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「ルミアスッ……!! ルミアスッ!!」
大きく声を張り叫び声に近い声を上げれば、何度目かの呼びかけでルミアスが空を見上げた。
声が届いたと嬉しさを顔に浮かべるリュートとは異なり、ルミアスの顔は驚愕に見開かれている。
手を伸ばせば、周りに居た魔獣を薙ぎ払ったルミアスがそれらを足場にして、空中へ飛び上がった。
落下するリュートは飛んできたルミアスの体に抱き留められる。
ずっと戦っているからか、いつものルミアスの香りは薄く、血の匂いと土埃の匂いの方が強い。
だが抱きしめられていれば、いつもと変わらない力強さと温もりで、リュートは途端に緊張感が緩んだ。
「ルミアスっ……るみあすぅぅぅっ」
地面に着地したルミアスに抱えられたまま、決壊したように涙がこぼれ嗚咽が漏れた。
「このっ、馬鹿野郎! 逃げろって言っただろうが! ヴァローアはどうした!?」
魔獣達からの攻撃を器用に避けながら、ルミアスから怒声を浴びせられる。
今の今まで怒られたことなど無いリュートは驚き目を丸くしたが、心配からくる怒りだと分かっているせいか怖さはない。
リュートは頑張って涙を押し留めながら、袖で顔を拭う。
「人が多すぎてはぐれたんだよ! それに外に逃げようとしても、城の周りを魔獣が沢山囲んでるみたいでもう外に出れなくなってるっ」
これでも安全な場所を探しながら移動していたと抗議すれば、ルミアスは自身の髪をぐしゃぐしゃと掻き、機嫌が悪そうに魔獣を屠る。
大きな瓦礫の後ろに身を隠せば、やっとリュートは地面に下ろされた。
素早くリュートに怪我が無いか確認するルミアスと同じく、リュートも素早くルミアスが傷ついてないかを確認した。
揃いにした衣装はお互い真っ赤に染まり、土埃がついたり、引っかかってほつれ穴が空いたりとボロボロになっている。
前線に居たルミアスはリュートよりも酷い有様だ。
「この怪我はどうした」
「これは――」
顔に着いた鼻血の痕と、魔獣の尻尾で攻撃された部分の痛みに気づかれ、事情を説明しようとしたその時、瓦礫の向こうから魔獣が突如現れ二人に襲い掛かってきた。
「ちょっとくらい引っ込んでられねぇのかよっ!」
頭に落雷を落としたあと、風を操り風圧で巨体を吹き飛ばせば、魔獣が瓦礫の向こうに飛んでいった。
しかしそれとは別の方向から魔獣が襲い掛かってくる。
「こっちもかよっ」
リュートを庇いながら攻撃を繰り出すルミアスだが、連続して攻撃を繰り出しているのに加え、既に長時間祟っている。
その消耗は激しいらしく、大きな魔獣の影からさらに出てきた魔獣に反応するのに遅れた。
「まかせてッ!」
囲まれた腕の中から魔獣に向けて腕を伸ばしたリュートが魔法を放つ。
巨大な氷の支柱が魔獣の頭上に出現し、ズドンと大きな音を立てて背中に突き刺さった。
「おまっ魔法なんてどうして……」
「逃げてる途中でフィルバート君に会って……彼から託されたんだよ」
包みを開いて見せれば、悪魔の魔法書を見たルミアスの目が見開かれる。
「なんでこれが……」
手早く悪魔の魔法書が託された経緯を伝えれば、ルミアスは顔を顰めて何とも言えない表情を作る。
「こんな沢山の魔獣から魔法を使えない僕が逃げるのは、無理があるでしょ? これになら魔法を使える方法が描いてあるかと思って」
「読めたのか?」
「きっとルミアスとルミアスのお父さんの血のおかげだね。おかげでここまでなんとか生き残れたよ」
頑張ったでしょ? と褒めて欲しくてヘラリと笑えば、ガバリとルミアスに勢いよく抱き込まれた。
「自分の血を使ったのか? どれだけ吸わせたんだ」
「少しだけだよ。あとは来る途中で魔獣に殺されてしまった他の人の血を貰ったくらい」
「だから血まみれなのか……まったく、無茶するなよ。お前はこういうことに慣れてないだろう」
労うように頭を優しく撫でられ、止まっていた涙が流れそうになるが、頑張って押し留める。
この場を生き残らなければならない状況で、いつものように甘えていられないとリュートはぐっとルミアスを押し返した。
「少しは、僕も力になれる。僕も、戦える。だから早くロマリオを倒そう」
赤い瞳をまっすぐ見つめる。
「だから、僕の生命力を吸って」
「何言って……っ」
「もう少しで全部戻るんだよね? だったら、戻すなら、今しかないと思う。どんどん周りを吸って強くなるロマリオにそれなら、勝てるでしょ。違う?」
不安定な力のまま長時間戦っているルミアスと違い、ロマリオは周りの生命力をどんどん吸って力を増幅させている。
被害の状況もそうだが、ルミアスがいくら強いといっても消耗が激しい中戦い続けるのは困難だろう。
周りにいたはずの戦闘ができる者達も、力を消耗して戦線を離脱しているか、既に事切れている。
現状まともに戦えるのは何とか持ち堪えているルドルフとルミアスしかいないのだ。
その状態で周りの魔獣達も相手にしつつ、ロマリオを倒せるかといわれればキツイとしか言いようがないだろう。
人よりも力を持っているルドルフも所詮は人間でしかない。
圧倒的に敵を屠る力は持ちえていないのだ。
この状況を打破し、生き残るためには悪魔の力を取り戻したルミアスに頼るほかない。
視線を逸らすことなくじっと見つめていれば、ルミアスが小さく息を吐いてから再び視線を合わせてくる。
「吸い取りすぎないようにする」
リュートが小さく頷けば、ルミアスが勢いよく口づけてきた。
深く口づけられ、絡み合った舌からどんどんと力を吸われていくのが分かる。
急速に無くなっていく生命力に軽く眩暈が起き始め、リュートは必死にルミアスのジャケットを掴んだ。
時間にすれば一瞬だ。最後に名残惜しいと言わんばかりに唇をぺろりと舐め上げられ、リュートは瞑っていた目を開ける。
元の姿を完全に取り戻したルミアスは徐に前髪をかき上げ、ボロボロになっていたジャケットを脱ぎ捨てた。
「危なかったら無理なく逃げろ」
「わかってる」
血の気が引いて震える自身の体を叱咤させ、ルミアスを安心させるように微笑めば、頭をぐしゃりと撫でられる。
同時に、ロマリオが耳の奥を突き刺すような咆哮をあげ、リュート達目掛けて突進してく来るのだった。
*あと少しで決着……!!
大きく声を張り叫び声に近い声を上げれば、何度目かの呼びかけでルミアスが空を見上げた。
声が届いたと嬉しさを顔に浮かべるリュートとは異なり、ルミアスの顔は驚愕に見開かれている。
手を伸ばせば、周りに居た魔獣を薙ぎ払ったルミアスがそれらを足場にして、空中へ飛び上がった。
落下するリュートは飛んできたルミアスの体に抱き留められる。
ずっと戦っているからか、いつものルミアスの香りは薄く、血の匂いと土埃の匂いの方が強い。
だが抱きしめられていれば、いつもと変わらない力強さと温もりで、リュートは途端に緊張感が緩んだ。
「ルミアスっ……るみあすぅぅぅっ」
地面に着地したルミアスに抱えられたまま、決壊したように涙がこぼれ嗚咽が漏れた。
「このっ、馬鹿野郎! 逃げろって言っただろうが! ヴァローアはどうした!?」
魔獣達からの攻撃を器用に避けながら、ルミアスから怒声を浴びせられる。
今の今まで怒られたことなど無いリュートは驚き目を丸くしたが、心配からくる怒りだと分かっているせいか怖さはない。
リュートは頑張って涙を押し留めながら、袖で顔を拭う。
「人が多すぎてはぐれたんだよ! それに外に逃げようとしても、城の周りを魔獣が沢山囲んでるみたいでもう外に出れなくなってるっ」
これでも安全な場所を探しながら移動していたと抗議すれば、ルミアスは自身の髪をぐしゃぐしゃと掻き、機嫌が悪そうに魔獣を屠る。
大きな瓦礫の後ろに身を隠せば、やっとリュートは地面に下ろされた。
素早くリュートに怪我が無いか確認するルミアスと同じく、リュートも素早くルミアスが傷ついてないかを確認した。
揃いにした衣装はお互い真っ赤に染まり、土埃がついたり、引っかかってほつれ穴が空いたりとボロボロになっている。
前線に居たルミアスはリュートよりも酷い有様だ。
「この怪我はどうした」
「これは――」
顔に着いた鼻血の痕と、魔獣の尻尾で攻撃された部分の痛みに気づかれ、事情を説明しようとしたその時、瓦礫の向こうから魔獣が突如現れ二人に襲い掛かってきた。
「ちょっとくらい引っ込んでられねぇのかよっ!」
頭に落雷を落としたあと、風を操り風圧で巨体を吹き飛ばせば、魔獣が瓦礫の向こうに飛んでいった。
しかしそれとは別の方向から魔獣が襲い掛かってくる。
「こっちもかよっ」
リュートを庇いながら攻撃を繰り出すルミアスだが、連続して攻撃を繰り出しているのに加え、既に長時間祟っている。
その消耗は激しいらしく、大きな魔獣の影からさらに出てきた魔獣に反応するのに遅れた。
「まかせてッ!」
囲まれた腕の中から魔獣に向けて腕を伸ばしたリュートが魔法を放つ。
巨大な氷の支柱が魔獣の頭上に出現し、ズドンと大きな音を立てて背中に突き刺さった。
「おまっ魔法なんてどうして……」
「逃げてる途中でフィルバート君に会って……彼から託されたんだよ」
包みを開いて見せれば、悪魔の魔法書を見たルミアスの目が見開かれる。
「なんでこれが……」
手早く悪魔の魔法書が託された経緯を伝えれば、ルミアスは顔を顰めて何とも言えない表情を作る。
「こんな沢山の魔獣から魔法を使えない僕が逃げるのは、無理があるでしょ? これになら魔法を使える方法が描いてあるかと思って」
「読めたのか?」
「きっとルミアスとルミアスのお父さんの血のおかげだね。おかげでここまでなんとか生き残れたよ」
頑張ったでしょ? と褒めて欲しくてヘラリと笑えば、ガバリとルミアスに勢いよく抱き込まれた。
「自分の血を使ったのか? どれだけ吸わせたんだ」
「少しだけだよ。あとは来る途中で魔獣に殺されてしまった他の人の血を貰ったくらい」
「だから血まみれなのか……まったく、無茶するなよ。お前はこういうことに慣れてないだろう」
労うように頭を優しく撫でられ、止まっていた涙が流れそうになるが、頑張って押し留める。
この場を生き残らなければならない状況で、いつものように甘えていられないとリュートはぐっとルミアスを押し返した。
「少しは、僕も力になれる。僕も、戦える。だから早くロマリオを倒そう」
赤い瞳をまっすぐ見つめる。
「だから、僕の生命力を吸って」
「何言って……っ」
「もう少しで全部戻るんだよね? だったら、戻すなら、今しかないと思う。どんどん周りを吸って強くなるロマリオにそれなら、勝てるでしょ。違う?」
不安定な力のまま長時間戦っているルミアスと違い、ロマリオは周りの生命力をどんどん吸って力を増幅させている。
被害の状況もそうだが、ルミアスがいくら強いといっても消耗が激しい中戦い続けるのは困難だろう。
周りにいたはずの戦闘ができる者達も、力を消耗して戦線を離脱しているか、既に事切れている。
現状まともに戦えるのは何とか持ち堪えているルドルフとルミアスしかいないのだ。
その状態で周りの魔獣達も相手にしつつ、ロマリオを倒せるかといわれればキツイとしか言いようがないだろう。
人よりも力を持っているルドルフも所詮は人間でしかない。
圧倒的に敵を屠る力は持ちえていないのだ。
この状況を打破し、生き残るためには悪魔の力を取り戻したルミアスに頼るほかない。
視線を逸らすことなくじっと見つめていれば、ルミアスが小さく息を吐いてから再び視線を合わせてくる。
「吸い取りすぎないようにする」
リュートが小さく頷けば、ルミアスが勢いよく口づけてきた。
深く口づけられ、絡み合った舌からどんどんと力を吸われていくのが分かる。
急速に無くなっていく生命力に軽く眩暈が起き始め、リュートは必死にルミアスのジャケットを掴んだ。
時間にすれば一瞬だ。最後に名残惜しいと言わんばかりに唇をぺろりと舐め上げられ、リュートは瞑っていた目を開ける。
元の姿を完全に取り戻したルミアスは徐に前髪をかき上げ、ボロボロになっていたジャケットを脱ぎ捨てた。
「危なかったら無理なく逃げろ」
「わかってる」
血の気が引いて震える自身の体を叱咤させ、ルミアスを安心させるように微笑めば、頭をぐしゃりと撫でられる。
同時に、ロマリオが耳の奥を突き刺すような咆哮をあげ、リュート達目掛けて突進してく来るのだった。
*あと少しで決着……!!
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