懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

文字の大きさ
上 下
317 / 701

第316話 仕事サボってデートかい!

しおりを挟む
『女郎花教理。あの男が17年前にお前を拐った犯人だったと?』
「そうだ。……今まで黙っていてごめんなさい」

 ショウコは名倉へ連絡をしていた。
 自分のせいで父は狙われた。その事をきちんと説明しなければならない。

『怒ってはいないよ。お前は優しいからね。きっと、何か理由があったのだろう?』
「……助けて貰ったんだ。一度だけ」
『そうか。しかし、そうだとしても相手は少々やり過ぎだね』
「私もその件に関しては擁護する気はない。父上の思う通りに対応してくれて構わない。私も出来る限り指示に従う」
『襲撃者の外国人は専門家に任せているよ。私としては示談で済ませても良いが、お前に二度と手出しをしないように確約を取らせるつもりだ』
「その件は……多分もう大丈夫だ」

 ケンゴから最後に女郎花の様子が変わったとショウコは聞いている。

『ショウコ。不確かな事を鵜呑みにしてはいけないよ。お前の今後がかかっているからね。襲撃者は黙秘を貫いているが、女郎花教理にはきちんと目の前に出てきてもらう』
「難しいと思うけどな」
『お父さんが嘘を言った事はあるかい?』

 その言葉にショウコは思わず笑った。

「多分、ない」

 その返答に電話越しの名倉も微笑んでいる様子を感じ取れる。

「父上、一つ教えてくれ」
『なんだい?』
「私が拐われた時、他に任せたそうだが……仕事はそんなに忙しかったのか?」
『そんな事はないよ』
「じゃあ……」
『彼は信用できるからね』

 名倉の言う彼とは、ケンゴの事だった。

『お前は一人で戦うだろうと思っていた。きっと止めても無駄だっただろう。だから、彼に任せた』

 最初に彼に引き合わせて貰う事を父に相談した時から、私の彼に対する気持ちを、私よりも理解していたのかもしれない。

「……父上には叶わないよ」
『いずれ越えなさい』

 簡単では無さそうだ。

『舞子も実家の方との関係を修復できたそうだ』
「そうなの?」
『ああ。だから、あちらに帰っても問題は無いだろう。どうするね?』
「私はまだ日本にいるよ」

 ショウコはフルアーマーユニコ君を感心しながら見ているケンゴを見る。

『そうか。なら後で母さんにも連絡して声を聞かせてあげなさい』
「わかった」

 父との通話を切ると母へ連絡した。





 オレとショウコさんは『ハロウィンズ』と別れ、電車にて帰宅。
 濃い半日だった……。時刻は昼を少し過ぎたあたりで、電車内には取引先へ向かうサラリーマンの姿が多々見える。

「苦労をかけた」
「気にしなくていいよ。オレが勝手にやった事だからさ」

 しかし、冷静に考えるととんでもない事をしたよなぁ。
 相手は戦争を終わらせて国を立て直す程の偉人であり、こっちは蟻んこ同然の凡人。
 『ハロウィンズ』が協力してくれたとは言え……誰も死なず、無事に戻ってこれたのは本当に奇跡に近いだろう。
 アイア○マンスーツもどき着て、大立ち回りしたなど誰も信じてはくれないだろうが。

「ヨシ君が会社に報告してくれてるハズだから、今後の動きとかは追って連絡が――」

 と、オレはスマホを殺られた事を思い出した。
 そうだった! ブ○ック・ウィドウに壊されたままだった! うーむ。今日中に調達に行くべきか……

「どうかしたのか?」
「あ、いやね。スマホをあの女の人に壊されてね」
「それはいかんな。すぐに調達に行くべきだ」
「うーん。ショウコさんには一応、アパートに待機してて欲しいんだけどね」
「なぜだ?」

 オレはサマーちゃんと話した内容をショウコさんにも語る。
 ストーカーの犯人は女郎花教理の可能性が低い事と、何かしら仕掛けてくるかもしれないと言うこと。

「明日にはサマーちゃんが全部調べあげてくれるそうだがら、それでゲームセットだと思うよ。変に抵抗されてもヨシ君達が息の根を止めるだろうから」

 4課は法律界隈でも精鋭が揃っている。て言うか、真鍋課長と鷹さんとが居る時点で企業が持つにしては過剰戦力なんだよなぁ。
 荒事も得意な面子も控えてるし、男子特効を持つ、ほっほう! もいるし……

「だから、出来ればアパートに居てくれれば安心安全なんだけど」
「……そう言う事なら従おう」

 ショウコさんは相変わらず淡々と受け答えるが、今の少しシュンとしたのを感じた。

「なんか……ごめんね」
「いや……君には随分と迷惑をかけたからな。これ以上は私もわがままは控える」
「色々と用事が済んだらさ、夜までゲームでもしようよ。“厄祓い”の舞は凄く楽しみだったりするからさ」
「ふむ……だったら、君がスマートフォンを調達に行ってる間に少し慣らしておくか」

 そうこう話していると最寄りの駅に着いたので下車する。少し多い人波に任せて改札を抜けた。

「ん? 鳳じゃん」

 すると後ろから声をかけられた。





「カズ先輩?」
「よっす、よっす。奇遇だねー」

 他の老若男女の中でも一際飛び出した身長を持つポニテ美人のカズ先輩は手を上げながら近づいて来た。

「お疲れ様です」
「お疲れ。って、そっちは私服じゃんよ。なに? 今日は休み?」
「急な用事で休みにして貰いました。カズ先輩は取引ですか?」
「これから説明会。姫と加賀が資料忘れたってんで、持っていくとこ」

 重そうな紙袋を軽々と持ち上げて見せてくる。彼女は七海課長とタメを張るフィジカルを持つ人間なのだ。

「そんでそっちは課長の娘さん?」
「流雲昌子といいます」
「ども。アタシは茨木和奏いばらぎわかな。カズって呼んでちょ」

 カズ先輩はショウコさんと自己紹介を交わすとオレにスッと寄ってくる。

「……おいおい。おいおーい。仕事サボってデートかい!」
「い、色々ありまして……」

 バンバン、とオレの肩を叩くカズ先輩。痛てて……

「まぁ、深くは聞かないよ。アタシは仕事中だし、明日にでも聞かせてねー」

 バーイ、と手を上げてオレ達とは別の方角へ歩いて行った。
 そのカズ先輩を見送ったショウコさんは一言。

「彼女、相当にできるな」
「会社でも屈指のバーサーカーだよ……」

 国尾さんと同レベルで野放しが一番危険な人物かもしれない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

3分で解けるとっても簡単(いや全問正解したらすごいかも)ななぞなぞ10題

ムーワ
大衆娯楽
電車の移動時間やちょっとした待ち時間に「頭の体操」をしてみませんか? 幼児から高齢者まで幅広い年代の方に楽しんでいただけるとっても簡単ななぞなぞ遊びです。 でも、全問正解する方はほとんどいないかもしれません。 毎日10題ずつ更新していく予定です。 男性向けにしましたが、女性も大歓迎です。 答えについては翌日の午後にでも1日目のこたえという感じで更新します。 2023年7月13日で人気もないようなのでいったん中止しますが、リクエストなどがあれば再開します。よろしくお願いします。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。 果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。

幼馴染は何故か俺の顔を隠したがる

れおん
恋愛
世間一般に陰キャと呼ばれる主人公、齋藤晴翔こと高校2年生。幼馴染の西城香織とは十数年来の付き合いである。 そんな幼馴染は、昔から俺の顔をやたらと隠したがる。髪の毛は基本伸ばしたままにされ、四六時中一緒に居るせいで、友達もろくに居なかった。 一夫多妻が許されるこの世界で、徐々に晴翔の魅力に気づき始める周囲と、なんとか隠し通そうとする幼馴染の攻防が続いていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤクザの娘の本心を俺だけは知っている

青井風太
恋愛
赤城遥の通う高校には有名人がいた。 容姿端麗で成績優秀、ドラマでしか聞かなそうな才を持ち合わせた青崎楓は学校中から注目を集めていた。 しかし彼女を有名人たらしめる理由は他にある。 彼女は関東最大規模のヤクザ組織【青龍会】会長の愛娘であった。 『一人で暴走族を壊滅させた』『睨みつけるだけで不良が逃げ出した』などの噂が学校中に広まっていた。 ある日の放課後、忘れ物を取りに教室に戻ると遥は目撃してしまう。 ぬいぐるみに話しかけているヤクザの娘の姿を・・・

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※続編がスタートしました!(2025.2.8)  ※1日1話ずつ公開していく予定です。  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

処理中です...