133 / 701
第132話 彼女から見た彼の足跡
しおりを挟む
朝起きるとソレに気がついた。
ベッドから降りて、パジャマのままキッチンへ行くと静まり返っている。
朝食の当番はローテーション。これは彼が決めた事だ。その時、背後に人の気配。私は咄嗟に振り向く。
「ふぁ……おはよう。ダイヤお姉様」
「あ……」
そこには欠伸をしながら起きてきた妹がいた。
「? どうしたの?」
「何でもないネ。グッドモーニング、ミスト。今日もベリーキュートネ」
可愛い妹。大切な家族に私は抱きつく。
しかし、心は穴が空いた様に何かが欠けていた。
「おや? もう、いいのかい? ふむ。ふっはっは! こちらも急な事だったからね! 君が謝る事ではないよ!」
社長室で他支部の業績資料を見ていた黒船正十郎は、かかってきた電話に対応すると短いやり取りの後にそのまま切った。
そこへ秘書の轟甘奈が整理した資料を片手に社長室に入ってくる。
「社長。こちらは九州支部の資料になります」
「甘奈君。ちょうど良かった。緊急で頼まれてくれないかな?」
「何でしょう?」
「よし、解散。仕事に戻れ、お前ら」
六人で昼を食べて、会社の一階ホールで解散となった。はた迷惑な忍者、暁才蔵は断罪者(お尻専門)の人に任せておけば勝手に警察へ逃げ込むだろう。想像するだけで寒気が止まらねえ。
「ウドン、美味しかったネー」
ダイヤも日本食には満足してくれている。
イレギュラーな仕事ばかりなので、午後からは本格的に作業を教えてやろう。
「お」
オレはスマホを見るとリンカから連絡が来ていた。
「ダイヤ。今日の夕方、手を貸してくれないか?」
「イイヨ。ワタシでOK?」
「全然OK リンカちゃんが英語を教えて欲しいんだってさ」
もう、学力テストの時期か。テストと言う言葉は社会人になってからはそれなりに使うものの、学生の時とは意味が大きく違っている。
「それと、リンカちゃんの友達も来るから」
「リンカのフレンド?」
「谷高光です。今日はよろしくお願いしまーす」
仕事が終わり、リンカと連絡を取って彼女の部屋にダイヤを派遣した。
そこには、私服のリンカと制服姿のヒカリちゃんが座って待っていた。
「ワオ! ベリーキュート!」
ダイヤはヒカリちゃんを見て興奮している。オレは見慣れてしまったが、ヒカリちゃんもシズカに引けをとらない美少女だったね。
「わ。本当に外国人だ」
「ダイヤ・フォスターダヨ! ヨロシク!」
ガバッとヒカリちゃんに抱きつくダイヤ。
アメリカンなスキンシップと巨山に埋もれたヒカリちゃんは手をばたばたと動かす。オレとリンカはその様子を、可愛い、と思いつつ見ていた。
「ヒカリ。ウチ子にナラナイ? アメリカキョーミアル?」
「お前は何を言ってるんだ?」
「マックスが言うには、ジョシコーセーはコレデ持ち帰レルッテ」
エセ関西弁ヤロウのアホ知識の底が見えねぇ。身内間だからまだ許容出来るが、赤の他人だとトラブルが起こるぞ。
「それじゃ、宜しくな」
「ン? ニックスどこかに行くネ?」
「別にオレは居なくても良いだろ。隣の部屋に居るから何かあったら呼んでくれ」
この勉強会にはオレは不要だ。マックスのヤツに色々と言いたい事もあるし、別室待機だな。
「ダイヤさんの実家って牧場なんですか?」
「YES カウやホースがイルヨ」
勉強会はつつがなく進み、その休憩時にヒカリはリンカから聞いていたダイヤの生い立ちに興味が出ていた。
ダイヤは自分のスマホの写真を二人に見せる。昨日リンカが見たのはケンゴの方の写真だったので新鮮なモノばかりだった。
「わぁ、可愛い~」
母馬に寄り添う子馬の写真や、妹達が牧場の手伝いをしている写真も見せつつ、ダイヤは妹達を紹介する。そして――
「あれ? これって――」
写真は今から近い日付のモノ――ケンゴと過ごした日々のモノへと変わって行った。
「ニックスがステイしてたトキネ」
写真の中のケンゴは動き回っていた。
銃を向けるサンから半裸で逃げるシーン。
リンクの作ったお菓子の試食役にされるシーン。
ミストとチェスをやって頭を悩ませてるシーン。
マックスとのコマンドサンボの練習風景。
涼しい顔をしてパルクールを行うヴェイグの後ろを気合いで追いかける所。
クラウザーとBBQで肉の取り合い。
例の父に銃を向けられているシーン(発砲時のマズルフラッシュを激写)もあった。
「……本当に撃たれてる……」
「これ……冗談じゃないよね?」
「フフ」
二人のリアクションにダイヤは笑う。
ミストと一緒に座って寝てるシーン。
リンクを他人のバイクで後ろに乗せて空を飛ぶシーン。
「え? 何これ。なんで空飛んでるの?」
「これネー、リンクのストーカーがリベンジバックしてきた時に近くのバイク盗んでエスケープした時ネ」
「……結構高さあるよ、コレ」
「落ちた先がリバーだったヨ」
何やってんだ、アイツ。とリンカは国の外でも落ち着きのないケンゴに呆れた。
ハルサから落馬している所をサンに笑われてるシーン。
デスクに座って仕事をしている所もあった。
「わ、ケン兄が仕事をしてる所、初めて見たかも」
「普通に真面目だ……」
「ニックス、仕事をしてるときは真面目ネ」
おちゃらけた時しか知らない二人は、そう言えば社会人だったねー、と改めて思い出す。
ハロウィンの時、サマーバケーションの時、わちゃわちゃした三姉妹との食事の時、そして――
「ハイ、アルバムエンドネ」
最後は帰国する飛行機へ向かう彼の背中を写したモノで終わった。
「フリータイムはエンドヨ。ティーチャーに戻りマース」
「ダイヤさん……今の――」
質問しようとするリンカの口を人差し指を当てて止める。
「今はスタディタイム。OK?」
「あ、はい」
真面目なダイヤの言葉にリンカとヒカリはそれ以上は質問出来なかった。
ベッドから降りて、パジャマのままキッチンへ行くと静まり返っている。
朝食の当番はローテーション。これは彼が決めた事だ。その時、背後に人の気配。私は咄嗟に振り向く。
「ふぁ……おはよう。ダイヤお姉様」
「あ……」
そこには欠伸をしながら起きてきた妹がいた。
「? どうしたの?」
「何でもないネ。グッドモーニング、ミスト。今日もベリーキュートネ」
可愛い妹。大切な家族に私は抱きつく。
しかし、心は穴が空いた様に何かが欠けていた。
「おや? もう、いいのかい? ふむ。ふっはっは! こちらも急な事だったからね! 君が謝る事ではないよ!」
社長室で他支部の業績資料を見ていた黒船正十郎は、かかってきた電話に対応すると短いやり取りの後にそのまま切った。
そこへ秘書の轟甘奈が整理した資料を片手に社長室に入ってくる。
「社長。こちらは九州支部の資料になります」
「甘奈君。ちょうど良かった。緊急で頼まれてくれないかな?」
「何でしょう?」
「よし、解散。仕事に戻れ、お前ら」
六人で昼を食べて、会社の一階ホールで解散となった。はた迷惑な忍者、暁才蔵は断罪者(お尻専門)の人に任せておけば勝手に警察へ逃げ込むだろう。想像するだけで寒気が止まらねえ。
「ウドン、美味しかったネー」
ダイヤも日本食には満足してくれている。
イレギュラーな仕事ばかりなので、午後からは本格的に作業を教えてやろう。
「お」
オレはスマホを見るとリンカから連絡が来ていた。
「ダイヤ。今日の夕方、手を貸してくれないか?」
「イイヨ。ワタシでOK?」
「全然OK リンカちゃんが英語を教えて欲しいんだってさ」
もう、学力テストの時期か。テストと言う言葉は社会人になってからはそれなりに使うものの、学生の時とは意味が大きく違っている。
「それと、リンカちゃんの友達も来るから」
「リンカのフレンド?」
「谷高光です。今日はよろしくお願いしまーす」
仕事が終わり、リンカと連絡を取って彼女の部屋にダイヤを派遣した。
そこには、私服のリンカと制服姿のヒカリちゃんが座って待っていた。
「ワオ! ベリーキュート!」
ダイヤはヒカリちゃんを見て興奮している。オレは見慣れてしまったが、ヒカリちゃんもシズカに引けをとらない美少女だったね。
「わ。本当に外国人だ」
「ダイヤ・フォスターダヨ! ヨロシク!」
ガバッとヒカリちゃんに抱きつくダイヤ。
アメリカンなスキンシップと巨山に埋もれたヒカリちゃんは手をばたばたと動かす。オレとリンカはその様子を、可愛い、と思いつつ見ていた。
「ヒカリ。ウチ子にナラナイ? アメリカキョーミアル?」
「お前は何を言ってるんだ?」
「マックスが言うには、ジョシコーセーはコレデ持ち帰レルッテ」
エセ関西弁ヤロウのアホ知識の底が見えねぇ。身内間だからまだ許容出来るが、赤の他人だとトラブルが起こるぞ。
「それじゃ、宜しくな」
「ン? ニックスどこかに行くネ?」
「別にオレは居なくても良いだろ。隣の部屋に居るから何かあったら呼んでくれ」
この勉強会にはオレは不要だ。マックスのヤツに色々と言いたい事もあるし、別室待機だな。
「ダイヤさんの実家って牧場なんですか?」
「YES カウやホースがイルヨ」
勉強会はつつがなく進み、その休憩時にヒカリはリンカから聞いていたダイヤの生い立ちに興味が出ていた。
ダイヤは自分のスマホの写真を二人に見せる。昨日リンカが見たのはケンゴの方の写真だったので新鮮なモノばかりだった。
「わぁ、可愛い~」
母馬に寄り添う子馬の写真や、妹達が牧場の手伝いをしている写真も見せつつ、ダイヤは妹達を紹介する。そして――
「あれ? これって――」
写真は今から近い日付のモノ――ケンゴと過ごした日々のモノへと変わって行った。
「ニックスがステイしてたトキネ」
写真の中のケンゴは動き回っていた。
銃を向けるサンから半裸で逃げるシーン。
リンクの作ったお菓子の試食役にされるシーン。
ミストとチェスをやって頭を悩ませてるシーン。
マックスとのコマンドサンボの練習風景。
涼しい顔をしてパルクールを行うヴェイグの後ろを気合いで追いかける所。
クラウザーとBBQで肉の取り合い。
例の父に銃を向けられているシーン(発砲時のマズルフラッシュを激写)もあった。
「……本当に撃たれてる……」
「これ……冗談じゃないよね?」
「フフ」
二人のリアクションにダイヤは笑う。
ミストと一緒に座って寝てるシーン。
リンクを他人のバイクで後ろに乗せて空を飛ぶシーン。
「え? 何これ。なんで空飛んでるの?」
「これネー、リンクのストーカーがリベンジバックしてきた時に近くのバイク盗んでエスケープした時ネ」
「……結構高さあるよ、コレ」
「落ちた先がリバーだったヨ」
何やってんだ、アイツ。とリンカは国の外でも落ち着きのないケンゴに呆れた。
ハルサから落馬している所をサンに笑われてるシーン。
デスクに座って仕事をしている所もあった。
「わ、ケン兄が仕事をしてる所、初めて見たかも」
「普通に真面目だ……」
「ニックス、仕事をしてるときは真面目ネ」
おちゃらけた時しか知らない二人は、そう言えば社会人だったねー、と改めて思い出す。
ハロウィンの時、サマーバケーションの時、わちゃわちゃした三姉妹との食事の時、そして――
「ハイ、アルバムエンドネ」
最後は帰国する飛行機へ向かう彼の背中を写したモノで終わった。
「フリータイムはエンドヨ。ティーチャーに戻りマース」
「ダイヤさん……今の――」
質問しようとするリンカの口を人差し指を当てて止める。
「今はスタディタイム。OK?」
「あ、はい」
真面目なダイヤの言葉にリンカとヒカリはそれ以上は質問出来なかった。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ズッ友宣言をしてきたお隣さんから時々優しさが運ばれてくる件
遥 かずら
恋愛
両親が仕事で家を空けることが多かった高校生、栗城幸多は実質一人暮らし状態。そんな幸多のお隣さんには中学が一緒だった笹倉秋稲が住んでいる。
彼女は幸多が中学時代に告白した時、爽やかな笑顔を見せながら「ずっと友達ならいいですよ」とズッ友宣言をしてきた快活系女子だった。他にも彼女に告白した男子も数知れずいたもののやはり友達止まり。そんな笹倉秋稲に告白した男子たちの間には、フラれたうちに入らない無傷の戦友として友情が芽生えたとかなんとか。あくまで友達扱いをしていた彼女は、男女関係なく分け隔てない優しさがあったので人気は不動のものだった。
「高校生になってもずっとお友達だよ!」
「……あ、うん」
「友達は友達だからね?」
やんわりとお断りされたけどお友達な関係、しかもお隣同士な二人の不思議な関係。
本音がつかめない女子、笹倉秋稲と栗城幸多の関係はとてもゆっくりとした時間の中から徐々に本当の気持ちを運ぶようになる――
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

向日葵と隣同士で咲き誇る。~ツンツンしているクラスメイトの美少女が、可愛い笑顔を僕に見せてくれることが段々と多くなっていく件~
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の加瀬桔梗のクラスには、宝来向日葵という女子生徒がいる。向日葵は男子生徒中心に人気が高く、学校一の美少女と言われることも。
しかし、桔梗はなぜか向日葵に1年生の秋頃から何度も舌打ちされたり、睨まれたりしていた。それでも、桔梗は自分のように花の名前である向日葵にちょっと興味を抱いていた。
ゴールデンウィーク目前のある日。桔梗はバイト中に男達にしつこく絡まれている向日葵を助ける。このことをきっかけに、桔梗は向日葵との関わりが増え、彼女との距離が少しずつ縮まっていく。そんな中で、向日葵は桔梗に可愛らしい笑顔を段々と見せていくように。
桔梗と向日葵。花の名を持つ男女2人が織りなす、温もりと甘味が少しずつ増してゆく学園ラブコメディ!
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしています。


美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる