猫耳のおじさん護衛騎士

関鷹親

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22 発情期

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 目が覚めれば体は未だに熱く、下半身が疼いて仕方がない。意識を失う前にジェスが言っていたのは本当なのだろう。

「起きたか坊よ」
「ジェス、これは……お前の魔法でなんとかならないのか?」
「猫の本能じゃからな、それは無理じゃよ」

 ズボンの中が張り詰め、欲を発散させなければどうにかなってしまいそうだった。こうなっては仕方がないと、ソルドはジェスに暫く一人にしてくれと頼むが、ジェスはそれを受け入れなかった。

「一人で処理するのも良いがのう、それだと酷くて一週間はその状態が続いてしまうぞ? それだと坊は困るじゃろう」
「では、どうすればいいって言うんだ」
「簡単じゃよ、誰かと交わればよいのじゃ。そうじゃのう、ケインズを呼んでこようかの。あやつなら坊を助けてくれるじゃろ」

 とんでもないことを言い出すジェスに、ソルドは顔を真っ青にして玄関へと向かって歩き出したジェスを慌てて捕まえた。

「なんで殿下を呼ぶんだ!」
「あやつは坊の主じゃろう? それにあの感じだともう一押しあれば……」
「あぁぁぁ、もういい! 誰かとヤれば収まるんだな!?」
「お、おう、そうじゃ。交われば……まぁ一日くらいで落ち着くじゃろ」

 目を血走らせガクガクと揺さぶってくるソルドの気迫に、ジェスはあまりの怖さに長い尻尾を股の間から胸元へと抱き寄せた。
 そんなジェスに気が付く余裕もなくなってきてしまったソルドは、すくっと立ち上がると、外套を再び着込み玄関へとどかどかと進んでいく。

「待て待て坊! 一体どこに行く気じゃ!」
「どこって、娼館に決まっているだろう!」

 バタンっと大きな音を立ててしまった扉を前に、ジェスは暫く放心していたが暫くして我に返った。
 よく考えれば、ソルドも大人である。ケインズを呼ぶ選択肢がソルドの中に無いのはいただけないが、娼館で発散してくると言うのなら問題はないだろう。
 できればこれを機会に、どう見ても相思相愛なソルドとケインズにはググっと距離を縮めて欲しかったジェスだが、こればかりはソルドの気持ちが最優先だ。

「それにしても怖かったのう。あんなに目を血走らせて……まるで初めての発情期じゃ~……。っ!!」

 初めての発情期、それはジェスが居た世界では大人になった証であり、お祝い事をする目出度い日でもあるのだが、それと同時に厄介な日でもあった。

「あぁぁぁぁマズい、非常にマズいぞ!?」

 ジェスの感が正しければ、ソルドが今起こしている発情期は、大人になる一回目の発情期だ。その場合、通常の発情期とは条件が異なってしまう。
 通常の発情期であれば、適当な相手と交わり数回欲を吐き出してしまえば、発情期特有の爆発するような欲は収まる。
 だが最初の発情期だけは、最初だけあり抑えが効かなくなってしまう。そうなればいつまで発情期が続くかわからないのだ。
 ジェスがソルドに言ったように、一日そこらでは終わらない。しかしソルドは明日も仕事があるのだ。

「娼館まで探しに……行ってもどの道連れ帰るのは無理じゃしの……」

 ぐるぐると部屋の中を歩き回りながら、ジェスはむむぅと悩む。ソルドの体は既に成人を迎えてから大分経っている。故に今回の発情期が通常の物だとジェスは思いたかった。

「どう考えてもアレは……あぁぁぁぁ神様、どうか通常の発情期でお願いしたいんじゃぁぁぁぁぁ」

 半べそになりながら、ジェスは膝を着き手を組んで神様に祈るしかなかった。そして元の世界の神々に数多の言語で一通り祈り終えると、ジェスは立ち上がり万が一に備えてキッチンにある食材を腹がはちきれんばかりに食べ、魔力をできる限り補充したのだった。
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