懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

文字の大きさ
上 下
156 / 701

第155話 YESかNOかわかんねぇ

しおりを挟む
「ケンゴ。どうだ? 今日は飯でも行かねぇか?」

 終業し、帰り支度を整えていると獅子堂課長が声をかけてきた。課長は、月一くらいの感覚で課の人間を飲みに誘う。
 課長の奢りでの飲み会は人柄も相まって窮屈はせず毎回何人か集まる。オレも誘われた時は、二つ返事で毎回嬉々として参加する事が当然となっていた。

「あ、すみません。今日はちょっと都合が」
「ん? そっか。リンカちゃん関係か?」
「まぁ……鮫島家関係ではありますが」
「ほぅ……ついに一線を越える気か!」
「ふふ。獅子堂課長、声を上げて言う事ではありませんよ」

 横から鬼灯先輩が会話に参加する。

「瀬奈さんのお誕生日でしょ?」
「え? 何で知ってるんですか?」
「前にリンカさんからアドバイスを求められたの」
「なにぃ! 鮫島婦人の生誕祭か!」
「はい。一週間前から色々と用意してたので」
「ならしょうがねぇな。気が済むまで祝ってあげな」
「ありがとうございます。ちなみに今日はオレ以外には誰が来る予定ですか?」
「鬼灯と徳道だな。取りあえず」

 これまた、緩急の強いパーティだなぁ。

「他の課の人にも声をかけましょうか?」
「来る奴いるか?」

 鬼灯先輩の提案に獅子堂課長は腕を組む。鬼灯先輩が居るだけで泉の奴は喜んで尻尾を振るだろう。

「グループLINEで聞いてみますね」

 鬼灯先輩の身内が参加しているグループLINEは他も参入自由だ。しかし課長はもちろん、社長も入っているため輪に入るには相当な度胸がいるだろう。ちなみにオレは加入済み。

“今日、獅子堂課長の奢りで飲みに行く人募集。鬼灯と徳道は参加します。集合は一階ロビー”

 と言うメッセージを鬼灯先輩が入れる。すると次々に返答が。

“残業があるから無理だ(七海)”
“死ぬほど参加したいですけど残業です。すみませーん(泉)”
“あ、参加しまーす。加賀くんも(姫野)”
“だ、そうです(加賀)”
“参加します(茨木)”
“大所帯になってもよろしいのであれば(吉澤)”
“ほっほう!(国尾)”
“参加しやす(箕輪)”
“参加(空)”
“しまーす(海)”
“今日は都合が悪い(真鍋)”
“アタシは遠慮するよ(三鷹)”
“今回は遠慮します。またの機会に(名倉)”
“お酒飲まなくて良いなら……(轟)”
“ふっはっはっは! 行くよ!(黒船)”

 最後にBIG BOSSが出てきたけど、LINEは凄い事になった。返信数ヤバイな。藪をつついてアニマルパニックになった感じ。ていうか、国尾さんの返答はYESかNOかわかんねぇ。

「賑やかになりました」
「ガハハ! たまには良いか!」

 もう、これ宴会じゃん。平日の夜に軽く酒引っかけるレベルじゃないな。明日も仕事なのでほどほどにしてくださいよ。





「よし……」

 お婆さん――真鍋スイレンさんからの受け取り番号をコンビニで言って荷物を受け取った。
 綺麗な紙袋にはラッピングされた例の品物が入っている。更にオマケも入っていた。

「なんだろ?」

 細長い板みたいな代物。うーむ。まぁ、母に渡して開けて貰えばいいか。

『ケーキ確保したよ。後、何か買ってくるモノある?』

 彼から連絡。今日は二人で母を出迎えるのだ。今まで自分の事ばかりで祝ってあげられなかった母の誕生日。きちんと忘れていない事を伝えねば。

「特には思い付かないなぁ」

 そろそろ家に帰って夕飯の支度をせねば。母が帰ってくるまでにはきっちり揃えておきたい。

『そう言えば、ロウソクは何本いる?』
「それは禁忌なのでいらない」

 触れてはならない事は世の中に沢山あるのだ。





「危ねぇ……そうだった」

 オレは駅のケーキ屋さんで予約注文していたケーキを受け取った。
 費用は折半。全部オレが出すと言ったが、どうせあたしも買うから二つは意味ないだろ、と言うリンカの提案に納得しての決定だ。

「よし、まだ大丈夫か」

 セナさんが帰るまでまだ時間は十分にある。
 ありがとうございましたー、と言う店員さんの声を背中に受けて店を出た。

「うーん……」

 すると、ケーキ屋さんに入ろうか迷っている人が目につく。ニット帽に丸型のサングラスをかけて、若干変装気味な男だ。年齢はオレよりも上だろう。

「どうしました?」

 オレは自然と話しかけた。己の中の好奇心を抑えきれなかったのである。まぁ、少し話を聞く程度は問題あるまい。

「お? 悪いね。出るの邪魔しちゃった?」
「いえ。何か悩んでるようでしたので」
「まぁね」

 どうしよっかなぁ。と彼はケーキの有無に葛藤してる様子。

「お祝いですか?」
「ん? まぁね。ツレの誕生日なんだけど、色々と忙しくてね。特別なのを用意出来てないんだ」

 彼も身内の誕生日ケーキを買いに来たらしい。まぁ、ケーキと言えばお祝い事が主であるが。

「個人的には大切な日に渡して貰うだけでも嬉しいです。ちゃんと覚えててくれたんだー、って思えますし」
「そんなモンかねぇ」
「絶対そうですよ!」

 これからお祝いすると言う事でオレも若干テンションが上がってたりする。おっと、

「それじゃオレはこれで」

 オレもコンビニでセナさんに渡すプレゼントを受け取りに行かねば。

「サンキューな。青年」

 と、彼はおツレさんにケーキを贈る事を決めたようだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

3分で解けるとっても簡単(いや全問正解したらすごいかも)ななぞなぞ10題

ムーワ
大衆娯楽
電車の移動時間やちょっとした待ち時間に「頭の体操」をしてみませんか? 幼児から高齢者まで幅広い年代の方に楽しんでいただけるとっても簡単ななぞなぞ遊びです。 でも、全問正解する方はほとんどいないかもしれません。 毎日10題ずつ更新していく予定です。 男性向けにしましたが、女性も大歓迎です。 答えについては翌日の午後にでも1日目のこたえという感じで更新します。 2023年7月13日で人気もないようなのでいったん中止しますが、リクエストなどがあれば再開します。よろしくお願いします。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

幼馴染は何故か俺の顔を隠したがる

れおん
恋愛
世間一般に陰キャと呼ばれる主人公、齋藤晴翔こと高校2年生。幼馴染の西城香織とは十数年来の付き合いである。 そんな幼馴染は、昔から俺の顔をやたらと隠したがる。髪の毛は基本伸ばしたままにされ、四六時中一緒に居るせいで、友達もろくに居なかった。 一夫多妻が許されるこの世界で、徐々に晴翔の魅力に気づき始める周囲と、なんとか隠し通そうとする幼馴染の攻防が続いていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤクザの娘の本心を俺だけは知っている

青井風太
恋愛
赤城遥の通う高校には有名人がいた。 容姿端麗で成績優秀、ドラマでしか聞かなそうな才を持ち合わせた青崎楓は学校中から注目を集めていた。 しかし彼女を有名人たらしめる理由は他にある。 彼女は関東最大規模のヤクザ組織【青龍会】会長の愛娘であった。 『一人で暴走族を壊滅させた』『睨みつけるだけで不良が逃げ出した』などの噂が学校中に広まっていた。 ある日の放課後、忘れ物を取りに教室に戻ると遥は目撃してしまう。 ぬいぐるみに話しかけているヤクザの娘の姿を・・・

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※続編がスタートしました!(2025.2.8)  ※1日1話ずつ公開していく予定です。  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

処理中です...