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114 城の中
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城の最上階、目的の部屋の前に到着した春輝とトビアスは、扉の異様さに驚いた。城のどの場所とも異なるその扉は、頑丈な格子で守られており、その扉自体も鉄でできた重厚なものだ。
城の豪華絢爛な煌びやかさとはかけ離れたそれが、どれだけこの扉の先が重要かを表していた。
だが異様さはそれだけではない。鉄の扉に刻まれた古代文字は、人間達が知りようのない精霊族特有の物だからだ。
春輝はその文字を地下に居た時にしっかりと見ていたし、トビアスはその文字をドラゴンの脈々と引き継がれてきた記憶で知っていた。
こんな場所に堂々と彼らの文字を刻んでいるのだから、教会と同じように少しづつ浸透させてきたに違いない。愚かな人間達はそうとは知らずに、大事に守って来たのだろう。
扉を守る衛兵が、春輝達の血に塗れた格好を見て警戒心を高めている。
先程から繰り返し聞こえてきていたであろう戦闘の音はきっと彼らにも届いていたはずだ。
精霊族の根気強さにも、人間達の愚かさにも呆れかえっていれば、扉を守る衛兵が鋭い槍の切っ先を向けてくる。
「邪魔だ」
突撃してきた槍先の根本を掴むと、春輝は手を強化しバキリとへし折ってしまう。決して細くはない槍は、ただの短い棒切れに瞬時に姿を変えていた。
突撃した勢いのまま、前につんのめった衛兵はそのままトビアスに軽く切り捨てられる。他の衛兵達も同様に春輝が先行しトビアスが捌いていった。
呆気なく倒された衛兵達だが、問題は扉の方だ。
「これは普通に開くと思うか?」
「何も普通に開ける必要は無いかと」
「腕を強化してこじ開けるか? それとも魔法で?」
「いえ、そうではなく。ブレスを使えば良いかと」
そう言われてから、春輝はドラゴンが最も得意とするブレスを未だ使っていなかっあことに気が付いた。
精霊族を滅するのに一番効果的で、彼らが一番恐れているそれをこの場所に到達するまでに春輝は一度も使用していない。
「確かに練習にもなるな」
「それもありますが、この扉には魔法を弾く文言が刻まれているのです。通常の魔法で攻撃しようとも破れはしないでしょう。ですが我々ならそれ以外に確実な方法があると言う訳です」
さぁどうぞと、トビアスに促され春輝は扉の中央に立つ。教えられたように腹の奥底に魔力を溜めていき、その濃度を徐々に濃くそして圧縮していく。
ぐるぐると体内で渦巻く強大な魔力が、今か今かと外に飛び出すのを待つように暴れだす。それを更に抑え込め、威力を上げるようにしていけば自然と口が開いた。
吸い込んだ息をふっと吐きだせば、その息に乗り体内から溢れ出す凝縮された魔力を纏う青紫の炎が鉄の扉を覆いつくした。
一気に高温のブレスを受けた鉄の扉は、バチバチと古代文字の能力を無効化しながら融解する。オレンジ色のドロドロとした高温の液体となった鉄がぼたぼたと床に落ち、敷かれている絨毯を焼いて焦げ臭いにおいが室内に充満した。
跡形もなく溶け落ちた鉄の扉があった場所を二人で潜る。部屋の中心部には巨大なエメラルドグリーンのクリスタルが置かれていて、そこから伸びるようにして部屋の端までこれまた古代文字がびっしりと床石に掘られていた。
その光景に教会の地下での出来事を思い出し、ぞわりとした寒気を感じた春輝は思わず身震いをした。
「大丈夫ですか、ハルキ殿」
「あぁ。ただ、地下を思い出して気分が悪い」
顔色が多少曇った春輝を気遣うように前に出たトビアスだったが、心底面倒くさそうに春輝へと向き直った。
一体どうしたのかと首を傾げれば、背後から無数の足音が聞こえてきて、気が付けば春輝もトビアスと似たような表情をしていた。
城の豪華絢爛な煌びやかさとはかけ離れたそれが、どれだけこの扉の先が重要かを表していた。
だが異様さはそれだけではない。鉄の扉に刻まれた古代文字は、人間達が知りようのない精霊族特有の物だからだ。
春輝はその文字を地下に居た時にしっかりと見ていたし、トビアスはその文字をドラゴンの脈々と引き継がれてきた記憶で知っていた。
こんな場所に堂々と彼らの文字を刻んでいるのだから、教会と同じように少しづつ浸透させてきたに違いない。愚かな人間達はそうとは知らずに、大事に守って来たのだろう。
扉を守る衛兵が、春輝達の血に塗れた格好を見て警戒心を高めている。
先程から繰り返し聞こえてきていたであろう戦闘の音はきっと彼らにも届いていたはずだ。
精霊族の根気強さにも、人間達の愚かさにも呆れかえっていれば、扉を守る衛兵が鋭い槍の切っ先を向けてくる。
「邪魔だ」
突撃してきた槍先の根本を掴むと、春輝は手を強化しバキリとへし折ってしまう。決して細くはない槍は、ただの短い棒切れに瞬時に姿を変えていた。
突撃した勢いのまま、前につんのめった衛兵はそのままトビアスに軽く切り捨てられる。他の衛兵達も同様に春輝が先行しトビアスが捌いていった。
呆気なく倒された衛兵達だが、問題は扉の方だ。
「これは普通に開くと思うか?」
「何も普通に開ける必要は無いかと」
「腕を強化してこじ開けるか? それとも魔法で?」
「いえ、そうではなく。ブレスを使えば良いかと」
そう言われてから、春輝はドラゴンが最も得意とするブレスを未だ使っていなかっあことに気が付いた。
精霊族を滅するのに一番効果的で、彼らが一番恐れているそれをこの場所に到達するまでに春輝は一度も使用していない。
「確かに練習にもなるな」
「それもありますが、この扉には魔法を弾く文言が刻まれているのです。通常の魔法で攻撃しようとも破れはしないでしょう。ですが我々ならそれ以外に確実な方法があると言う訳です」
さぁどうぞと、トビアスに促され春輝は扉の中央に立つ。教えられたように腹の奥底に魔力を溜めていき、その濃度を徐々に濃くそして圧縮していく。
ぐるぐると体内で渦巻く強大な魔力が、今か今かと外に飛び出すのを待つように暴れだす。それを更に抑え込め、威力を上げるようにしていけば自然と口が開いた。
吸い込んだ息をふっと吐きだせば、その息に乗り体内から溢れ出す凝縮された魔力を纏う青紫の炎が鉄の扉を覆いつくした。
一気に高温のブレスを受けた鉄の扉は、バチバチと古代文字の能力を無効化しながら融解する。オレンジ色のドロドロとした高温の液体となった鉄がぼたぼたと床に落ち、敷かれている絨毯を焼いて焦げ臭いにおいが室内に充満した。
跡形もなく溶け落ちた鉄の扉があった場所を二人で潜る。部屋の中心部には巨大なエメラルドグリーンのクリスタルが置かれていて、そこから伸びるようにして部屋の端までこれまた古代文字がびっしりと床石に掘られていた。
その光景に教会の地下での出来事を思い出し、ぞわりとした寒気を感じた春輝は思わず身震いをした。
「大丈夫ですか、ハルキ殿」
「あぁ。ただ、地下を思い出して気分が悪い」
顔色が多少曇った春輝を気遣うように前に出たトビアスだったが、心底面倒くさそうに春輝へと向き直った。
一体どうしたのかと首を傾げれば、背後から無数の足音が聞こえてきて、気が付けば春輝もトビアスと似たような表情をしていた。
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