猫耳のおじさん護衛騎士

関鷹親

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15 尻尾の行方2

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 図書館に辿り着いたケインズは、適当に書棚の間を歩き暫くすると足を止める。本を選ぶふりをしながら、頃合いを見計らいソルドに声をかけた。

「ソルド、すまないがあの本を取って貰えるかな?」
「こちらでしょうか?」

 これで確認ができるとケインズは思ったのだが、ソルドはケインズに背を向けることなく、サッと本を取ってしまう。
 指定した本が置いてある棚が、ソルドにとっては難なく場所だったのが悪かった。であればと、今度は梯子を使わなければならない場所にある本を指定した。
 梯子をゆっくりと登るソルドには、やはり尻尾は見えない。ケインズはその事実にがっかりしてしまっていた。

 ケインズがいつになく細かく注文を付けてくることに、ソルドは内心首を傾げながら梯子に足を掛けた。足を上げた瞬間、尻と足に違和感が走った。付け根はピンと張ったズボンに押し付けられ窮屈であるし、足に這わせている尻尾は歩く時よりも邪魔だった。
 あまりの違和感に、梯子を軽快に登ることもできず、ゆっくりとした足取りで梯子を登る。ケインズが指定した本は、棚の一番上にある本だった。突っ張ったズボンに押し付けられた付け根がムズムズして仕方がない。
 これでは日常生活がままならないし、護衛としても不出来だ。何かあった時に咄嗟に動ける気がしなかった。
 ズレる尻尾の位置を直したい衝動に駆られながら、ソルドは漸く目当ての本を手にすることができた。
 果たしてこんな本を本当に読むのだろうか? と疑問しか湧かないタイトルの本だが、取って来いと言われたのだから、ソルドはそれに従うしかない。
 降りる時も感じる不快感に顔が見えないことをいいことに、盛大に眉を顰めながらソルドはケインズの元へと戻った。

 ソルドの尻尾がやはり見えないことに落胆してしまい、ケインズの心は落ち込んでしまっていた。

「殿下、この本でよろしいですか?」
「え? あ、あぁ、それで大丈夫だよ」

 ケインズが適当に指定した本を手にしたソルドが、梯子の一番上から声を掛けてくる。すっかりと本のことを忘れてしまっていたケインズは、慌てて顔を上げソルドに返答した。
 自身の見ている幻覚が一つ消えた。それは喜ばしいことではないかと、ケインズは自身を納得させようとする。それに耳はまだソルドの頭に生えている、それだけでもいいではないか。
 幻覚の有無に一喜一憂するなどどうかしているとは思う物の、ソルドに生える耳も尻尾も愛おしいのだ。

 ソルドが梯子を下りる様子を、何とはなしに見ていれば、ふとソルドの尻の部分が盛り上がっているように見えた。疑問に思うがままにじっと見ていれば、尻尾の形のように膨らんでいるような気がする。
もしやズボンの下に尻尾があると言うのだろうか? そもそも自身の幻覚なのだから、実態などあるはずがないと、そう思うのだがしかし、ケインズは確かめずにはいられなかった。
下へとゆっくりと降りてくるソルドがケインズを見ないことをいいことに、ソルドの尻へと視線を止め続ける。
段々と近づいてくるソルドを見ていれば、尻尾であろう部分がズボンの中で蠢いているのが見えた。
 それに吸い寄せられるようにケインズは床へと辿り着いたソルドの背後に立った。

「殿下?」

 気配にゆっくり振り返るソルドより、ケインズはそのズボンの中にあるであろう尻尾に釘付けになってしまっていた。
 知らず知らずのうちに伸びたケインズの手は、僅かに動くそれを捕まえた。
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