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第112話 か、かばでぃ!
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『ふっ……見つかってしまったか』
社長の黒船は屋上の給水塔の上で眠っていた所をドローンで発見された。
ドローンを操作している4課のヨシ君は送られてくる映像をオフィスで流している。
「屋上ですな、轟殿」
「ありがとう、ヨシ君」
「箕輪、ヨシ」
近くのソファーに座っている鷹さんは、席を外している課長の真鍋に代わって指揮を取っていた。
「カンナと一緒にあのアホを捕まえて来な」
「いいんスか~?」
「これはこれは、本気ですな」
「あの……あまり手荒な事は……」
本気で眼を光らせる三人に轟はオロオロしながら告げる。
「カンナ。あんたがちゃんと舵を取るのが普通だよ。何のために秘書やってんのさ」
「ご、ごめんなさい……」
「鷹殿。ここは社長の確保が最優先事項ですぞ」
「ふん。箕輪! 逃がすんじゃないよ!」
「ヨシ~ナビゲート頼むぜぇ」
「御意」
気だるそうに出陣する箕輪。その後に轟は慌てて続く。ヨシ君は黒船をドローンで追う。
1課の面々は資料倉庫から漂う威圧に固唾を飲んでいた。
それを発しているのは間違いなく課長の七海だった。彼女は口調は厳しいものの、滅多な事では怒らない。
「悪いな。二人きりでよ」
「ノープロブレムネ」
二人の間に必要以上の会話はない。
七海はバラついたナンバーの資料を整理し終えるとガラス戸をパタンと閉じる。
「詩織が世話になったな」
「ホーヅキの事デスネ」
「……お前は日本の常識を知っておけ」
七海はダイヤに向き直ると強い瞳を向けてくる。二人の身長は同じくらい。七海は胸が当たる距離で威嚇する。
「あまり調子に乗るなよ――」
「でよ、新キャラがスナイパー特化なんだけど、ウルト二発で相手もってけるんだよ」
「オレも食らいましたよ。上手い人は走ってる所当てて来ますもん。オリンパスとかだとスナイパーストリートばっか出来上がる未来が容易に想像できる……」
「お前、スナ苦手だもんな」
「オレ、スピファ信者のインファイターなんで。スピファがケアパケ行ったときはしばらく止めてましたもん」
「良い意味でイカれてやがる」
資料を片付けながら杉田さんとペクス談議に花を咲かせていると、
「ニックス……」
「うお? どうした!?」
ふらぁ……とダイヤが弱々しくもたれかかってきた。珍しいローテンションに電池でも抜かれたのかと思わず受け止める。
「ワタシ、マダマダデシタ」
「……お前、何やらかした?」
「おい」
と、七海課長も姿を現す。彼女は先程と変わらずいつも通りだ。
「お前らはもう行っていいぞ。杉田、後はやっとけ」
「うーす」
「あの……七海課長。何があったんです?」
「あ?」
七海課長はダイヤに視線を向ける。そして、
「日本の常識を教えただけだ。おい、ダイヤ。これに懲りたら、ヤルときは手順を踏め」
「YES……」
え……? マジで何があったんだ? まぁ……ハイテンションで生きてるようなダイヤがここまで意気消沈するとは……
「それと、鳳。今日は4課には行くなよ」
「なにかあるんですか?」
オレの質問に七海課長は何かを思い出すように苦い顔をする。
「いいから行くな。特にダイヤを接触させると化学反応で会社が吹っ飛ぶかもしれねぇ」
下っ端は触れない方が良い案件か。もうすぐお昼だし、一旦3課に戻るか。
「杉田ァ! テメェ! また菓子を隠してやがったな!」
「まぁまぁ、課長。お一つどうぞ」
「あぁ? ふざけ――」
「もう一つどうぞ」
「な! 正気か! テメェ――」
「はい」
「俺を買収しようとするのは良い度胸――」
「どうぞ」
「こんなキットカット四つでなぁ――」
「こちらを」
「聞いてんのか――」
「ぽん」
「…………」
「その手にある六つの黄金は課長のモノです」
「……チッ」
と、七海課長は資料倉庫を出て行った。え? 何が起きた?
「課長はキットカット大好きなんだよ。何かあったら一袋持っていくとすぐに機嫌良くなるぞ」
1課の面々にとってはそれが常識らしい。
「はっはっは! 流石、世界組六番の箕輪君! 隙が無いね!」
「大人しくしてくだせぇや」
屋上でカバディが行われていた。
箕輪が屋上の扉を開けると黒船は腕を組み仁王立ちで、捕まえてごらん! と勇んだ事で始まったのだ。
「鷹さんもキレてますぜぇ~」
「ふっはっはっ! 鷹さんが怖くて社長はやれないよ!」
久しぶりに会社に戻ってきてテンションが上がってる黒船は、変なボルテージが出来上がっている。
「だが……そろそろ食堂で坂東スペシャルでもいただくかな!」
「その前に仕事があるでしょう?」
「知らんね!」
『箕輪。今、課長が行ったよ。もう少し時間を稼ぎな』
「へーい」
と、黒船は地面の振動を感じる様に床を見る。
「不穏な空気……さては――」
その一瞬をついて箕輪は仕掛けた。黒船の視線は外れ、踏み出したタイミングも完璧。世界組六番のキャッチが火を吹く。
「一計を仕掛けているな!」
箕輪は肩に手を乗せられ、重心を下に動かされた。そのまま、うつ伏せに滑るように倒れ、その上を黒船は飛び越える様に抜ける。
「今の完璧だったんですけどね~」
「完璧過ぎて先が読めたよ。だか、流石に真鍋は無理だからね。アデュー」
黒船は門番箕輪を難なく突破すると屋上の扉を抜ける。その時、
「か、かばでぃ!」
ぽふっと、扉の死角に隠れていた轟が黒船に低く組み付いた。
スポーツなどやったことのない轟のタックルは素人丸出しで力もない。簡単に振りほどけるだろう。
「これは思わぬ伏兵だ! 二段構えとはやるね! 気配を全く感じなかったよ、カンナ君! 箕輪君に注意が向き過ぎていたか! これは失態! どうやら私に君を振り払う事は出来ないと鷹さんは踏んでいるようだな! それは正解だ!」
ぎゅー、と力の限りしがみつく轟の様子に、負けたよ! ふっはっはっ! と笑う黒船。
「時間内には捕まえたな」
「へい」
階段の下から上がってきた真鍋は屋上の入り口に居る箕輪と黒船を連行する。
「もうすぐ火防議員が来ますので」
「刺激的な一日だよ!」
社長の黒船は屋上の給水塔の上で眠っていた所をドローンで発見された。
ドローンを操作している4課のヨシ君は送られてくる映像をオフィスで流している。
「屋上ですな、轟殿」
「ありがとう、ヨシ君」
「箕輪、ヨシ」
近くのソファーに座っている鷹さんは、席を外している課長の真鍋に代わって指揮を取っていた。
「カンナと一緒にあのアホを捕まえて来な」
「いいんスか~?」
「これはこれは、本気ですな」
「あの……あまり手荒な事は……」
本気で眼を光らせる三人に轟はオロオロしながら告げる。
「カンナ。あんたがちゃんと舵を取るのが普通だよ。何のために秘書やってんのさ」
「ご、ごめんなさい……」
「鷹殿。ここは社長の確保が最優先事項ですぞ」
「ふん。箕輪! 逃がすんじゃないよ!」
「ヨシ~ナビゲート頼むぜぇ」
「御意」
気だるそうに出陣する箕輪。その後に轟は慌てて続く。ヨシ君は黒船をドローンで追う。
1課の面々は資料倉庫から漂う威圧に固唾を飲んでいた。
それを発しているのは間違いなく課長の七海だった。彼女は口調は厳しいものの、滅多な事では怒らない。
「悪いな。二人きりでよ」
「ノープロブレムネ」
二人の間に必要以上の会話はない。
七海はバラついたナンバーの資料を整理し終えるとガラス戸をパタンと閉じる。
「詩織が世話になったな」
「ホーヅキの事デスネ」
「……お前は日本の常識を知っておけ」
七海はダイヤに向き直ると強い瞳を向けてくる。二人の身長は同じくらい。七海は胸が当たる距離で威嚇する。
「あまり調子に乗るなよ――」
「でよ、新キャラがスナイパー特化なんだけど、ウルト二発で相手もってけるんだよ」
「オレも食らいましたよ。上手い人は走ってる所当てて来ますもん。オリンパスとかだとスナイパーストリートばっか出来上がる未来が容易に想像できる……」
「お前、スナ苦手だもんな」
「オレ、スピファ信者のインファイターなんで。スピファがケアパケ行ったときはしばらく止めてましたもん」
「良い意味でイカれてやがる」
資料を片付けながら杉田さんとペクス談議に花を咲かせていると、
「ニックス……」
「うお? どうした!?」
ふらぁ……とダイヤが弱々しくもたれかかってきた。珍しいローテンションに電池でも抜かれたのかと思わず受け止める。
「ワタシ、マダマダデシタ」
「……お前、何やらかした?」
「おい」
と、七海課長も姿を現す。彼女は先程と変わらずいつも通りだ。
「お前らはもう行っていいぞ。杉田、後はやっとけ」
「うーす」
「あの……七海課長。何があったんです?」
「あ?」
七海課長はダイヤに視線を向ける。そして、
「日本の常識を教えただけだ。おい、ダイヤ。これに懲りたら、ヤルときは手順を踏め」
「YES……」
え……? マジで何があったんだ? まぁ……ハイテンションで生きてるようなダイヤがここまで意気消沈するとは……
「それと、鳳。今日は4課には行くなよ」
「なにかあるんですか?」
オレの質問に七海課長は何かを思い出すように苦い顔をする。
「いいから行くな。特にダイヤを接触させると化学反応で会社が吹っ飛ぶかもしれねぇ」
下っ端は触れない方が良い案件か。もうすぐお昼だし、一旦3課に戻るか。
「杉田ァ! テメェ! また菓子を隠してやがったな!」
「まぁまぁ、課長。お一つどうぞ」
「あぁ? ふざけ――」
「もう一つどうぞ」
「な! 正気か! テメェ――」
「はい」
「俺を買収しようとするのは良い度胸――」
「どうぞ」
「こんなキットカット四つでなぁ――」
「こちらを」
「聞いてんのか――」
「ぽん」
「…………」
「その手にある六つの黄金は課長のモノです」
「……チッ」
と、七海課長は資料倉庫を出て行った。え? 何が起きた?
「課長はキットカット大好きなんだよ。何かあったら一袋持っていくとすぐに機嫌良くなるぞ」
1課の面々にとってはそれが常識らしい。
「はっはっは! 流石、世界組六番の箕輪君! 隙が無いね!」
「大人しくしてくだせぇや」
屋上でカバディが行われていた。
箕輪が屋上の扉を開けると黒船は腕を組み仁王立ちで、捕まえてごらん! と勇んだ事で始まったのだ。
「鷹さんもキレてますぜぇ~」
「ふっはっはっ! 鷹さんが怖くて社長はやれないよ!」
久しぶりに会社に戻ってきてテンションが上がってる黒船は、変なボルテージが出来上がっている。
「だが……そろそろ食堂で坂東スペシャルでもいただくかな!」
「その前に仕事があるでしょう?」
「知らんね!」
『箕輪。今、課長が行ったよ。もう少し時間を稼ぎな』
「へーい」
と、黒船は地面の振動を感じる様に床を見る。
「不穏な空気……さては――」
その一瞬をついて箕輪は仕掛けた。黒船の視線は外れ、踏み出したタイミングも完璧。世界組六番のキャッチが火を吹く。
「一計を仕掛けているな!」
箕輪は肩に手を乗せられ、重心を下に動かされた。そのまま、うつ伏せに滑るように倒れ、その上を黒船は飛び越える様に抜ける。
「今の完璧だったんですけどね~」
「完璧過ぎて先が読めたよ。だか、流石に真鍋は無理だからね。アデュー」
黒船は門番箕輪を難なく突破すると屋上の扉を抜ける。その時、
「か、かばでぃ!」
ぽふっと、扉の死角に隠れていた轟が黒船に低く組み付いた。
スポーツなどやったことのない轟のタックルは素人丸出しで力もない。簡単に振りほどけるだろう。
「これは思わぬ伏兵だ! 二段構えとはやるね! 気配を全く感じなかったよ、カンナ君! 箕輪君に注意が向き過ぎていたか! これは失態! どうやら私に君を振り払う事は出来ないと鷹さんは踏んでいるようだな! それは正解だ!」
ぎゅー、と力の限りしがみつく轟の様子に、負けたよ! ふっはっはっ! と笑う黒船。
「時間内には捕まえたな」
「へい」
階段の下から上がってきた真鍋は屋上の入り口に居る箕輪と黒船を連行する。
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