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11 その感情は
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「なんじゃ、浮かない顔だの? どうしたんじゃ坊よ」
家に帰り、どかりとソファに腰を落としたまま無言のソルドに、王宮でたっぷりとケインズに構われ、沢山のご馳走を食べ上機嫌のジェスは話しかけてくる。
ケインズに構われ倒したあと、ジェスをどうするかと言う話し合いが持たれ、ソルドは思わず飼い主が見つかるまで自分が飼うと宣言したのだった。
下手に誰かの手に委ねられ、普通の猫ではないとバレてしまっては困る。なによりも、一度助けたジェスを元の世界に戻るまでは、サポートをすると決めていたからと言うのもある。
ケインズからたまに連れてきてほしいと言われ、カステルもそれに大賛成のようだったのだが。ふぅとソルドは重く溜息を吐き出す。
今日は突然現れ、いくら最初に猫らしくしろと言っていたとて、いつボロを出してしまうのでは無いかとずっと緊張しっぱなしだった。
次に連れて行く時には事前によく言って聞かせることができるため、そんな心配をしなくてもいい。
だが問題はそこではなかった。ケインズの膝の上に我が物顔で座り、リラックスするだらけた表情のジェスに、言い知れぬ感情がずっと湧き上がっていたのだ。
ケインズの表情もそうだ。終始目尻を下げ、いつもより格段に優しい顔でジェスを撫でる。
あの顔をご令嬢方が見れば、見事に心臓を射抜かれたことだろう。それ程に麗しい光景であった。
ケインズの膝の上のジェスが、羨ましいと思うほどに。
そこまで考えたソルドは、一体何を考えているのだろうと、頭を左右に振るとのびのびしているジェスに呼びかけた。
「なぁジェス、お前はなんで王宮まで来たんだ?」
「あぁ、それはじゃな、ずっとここに閉じこもっているのも退屈じゃろ? それに坊の主がどんなものか見てみたくなってのぅ」
「私が来たからよかったものを、捕まってしまっていたらどうなったか! 肝が冷えたんだぞ」
「うぅぅ……見つからないと思ったんじゃぁ……来てくれた時は神様かと思ったぞ!」
反省しているのかいないのか、ジェスは表情をコロコロ変えながらよく話す。
ケインズの膝の上が気持ちがよかっただの、撫でる手つきが絶妙だっただの、食事の美味さをキラキラした目で熱弁するのだ。
「のぅ、坊や。また王宮に連れて行ってはくれんかのぅ?」
キュルキュルした瞳をまん丸にしておねだりをしてくるジェスに、グッと苦虫を噛み潰したような顔をする。
下手に許可せず出歩かれるより、許可して一緒に登城した方が安全ではなかろうか。
「はぁ……構わないが。だが私との約束事を守れればの話だ」
「大丈夫じゃよ! ほれ、今日もちゃんと猫の真似が出来ておったじゃろう?」
「ちゃんとできてはいたがな……そこではないんだが……まぁいい、明日も私は仕事だ。明日は一日家から出るんじゃないぞ」
軽くジェスの頭を撫で、自室へと下がったソルドは、衣服はそのままにベットへと倒れ込む。
普通に仕事をする時より以上に感じられる疲労感に、ソルドの瞼は事前に閉じていく。
だが脳裏に浮かんだのは、ジェスを優しく撫でるケインズの姿だった。まだ幼いケインズに一度だけ撫でられたことまで思い出す。
「……私が猫だったら、撫でてくださるのだろうか」
眠りに落ちる直前、無意識に言葉が零れ落ちていた。
家に帰り、どかりとソファに腰を落としたまま無言のソルドに、王宮でたっぷりとケインズに構われ、沢山のご馳走を食べ上機嫌のジェスは話しかけてくる。
ケインズに構われ倒したあと、ジェスをどうするかと言う話し合いが持たれ、ソルドは思わず飼い主が見つかるまで自分が飼うと宣言したのだった。
下手に誰かの手に委ねられ、普通の猫ではないとバレてしまっては困る。なによりも、一度助けたジェスを元の世界に戻るまでは、サポートをすると決めていたからと言うのもある。
ケインズからたまに連れてきてほしいと言われ、カステルもそれに大賛成のようだったのだが。ふぅとソルドは重く溜息を吐き出す。
今日は突然現れ、いくら最初に猫らしくしろと言っていたとて、いつボロを出してしまうのでは無いかとずっと緊張しっぱなしだった。
次に連れて行く時には事前によく言って聞かせることができるため、そんな心配をしなくてもいい。
だが問題はそこではなかった。ケインズの膝の上に我が物顔で座り、リラックスするだらけた表情のジェスに、言い知れぬ感情がずっと湧き上がっていたのだ。
ケインズの表情もそうだ。終始目尻を下げ、いつもより格段に優しい顔でジェスを撫でる。
あの顔をご令嬢方が見れば、見事に心臓を射抜かれたことだろう。それ程に麗しい光景であった。
ケインズの膝の上のジェスが、羨ましいと思うほどに。
そこまで考えたソルドは、一体何を考えているのだろうと、頭を左右に振るとのびのびしているジェスに呼びかけた。
「なぁジェス、お前はなんで王宮まで来たんだ?」
「あぁ、それはじゃな、ずっとここに閉じこもっているのも退屈じゃろ? それに坊の主がどんなものか見てみたくなってのぅ」
「私が来たからよかったものを、捕まってしまっていたらどうなったか! 肝が冷えたんだぞ」
「うぅぅ……見つからないと思ったんじゃぁ……来てくれた時は神様かと思ったぞ!」
反省しているのかいないのか、ジェスは表情をコロコロ変えながらよく話す。
ケインズの膝の上が気持ちがよかっただの、撫でる手つきが絶妙だっただの、食事の美味さをキラキラした目で熱弁するのだ。
「のぅ、坊や。また王宮に連れて行ってはくれんかのぅ?」
キュルキュルした瞳をまん丸にしておねだりをしてくるジェスに、グッと苦虫を噛み潰したような顔をする。
下手に許可せず出歩かれるより、許可して一緒に登城した方が安全ではなかろうか。
「はぁ……構わないが。だが私との約束事を守れればの話だ」
「大丈夫じゃよ! ほれ、今日もちゃんと猫の真似が出来ておったじゃろう?」
「ちゃんとできてはいたがな……そこではないんだが……まぁいい、明日も私は仕事だ。明日は一日家から出るんじゃないぞ」
軽くジェスの頭を撫で、自室へと下がったソルドは、衣服はそのままにベットへと倒れ込む。
普通に仕事をする時より以上に感じられる疲労感に、ソルドの瞼は事前に閉じていく。
だが脳裏に浮かんだのは、ジェスを優しく撫でるケインズの姿だった。まだ幼いケインズに一度だけ撫でられたことまで思い出す。
「……私が猫だったら、撫でてくださるのだろうか」
眠りに落ちる直前、無意識に言葉が零れ落ちていた。
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