婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

誓い（side リュオン）

………まさか。

オフィは私に怒っていないというのか？

それとも気付いてない？

いや、そんなことはないな。

ということはアレはオフィの中では許容範囲内なのか？

私は訳が分からないと言わんばかりの表情を浮かべるオフィに少しだけ安堵すると同時に複雑な気持ちになる。

それはオフィが今までの私の話を全く聞いていないどころか、そもそもエルリナが私に手を振っていたことに対して何とも思っていないという現実を理解したからだ。

オフィは先程エルリナが私に手を振っていたのは確実に見ている。

一瞬だがあの時オフィは眉を顰めたのでそれは間違いなかった。

だから私はオフィが誤解して嫉妬したと思って焦ったのだが、どうやらあれはそういうことではなかったようだ。

オフィの私を探るような瞳に寂しさを感じながら、私もまたオフィの瞳に内情を探りつつ一つ息を吐いて口を開いた。

「いや、怒っていないのならいいんだ。恥ずかしいことに先程のエルリナの態度にオフィが嫉妬して怒ったのかと思ってな…。その…オフィに変な誤解をされたくなくて…つい…勢い付いて声を荒げてしまった。でも違うならそれでいい。勘違いして悪かったな。すまない」

そう言って今度は虚しさに襲われた。

もし逆だったら私は間違いなく嫉妬していただろう。

オフィを私しか知らない鳥籠に閉じ込めて、その瞳に私以外の人間を映せないようにしてしまいたくなる程度には。

今までの私に問題があったのは十分理解しているが、それでもつい先日私個人としてのプロポーズを嬉しそうに受け取ってくれたあれが嘘のように思えた。

そんなはずはないのに。

だが今の私はそう思ってしまう程の温度差をオフィとの間に感じている。

正直かなり堪える。

これは私が今までオフィを蔑ろにしてきたからなのか？

だったら私はこれから更にオフィに対して誠実な愛情を積み重ねなければならない。

そうしてオフィを唯一として一生、死ぬまで、オフィだけを誠心誠意愛する。

私は自分の中で改めてオフィにそう誓った。