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27 その感情の名は
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次の日の朝から、ケインズは宣言通りにソルドの耳と尻尾を朝執務室に行く前と、午後のお茶の時間に撫で回し堪能するようになった。
勿論、耳と尻尾はケインズ以外には見えないため、不審に思われないようカステルすらもその時間は遠ざける念の入れようだ。
いつの間に手に入れたのかブラシを手にしたケインズは、ソルドを横に座らせると香油も用いて熱心に長い毛に包まれている尻尾をブラッシングする。
他人には見えない尻尾だが、ケインズには見えてしまうためソルドは手櫛で出掛けに毛並みを整えるに留めていた。
だが朝の戯れが始まれば、すぐにケインズはソルドの尻尾を整えだしたのだ。
尻尾の手入れにアレがない、コレがないと頭を捻り、次の日には急ぎてアレコレと揃えていた。
初日こそ戸惑っていたソルドだったが、日に三回もこうした戯れがあるので、すぐに慣れてしまった。
ケインズを癒すためのものであるはずだが、この戯れのお陰でケインズは必ず休憩を挟むようになり、自分自身もケインズのリラックスする雰囲気に飲まれ、身も心もも癒されるようになっていた。
夜、ソルドを心ゆくまで堪能したケインズは、コンコンと扉を叩かれ訝しむ。
「カステルです、少し宜しいでしょうか」
「あぁカステルか、どうしたんだい?」
「久々に殿下と飲みたくなりまして。最近ソルドさんだけ狡いですよ」
部屋に入ってきたカステルは、酒瓶とグラスを持っていた。
小さな子供のように拗ねた表情を見せたカステルに、ケインズは苦笑しながら招き入れる。
思えばソルドとの時間を作るようになってから、カステルと酒盛りをすることもなくなっていたのだ。
手早く準備を済ませたカステルは、一息付きケインズの対面に座り、ニコニコとグラスを煽る。
「それにしても、ソルドさんの病気がよくなってよかったです。僕生きた心地がしませんでしたからね」
「そんなにソルドが心配だったのかい?」
「え? まぁソルドさんのことは心配でしたが……そうではなくて、殿下のことです」
「僕? なにかしてしまったかな」
わからないとばかりに首を傾げるケインズに、カステルは肺の中を全て出すような溜息を吐くと、呆れたような表情を見せた。
「いくら恋人が病気で休むからって、日に日に不機嫌になるのはどうかと思います! 僕や周りがどれだけ肝を冷やしたか!」
「こ、恋人!?」
口に含んでいた酒を吹き出すが気管に入り込み、ケインズはごほごほと咳をしながら、カステルを驚愕の表情で見た。
「誰が、誰の恋人だって?」
「殿下とソルドさんに決まっているでしょう。それにあのジェスという方、なんなんです? 妙にソルドさんに馴れ馴れしいですし……ダメですよ殿下! 間男に恋人を取られないようにしないと!」
「いやいや、待て、待ってキャス! 君はとんでもない勘違いをしている!」
ソルドを確かに大切に思っているが、それはカステルとなんら変わらない思いで、そこにあるのは恋情ではなく、友愛や信愛なのだとカステルに説明する。
しかしいくらケインズが違うと説明しても、カステルは怪訝そうな顔をするばかりだ。
「いやいや、冗談はいけないですよ殿下。他はわかりますけど、僕にも秘密にすることないじゃないですか! 仲間はずれですか!」
「だからキャスの勘違いで……」
「僕は図書館で二人がキスしてたの見たんですよ!? あんなに熱く見つめあっていたのに恋人じゃないとか……まさかソルドさんを弄んでるんですか!?」
酒がまわりにまわっているのか、カステルの勢いは収まりそうにない。
どうすれば誤解を解くことができるんだと、ケインズは頭を抱えたのだった。
勿論、耳と尻尾はケインズ以外には見えないため、不審に思われないようカステルすらもその時間は遠ざける念の入れようだ。
いつの間に手に入れたのかブラシを手にしたケインズは、ソルドを横に座らせると香油も用いて熱心に長い毛に包まれている尻尾をブラッシングする。
他人には見えない尻尾だが、ケインズには見えてしまうためソルドは手櫛で出掛けに毛並みを整えるに留めていた。
だが朝の戯れが始まれば、すぐにケインズはソルドの尻尾を整えだしたのだ。
尻尾の手入れにアレがない、コレがないと頭を捻り、次の日には急ぎてアレコレと揃えていた。
初日こそ戸惑っていたソルドだったが、日に三回もこうした戯れがあるので、すぐに慣れてしまった。
ケインズを癒すためのものであるはずだが、この戯れのお陰でケインズは必ず休憩を挟むようになり、自分自身もケインズのリラックスする雰囲気に飲まれ、身も心もも癒されるようになっていた。
夜、ソルドを心ゆくまで堪能したケインズは、コンコンと扉を叩かれ訝しむ。
「カステルです、少し宜しいでしょうか」
「あぁカステルか、どうしたんだい?」
「久々に殿下と飲みたくなりまして。最近ソルドさんだけ狡いですよ」
部屋に入ってきたカステルは、酒瓶とグラスを持っていた。
小さな子供のように拗ねた表情を見せたカステルに、ケインズは苦笑しながら招き入れる。
思えばソルドとの時間を作るようになってから、カステルと酒盛りをすることもなくなっていたのだ。
手早く準備を済ませたカステルは、一息付きケインズの対面に座り、ニコニコとグラスを煽る。
「それにしても、ソルドさんの病気がよくなってよかったです。僕生きた心地がしませんでしたからね」
「そんなにソルドが心配だったのかい?」
「え? まぁソルドさんのことは心配でしたが……そうではなくて、殿下のことです」
「僕? なにかしてしまったかな」
わからないとばかりに首を傾げるケインズに、カステルは肺の中を全て出すような溜息を吐くと、呆れたような表情を見せた。
「いくら恋人が病気で休むからって、日に日に不機嫌になるのはどうかと思います! 僕や周りがどれだけ肝を冷やしたか!」
「こ、恋人!?」
口に含んでいた酒を吹き出すが気管に入り込み、ケインズはごほごほと咳をしながら、カステルを驚愕の表情で見た。
「誰が、誰の恋人だって?」
「殿下とソルドさんに決まっているでしょう。それにあのジェスという方、なんなんです? 妙にソルドさんに馴れ馴れしいですし……ダメですよ殿下! 間男に恋人を取られないようにしないと!」
「いやいや、待て、待ってキャス! 君はとんでもない勘違いをしている!」
ソルドを確かに大切に思っているが、それはカステルとなんら変わらない思いで、そこにあるのは恋情ではなく、友愛や信愛なのだとカステルに説明する。
しかしいくらケインズが違うと説明しても、カステルは怪訝そうな顔をするばかりだ。
「いやいや、冗談はいけないですよ殿下。他はわかりますけど、僕にも秘密にすることないじゃないですか! 仲間はずれですか!」
「だからキャスの勘違いで……」
「僕は図書館で二人がキスしてたの見たんですよ!? あんなに熱く見つめあっていたのに恋人じゃないとか……まさかソルドさんを弄んでるんですか!?」
酒がまわりにまわっているのか、カステルの勢いは収まりそうにない。
どうすれば誤解を解くことができるんだと、ケインズは頭を抱えたのだった。
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