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「お前のような可愛げのない妃などいらぬわ!!」
「まぁ!こちらこそ嫌味しかおっしゃらない夫はご勘弁願いたいですわ!!」
「なにおぉぉ!!」
「なんですの?」
今日も仲良く?喧嘩しているのは、この国の王太子であるオルフェウス・ルーデンブルグとその婚約者である公爵令嬢のアリシア・フェンデルである。
オルフェウスは輝くような金色の髪に涼しげな切長の碧眼、スッと通った鼻筋と薄い唇を持つ如何にもな王子様。
対するアリシアは銀の絹のようなサラサラのロングヘアに大きな紫の瞳、小さな鼻とぽってりとした唇が愛らしく、一見すると庇護欲を掻き立てるような、だけど凛とした上品さも兼ね備えたご令嬢である。
そんな二人は子供の頃はそれはそれは天使のように可愛く、二人が仲良く遊ぶ姿はさながら一枚の絵画のようだった。
そしてその頃から既に誰も入り込めない空気を漂わせる程の仲の良さだったので、当然のように自然と婚約関係を結ぶことになったのである。
…というのは幼い頃からの二人を知る人たちの憶測から広がった話で、実際はアリシアに一目惚れしたオルフェウスが周りを威嚇しまくり、父王にアリシアとの婚約を強請り、娘至上主義のフェンデル公爵に認めてもらえるよう必死に努力した結果だ。
にも関わらず、現在のこの状況はアリシアの妃教育とオルフェウスのありもしない噂に二人の性格が相まって起こっていた。
オルフェウスは外的には理想的王子を演じているが、本当は照れ屋で素直じゃなく口も悪い。
しかもアリシアとは正式に婚約までしているというのに、あまりに好き過ぎて、いろいろをしっかり拗らせているから余計に悪い。
アリシアはアリシアで深窓のご令嬢よろしくな見た目に反してかなり気が強く、こちらもまた素直ではない。
しかも妃教育のおかげ?で元は豊かだった表情も年々乏しくなる上に王家の人間には必須である仮面顔を身につけて、現在ではオルフェウスにすら弱さを見せることがない。
更には大好きなオルフェウスがモテることは理解していても嫉妬は止められず、常にご令嬢方に囲まれがちなオルフェウスに対して喧嘩腰になったり、可愛くない態度をとってしまう。
その嫉妬をご令嬢方の方に向けないのは素晴らしいとは思うが。
なのでこの状況は必然といえば必然に起こりうることなのである。
「ほんっっっとにお前は可愛げのかけらもないなっ!!」
そう言って悪態を吐きつつチラチラとアリシアの様子を伺っているオルフェウス。
そしてそんなオルフェウスに一切気付かないアリシアは更に腹を立てる。
そんなこんなな関係が数年続き、この日、とうとうアリシアの口から思いがけない言葉が飛び出したのであった。
ーーそこまでおっしゃるのなら殿下と私の婚約を今すぐ解消致しましょう!!
「まぁ!こちらこそ嫌味しかおっしゃらない夫はご勘弁願いたいですわ!!」
「なにおぉぉ!!」
「なんですの?」
今日も仲良く?喧嘩しているのは、この国の王太子であるオルフェウス・ルーデンブルグとその婚約者である公爵令嬢のアリシア・フェンデルである。
オルフェウスは輝くような金色の髪に涼しげな切長の碧眼、スッと通った鼻筋と薄い唇を持つ如何にもな王子様。
対するアリシアは銀の絹のようなサラサラのロングヘアに大きな紫の瞳、小さな鼻とぽってりとした唇が愛らしく、一見すると庇護欲を掻き立てるような、だけど凛とした上品さも兼ね備えたご令嬢である。
そんな二人は子供の頃はそれはそれは天使のように可愛く、二人が仲良く遊ぶ姿はさながら一枚の絵画のようだった。
そしてその頃から既に誰も入り込めない空気を漂わせる程の仲の良さだったので、当然のように自然と婚約関係を結ぶことになったのである。
…というのは幼い頃からの二人を知る人たちの憶測から広がった話で、実際はアリシアに一目惚れしたオルフェウスが周りを威嚇しまくり、父王にアリシアとの婚約を強請り、娘至上主義のフェンデル公爵に認めてもらえるよう必死に努力した結果だ。
にも関わらず、現在のこの状況はアリシアの妃教育とオルフェウスのありもしない噂に二人の性格が相まって起こっていた。
オルフェウスは外的には理想的王子を演じているが、本当は照れ屋で素直じゃなく口も悪い。
しかもアリシアとは正式に婚約までしているというのに、あまりに好き過ぎて、いろいろをしっかり拗らせているから余計に悪い。
アリシアはアリシアで深窓のご令嬢よろしくな見た目に反してかなり気が強く、こちらもまた素直ではない。
しかも妃教育のおかげ?で元は豊かだった表情も年々乏しくなる上に王家の人間には必須である仮面顔を身につけて、現在ではオルフェウスにすら弱さを見せることがない。
更には大好きなオルフェウスがモテることは理解していても嫉妬は止められず、常にご令嬢方に囲まれがちなオルフェウスに対して喧嘩腰になったり、可愛くない態度をとってしまう。
その嫉妬をご令嬢方の方に向けないのは素晴らしいとは思うが。
なのでこの状況は必然といえば必然に起こりうることなのである。
「ほんっっっとにお前は可愛げのかけらもないなっ!!」
そう言って悪態を吐きつつチラチラとアリシアの様子を伺っているオルフェウス。
そしてそんなオルフェウスに一切気付かないアリシアは更に腹を立てる。
そんなこんなな関係が数年続き、この日、とうとうアリシアの口から思いがけない言葉が飛び出したのであった。
ーーそこまでおっしゃるのなら殿下と私の婚約を今すぐ解消致しましょう!!
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