婚約をなかったことにしてみたら…

3.5

《 トール side 》

何が起こっているんだ？

婚約者のエルーシアに会いにラムレイ伯爵家を訪れるとそのエルーシアが高熱で倒れたと聞き慌てて彼女の部屋へ急いだ。

理由は分からないそうだ。

昨日、学校から帰った時には既に顔色が悪く、どこかぼんやりした様子だったらしく、それを聞いたシェリル夫人が心配してエルーシアの部屋に行くと倒れていたらしい。

医師の話によると急激なストレスと疲れから高熱が出て倒れたということで、ゆっくり休ませることが大事とのことだそうだが一体何があったのだろうか？

僕はエルーシアの苦しそうなその姿に帰ることができず、ラムレイ伯爵の許可を得てエルーシアの意識が戻るまで側に付いていることにした。

そんな僕には秘密がある。

この目の前で苦しんでいる婚約者には絶対に言えないような秘密。

それは数ヶ月前に兄妹になったばかりの義妹のこと。

エルーシアが知れば間違いなく嫌われて軽蔑されての婚約破棄だろう。

しかし今はまだだ。

我慢しなければならない。

この秘密はこの婚約者にだけは絶対に隠し通さなければならない。

僕はまさかその秘密が既にこの婚約者にバレているとも思わず、力なく眠っているその手を握り締め、一刻も早く回復することを祈った。

が、この後僕は漸く目を覚ましたエルーシアの言葉に衝撃を受けることになるのだった。