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46 救い上げられる
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春輝は流れ込む魔力を貪るように、もっともっととガベルトゥスの舌に絡ませ奥深くまで飲み込んいた。
荒々しく口づけてくる春輝の背を、ガベルトゥスは落ち着かせるように撫でながら、拒絶反応がこれ以上起きないように、ゆっくりと魔力を馴染ませるように注ぎ込む。
まさか新たに、それも以前とは格段に強さが異なる核が埋め込まれるとは予想外過ぎた。歴代の勇者の中で、新たに核が埋め込まれた者などガベルトゥスが知る限りありはしない。
だから油断していたのだ。最初からその可能性は無いと欠片も考えなかった。春輝の態度は核を埋め込まれても変わらず、本人も洗脳が解けたと悟られないように行動していたはずなのだから、怪しまれることもないだろうと。
暫くしてガベルトゥスが口を離せば、虚ろだった春輝の目には輝きが戻り、疲労の色を滲ませる。土気色に近かった顔色も良いとは言えないが多少なりとも血色を取り戻していた。
自身の口の周りにべったりと血がついていることに気が付いたガベルトゥスは、気の利くトビアスから差し出されたタオルで血を拭うと、春輝の口の周りに着いたものをべろりと舐めとった。
「……来るのが、遅すぎる」
「お前の望みを叶えるために色々とやっていたんだが……まさか目を離している隙にこんなことになるとはな」
体の力が抜け、立つこともままならない春輝を抱え上げたガベルトゥスは、拒否されないのをいいことに、ソファまで行くと春輝を自身に寄りかからせる。
「それで? 俺が居ない間になにがあった」
春輝は抗議する気も起きず、ガベルトゥスにされるがまま言葉を紡ぐが、未だに回復しない状態ではあまり喋ることができず、トビアスが合間に説明を挟んだ。
体温が高いガベルトゥスの体は、冷えきった春輝には心地が良い。これほど存在に安心感を持てるのはガベルトゥスが初めてだった。いちかに感じていたのは安心感よりも、安らぎの方が大きかったのだ。
春輝の周りには頼れる者などいなかったのだから仕方がないことでもある。大人は誰も信用していなかったために、頼ることはおろか、助けを求めることも当然なかった。
自分と妹は、自分自身で守るべきものと春輝は定義していたのだ。だが、ガベルトゥスには何の気兼ねもなしに頼ることができてしまう。
無意識に体を密着させる面積を増やした春輝だが、その行動にガベルトゥスが内心ににやけているのには勿論気が付かなかい。
トビアスは夜ジェンツに遭遇した辺りから春輝の様子がおかしくなったこと、悪夢に魘され体調も悪くそんな中での式典で今のよな状態になったことをガベルトゥスに伝えた。
「お利口だなトビアス。教皇を呼ばなくて正解だ。アレは紛れもない敵だからな」
「教皇様が……ですか?」
「春輝の洗脳には核が使われる。今回の原因は強力な核が更に埋め込まれたせいだ。あの聖剣を使ってな。それにあの聖剣は誰が持ってきた? 王家だけではなく、教皇、もしくは教会全体も敵だとみていい」
「だから、教皇様を呼ぶなと……」
トビアスが春輝を見れば、軽く頷かれ、トビアスは自身が信じてきた常識が、これまで以上に崩れていくのがわかった。
教皇ジェンツは今の地位につく前から、善意の塊のような人だと言われていたのだ。それがまさか、敵側であろうとは。
「それで、お前が来なかった、理由はなんだ」
戸惑うトビアスをよそに、春輝がそう問いかければ、本来の目的を思い出したようにガベルトゥスは懐からなにかを徐に取り出し、それをトビアスに投げ渡した。
慌ててそれを受け取ったトビアスは、自身の手の中で黒曜石を薄く伸ばしたような、黒く煌めく薄いガラスのような物を見た。
「これは……」
「ドラゴンの鱗さ」
何でもないことのように言うように言い放つガベルトゥスに、わけがわからないと言うように二人は首を傾げた。
荒々しく口づけてくる春輝の背を、ガベルトゥスは落ち着かせるように撫でながら、拒絶反応がこれ以上起きないように、ゆっくりと魔力を馴染ませるように注ぎ込む。
まさか新たに、それも以前とは格段に強さが異なる核が埋め込まれるとは予想外過ぎた。歴代の勇者の中で、新たに核が埋め込まれた者などガベルトゥスが知る限りありはしない。
だから油断していたのだ。最初からその可能性は無いと欠片も考えなかった。春輝の態度は核を埋め込まれても変わらず、本人も洗脳が解けたと悟られないように行動していたはずなのだから、怪しまれることもないだろうと。
暫くしてガベルトゥスが口を離せば、虚ろだった春輝の目には輝きが戻り、疲労の色を滲ませる。土気色に近かった顔色も良いとは言えないが多少なりとも血色を取り戻していた。
自身の口の周りにべったりと血がついていることに気が付いたガベルトゥスは、気の利くトビアスから差し出されたタオルで血を拭うと、春輝の口の周りに着いたものをべろりと舐めとった。
「……来るのが、遅すぎる」
「お前の望みを叶えるために色々とやっていたんだが……まさか目を離している隙にこんなことになるとはな」
体の力が抜け、立つこともままならない春輝を抱え上げたガベルトゥスは、拒否されないのをいいことに、ソファまで行くと春輝を自身に寄りかからせる。
「それで? 俺が居ない間になにがあった」
春輝は抗議する気も起きず、ガベルトゥスにされるがまま言葉を紡ぐが、未だに回復しない状態ではあまり喋ることができず、トビアスが合間に説明を挟んだ。
体温が高いガベルトゥスの体は、冷えきった春輝には心地が良い。これほど存在に安心感を持てるのはガベルトゥスが初めてだった。いちかに感じていたのは安心感よりも、安らぎの方が大きかったのだ。
春輝の周りには頼れる者などいなかったのだから仕方がないことでもある。大人は誰も信用していなかったために、頼ることはおろか、助けを求めることも当然なかった。
自分と妹は、自分自身で守るべきものと春輝は定義していたのだ。だが、ガベルトゥスには何の気兼ねもなしに頼ることができてしまう。
無意識に体を密着させる面積を増やした春輝だが、その行動にガベルトゥスが内心ににやけているのには勿論気が付かなかい。
トビアスは夜ジェンツに遭遇した辺りから春輝の様子がおかしくなったこと、悪夢に魘され体調も悪くそんな中での式典で今のよな状態になったことをガベルトゥスに伝えた。
「お利口だなトビアス。教皇を呼ばなくて正解だ。アレは紛れもない敵だからな」
「教皇様が……ですか?」
「春輝の洗脳には核が使われる。今回の原因は強力な核が更に埋め込まれたせいだ。あの聖剣を使ってな。それにあの聖剣は誰が持ってきた? 王家だけではなく、教皇、もしくは教会全体も敵だとみていい」
「だから、教皇様を呼ぶなと……」
トビアスが春輝を見れば、軽く頷かれ、トビアスは自身が信じてきた常識が、これまで以上に崩れていくのがわかった。
教皇ジェンツは今の地位につく前から、善意の塊のような人だと言われていたのだ。それがまさか、敵側であろうとは。
「それで、お前が来なかった、理由はなんだ」
戸惑うトビアスをよそに、春輝がそう問いかければ、本来の目的を思い出したようにガベルトゥスは懐からなにかを徐に取り出し、それをトビアスに投げ渡した。
慌ててそれを受け取ったトビアスは、自身の手の中で黒曜石を薄く伸ばしたような、黒く煌めく薄いガラスのような物を見た。
「これは……」
「ドラゴンの鱗さ」
何でもないことのように言うように言い放つガベルトゥスに、わけがわからないと言うように二人は首を傾げた。
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