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28 その感情の名は2
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「だから、本当に僕とソルドはそんな関係ではないんだよ……」
カステルに懇切丁寧に説明をしながら何度となくそう言うケインズに、カステルは本当に恋人同士ではないのか? と疑問に思い始めた。
「本当に、恋人同士じゃない……?」
「だから何度も、そう言っているじゃないか……」
心底疲れたようにぐったりと座るケインズに、カステルは驚愕の表情を向けた。最近のケインズとソルドは、王子とその護衛騎士という範疇を超えているような親密さがあるのだ。
それこそ図書館でカステルが目撃してしまったキスシーンが見間違いであったとしても、それを納得させるだけの材料が沢山ある。
例えばそれは、二人が時には長く見つめ合っていたり、かと思えばソルドが顔を少し赤らめケインズから視線を逸らしたり。
最近ではカステルを部屋から追い出し、朝に昼にはたまた夜までも二人きりになる時間を作っている。あのどんなに言っても仕事の手を休めなかったケインズがだ。
なによりも、部屋から出て来たソルドはケインズと同じ香りを纏っている。それは香りが移るほど近くそして長く側に居ると言うことだ。
これで恋人ではないと言うのはいかがなものか。まさかケインズとソルドが爛れた関係であるなどとは二人の性格上考えにくい。
それらをケインズに指摘すれば、ぽかんと呆けた顔をしたあと、ケインズは顔を真っ赤に染め上げた。
「香りは、その、ソルドが最近年だなんだと言うから、身ぎれいにしたらどうかと……それで私が使っている香油で髪を整えたりしているからで……ほら王族専用のものだから、市販のより良いものだし」
まさかそんなところを言われるとは思っていなかったケインズは、しどろもどろになりながらなんとか言い訳を捻りだす。
ソルドの耳と尻尾の話をできるわけもなく、苦し紛れの言い訳でそれがカステルに通じはしないことは明白であったが、それ以外に上手く言葉が出てこなかった。
「では最近よくソルドさんを見ているのは?」
「いや、それは……僕の護衛は格好いいなと……」
「今更ですか? 何年一緒にいると思ってるんですか」
「そうなんだけどね、ははは」
見つめているのはあくまで耳と尻尾だ。確かにソルドが自身の体に生えた物を認識してからその反応が可愛く思えて、ついつい今までより余計に見てしまっていた。
自身の幻覚だと勘違いしていた時はあれほど周りに悟られないように注意していたと言うのに、それすらも忘れてしまうほど、周りに気が付かれてしまうほどソルドを見ていたとは。
ソルドが顔を赤らめ背けるのは、耳と尻尾を見られていることへの羞恥からだ。ケインズがいくら可愛いだの素晴らしく素敵な物だのと賛辞を述口にしても、年がいった男には不釣り合いすぎるのだと、いつまでたっても慣れた様子にはならない。
それがまた可愛いのだがとケインズが物思いに耽っていれば、カステルが難しい顔をしてぽつりと言葉を漏らした。
「もしや……無自覚? それで無意識に香油でマーキングして……?」
「なんだって?」
「ごほんっ。殿下、ソルドさんを見て最近よく思うことはなんですか? 嘘偽りなく、正直に答えてください」
「いきなりだね? えぇっと……格好いいと、可愛いかな?」
「そう思う時に、心がポカポカしませんか?」
「凄いねキャス、当たってる」
「ではソルドさんが突然お休みした時にはどう感じましたか? 寂しくなかったですか?」
「そうだね、いつもいる人がいないと言うのは寂しいものだね。それになんだか落ち着かんかったかな」
「ソルドさんがご実家に帰られている間は、そんなことありませんでしたよね? 寂しさはあったかとは思いますが、殿下は普段通りでしたし。ですが今回はどうです? 最初はよかったですけど、時間と日が経つにつれてずっとピリピリしてたじゃないですか」
確かにカステルの言う通りなのだが、それには訳がちゃんとある。しかしこれもカステルには言えない事柄で、ケインズはなんとも歯がゆい思いをする。
全てを包み隠さずカステルに言えるならば、こんな誤解はすぐに解けると言うのに。
「以上のことを含めて申し上げます。ケインズ殿下、殿下はソルドさんのことが好きなんですよ!!」
「え? うんそうだね、ソルドのことは好きだよ?」
「あぁもう! 違いますよ殿下! 僕が言っているのは、恋愛感情として! ソルドさんのことが殿下は好きなんだって言ってるんです!」
「いや、それは……」
「嫌もなにもありませんよ!? ご自身の気持ちがわからないんですか!? いいですか、明日から、殿下は明日からソルドさんのことをちゃんと意識して見てみてください! 必ずですよ、必ず! それでご自身の気持ちがわかるはずです!」
いつの間にか両肩を掴まれ、真顔で鬼気迫るように念を押してくるカステルの圧に、ケインズはこくこくと頷くしかなかった。
*明日はお昼と夜の二回更新予定です。
カステルに懇切丁寧に説明をしながら何度となくそう言うケインズに、カステルは本当に恋人同士ではないのか? と疑問に思い始めた。
「本当に、恋人同士じゃない……?」
「だから何度も、そう言っているじゃないか……」
心底疲れたようにぐったりと座るケインズに、カステルは驚愕の表情を向けた。最近のケインズとソルドは、王子とその護衛騎士という範疇を超えているような親密さがあるのだ。
それこそ図書館でカステルが目撃してしまったキスシーンが見間違いであったとしても、それを納得させるだけの材料が沢山ある。
例えばそれは、二人が時には長く見つめ合っていたり、かと思えばソルドが顔を少し赤らめケインズから視線を逸らしたり。
最近ではカステルを部屋から追い出し、朝に昼にはたまた夜までも二人きりになる時間を作っている。あのどんなに言っても仕事の手を休めなかったケインズがだ。
なによりも、部屋から出て来たソルドはケインズと同じ香りを纏っている。それは香りが移るほど近くそして長く側に居ると言うことだ。
これで恋人ではないと言うのはいかがなものか。まさかケインズとソルドが爛れた関係であるなどとは二人の性格上考えにくい。
それらをケインズに指摘すれば、ぽかんと呆けた顔をしたあと、ケインズは顔を真っ赤に染め上げた。
「香りは、その、ソルドが最近年だなんだと言うから、身ぎれいにしたらどうかと……それで私が使っている香油で髪を整えたりしているからで……ほら王族専用のものだから、市販のより良いものだし」
まさかそんなところを言われるとは思っていなかったケインズは、しどろもどろになりながらなんとか言い訳を捻りだす。
ソルドの耳と尻尾の話をできるわけもなく、苦し紛れの言い訳でそれがカステルに通じはしないことは明白であったが、それ以外に上手く言葉が出てこなかった。
「では最近よくソルドさんを見ているのは?」
「いや、それは……僕の護衛は格好いいなと……」
「今更ですか? 何年一緒にいると思ってるんですか」
「そうなんだけどね、ははは」
見つめているのはあくまで耳と尻尾だ。確かにソルドが自身の体に生えた物を認識してからその反応が可愛く思えて、ついつい今までより余計に見てしまっていた。
自身の幻覚だと勘違いしていた時はあれほど周りに悟られないように注意していたと言うのに、それすらも忘れてしまうほど、周りに気が付かれてしまうほどソルドを見ていたとは。
ソルドが顔を赤らめ背けるのは、耳と尻尾を見られていることへの羞恥からだ。ケインズがいくら可愛いだの素晴らしく素敵な物だのと賛辞を述口にしても、年がいった男には不釣り合いすぎるのだと、いつまでたっても慣れた様子にはならない。
それがまた可愛いのだがとケインズが物思いに耽っていれば、カステルが難しい顔をしてぽつりと言葉を漏らした。
「もしや……無自覚? それで無意識に香油でマーキングして……?」
「なんだって?」
「ごほんっ。殿下、ソルドさんを見て最近よく思うことはなんですか? 嘘偽りなく、正直に答えてください」
「いきなりだね? えぇっと……格好いいと、可愛いかな?」
「そう思う時に、心がポカポカしませんか?」
「凄いねキャス、当たってる」
「ではソルドさんが突然お休みした時にはどう感じましたか? 寂しくなかったですか?」
「そうだね、いつもいる人がいないと言うのは寂しいものだね。それになんだか落ち着かんかったかな」
「ソルドさんがご実家に帰られている間は、そんなことありませんでしたよね? 寂しさはあったかとは思いますが、殿下は普段通りでしたし。ですが今回はどうです? 最初はよかったですけど、時間と日が経つにつれてずっとピリピリしてたじゃないですか」
確かにカステルの言う通りなのだが、それには訳がちゃんとある。しかしこれもカステルには言えない事柄で、ケインズはなんとも歯がゆい思いをする。
全てを包み隠さずカステルに言えるならば、こんな誤解はすぐに解けると言うのに。
「以上のことを含めて申し上げます。ケインズ殿下、殿下はソルドさんのことが好きなんですよ!!」
「え? うんそうだね、ソルドのことは好きだよ?」
「あぁもう! 違いますよ殿下! 僕が言っているのは、恋愛感情として! ソルドさんのことが殿下は好きなんだって言ってるんです!」
「いや、それは……」
「嫌もなにもありませんよ!? ご自身の気持ちがわからないんですか!? いいですか、明日から、殿下は明日からソルドさんのことをちゃんと意識して見てみてください! 必ずですよ、必ず! それでご自身の気持ちがわかるはずです!」
いつの間にか両肩を掴まれ、真顔で鬼気迫るように念を押してくるカステルの圧に、ケインズはこくこくと頷くしかなかった。
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