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32 図書館
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あれから時折り現われるガベルトゥスのお陰で、春輝は城内を歩き回れるほどに回復することができていた。
ガベルトゥスが訪れる際はすんなりと魔力譲渡だけで終わることもあれば、軽い性的な接触をすることもある。ガベルトゥスは最初の接触の時に言っていたように最後まではせず、抜きあうだけに留めていた。
最初は戸惑いも、何が楽しいのかと訝しむ気持ちもあった春輝だが、慣れてしまえばどうと言うことはない。
なによりそう言った行為をした夜は、ガベルトゥスは何故か明け方まで春輝の元に居る。いちか以外の体温にすっかり慣れてしまった春輝はそれがとても心地良く感じ始めていた。お互いに利害関係がある中での戯れにしか過ぎないが、この関係も悪くないのではないかと。
王宮の一角にある図書館に春輝は連日足を向ける。頭上高くまで伸びた本棚が所狭しと並ぶ図書館は心地のいい静寂さと共に、場内で働く者たちが利用していて人気も多い。
体を上手く動かせない間、暇つぶしにとオーバンや侍従達らが本を持ち込んではいたが、密室で侍従達の気配を間近に感じながらではまともに読む気にもなれなかった。
だが図書館であれば話は別だ。侍従が常に控えているのは変わりないが、静寂の中でも広く開放的な図書館の中は他人の気配が沢山あろうとも、部屋に籠っているより幾分かマシと言えた。
そんな中で、図書館の中で少し奥まった場所にある観葉植物が並べられた一角。春輝はそれこそ昼から夕方までをその場所で過ごしていた。
窓際で外の景色が見え、背の高い観葉植物は周りの視線を上手く遮ってくれるその場所は、春輝にとっては最高の場所でもあった。
通路の奥にあるので人が通ることはなく、誰にも邪魔はされない。適度な雑音と暖かな日差しが心地良いのだ。
うさぎのぬいぐるみを片腕に抱えながら、書架からランダムに取り何冊も積んだワゴンの上にある本を取ると、春輝は分厚い本にざっと目を通す。
ガベルトゥスの話を聞き、聖剣から齎された知識が洗脳にとって都合のいいものに果たしてどれ程変えられているか疑問に思っていたのだ。
王宮内にあるものであるからして、何かしらの改ざんや隠ぺいがされている可能性は高いのだが、それでもなにか手掛かりはないかと、春輝は連日本を読み漁る。
言葉もそうだが、文字もわざわざ習得するでもなく難なく読めてしまうことに、春輝は今更ながらに感謝していた。所謂異世界チートと呼ばれる類なのか、一から覚えなくて済むということは有難いことだ。それだけで無駄な時間を省けるのだから。
試しに他国の言語で書かれたという本も見てみたが、こちらも難なく読めてしまった。となれば当然言葉も理解できる。
聖剣を手にする前から言葉は理解し話すことが出来たことから、次元を超える際に何らかの力が働いているのかもしれない。それが神の力なのか、または更に何かがあるのか。
勇者である春輝が出歩けば当然目立つ。その姿を一目見ようと、用もなく図書館を訪れる者も増えていた。
視線があちらこちらから突き刺さり、こそこそと囁きが聞こえてくる。煩わしさを感じても春輝は部屋に戻りはしなかった。侍従に人払いをさせるために彼らを遠ざけられるのもまた春輝にとっては少しだけ一人でいられる大事な時間だからだ。
流し読みしていく本が大きくはないテーブルの上に積み重なり、新しい本を開いた辺りで静かだった館内が騒めいた。チラリと視線だけ上げ辺りを見たが、特に何かあるわけでもなく、春輝は再び本へと視線を落とす。
パラパラとページをめくっていけば、本の上に影ができページを捲る手を止めた。
「お久しぶりでございます。ハルキ様」
邪魔されたことにムッとしながら目を向ければ、純白に金の刺繍が施された法衣を纏うジェンツが柔和な表情で立っていた。
ガベルトゥスが訪れる際はすんなりと魔力譲渡だけで終わることもあれば、軽い性的な接触をすることもある。ガベルトゥスは最初の接触の時に言っていたように最後まではせず、抜きあうだけに留めていた。
最初は戸惑いも、何が楽しいのかと訝しむ気持ちもあった春輝だが、慣れてしまえばどうと言うことはない。
なによりそう言った行為をした夜は、ガベルトゥスは何故か明け方まで春輝の元に居る。いちか以外の体温にすっかり慣れてしまった春輝はそれがとても心地良く感じ始めていた。お互いに利害関係がある中での戯れにしか過ぎないが、この関係も悪くないのではないかと。
王宮の一角にある図書館に春輝は連日足を向ける。頭上高くまで伸びた本棚が所狭しと並ぶ図書館は心地のいい静寂さと共に、場内で働く者たちが利用していて人気も多い。
体を上手く動かせない間、暇つぶしにとオーバンや侍従達らが本を持ち込んではいたが、密室で侍従達の気配を間近に感じながらではまともに読む気にもなれなかった。
だが図書館であれば話は別だ。侍従が常に控えているのは変わりないが、静寂の中でも広く開放的な図書館の中は他人の気配が沢山あろうとも、部屋に籠っているより幾分かマシと言えた。
そんな中で、図書館の中で少し奥まった場所にある観葉植物が並べられた一角。春輝はそれこそ昼から夕方までをその場所で過ごしていた。
窓際で外の景色が見え、背の高い観葉植物は周りの視線を上手く遮ってくれるその場所は、春輝にとっては最高の場所でもあった。
通路の奥にあるので人が通ることはなく、誰にも邪魔はされない。適度な雑音と暖かな日差しが心地良いのだ。
うさぎのぬいぐるみを片腕に抱えながら、書架からランダムに取り何冊も積んだワゴンの上にある本を取ると、春輝は分厚い本にざっと目を通す。
ガベルトゥスの話を聞き、聖剣から齎された知識が洗脳にとって都合のいいものに果たしてどれ程変えられているか疑問に思っていたのだ。
王宮内にあるものであるからして、何かしらの改ざんや隠ぺいがされている可能性は高いのだが、それでもなにか手掛かりはないかと、春輝は連日本を読み漁る。
言葉もそうだが、文字もわざわざ習得するでもなく難なく読めてしまうことに、春輝は今更ながらに感謝していた。所謂異世界チートと呼ばれる類なのか、一から覚えなくて済むということは有難いことだ。それだけで無駄な時間を省けるのだから。
試しに他国の言語で書かれたという本も見てみたが、こちらも難なく読めてしまった。となれば当然言葉も理解できる。
聖剣を手にする前から言葉は理解し話すことが出来たことから、次元を超える際に何らかの力が働いているのかもしれない。それが神の力なのか、または更に何かがあるのか。
勇者である春輝が出歩けば当然目立つ。その姿を一目見ようと、用もなく図書館を訪れる者も増えていた。
視線があちらこちらから突き刺さり、こそこそと囁きが聞こえてくる。煩わしさを感じても春輝は部屋に戻りはしなかった。侍従に人払いをさせるために彼らを遠ざけられるのもまた春輝にとっては少しだけ一人でいられる大事な時間だからだ。
流し読みしていく本が大きくはないテーブルの上に積み重なり、新しい本を開いた辺りで静かだった館内が騒めいた。チラリと視線だけ上げ辺りを見たが、特に何かあるわけでもなく、春輝は再び本へと視線を落とす。
パラパラとページをめくっていけば、本の上に影ができページを捲る手を止めた。
「お久しぶりでございます。ハルキ様」
邪魔されたことにムッとしながら目を向ければ、純白に金の刺繍が施された法衣を纏うジェンツが柔和な表情で立っていた。
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