懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第132話 彼女から見た彼の足跡

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 朝起きるとソレに気がついた。
 ベッドから降りて、パジャマのままキッチンへ行くと静まり返っている。
 朝食の当番はローテーション。これは彼が決めた事だ。その時、背後に人の気配。私は咄嗟に振り向く。

「ふぁ……おはよう。ダイヤお姉様」
「あ……」

 そこには欠伸をしながら起きてきた妹がいた。

「? どうしたの?」
「何でもないネ。グッドモーニング、ミスト。今日もベリーキュートネ」

 可愛い妹。大切な家族に私は抱きつく。
 しかし、心は穴が空いた様に何かが欠けていた。





「おや? もう、いいのかい? ふむ。ふっはっは! こちらも急な事だったからね! 君が謝る事ではないよ!」

 社長室で他支部の業績資料を見ていた黒船正十郎くろふねせいじゅうろうは、かかってきた電話に対応すると短いやり取りの後にそのまま切った。
 そこへ秘書の轟甘奈とどろきかんなが整理した資料を片手に社長室に入ってくる。

「社長。こちらは九州支部の資料になります」
「甘奈君。ちょうど良かった。緊急で頼まれてくれないかな?」
「何でしょう?」





「よし、解散。仕事に戻れ、お前ら」

 六人で昼を食べて、会社の一階ホールで解散となった。はた迷惑な忍者、暁才蔵は断罪者(お尻専門)の人に任せておけば勝手に警察へ逃げ込むだろう。想像するだけで寒気が止まらねえ。

「ウドン、美味しかったネー」

 ダイヤも日本食には満足してくれている。
 イレギュラーな仕事ばかりなので、午後からは本格的に作業を教えてやろう。

「お」

 オレはスマホを見るとリンカから連絡が来ていた。

「ダイヤ。今日の夕方、手を貸してくれないか?」
「イイヨ。ワタシでOK?」
「全然OK リンカちゃんが英語を教えて欲しいんだってさ」

 もう、学力テストの時期か。テストと言う言葉は社会人になってからはそれなりに使うものの、学生の時とは意味が大きく違っている。

「それと、リンカちゃんの友達も来るから」
「リンカのフレンド?」





谷高光やたかひかりです。今日はよろしくお願いしまーす」

 仕事が終わり、リンカと連絡を取って彼女の部屋にダイヤを派遣した。
 そこには、私服のリンカと制服姿のヒカリちゃんが座って待っていた。

「ワオ! ベリーキュート!」

 ダイヤはヒカリちゃんを見て興奮している。オレは見慣れてしまったが、ヒカリちゃんもシズカに引けをとらない美少女だったね。

「わ。本当に外国人だ」
「ダイヤ・フォスターダヨ! ヨロシク!」

 ガバッとヒカリちゃんに抱きつくダイヤ。
 アメリカンなスキンシップと巨山に埋もれたヒカリちゃんは手をばたばたと動かす。オレとリンカはその様子を、可愛い、と思いつつ見ていた。

「ヒカリ。ウチ子にナラナイ? アメリカキョーミアル?」
「お前は何を言ってるんだ?」
「マックスが言うには、ジョシコーセーはコレデ持ち帰レルッテ」

 エセ関西弁ヤロウのアホ知識の底が見えねぇ。身内間だからまだ許容出来るが、赤の他人だとトラブルが起こるぞ。

「それじゃ、宜しくな」
「ン? ニックスどこかに行くネ?」
「別にオレは居なくても良いだろ。隣の部屋に居るから何かあったら呼んでくれ」

 この勉強会にはオレは不要だ。マックスのヤツに色々と言いたい事もあるし、別室待機だな。





「ダイヤさんの実家って牧場なんですか?」
「YES カウやホースがイルヨ」

 勉強会はつつがなく進み、その休憩時にヒカリはリンカから聞いていたダイヤの生い立ちに興味が出ていた。
 ダイヤは自分のスマホの写真を二人に見せる。昨日リンカが見たのはケンゴの方の写真だったので新鮮なモノばかりだった。

「わぁ、可愛い~」

 母馬に寄り添う子馬の写真や、妹達が牧場の手伝いをしている写真も見せつつ、ダイヤは妹達を紹介する。そして――

「あれ? これって――」

 写真は今から近い日付のモノ――ケンゴと過ごした日々のモノへと変わって行った。

「ニックスがステイしてたトキネ」

 写真の中のケンゴは動き回っていた。
 銃を向けるサンから半裸で逃げるシーン。
 リンクの作ったお菓子の試食役にされるシーン。
 ミストとチェスをやって頭を悩ませてるシーン。

 マックスとのコマンドサンボの練習風景。
 涼しい顔をしてパルクールを行うヴェイグの後ろを気合いで追いかける所。
 クラウザーとBBQで肉の取り合い。

 例の父に銃を向けられているシーン(発砲時のマズルフラッシュを激写)もあった。

「……本当に撃たれてる……」
「これ……冗談じゃないよね?」
「フフ」

 二人のリアクションにダイヤは笑う。

 ミストと一緒に座って寝てるシーン。
 リンクを他人のバイクで後ろに乗せて空を飛ぶシーン。

「え? 何これ。なんで空飛んでるの?」
「これネー、リンクのストーカーがリベンジバックしてきた時に近くのバイク盗んでエスケープした時ネ」
「……結構高さあるよ、コレ」
「落ちた先がリバーだったヨ」

 何やってんだ、アイツ。とリンカは国の外でも落ち着きのないケンゴに呆れた。

 ハルサから落馬している所をサンに笑われてるシーン。
 デスクに座って仕事をしている所もあった。

「わ、ケン兄が仕事をしてる所、初めて見たかも」
「普通に真面目だ……」
「ニックス、仕事をしてるときは真面目ネ」

 おちゃらけた時しか知らない二人は、そう言えば社会人だったねー、と改めて思い出す。

 ハロウィンの時、サマーバケーションの時、わちゃわちゃした三姉妹との食事の時、そして――

「ハイ、アルバムエンドネ」

 最後は帰国する飛行機へ向かう彼の背中を写したモノで終わった。

「フリータイムはエンドヨ。ティーチャーに戻りマース」
「ダイヤさん……今の――」

 質問しようとするリンカの口を人差し指を当てて止める。

「今はスタディタイム。OK?」
「あ、はい」
 
 真面目なダイヤの言葉にリンカとヒカリはそれ以上は質問出来なかった。
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