公爵令嬢の婚約解消宣言

宵闇 月

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オルフェウスのとは?

遡ること数ヶ月前。

いつものように自室でアリシアの絵姿を見ながらデレデレと鼻の下を伸ばしていたオルフェウスは急に国王である父に呼ばれた。

時間的に就寝してもおかしくないような時だったことから、何事かと緩んだ顔を引き締めて急ぎ国王の自室に向かう。

そしてそこで聞かされた話に驚いた。

なんと父である国王の子が市井で見つかったとのことだ。

名前はリリー。

国王がその昔、いわゆる?で手を付けた侍女との子だという。

その侍女とはサリバン伯爵家の娘で、王宮には行儀見習いを目的とし、王妃付きの侍女として働いていた。

が、国王のお手付きとなり子を身篭ってしまった為、逃げるように王宮を去り、市井に紛れてリリーを生み、平民として生活していたらしい。

それが何年もかけて愛娘を探し続けたサリバン伯爵の根気強い捜索の結果、先日見つかったとのことだった。

だがやっとの思いで見つけた愛娘には娘はいたが、肝心の夫がいなかった。

そこでサリバン伯爵が娘を問い詰めた結果、リリーが国王の娘でオルフェウスの異母妹という事実が発覚したのである。

が、サリバン伯爵の娘は自分が国王の側室や愛妾になることも、リリーを王宮に引き渡すことも断固として拒否した。

そして娘のリリー自身も母親と同じ意見であった。

そんな母娘の様子に国王のしたことが安易に想像できたオルフェウスは思わず苦い顔をした。

話し合いの結果、リリーは表向きはサリバン伯爵家の子として育てることとなった。

しかし現実は国王の子である。

したがって、リリーには王女教育の為のレッスンを受けに王城に来ることと王立学園に通うこと、オルフェウスには兄としてリリーの面倒を見ることという王命にも似た父命が下った。

もちろん真実は他言無用で。

こうしてリリーはサリバン男爵家のご令嬢として生活することになり、オルフェウスはアリシアにも真相を話すことができないままリリーの面倒を見ることになった。

まさかこのことが原因でアリシアから婚約解消宣言をされるとは思いもせずに。

が、現在、残念なことに、現実にその婚約解消宣言がアリシアの口から発せられている。

しかもあの気の強い完璧令嬢のアリシアが泣き崩れている。

ーー本当のことを言って抱きしめて愛を囁いて涙を止めたい!!

これこそがオルフェウスの本音である。

拗らせヘタレのオルフェウスが現実にそれができるかどうかは別の話だが思うだけは自由だ。
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