写真を撮られるのは慣れてる」
そりゃ、プロですものね。やれやれ。
「わかったよ。でも変な事されそうになったら、流石に帰るからね」
「イッヒッヒ。話はまとまった様だね」
なーんかなぁ。婆さんの手の平で転がされた感は否めないが、スムーズに事が運ぶならソレに越した事はないか。
「次は鮫島嬢だねぇ。イッヒッヒ」
と、婆さんはリンカへ向き直る。そう言えば、リンカもここに用事があって来たんだっけか。一体、どういう要件なんだろうか。
「カツよ。そんなに舌打ちするなら、ショウコとフェニックスに着いて行けばよかろう?」
縁側で足だけ垂らして仰向けになるビクトリアは、ユニコ君『Mk-VII』の調整に勤しむサマーから意見される。
「苦手なんだよね“ミス・グリーン”は。何て言うかサ、心臓を握られる的な」
より、感受性の強いビクトリアは店主も含めて『スイレンの雑貨店』の雰囲気はどうも苦手なのだ。
「サマーこそ、何で届け物をショウコの名義人にしたのさ」
「ショウコの方が“グリーン”に気に入られると思ってのう。受取りに行って変な条件を突きつけられるのは目に見えとる」
「生け贄じゃん」
「フェニックスも共におるし、大事にはならんわい」
「ホントさぁ。皆、あの男のどこが良いのか、さっぱりわかんないなぁ。アタシは」
「自分にとって波長の合わんヤツは何をしても嫌悪に駆られるからのぅ。まぁ、カツはその距離で良いと思うぞ」
カチカチとプログラムを調整するサマー。ビクトリアは寝そべったまま、彼女を見る。
「ちなみに何を頼んだの?」
「ちと、ワシの遺伝子上の“親”についてじゃ」
「『ジーニアス』のデータ? 研究所事、吹き飛んだんじゃ無かったっけ?」
「ワシの血を使ってグリーンに頼んだのじゃ。なに、タダの血液検査じゃ。『ジーニアス』には捕捉されん」
それでも万全に万全を期して、最も足のつかない情報屋にお願いしたのである。
「血の繋がった両親かぁ。アタシには縁の無い話だね。家族はアンタたち」
「わしもじゃ。フェニックスものぅ」
「……アイツは除外」
「ふっふっふ」
当面はビクトリアの態度は軟化する事はない様子にサマーは笑った。
「イッヒッヒ。信用を証明出来ないなら、また後日頼むよ」
スイレンさんにそう言われてオレは、ぬぅ……と唸るしかない。明らかに妨害されてるのは解るんだけど、確証も無いワケで老人と言う事もあり強引に詰め寄るのは……
「御老体、一つ教えて欲しい」
すると、ショウコさんが老婆と向き合う。
「イッヒッヒ。なんだい?」
「私宛に届いた荷物は一体何なんだ?」
「イッヒッヒ。検査結果だよ」
「検査結果?」
意外にも教えてくれる様だ。
「サマー・ラインホルトの両親についてさ。血縁上の人間を調べ上げたんだねぇ。イッヒッヒ」
おいおい。めっちゃ重要な資料じゃん。PS5のうんぬんを抜きにしてでも持ち帰らないと行けないぞ。
「……御老体。貴女が何となく妨害しているのは知っている。正直、迷惑極まりない」
「イッヒッヒ。余生の短い老人の戯言だと思ってもらっても構わないよ」
そうは言うが、まだ半世紀は生きそうな婆さんだよなぁ。
「サマーを連れてきな。あの娘以外に手渡すつもりはないよ」
「……それは許容させてもらう」
すると、ショウコさんが真面目に婆さんと向き合う。ショウコさーん。真面目に向き合う必要は無いですよー。
「サマーが私に頼んだのだ。重要な資料の受取人として。なら、私はその信頼に応えなければならない」
「イッヒッヒ。強い眼をしているねぇ。とてもとても強い眼さ」
なんか、ジブ○みたいな事を言い出したぞ、この婆さん。
「どうすれば資料を渡してくれるんだ?」
「アンタが信頼に足ると証明してくれれば、すぐにでも渡すよ。イッヒッヒ」
「条件の提示を」
「そうさね。それじゃ、写真でも撮らせて貰おうかね。イッヒッヒ」
「ちょっとちょっと、お婆ちゃん」
上手く行きそうだったので傍観者を気取っていたが、流石に口を挟む。
「確か証明出来ないのはこっちの落ち度だけどさ。店内のジャミング切ってよ。サマーちゃんに連絡するからさ」
「イッヒッヒ。ジャミングって何の事だい?」
ぬぅ……シラを切るか、この魔女め。
「うぅ……暴力かい? こんな転んだら死ぬような老人を痛めつけようなんて……ごほっごほっ……」
うわぁ、面倒くさいなぁ。しかし、婆さんの条件が無茶苦茶なのは誰が見ても明らかだ。最初に許容すると、もっと無理難題を押しつけられるかもしれん。ここは、引いてはダメ――
「わかった。写真を撮られれば良いんだな」
「イッヒッヒ。そうさ」
オレの懸念をよそに、ショウコさんは使命感に燃える眼をしている。
「いいの? ショウコさん」
「何も魂を抜かれるワケじゃない。それに写真を撮られるのは慣れてる」
そりゃ、プロですものね。やれやれ。
「わかったよ。でも変な事されそうになったら、流石に帰るからね」
「イッヒッヒ。話はまとまった様だね」
なーんかなぁ。婆さんの手の平で転がされた感は否めないが、スムーズに事が運ぶならソレに越した事はないか。
「次は鮫島嬢だねぇ。イッヒッヒ」
と、婆さんはリンカへ向き直る。そう言えば、リンカもここに用事があって来たんだっけか。一体、どういう要件なんだろうか。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

ズッ友宣言をしてきたお隣さんから時々優しさが運ばれてくる件
遥 かずら
恋愛
両親が仕事で家を空けることが多かった高校生、栗城幸多は実質一人暮らし状態。そんな幸多のお隣さんには中学が一緒だった笹倉秋稲が住んでいる。
彼女は幸多が中学時代に告白した時、爽やかな笑顔を見せながら「ずっと友達ならいいですよ」とズッ友宣言をしてきた快活系女子だった。他にも彼女に告白した男子も数知れずいたもののやはり友達止まり。そんな笹倉秋稲に告白した男子たちの間には、フラれたうちに入らない無傷の戦友として友情が芽生えたとかなんとか。あくまで友達扱いをしていた彼女は、男女関係なく分け隔てない優しさがあったので人気は不動のものだった。
「高校生になってもずっとお友達だよ!」
「……あ、うん」
「友達は友達だからね?」
やんわりとお断りされたけどお友達な関係、しかもお隣同士な二人の不思議な関係。
本音がつかめない女子、笹倉秋稲と栗城幸多の関係はとてもゆっくりとした時間の中から徐々に本当の気持ちを運ぶようになる――
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の加瀬桔梗のクラスには、宝来向日葵という女子生徒がいる。向日葵は男子生徒中心に人気が高く、学校一の美少女と言われることも。
しかし、桔梗はなぜか向日葵に1年生の秋頃から何度も舌打ちされたり、睨まれたりしていた。それでも、桔梗は自分のように花の名前である向日葵にちょっと興味を抱いていた。
ゴールデンウィーク目前のある日。桔梗はバイト中に男達にしつこく絡まれている向日葵を助ける。このことをきっかけに、桔梗は向日葵との関わりが増え、彼女との距離が少しずつ縮まっていく。そんな中で、向日葵は桔梗に可愛らしい笑顔を段々と見せていくように。
桔梗と向日葵。花の名を持つ男女2人が織りなす、温もりと甘味が少しずつ増してゆく学園ラブコメディ!
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる