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39 燻る思い
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部屋からトビアスを追い出したガベルトゥスは、流れるような動作で春輝をベッドに押し倒す。ぐっと顔を顰めた春輝は、いきなりなにをするんだとばかりに眉を顰めて見上げれば、ガベルトゥスは嫌な笑みを浮かべていた。
「犬を飼うのはいいが、触れさせるなよ?」
「は?」
ガベルトゥスが一体なにを言っているのか理解ができず、春輝は間の抜けた声を発してしまう。べろりと舐め上げられた首筋に、ぞわりと肌が粟立ち春輝の体は思わず跳ねた。
慣れた手つきでするすると服の隙間からガベルトゥスの手が差し込まれ、春輝の地肌の上を滑る。
「俺が側にいれないというのに、他の男が常にいるだなんてなぁ」
空いた大きな手で顔を掴まれ、鼻どうしがつきそうな距離でガベルトゥスの榛色の目に捉えられる。
「面白くないだろう」
何かを確実に孕んだ格段に低い声音に、春輝は目を見開き言葉を発することができない。怒りではない、だがそれに近いような感情が含まれた声と、射貫くような鋭い視線。威圧すらも感じるガベルトゥスに、怖さはないが脳の奥がじりじりと燻った。
「侍従だのなんだの、常に周りに人はいる。なにが違うんだよ」
「アレはお前自身が拾ったからな。気に食わない」
わけがわからないと言った表情の春輝の唇を、ガベルトゥスは噛みつくように奪うと、激しく口内を犯す。
ガベルトゥス自身、己の感情を持て余していた。春輝がわからないように、ガベルトゥス自身も、己の感情の理由を未だ正しく把握してはいない。
段々と乱れていく春輝の呼吸に、ガベルトゥスは目を細めながら体を弄る。すっかりと慣れてしまったこの戯れも、嫌な顔を向け嫌味を言われるが、春輝はいつも受け入れる。
魔力譲渡の副産物のような捉え方だろうが、ガベルトゥスとしては久しぶりの戯れは性欲もあれど、楽しさもあった。
懐かない野良猫が懐き、たまに見せる甘えるような仕草が可愛いように接する春輝に対して、ガベルトゥスは愉悦を感じていたのだ。
そこまで考えたガベルトゥスは、はたと自分の感情がなんであるかぼんやりと捉え始める。
一度懐に入れた人間に対して、春輝は意外にも優しい。悪態をつかれたりはするが、それも機嫌がうつろいやすい猫と変わらない。
この感情はなんだったかと、思考を巡らす。遥か昔に確かに持っていたはずの物だが、ガベルトゥスがここ二百年程動かされなかった感情だ。
錆びついたそれは、だが確実にガベルトゥスの中で膨れ上がっていた。
ガベルトゥスが春輝を弄りながら思考に耽っていれば、ガリっと舌先を噛まれ小さな痛みが走った。
「するなら、早くしろ」
頬を蒸気させながら睨みつけてくる春輝に、ガベルトゥスは片眉を器用に上げニヤリと笑む。
「色気のない誘い文句だな?」
「そんなものあってたまるか」
心底嫌そうな顔をする春輝だが、瞳の奥にはどこか期待するような色が見える。
言動と伴わないそれが、ガベルトゥスには酷く好ましい。
折角待ち望んだ協力者。だがそれ以上に好ましく思う。それが誰かに懐いている様が、そう不快でならないなのだ。
ーー嫉妬か。そこまで思考が行き着けば、ストンと納得できた。
「犬を飼うのはいいが、触れさせるなよ?」
「は?」
ガベルトゥスが一体なにを言っているのか理解ができず、春輝は間の抜けた声を発してしまう。べろりと舐め上げられた首筋に、ぞわりと肌が粟立ち春輝の体は思わず跳ねた。
慣れた手つきでするすると服の隙間からガベルトゥスの手が差し込まれ、春輝の地肌の上を滑る。
「俺が側にいれないというのに、他の男が常にいるだなんてなぁ」
空いた大きな手で顔を掴まれ、鼻どうしがつきそうな距離でガベルトゥスの榛色の目に捉えられる。
「面白くないだろう」
何かを確実に孕んだ格段に低い声音に、春輝は目を見開き言葉を発することができない。怒りではない、だがそれに近いような感情が含まれた声と、射貫くような鋭い視線。威圧すらも感じるガベルトゥスに、怖さはないが脳の奥がじりじりと燻った。
「侍従だのなんだの、常に周りに人はいる。なにが違うんだよ」
「アレはお前自身が拾ったからな。気に食わない」
わけがわからないと言った表情の春輝の唇を、ガベルトゥスは噛みつくように奪うと、激しく口内を犯す。
ガベルトゥス自身、己の感情を持て余していた。春輝がわからないように、ガベルトゥス自身も、己の感情の理由を未だ正しく把握してはいない。
段々と乱れていく春輝の呼吸に、ガベルトゥスは目を細めながら体を弄る。すっかりと慣れてしまったこの戯れも、嫌な顔を向け嫌味を言われるが、春輝はいつも受け入れる。
魔力譲渡の副産物のような捉え方だろうが、ガベルトゥスとしては久しぶりの戯れは性欲もあれど、楽しさもあった。
懐かない野良猫が懐き、たまに見せる甘えるような仕草が可愛いように接する春輝に対して、ガベルトゥスは愉悦を感じていたのだ。
そこまで考えたガベルトゥスは、はたと自分の感情がなんであるかぼんやりと捉え始める。
一度懐に入れた人間に対して、春輝は意外にも優しい。悪態をつかれたりはするが、それも機嫌がうつろいやすい猫と変わらない。
この感情はなんだったかと、思考を巡らす。遥か昔に確かに持っていたはずの物だが、ガベルトゥスがここ二百年程動かされなかった感情だ。
錆びついたそれは、だが確実にガベルトゥスの中で膨れ上がっていた。
ガベルトゥスが春輝を弄りながら思考に耽っていれば、ガリっと舌先を噛まれ小さな痛みが走った。
「するなら、早くしろ」
頬を蒸気させながら睨みつけてくる春輝に、ガベルトゥスは片眉を器用に上げニヤリと笑む。
「色気のない誘い文句だな?」
「そんなものあってたまるか」
心底嫌そうな顔をする春輝だが、瞳の奥にはどこか期待するような色が見える。
言動と伴わないそれが、ガベルトゥスには酷く好ましい。
折角待ち望んだ協力者。だがそれ以上に好ましく思う。それが誰かに懐いている様が、そう不快でならないなのだ。
ーー嫉妬か。そこまで思考が行き着けば、ストンと納得できた。
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