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45 助けを求める先
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「ハルキ殿!!」
驚愕し駆け寄ってくるトビアスの声すらも不快で仕方がない。
「ガイル、ガイルは……こんな時にも来ないのかっあのくそ親父っ!」
血が絡み、咳が止まらない。
悪夢で見るようにじわじわと、しかし早急に春輝を飲み込もうとしてくる聖剣から流れ込んできた物に春輝だけでは抗えないというのに。
いつも助けてくれるガベルトゥスが今この場に現れないことに、苛立ちと共に不安が募って仕方がない。
唯一核を押さえつける力を持っているのは、ガベルトゥスだけなのだ。このまま飲み込まれてしまえば、二度と戻ってこれない気がしてならない春輝は、その恐怖にも怯えていた。
聖剣を手にした瞬間体内に入り込んできた異物は、最初の物に比べて強力な物に思える。体の奥底に太い根を張り巡らせ、強固に根付く。
春輝の思考を乗っ取ろうとしてくるそれに呑まれてしまえば全てを失ってしまうのではないかと、そう思えてしまうほどに凶悪だ。
いちかと言う生きる理由を失ってしまった頃であったなら、春輝はここまで抵抗しなかっただろう。
生きている意味がない中で思考を乗っ取られても、それは死と変わらない。抵抗などせず、寧ろ自ら死を選ぶようにこの核に呑まれたはずだ。だが今はそれができない。
いちかを殺した者を見つけ出し、復讐する。それは変わらず春輝の中にある目標ではある。だがそれと同時に、ガベルトゥスと共にあるのことが心地良くなってしまっていた。
いつの間にか自然と依存してしまっていたのだろう。
春輝は弱い。何かに依存しなければ今まで生きてこられなかった人生だ。
ガベルトゥスは拠り所が無くなった隙間に、不快感すら抱かせず、当然のように入り込んできた。
今まで幼い妹へ与えてきた物とは違うが、それに近しいものをガベルトゥスは春輝に齎す。
悪夢から拾い上げ、春輝自身を強く求め、満たしてくれるのだ。それに依存してしまうのは仕方のないことだ。
止まらない咳と共に、血を大量に吐き出し春輝は膝をついた床の上に血溜まりを作る。
ずっと抱えている白いうさぎのぬいぐるみに、垂れた血や、床から跳ね上がった血で汚れていってしまうが、それすら気にしていられない。
「医師を……それか今なら、まだ教皇様に頼んで治癒を…!!」
「や、めろ、トビアス……! この状態は聖剣のせいだ、ガイルじゃなきゃ、どうにもできない」
「聖剣の…せい?」
「おいおい、なんだこれは。一体なにがあった」
ぐにゃりと影が重なる場所が歪み、目の前の惨状に眉を顰めたガベルトゥスが現れた。
助かったと、安堵すると同時に春輝はすぐには現れなかったガベルトゥスに対しふつふつと怒りが湧き上がる。
「遅すぎるんだよ」
近寄り春輝の顔色を窺おうとしたガベルトゥスの胸倉を掴んだ春輝は、血塗れの口をガベルトゥスに押しつけた。
「熱烈な歓迎だなハルキ。そんなに恋しかったか?」
「どうでも、いい、ごほっ……早く、どうにかしてくれ、意識が……」
安心してしまったせいか、留めていた意識を手放しそうになるのを必死で堪える。だがそれも長くは持ちそうになかった。
「なにがあった、トビアス」
「返還の儀で、聖剣が戻ってきました。元から体調が悪かったのですが、部屋に戻ってから吐血してしまいまして」
青褪めるトビアスの言葉に漸く投げ捨てられた聖剣に目を止めた。
「ちっ更に埋め込まれたのか。呑み込まれるなよハルキ」
己の服を掴んでいた春輝の手から力が抜けていることに気がついたガベルトゥスは、その手を握りしめ春輝に深く口付けた。
驚愕し駆け寄ってくるトビアスの声すらも不快で仕方がない。
「ガイル、ガイルは……こんな時にも来ないのかっあのくそ親父っ!」
血が絡み、咳が止まらない。
悪夢で見るようにじわじわと、しかし早急に春輝を飲み込もうとしてくる聖剣から流れ込んできた物に春輝だけでは抗えないというのに。
いつも助けてくれるガベルトゥスが今この場に現れないことに、苛立ちと共に不安が募って仕方がない。
唯一核を押さえつける力を持っているのは、ガベルトゥスだけなのだ。このまま飲み込まれてしまえば、二度と戻ってこれない気がしてならない春輝は、その恐怖にも怯えていた。
聖剣を手にした瞬間体内に入り込んできた異物は、最初の物に比べて強力な物に思える。体の奥底に太い根を張り巡らせ、強固に根付く。
春輝の思考を乗っ取ろうとしてくるそれに呑まれてしまえば全てを失ってしまうのではないかと、そう思えてしまうほどに凶悪だ。
いちかと言う生きる理由を失ってしまった頃であったなら、春輝はここまで抵抗しなかっただろう。
生きている意味がない中で思考を乗っ取られても、それは死と変わらない。抵抗などせず、寧ろ自ら死を選ぶようにこの核に呑まれたはずだ。だが今はそれができない。
いちかを殺した者を見つけ出し、復讐する。それは変わらず春輝の中にある目標ではある。だがそれと同時に、ガベルトゥスと共にあるのことが心地良くなってしまっていた。
いつの間にか自然と依存してしまっていたのだろう。
春輝は弱い。何かに依存しなければ今まで生きてこられなかった人生だ。
ガベルトゥスは拠り所が無くなった隙間に、不快感すら抱かせず、当然のように入り込んできた。
今まで幼い妹へ与えてきた物とは違うが、それに近しいものをガベルトゥスは春輝に齎す。
悪夢から拾い上げ、春輝自身を強く求め、満たしてくれるのだ。それに依存してしまうのは仕方のないことだ。
止まらない咳と共に、血を大量に吐き出し春輝は膝をついた床の上に血溜まりを作る。
ずっと抱えている白いうさぎのぬいぐるみに、垂れた血や、床から跳ね上がった血で汚れていってしまうが、それすら気にしていられない。
「医師を……それか今なら、まだ教皇様に頼んで治癒を…!!」
「や、めろ、トビアス……! この状態は聖剣のせいだ、ガイルじゃなきゃ、どうにもできない」
「聖剣の…せい?」
「おいおい、なんだこれは。一体なにがあった」
ぐにゃりと影が重なる場所が歪み、目の前の惨状に眉を顰めたガベルトゥスが現れた。
助かったと、安堵すると同時に春輝はすぐには現れなかったガベルトゥスに対しふつふつと怒りが湧き上がる。
「遅すぎるんだよ」
近寄り春輝の顔色を窺おうとしたガベルトゥスの胸倉を掴んだ春輝は、血塗れの口をガベルトゥスに押しつけた。
「熱烈な歓迎だなハルキ。そんなに恋しかったか?」
「どうでも、いい、ごほっ……早く、どうにかしてくれ、意識が……」
安心してしまったせいか、留めていた意識を手放しそうになるのを必死で堪える。だがそれも長くは持ちそうになかった。
「なにがあった、トビアス」
「返還の儀で、聖剣が戻ってきました。元から体調が悪かったのですが、部屋に戻ってから吐血してしまいまして」
青褪めるトビアスの言葉に漸く投げ捨てられた聖剣に目を止めた。
「ちっ更に埋め込まれたのか。呑み込まれるなよハルキ」
己の服を掴んでいた春輝の手から力が抜けていることに気がついたガベルトゥスは、その手を握りしめ春輝に深く口付けた。
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