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番外編
視線の先
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俺がその視線に気付いたのは数ヶ月前だった。
最初はオルフェウス殿下を狙う何者かの視線かと思ったが、すぐに違うと思い直した。
それは明らかに訓練されていない、むしろ悪意を微塵も感じさせないものだったからだ。
だからといってこちらを油断させるような類のものでもなかった。
だとしたらオルフェウス殿下に懸想をしているご令嬢かとも思ったが、これまた違うとすぐに分かった。
何故なら普通にご令嬢が入ることのできない場所でもその視線を感じたからだ。
だけど俺はオルフェウス殿下の護衛騎士。
オルフェウス殿下をお守りする仕事だ。
しかも何かある時はいつも一瞬。
だからそれに悪意がなくとも無視はできなかった。
よって俺は随分悩まされた。
そもそもそれはオルフェウス殿下に対して何の意図も感じさせいものだったから尚更だった。
そうして悩んでも考えても結局何も分からず困り果てた俺は、一応の為ということでオルフェウス殿下にそれを進言することにした。
ここ数ヶ月何者かの視線を感じるが素人の視線で、且つ悪意はないこと、だけど今だにその意図も犯人本人も分からないのでオルフェウス殿下自身も十分に気をつけて欲しいということを。
するとそう進言した途端、オルフェウス殿下は何故だか笑い出した。
そして
「そうか、そうか、分かった、ありがとう。しかしお前は鈍感だなぁ」
と更に腹を抱えて笑う。
その時の俺にはその言葉の意味するところは分からなかったが、何気に馬鹿にされているような気がしたので、つい乳兄弟で幼馴染みの間柄に戻って苦言を呈した。
だが結局その後もひとしきり笑われたのだった。
ただお陰で漸くその視線はオルフェウス殿下ではなく自分を見ている視線だということに気付くことができた。
しかし、そうなると尚更意味が分からない。
もしかして自分を利用してオルフェウス殿下に何かしようとしているのか?
考え過ぎだとは思うが、そんな輩がいないとも限らない。
それなら早く犯人を特定せねばならない。
なので、それ以降、その視線を逆に追うようになった。
が、結局、ひと月経っても悪意のない視線は感じるがそれだけだった。
そしていよいよ分からないと頭を抱えていたある日。
いつものようにオルフェウス殿下に付き従いながらリリー王女殿下とお茶会をしているアリシア王太子妃殿下を迎えに行った時のこと。
ふいにいつもの視線を感じてすぐさまその視線を追うと、俺の視線の先に頬を薔薇色に染めて俯きながら俺を隠れ見るリリー王女殿下の視線があった。
これだったのか!
漸く分かった視線の犯人に俺は無表情のまま混乱したのだった。
何故ならリリー王女殿下に視線を向けられる理由が分からないからだ。
そもそも俺はオルフェウス殿下の護衛騎士でリリー王女殿下との接点はない。
仮にあってもオルフェウス殿下の側に控えているからで、それもお互い視界に入る程度のことだ。
あとたまにリリー王女殿下が馬車に乗る時に少しエスコートするくらいだろう。
そう思うといよいよ訳が分からず、いじられ覚悟でオルフェウス殿下に相談し、爆笑と共に知らされた真実に慌てふためいたのはそのまたひと月後のことだった。
そして現在、その視線の先の可憐な王女様に恋をしている自分がいる。
最初はオルフェウス殿下を狙う何者かの視線かと思ったが、すぐに違うと思い直した。
それは明らかに訓練されていない、むしろ悪意を微塵も感じさせないものだったからだ。
だからといってこちらを油断させるような類のものでもなかった。
だとしたらオルフェウス殿下に懸想をしているご令嬢かとも思ったが、これまた違うとすぐに分かった。
何故なら普通にご令嬢が入ることのできない場所でもその視線を感じたからだ。
だけど俺はオルフェウス殿下の護衛騎士。
オルフェウス殿下をお守りする仕事だ。
しかも何かある時はいつも一瞬。
だからそれに悪意がなくとも無視はできなかった。
よって俺は随分悩まされた。
そもそもそれはオルフェウス殿下に対して何の意図も感じさせいものだったから尚更だった。
そうして悩んでも考えても結局何も分からず困り果てた俺は、一応の為ということでオルフェウス殿下にそれを進言することにした。
ここ数ヶ月何者かの視線を感じるが素人の視線で、且つ悪意はないこと、だけど今だにその意図も犯人本人も分からないのでオルフェウス殿下自身も十分に気をつけて欲しいということを。
するとそう進言した途端、オルフェウス殿下は何故だか笑い出した。
そして
「そうか、そうか、分かった、ありがとう。しかしお前は鈍感だなぁ」
と更に腹を抱えて笑う。
その時の俺にはその言葉の意味するところは分からなかったが、何気に馬鹿にされているような気がしたので、つい乳兄弟で幼馴染みの間柄に戻って苦言を呈した。
だが結局その後もひとしきり笑われたのだった。
ただお陰で漸くその視線はオルフェウス殿下ではなく自分を見ている視線だということに気付くことができた。
しかし、そうなると尚更意味が分からない。
もしかして自分を利用してオルフェウス殿下に何かしようとしているのか?
考え過ぎだとは思うが、そんな輩がいないとも限らない。
それなら早く犯人を特定せねばならない。
なので、それ以降、その視線を逆に追うようになった。
が、結局、ひと月経っても悪意のない視線は感じるがそれだけだった。
そしていよいよ分からないと頭を抱えていたある日。
いつものようにオルフェウス殿下に付き従いながらリリー王女殿下とお茶会をしているアリシア王太子妃殿下を迎えに行った時のこと。
ふいにいつもの視線を感じてすぐさまその視線を追うと、俺の視線の先に頬を薔薇色に染めて俯きながら俺を隠れ見るリリー王女殿下の視線があった。
これだったのか!
漸く分かった視線の犯人に俺は無表情のまま混乱したのだった。
何故ならリリー王女殿下に視線を向けられる理由が分からないからだ。
そもそも俺はオルフェウス殿下の護衛騎士でリリー王女殿下との接点はない。
仮にあってもオルフェウス殿下の側に控えているからで、それもお互い視界に入る程度のことだ。
あとたまにリリー王女殿下が馬車に乗る時に少しエスコートするくらいだろう。
そう思うといよいよ訳が分からず、いじられ覚悟でオルフェウス殿下に相談し、爆笑と共に知らされた真実に慌てふためいたのはそのまたひと月後のことだった。
そして現在、その視線の先の可憐な王女様に恋をしている自分がいる。
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